「何があっても止まらない」ヤユヨ、新曲「エス・オー・エス」から始まる結成5周年イヤーの快進撃
ヤユヨ リコ(Vo.Gt) 撮影=ハヤシマコ
2021年より毎年8月4日=ヤユヨの日に行っている自主企画ライブを、今年は初の東阪2会場で開催。その『やゆヨ!vol.4 ~西から東へお願いしまぁぁぁあす!~』のアンコールでお披露目されたのが、8月7日配信のヤユヨの新曲「エス・オー・エス」だ。テレビ朝日の音楽バラエティ番組『ダウ★ツーマン』8月度エンディングテーマとなった今曲は、70年代風のヴィンテージロックに現代のSNS社会へのメッセージがピリリと効いた、新旧洋邦ハイブリッドなラブソング。さらには、ABCテレビ他で放送中のドラマ『シュガードッグライフ』のエンディングテーマに「ふたり曜日」を書き下ろし、10月より新たな全国ワンマンツアー『ON/OFFツアー2024』を、バンドセットの「〜オン!ガク編〜」と、アコースティックセットの「〜オフ!とん編〜」の2形態で実施。同ツアーの各公演では、「エス・オー・エス」や未発表曲「ジャーニー」等のバンド音源とアコースティック音源を収録した、会場限定盤『ON/OFF』も販売されるとのこと。はな(Ba.Cho)の体調不良による一時離脱も何のその、濃密な結成5周年イヤーを駆け抜けるリコ(Vo.Gt)に、「エス・オー・エス」の制作秘話からバンドの現在地までを語ってもらった。
みんなに元気になってほしくてライブをやってるのに、
私たちがめっちゃパワーをもらいました
――今年2月にリリースされたミニアルバム『BREAK』、それに伴う全10公演の『真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024』は新体制で気合も入ったツアーだったでしょうし、SNSを追っていても充実していたのが伝わってきました。
『BREAK』を引っ提げたツアーだったんで、自分の殻を破ることを意識してセットリストを組んだり、3人それぞれに見せ場があって。例えば私は、ツアーの途中から「チョコミンツ」という曲でキーボードを弾くようになったり……遊びと言えば遊びの要素ですけど、新しく挑戦すること、ライブを楽しむ大切さを感じたので、内容的にも充実した10日間でしたね。それを楽しんでくれるお客さんの顔も見えて、もう怖いものがなくなりました(笑)。正直、「しらけちゃったらどうしよう?」とかマイナスな面も考えてはいたんですけど、自分たちからは不安な表情は見せず、失敗してもそれはそれで面白いし、挑戦することを恐れず……全部がうまくいったわけじゃないけど、挑戦できて良かったなと思います。
ーーツアーを通して『BREAK』の答え合わせができたと。僕が観た5月の大阪・LIVE SQUARE 2nd LINEのライブは2本目だったので、まだ不安がいっぱいという様子でしたけど。
やっぱりライブを重ねることで良くなったというか、毎回反省して「ここはもっとブラッシュアップしよう」とか、いろいろ話し合いながら一日一日、自分たちのライブが変わっていくのが分かったので、それも楽しかったですね。MCも、10日間過ごしていく中で心が出来上がっていって、自分の本当に言いたいことが見えてきて……ツアーの最初の頃は、伝えたいことはあっても探り探りだったんで。最終的には「ライブはこうせなあかん」「セットリストはこうあるべき」とかにとらわれず、お客さんを楽しませるのはもちろん、自分たちも楽しめたなと思います。
ーーいいツアーだったのは今の表情を見ても明白ですね。特に印象的だった箇所はあります?
福岡はよくが即完してたんですけど、今回はソールドアウトには至らなくて。でも、実際に行ってライブをしてみたら、私たちの音楽が好きで聴いてくれてるのが一人一人から伝わってきて……今までで一番盛り上がったんちゃうかなと思うぐらい会場が一つになって満たされた、印象深いライブになりました。去年までとは全然ムードが違ってビックリしましたね。福岡までの道のりは長旅なので体力的にしんどい部分もあるんですけど、そんなことも全部忘れちゃうぐらい、ただただ楽しかったです。みんなに元気になってほしくてライブをやってるのに、私たちがめっちゃパワーをもらいましたから。全箇所ソールドアウトさせられなくて悔しいなとは思うんですけど、今までの全国ツアーよりも、お客さんの反応がすごく良かったのがうれしかったな。
ーー頼もしい話ですね。先日発表された、はなさんの体調不良による休養も、今のヤユヨなら乗り越えられそうですね。
早く良くなるといいな。ヤユヨは何があっても止まらないので。
私の歌い方や声は、70年代とか古めの音楽の雰囲気に合うんじゃないかと
ーーバンドが止まらないのをライブでもリリースでも見せていくということで、8月7日には新曲「エス・オー・エス」が急きょ配信されました。
はやりのシティポップだったり、今までやってきたロックなアレンジともまた別のことに挑戦したいなと思ったとき、私の歌い方や声は、70年代とか古めの音楽の雰囲気に合うんじゃないかという話になって、言われてみれば確かにそうかもと。意外とやってこなかった曲調だし、個人的にもSuperflyとか、70年代の影響を感じさせるアーティストが好きなんで。でも、歌詞は今どきのキャッチーさ、SNSでも目に留まる分かりやすさも欲しいね、みたいなところからできたのが「エス・オー・エス」ですね。
ーーコーラスワークのオールディーズっぽさも含め、まさに新旧洋邦ハイブリッドな仕上がりです。
この曲のリファレンスとしては、リンダ・ロンシュタットの「イッツ・ソー・イージー」とかを聴き込みました。ウワモノをあんまり入れなかったり、リズムもずっと同じノリで、音作りもシンプルというか、今とは違う間があるのを意識して。コーラスワークは、Bメロを特に参考にしつつレコーディングしましたね。あと、この時期は70年代のヴィンテージロックを聴きながら曲を作っていたんですけど、タンバリンが重要だと気付いて練習するようになって。その辺も手応えがあるので注目してほしいな。
ーー音像も独特で、スタジオライブをそのまま録ったようなローファイ感がありますね。
そうそう! エンジニアさんにも「ローファイな感じでやりたいんです!」って説明して、ミックスしてもらいました。ハードスケジュールで切羽詰まりながら作りましたけど、今回はアレンジをしっかり練ることで、具体像が見えていたのでやりやすかったですね。ゴールを決めずに曲について探っていくこともありますけど、サポートドラムの(石川)ミナ子さんも含めてみんなでまとまって向かっていけたのは、いい作り方だったと思います。
SNSで話題になりそうなことを、そろそろ言わなきゃねって(笑)
ーーただ、ラブソングにも関わらず、サビのフレーズが<反吐が出そうだよ>というのが強烈なインパクトで(笑)。
SNSで話題になりそうなことを、そろそろ言わなきゃねって(笑)。ただ、私もメンバーもリサーチ感覚でSNSを見るし、公式のアカウントとかも動かしてるけど、プライベートで何かを載せたりするのには積極的じゃないから、SNSにはちょっと壁があって。
ーー心の中でもう一人の自分が常に「誰が興味あんねん」って語り掛けてきますからね(笑)。
そうなんですよ!(笑) 。わざわざ言わなくてもいいことを、何でもかんでもSNSに書いちゃえる人っているじゃないですか? 「誰がそんな言葉を聞きたいねん」と思うような愚痴を並べる人もいる。でも、それは私たちがSNSに入り込めてないからで、周りの同級生とかを見ていたら普通に使いこなしてるし、取り残された気持ちにもなるんです。だから、誰にも言えない悩みを何でもいいから吐き出したいとき、それをSNSにパッと落とせる人をうらやましいなとも思う。そこからSNSと言う言葉を使って曲を書いてみようかって。
ーーなるほど、「エス・オー・エス」のメッセージの起点はラブソングというより、むしろSNSだったんですね。
そうですね。SNSに救いを求めてる人って結構いるのかなって。でも、それができずに嫌やなと思うことをため込んでいる人もいる。私たちは後者のタイプだと思うので、そういうときによりどころになれる曲を作りたかったのもありましたね。
ーーちなみに<反吐が出そうだよ>は、仮歌のデタラメ英語の空耳的に出てきた言葉とか?
むしろ<反吐が出そうだよ>が先にあったんですけど、ラスサビとかアウトロのリフレインでずーっと<反吐が出そうだよ>って言い続けて終わる曲はヤバいなと思って(笑)。今回はせっかく洋楽をリファレンスに持ってきたのもあるから、<反吐が出そうだよ>に聴こえる英語のフレーズを作れないかなと、<hello guy! my dead soul is tired...>を……。
ーー逆に日本語からの空耳で英語だったとは!(笑) あと、恋愛において「女は上書き保存、男は名前を付けて保存」と言いますけど、「エス・オー・エス」で描かれている世界線は、女性の方が引きずっている立場で。
私が書く曲って、「もうええわ、次の恋で幸せになったる!」みたいなマインドの方が多いと思うんですけど、サビの印象を強めたかったのもあって、ストーリーとして今回は引きずり系女子を演じてみました(笑)。一途というか、まだ可能性を信じてる、みたいな。
ーーリコさん自身は、引きずる or 引きずらないタイプ?
どれぐらい好きでいたかにもよりますけど、引きずったとしても、あるときを迎えると気持ちがプツンと切れます。何がきっかけかは分からないけど(笑)。
やっとヤユヨのボーカリストになれた
ーー昨年もメンバーの脱退や上京もあり激動でしたが、今年の上半期を終えてどうです?
『真面目にぶっ跳べファンキー!ツアー2024』で、やっとヤユヨのボーカリストになれた気がしました。それまではメンバーに「バンドの顔なんやから」とか言われても、ずっとしっくりきてなくて。でも、バンドのやりたいことや曲を、歌以外のMCだったりパフォーマンスでも表現できているのか? 自分が一番動けるセンターにいるからこそ、そういう役割を担っていると感じたし、いつも勉強させてもらってる先輩バンドのボーカルのすごいなと思う部分を取り入れつつ、着実に一歩進めたツアーだった。ライブなんか音楽で伝えるもんやろと思ってたんですけど、自分の中から出てくる言葉で場を盛り上げたり、お客さんの心を動かすことも大事なんやなって。そういうことも考えながら、今後はライブを作っていきたいなと思いました。
ーーリコさんが覚醒し始めたら、ヤユヨもどんどん変わっていけそうですね。
強くなりたいですね。日々ポジティブなことばかりじゃないですけど、ちゃんと自分たちの力でやっていけるように。「エス・オー・エス」は聴いた後にスッキリするというか、誰も自分を分かってくれへんという気分になったら聴いてほしいし、「ホンマに独りぼっちやな……」みたいな感覚に陥って頼れる場所がないとき、そういう孤独感を埋める曲になればいいなって。8月4日のヤユヨの日のアンコールで、会場限定盤『ON/OFF』をリリースすること、10月からバンド編とアコースティック編でツアーを回ることを発表したので、今度はまた新しいヤユヨでみんなに会いに行けるかなって思ってます!
取材・文:奥“ボウイ”昌史 撮影:ハヤシマコ
リリース情報
2024年8月7日(水)配信リリース
ツアー情報
〜オン!ガク編〜