「古典の箱を充満させて」中村梅枝インタビュー~6月歌舞伎座『妹背山婦女庭訓』お三輪で六代目中村時蔵襲名へ

インタビュー
舞台
2024.5.28
中村梅枝

中村梅枝

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六代目中村時蔵を襲名する中村梅枝。2024年6月1日(土)にはじまる歌舞伎座『六月大歌舞伎』では、襲名披露狂言『妹背山婦女庭訓』でヒロインのお三輪を演じる。古典歌舞伎の女方の大役で、梅枝にとっては初めて勤める役。それでもきっと難なく、きっと素晴らしい正統派のお三輪を見せてくれるに違いない。迷わずそう思わせてくれるほどに、梅枝は古典歌舞伎に邁進してきた。

このたびの公演に向けた特別ポスターでは、苧環(おだまき)を持つお三輪の扮装を披露した。

苧環の糸の先は恋しい相手、求女(もとめ)に繋がっている。お三輪が、糸をたどり求女のあとを追っていくと、大きな御殿に行きついて……。

『妹背山婦女庭訓』特別チラシ

『妹背山婦女庭訓』特別チラシ

ビジュアル撮影の風景とともに、梅枝へのインタビューをお届けする。お三輪という役の魅力、意気込み、歌舞伎に対するストイックな姿勢への思いとは。

■お三輪が迷い込んだのは、時代の政変

ーー昼の部では 『妹背山婦女庭訓』より「三笠山御殿」が上演されます。文楽では「金殿」と呼ばれる段にあたります。

お三輪は、女方なら誰しもがやってみたいと憧れる役のひとつです。うちの父(五代目中村時蔵)、祖父(四代目中村時蔵)も、時蔵襲名でお三輪をさせてもらいました。その意味で所縁のある役です。

『妹背山婦女庭訓』は、大化の改新という時代の政変を背景に扱うスケールの大きな芝居です。

お三輪は素朴な娘ですが、恋焦がれる求女(もとめ)を追いかけていったことで『ふしぎの国のアリス』のように蘇我入鹿の屋敷に迷い込み、訳も分からないまま求女を助けるキーマンになる。歌舞伎の女方にも色々な役がありますけれど、娘役と呼ばれる役柄の中に、これだけの時代背景を持った芝居で主役をはる娘役はあまりありません。

ーー『ふしぎの国のアリス』の例えは、初めてご覧の方にもイメージが伝わりやすそうです! お三輪が屋敷で出会う豆腐買いやいじめの女官はどこかエキセントリックで、チェシャ猫やトランプの兵のようですし。

いや、アリスはあくまでもひとつの例えで、そこまで厳密な意味ではないです(笑)。お三輪にとって入鹿の屋敷は見たこともない別世界で、そこに生きる豆腐買いや官女たちは彼女たちとしては普通のしゃべり方、普通の服装でも、お三輪の目には異世界の人々に見えた。そこが面白いところです。

ーーお三輪を演じる上で、大切にされるポイントをお聞かせください。

お三輪の求女に対する強い想いは、出(登場)からすでに始まっています。

今回は、疑着の相の前に独吟(どくぎん)が入り、そこでお三輪は苧環を捨てます。ここで求女への思いを切って苧環を捨てられるように、気持ちを持っていかなくてはいけません。また、一度は帰ろうとするのですが、官女たちの「おめでとうございまする」と(求女の婚礼を祝う)声が聞こえてきて、「あれを聞いては帰られぬ」と戻っていく。苧環を手放しはしたけれど、やっぱり心の底では執着が切れてなかった。この気持ちを切らさないように切らさないように演じなくては、お三輪は成立しません。どのようなプロセスで気持ちをもっていき、お客さんにどうご覧いただくか。そこがお三輪の大事な、そして難しいところになるのではないでしょうか。

ーー物語は「入鹿討伐のために、疑着の相の女の生き血が必要」という状況。その形相がお三輪の顔に現れて……という展開を迎えます。梅枝さんは昨年、国立劇場で求女を演じました。求女は「お三輪ならば疑着の相が出る」と想定して、お三輪に近づいたのでしょうか。

そういう計算は一切ありません。求女はいわゆるスパイとして町人に溶け込み生活をし、たまたまお三輪と出会い関係を持ち、その後三角関係になる。お三輪が追いかけてきたのは想定外のことで、疑着の相になったのは結果論。お三輪は結果として特別な女性になるわけですが、もとは普通の娘。普通の娘にスポットライトが当たることに、この芝居の面白さとテーマがあると思います。

■意識は少し変わりました

ーー豆腐買いは片岡仁左衛門さん。御殿に迷い込んだお三輪をいじめる官女の役は、中村歌六さん、中村又五郎さん、中村錦之助さん、中村獅童さん、中村歌昇さん、中村種之助さん、中村隼人さん、そして梅枝さんの弟・中村萬太郎さんです。大変贅沢なキャスティングで、しかも全員ご親類。8人とも本名が“小川さん”の、“小川家”の方々です。

父、僕、息子の大晴(ひろはる)の襲名ということで、一番上の歌六のおじが、まずはじめに「出るよ」と言ってくださって、皆さんが協力をしてくださいました。いじめの官女8人を小川家の親類で揃えることができました。

ーー歌舞伎座では1960年代後半から1980年代を中心に、6月は萬屋錦之介さんが出演される興行が恒例となっていました。歌舞伎俳優として、萬屋一門への思いは?

僕は初舞台が錦之介のおじの公演でしたから当時の記憶はありますが、それがどういう公演だったのかまでは覚えていません。でも今回の襲名で、少し意識は変わりました。

これまで小川家の役者は、舞台でしょっちゅう顔をあわせるという関係ではなかったんですよね。うちの父は尾上菊五郎のおじさまの相手役、(かつては萬屋で今は播磨屋の)歌六のおじと又五郎のおじ、それから錦之助のおじは中村吉右衛門のおじさまの芝居によく出られていた。獅童さんは外のお仕事もお忙しいこともあり、これまであまりご一緒する機会がありませんでした。そこを今回、獅童さんがグッとまとめてくれたんです。獅童さんから、6月の萬屋の公演を復活させられたらという思いも伺い、一門って大事なんだなと。家族みたいなものなのですよね。

いい意味で肩の力を抜いて

ーー各所で、梅枝さんはストイックな方だと伺っています。

いいえ。全然ストイックではないです。怠けられるなら怠けたいと常に思っています。ただ役者は点数や数字で評価できる商売ではありません。趣味で歌舞伎をしているわけではない以上、プロとして常に自分を客観視し、目の前のハードルを一個ずつ越えていく作業は大事にしています。

『妹背山婦女庭訓』お三輪=中村梅枝改め六代目中村時蔵

『妹背山婦女庭訓』お三輪=中村梅枝改め六代目中村時蔵

ーー数値化できないものに対し、どのようにハードルを設定されていますか?

先輩方の芝居を見て、この先輩のこの表現の仕方を真似したい。踊りにしても、この形をしたい。この間(ま)で音に入りたい。そのようなポイントが、明確な目標として自分の中にはあるんです。それを一個ずつクリアしていく。クリアできているかどうかは、自分の映像を見れば分かること。こうした作業を続けていくことは嫌いではないんです。

ーー世間ではそれをストイックという気がします。

ちがいます。歌舞伎界にはもっとストイックな方がいくらでもいらっしゃいます。僕は仕事だからやっているだけ。

ーー客観的な視点は意識的に持とうとされたのでしょうか。

子どもの頃から、基本的に冷めているんです。一歩引いて見るような、たまたまそういう性格だった。

僕の少し下の世代には、歌舞伎に熱いタイプが多いですね。(尾上)右近くん、隼人くん、(中村)児太郎くん、(中村)橋之助くん。米吉くんは熱いというかアツ苦しい(笑)。僕に近い年齢の人たちは、歌舞伎をそこまで熱く語ることはない気がします。みっくん(坂東巳之助)、(坂東)新悟くん、歌昇くん。萬ちゃん(萬太郎。弟)も熱く語るタイプではない。(中村)壱太郎くんだけは別枠で熱くて、彼一人で僕ら世代の熱の総量を奪っていったのかもしれない(笑)。

『妹背山婦女庭訓』お三輪=中村梅枝改め六代目中村時蔵

『妹背山婦女庭訓』お三輪=中村梅枝改め六代目中村時蔵

ーー(笑)。冷めている中でも梅枝さんの中で、歌舞伎への熱量に上下の波はあるものでしょうか。

『阿古屋』(2018年12月、2019年12月歌舞伎座)をやらせていただいていた時期は、高かったと思います。ただ、その翌年からコロナ禍になり、色々と決まっていた仕事がすべてなくなりました。なるようにしかならないと理解はしていても、歌舞伎をしたいという思いはあった。でも、芝居のない生活リズムに慣れていった。以前は1日中楽屋にいて、モニターをつけっぱなしにしていれば自分が出てない芝居の台詞も聞こえてきた。そういう当たり前の生活が、なくなってしまったんですよね。だから『阿古屋』で高まっていた熱が少し冷めて。じゃあ、襲名を前に今また上がってきているかというと、そうでもない。落ち着いています。でも、いい意味で肩の力を抜いて舞台に出られるようになった気はします。

■古典芸能に携わる歌舞伎俳優だからこそ

ーー『六月大歌舞伎』では時蔵さんが初代中村萬壽(まんじゅ)となられ、梅枝さんが六代目時蔵を襲名、ご長男の大晴(ひろはる)さんが五代目梅枝を襲名し初舞台を踏まれます。大晴さんもクールなタイプなのでしょうか。

小学生特有のシャイな感じですね。学校では賑やかに過ごしているようです。彼は本番に強く、やる時はやるタイプ。うらやましいです。でも稽古の時にちゃんとやらない。それが問題(苦笑)。

左から中村梅枝、小川大晴、中村時蔵。それぞれ六代目時蔵、五代目梅枝、初代萬壽となる。

左から中村梅枝、小川大晴、中村時蔵。それぞれ六代目時蔵、五代目梅枝、初代萬壽となる。

ーー「梅枝さんは冷めている」の話題に戻って恐縮ですが、梅枝さんがプライベートではしゃいだり熱くなる瞬間はありますか?

普段もあまりないかな。スマホゲームのガチャで欲しいキャラが当たった時に「ッシャア!!!!」とか?
 
ーー(一同、爆笑)。梅枝さん、ご趣味はありますか?

ゲームです。

ーーゲームもやり込まれるタイプでしたよね。新作歌舞伎『ファイナルファンタジーX』ご出演の時、同ゲームを5周以上プレイしたことが話題となりました。

そう、やり込んじゃうの。でもゲームは好きだからね。
 
ーーでは歌舞伎というお仕事もよほどお好きで……。

いいえ、歌舞伎は仕事だからです。

役者にはそれぞれの考えがありますので、あくまでも自分の考えとして。芝居の中に、役の感情を表現するために熱量を発散しなくては成立しない場面は当然あります。例えば声をはり上げる必要があるとか。でも、そこで己を忘れてしまうほど熱くなっているかというと、僕はちがいます。自分でコントロールして、そういう芝居をしています。

熱がある芝居は、お客さんの心にも届きやすいです。それに「自分の中で計算しています」と言ってしまうと、あまり良いようには聞こえないでしょう。でも、やはり古典芸能に関わる役者として古典の演劇に出させてもらってる以上、芝居は自分のコントロール下にあるべきだと僕は思います。

大晴さんの趣味も「ゲーム」とのこと。取材会では大晴さんと梅枝さんの仲の良さが印象的でした。

大晴さんの趣味も「ゲーム」とのこと。取材会では大晴さんと梅枝さんの仲の良さが印象的でした。

ーーその思いで古典芸能に取り組まれているならば、冷静な性格は客観的な目線を維持するための大きな武器になりますね。

僕の中では、悩みでもあるんですけれどね。ここでもう一発リミッターが外れるようになれば、また少し違う芝居の仕方もできるだろうな、とか。熱量で芝居ができる方を、うらやましく思うこともありますし。

ーー過去にリミッターが外れたご経験はありますか?

よく覚えているのは高校生の時に舞踊会で踊らせていただいた『鷺娘』。『鷺娘』は後半に“狂い”になるので、気持ちが高ぶっていきます。記憶がないほどにテンション上がっちゃったんですよね。舞台が終わると、親父とお袋が楽屋に来て「今までの稽古は何だったんだ!」って。

ーー稽古ではできていた、ということですよね?

でも舞踊会は、1回しか踊るチャンスがないですからね。自分で映像を見返してみても、ひどかった。気をつけなきゃ、と思うようになったのはそれが最初です。

ーーリミッターを外す機能自体は備わっている、ということが分かりました!

そう。でも解除の仕方を忘れました。説明書もどこかにいっちゃった(笑)。

ただ、自分は役に育てていただいてるという感覚がとても強いんです。色々な役で先輩や後輩を見て教わり、その都度必要なものを取り込んでいく。リミッターも、いつか本当に「これはもう絶対に外さないと無理かもしれない」という状況に直面したら、必要に迫られて外れる気もします。今までそういう状況に遭遇しなかったというだけで。

ーー楽しみです。

果たしてそれが良いことか、今はまだ分かりませんが。

■古典という枠に入り、箱の中から溢れさせる

ーー古典歌舞伎に、ある意味でとても理性的に取り組む姿勢は、お父様の影響なのでしょうか。

そういう考えの父の下で育ったと思います。

常々言われていることですが、やはり古典には枠があります。今回の「金殿」が、例えば四角い枠の箱で、ここ(テーブルの真ん中)にあったとして。それを勝手に自分の手元へ引き寄せてくることは許されません。

100年前に作られた芝居ならば、100年間の上演の中で膨大な数の人たちがその芝居に関わり、様々なことを考えて現行の台本、演出、台詞回しになって、ここにある。たかだか36年しか生きてない僕に、自分の考えを介入する余地はありません。

役者としては、自分のやりやすいようにひっぱってくる方が簡単なんです。その方がお客さんにも面白く見えたりしますし、そういうタイプの芝居があることも分かっています。でも、それは数百人の先人たちの思いを蔑ろにするということなので。それを古典でやる必要はないな、と僕は思っています。

ーーでは古典芸能の役者としてやるべきこととは?

古典の箱がそこにあるなら、その中へ自分たちが入っていく。先人が作った枠に入り、その箱をいかに充満させられるか。箱の中から溢れさせればいいんです。最終的には、それが古典だと僕は思います。結果として溢れた部分が役者の個性。絶対にそうなるものだから、古典にはなんべん上演しても楽しんでいただける作品がたくさんある。役者が変われば感じることも変わります。それが古典の面白さじゃないでしょうか。

■三世代が揃う6月の歌舞伎座

ーー『六月大歌舞伎』では、夜の部の常磐津の舞踊『山姥』でも、時蔵さん、梅枝さん、大晴さんの親子三世代が揃います。

『山姥』は、父が「どうしても孫と」と選んだ演目です。僕も小さい頃に父と踊らせていただきました。

ーー大晴さんがつとめる怪童丸は、坂田金時の子ども時代。金太郎のことですね。

赤い顔で蛇の目のおかっぱという鬘(かつら)をかぶるのですが、僕はあの頭が本当に嫌でした。

ーー頭頂部だけ髪がない、いわゆる……。

カッパです(真顔)。僕自身も経験したからこそ、今回は床山さんに「あの鬘はうちの子には似合わないと思う。かっこいい頭にしてくれ」と相談しました。藤間のご宗家にもお話をし、八方割れというかつらをアレンジした形にしていただきました。

『山姥』怪童丸=小川大晴、五代目中村梅枝を襲名し初舞台へ。

『山姥』怪童丸=小川大晴、五代目中村梅枝を襲名し初舞台へ。

ーーとても格好良い怪童丸になられています! この場合、先人が作った古典へのリスペクトは……。

いいの! 子どもは! 初舞台なんだから!(笑)

子どもには、気持ちよく芝居に出てほしいんです。舞台は親が勝手に決めてやらせていることで、周りからも「がんばってね」としょっちゅう言われて、内心嫌だとしても嫌とは言えない状況を、多分子どもは子どもなりに分かっている。とても窮屈な生活を強いていると思うから、「これは嫌だろうな」と想定できることは、なるべく取り除いてあげたいんです。

とは言っても怪童丸の頭に関しては、床山さんと色々思案しました。古典の坂田金時から外れず、山奥暮らしの生活感があり、荒々しいけれど子どもっぽいもので、化粧と衣裳に負けない鬘にしなくてはいけません。

ーーあくまでも古典の解釈と表現でバージョンアップされたのですね。

(尾上)松緑のおにいさんも初舞台で怪童丸を勤められていますが、大晴の写真をみて「ずるいぞ! なんでカッパじゃないんだよ」とおっしゃっていました(笑)。『山姥』は、歌舞伎の演目としては上演回数がそう多くありませんが、今回の怪童丸を見て、憧れてくれるお子さんがいらっしゃれば、鬘を変えた甲斐がありますね。

『山姥』右より山姥=中村時蔵改め萬壽、怪童丸後に坂田金時:初舞台中村梅枝(小川大晴)

『山姥』右より山姥=中村時蔵改め萬壽、怪童丸後に坂田金時:初舞台中村梅枝(小川大晴)

ーー歌舞伎俳優の方が、しばしば「物心がついた時には役者に憧れていた」とお話しされるのを見聞きしますが、大人たちが場を作ってあげている部分が大きいのですね。

曾祖父の代からうちに仕えてくれていた、中村時蝶さんというお弟子さんが常々言っていました。「子供は舞台に出るだけで仕事は終わり。それで子どもが良く見えなかったら、周りの大人が悪い」。「子どもは怒るな。怒ると芸が小さくなるから」と。ですので元気に出て大きな声で台詞を言えればいいと思っています。

また、息子に関しては、大きくなった時に歌舞伎役者以外になりたいものがあるなら、役者にならなくていいとも思っています。ただ歌舞伎役者の家に生まれた以上、歌舞伎役者になる、という選択肢は残しておいてあげたい。だから稽古事はさせています。なんの稽古もしていなくては、いくら歌舞伎の家に生まれても「なりたい」と言われてもなれるものではないので。

ーー梅枝さんは、歌舞伎役者以外でなりたいものはありましたか。

それがね……なかったんですよ。小さい頃から稽古事に通い、楽器の演奏や日本舞踊は嫌いではなかったけれど歌舞伎を見るのは好きではなかったんです。周りは当然役者になるものだと思っているので、同級生からは「役者になるんでしょ?」と言われ続けます。高校1年で久しぶりに出させていただいた舞台が、(市川)團十郎のおにいさんが新之助時代の最後の舞台、『十六夜清心』でした。白塗りに衣裳と鬘で出てみたら嫌じゃなかった。この道しかないかな、と思っちゃったんですよね。

父は大晴に、「梅枝の名前を継がせたい」と思っていたんですよね。ということは、僕がもし歌舞伎の道を選んでいなかったら、多分父は傷ついたはず。当時どこまで考えていたかは自分でも覚えていませんが、色々なことを含めて高校生の時に「歌舞伎役者になります」と言ったのだと思います。

ーー六代目時蔵さんとなられてからのご活躍も楽しみです! 時蔵という大きなお名前にプレッシャーはありますか?

毎月毎月舞台に出させていただいていますが、何のプレッシャーもない舞台なんてありません。プレッシャーが力になる、なんてことは全くなくて、やはりそれは自由を奪うものだと思っています。でも、プレッシャーを跳ね返せた時には役者としてその分大きくなれることも分かっています。『阿古屋』で経験して学びました。

ーー梅枝さん、内面はご自分が思うよりも熱いのではないでしょうか。

いいえ、冷めています。

ーー聞いているこちらが、勝手に熱くなってるだけでしょうか。

そうです、僕はずっと冷静に喋ってます(笑)。

歌舞伎座『六月大歌舞伎』は、2024年6月1日より24日までの上演。

 

取材・文・撮影(ビジュアル撮影時・会見時)=塚田史香

公演情報

『六月大歌舞伎』
日程:2024年6月1日(土)~24日(月)
会場:歌舞伎座
 
【休演】11日(火)、17日(月)

昼の部 午前11時~
 
川村花菱 作
齋藤雅文 演出

一、上州土産百両首(じょうしゅうみやげひゃくりょうくび)
 
正太郎:中村獅童
牙次郎:尾上菊之助
宇兵衛娘おそで:中村米吉
みぐるみ三次:中村隼人
亭主宇兵衛:松本錦吾
勘次女房おせき:市村萬次郎
金的の与一:中村錦之助
隼の勘次:中村歌六

二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
所作事 時鳥花有里(ほととぎすはなあるさと)
 
源義経:中村又五郎
傀儡師種吉:中村種之助
鷲尾三郎:市川染五郎
白拍子伏屋:尾上左近
白拍子帚木:中村児太郎
白拍子園原:中村米吉
白拍子三芳野:片岡孝太郎

六代目中村時蔵 襲名披露狂言
三、妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)
三笠山御殿
劇中にて襲名口上申し上げ候
 
杉酒屋娘お三輪:中村梅枝改め時蔵
漁師鱶七実は金輪五郎今国:尾上松緑
入鹿妹橘姫:中村七之助
おむらの娘おひろ:中村梅枝
官女桐の局:中村隼人
官女菊の局:中村種之助
官女芦の局:中村萬太郎
官女萩の局:中村歌昇
官女桂の局:中村獅童
官女柏の局:中村錦之助
官女桜の局:中村又五郎
官女梅の局:中村歌六
烏帽子折求女実は藤原淡海:中村時蔵改め萬壽
豆腐買おむら:片岡仁左衛門
 
 
夜の部 午後4時30分~

曲亭馬琴 原作
一、南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん)
円塚山の場
 
犬山道節:中村歌昇
犬村角太郎:
中村種之助
犬坂毛野:
中村児太郎
犬川荘助:市川染五郎
犬江親兵衛:尾上左近
犬田小文吾:中村橋之助
犬塚信乃:中村米吉
犬飼現八:坂東巳之助

初代中村萬壽 襲名披露狂言
二、山姥(やまんば)
五代目中村梅枝 初舞台
劇中にて襲名口上申し上げ候

山姥:中村時蔵改め萬壽
山樵峯蔵実は三田の仕:
中村芝翫
怪童丸後に坂田金時:
中村梅枝
源頼光:
中村獅童
白菊:
中村梅枝改め時蔵
猪熊入道:
中村萬太郎
渡辺綱:
中村陽喜
卜部季武:
中村夏幹
源賢阿闍梨:
中村錦之助
平井保昌:
中村又五郎
多田満仲:
中村歌六
藤原兼冬:尾上菊五郎

河竹黙阿弥 作
新皿屋舗月雨暈
三、魚屋宗五郎(さかなやそうごろう)
初代中村陽喜
初代中村夏幹 初舞台
 
魚屋宗五郎:中村獅童
女房おはま:
中村七之助
丁稚与吉:
中村陽喜
丁稚長吉:
中村夏幹
召使おなぎ:片岡孝太郎
鳶吉五郎:尾上松緑
小奴三吉:
中村萬太郎
磯部主計之助:
中村隼人
菊茶屋娘おしげ:市川男寅
浦戸十左衛門:坂東亀蔵
父太兵衛:河原崎権十郎
菊茶屋女房おみつ:
中村魁春
 
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