神奈川県民ホールが開館50周年記念オペラシリーズVol.2として、S・シャリーノ作曲『ローエングリン』を上演

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2024.5.31
神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.2 サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』

神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.2 サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』


2024年10月5日(土)・10月6日(日)神奈川県民ホール 大ホールにて、神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.2 サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』が上演されることが決定した。

2022年に他界した、神奈川県民ホール名誉芸術総監督・一柳慧氏が、本シリーズについてこのように記した。 

~ 神奈川県民ホール名誉芸術総監督・故一柳慧の言葉 ~

令和7年に迎える神奈川県民ホール開館50周年を機に、新たな舞台芸術作品を創っていこうというプロジェクトの一環として企画いたしました。タイトルこそ「オペラシリーズ」と冠しておりますが、私がめざしているのは、これまで皆さまが見聞きされてきた「オペラ」ではありません。

今私たちは、コロナ禍や戦禍、気候変動に起因する災害など、困難が多く、先が読めない時代を生きています。しかし、芸術はこれまでの歴史の中においても「創造する力」によって時代を切り拓く糸口をつかんできました。先が読めないからこそ、従来のジャンルや形式といった既成の考え方にとらわれることのない「自由な発想」を堅持したい。「オペラ」についても、従来の考え方を吟味し、未来志向での創造をめざしたい。そうした活動の中にこそ、芸術の希望がある、と私は考えています。


神奈川県民ホールは、連続企画の第1弾として、22年10月にR.ウィルソン/P.グラス『浜辺のアインシュタイン』を上演した。平原慎太郎(演出・振付)、キハラ良尚(指揮者)を中心に、これからの音楽界や舞踊界を牽引する若い力が結集し、日本初演から実に30年ぶりとなった新制作上演は、革新的なステージであったと大きな支持を得ることができた。

サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』の上演は、一柳が推進した最後のプロジェクト。私たちが抱えている様々な現代性と共に、悩みながらも明日を指さし、一歩先へ進むための仮説に挑んでいきたい。劇場は豊かで楽しい生きる力となるインフラであり、劇場芸術によって、人知を超えた目に見えない大きなものと、かき消されてしまいがちな目には見えない小さな声を現出させることができると信じて、今回の上演に取り組む、と神奈川県民ホールは伝えている。

なお、本公演の指揮は杉山洋一、エルザ役は橋本 愛が務める。

沼野雄司(神奈川県民ホール・音楽堂 芸術参与) コメント

~ 月夜と瓦礫 ~

この世の中には二種類のものがある。ひとつは確固とした輪郭と重みを持ち、硬い殻に覆われたもの。もうひとつは、おぼろげな輪郭のなかで常にかたちを変えてゆく、壊れやすくも儚いもの。
イタリアの作曲家、サルヴァトーレ・シャリーノが扱うのは、常に後者である。そこではあらゆることが曖昧なまま推移し、夢と現実のあいだをふわりと浮遊する。そのもっとも顕著な例がオペラ「ローエングリン」だろう。

決して名を問うてはいけない白鳥の騎士の伝説。どこか日本の「鶴の恩返し」にも似た話だが、この物語をロマンティックなオペラとして提出したワーグナーに対して、劇作家ラフォルグは徹底的にそれを茶化した短編を書いた。シャリーノがオペラのテキストの土台に据えているのは、この短編である。しかも、なんと彼は登場人物をヒロインのエルザひとりにしてしまった。

伝説→ワーグナーのオペラ→ラフォルグの短編、という連鎖が、ただエルザというひとりのなかに封じ込められているわけで、当然の成り行きとして、物語はバラバラに解体されている。ただ「さびしい」「おかしい」「くるしい」「いとしい」「くやしい」といった小さな感情の断片が、声にならない声として、途切れ途切れに響くのみ。普通の人から見たら、これは狂気にしか感じられないだろう。
しかし、月夜のなかでさまようエルザは必死なのだ。彼女は、この世界のなかで壊れやすい何かをつかもうとしながら、失敗し続ける。その過程を描くことがオペラの目的だと言ってよい。

オペラの前に演奏されるシャリーノの近作「瓦礫のある風景」も、基本的にはよく似た構造を持っている。ショパンをはじめとする音楽史のさまざまな断片——すなわち瓦礫——が散乱するなかで、まるで自然の音のような、あるいは雑音のような響きが鳴りつづける。しかし注意して耳を傾けるならば、そのなかに一筋の叙情が流れていることが感得されよう。

2024年10月、横浜。月夜のなかに瓦礫がうっすらと輝く風景を、ぜひ観にきてほしい。

公演情報

神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズ Vol.2
サルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』
 
【日時】
2024年10月5日(土)17:00 開演(16:30 開場)
2024年10月6日(日)14:00 開演(13:30 開場)
【会場】神奈川県民ホール 大ホール
 
公演概要
『瓦礫のある風景』(2022年)[日本初演]<約20分>
Salvatore Sciarrino:Paesaggi con macerie(2022)per ensemble
1.Vento e polvere 2.Frantumi 3.Cancellazione
初演:2022年11月3日 ヴィリニュス(リトアニア)
作曲:サルヴァトーレ・シャリーノ
指揮:杉山 洋一
 
―休憩 20分(予定)―
 
『ローエングリン』(1982-84年)[日本初演/日本語訳上演 *一部原語上演]<約45分>
 Salvatore Sciarrino:Lohengrin(1982-84)Azione invisibile per solista, strumenti e voci
原作:ジュール・ラフォルグ
音楽・台本:サルヴァトーレ・シャリーノ、修辞:大崎 清夏、演出:吉開 菜央・山崎 阿弥
初演:1984年9月15日 カタンツァーロ(イタリア)(初版初演:ミラノ 1983年1月15日)
作品構成:プロローグ、第 1~4 場、エピローグ
指揮:杉山 洋一
出演:エルザ役:橋本 愛
 
[演奏]●ローエングリン出演 ◆瓦礫のある風景出演

成田 達輝 ●◆(ヴァイオリン/コンサートマスター)、百留 敬雄 ●(ヴァイオリン)
東条 慧 ●(ヴィオラ)、笹沼 樹 ●◆(チェロ)、加藤 雄太 ●◆(コントラバス)
齋藤 志野 ●◆(フルート)、山本 英 ●(フルート)、鷹栖 美恵子 ●◆(オーボエ)
田中 香織 ●◆(クラリネット)、マルコス・ペレス・ミランダ ●(クラリネット)
鈴木 一成 ●(ファゴット)、岡野 公孝 ●(ファゴット)、福川 伸陽 ●(ホルン)
守岡 未央 ●(トランペット)、古賀 光 ●(トロンボーン)、新野 将之 ●◆(打楽器)
金沢 青児 ●(テノール)、松平 敬 ●(バリトン)、新見 準平 ●(バス)
山田 剛史 ◆(ピアノ)、藤元 高輝 ◆(ギター) 
 
[県民ホール・音楽堂 芸術参与]沼野雄司 [名誉芸術総監督] 團伊玖磨、一柳慧

【主催】神奈川県民ホール(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
【後援】イタリア文化会館
【助成】文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|
 独立行政法人 日本芸術文化振興会
 公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション
 公益財団法人 朝日新聞文化財団
【協力】株式会社 東京コンサーツ、合同会社 オフィス山根

【料金】全席指定(税込)
 開館 50周年記念割引 5,000円
(S席エリア/1 階前方、お取り扱いはかながわのみ・枚数限定)
 SS 席:10,000円、S 席:8,000円、A 席:6,500円
 学生席:4,000円(24歳以下)
【発売日】KAme(かながわメンバーズ)先行発売:6月8日(土)
一般発売:7月7日(日) 
 
 
【託児サービス】予約:イベント託児マザーズ 0120-788-222 (土日祝日を除く 10 時~12 時/13 時~17 時)、9月27日(金)までに要予約
託児料:お一人につき 2,000円 
 

※就学前のお子様は、ご入場いただけません。
※やむを得ない事情により、出演者が変更になる場合があります。

イベント情報

神奈川県民ホール開館 50周年記念オペラシリーズ Vol.2 S.シャリーノ作曲『ローエングリン』公演プレ講座
舞台芸術講座
マエストロ・サロン・レクチャー

 『耳の劇薬―あなたもハマる S.シャリーノのささやき』

【日程】2024年8月31日(土)
【会場】神奈川県民ホール6F 英一番館《Web 配信あり》

【概要】
音楽や楽器、芸術についてもっと知りたい!そんな知的好奇心を刺激し、常に未知なる世界への扉を開き続ける神奈川県民ホール「舞台芸術講座」シリーズ。今回は、10月5日、6日に神奈川県民ホール大ホールで上演するサルヴァトーレ・シャリーノ作曲『ローエングリン』のプレ企画として、「音響の魔術師」の異名をとるシャリーノの魅力、その音楽世界の仕組みを解き明かします。
講師には、シャリーノと多年に渡る親交を持ち、今回は『ローエングリン』公演の指揮を務めるミラノ在住の指揮者・作曲家の杉山洋一を迎え、神奈川県民ホール・神奈川県立音楽堂の芸術参与として、公演の仕掛け人のひとりである音楽学者の沼野雄司が進行を務めます。

 
【出演者】講師:杉山 洋一(作曲家、指揮者)、進行:沼野 雄司(県民ホール・音楽堂 芸術参与)
【主催】神奈川県民ホール(指定管理者:公益財団法人神奈川芸術文化財団)
【助成】文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業)|
独立行政法人日本芸術文化振興会

※就学前のお子様は、ご入場いただけません。
※やむを得ない事情により、出演者が変更になる場合があります。
*神奈川芸術文化財団 社会連携ポータル課連携事業
*詳細は決まり次第 Web サイトで発表いたします。 
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