山本耕史、およそ26年ぶりのマーク役に準備万端「いいものを届けられる」 全編英語上演、日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』が開幕

レポート
舞台
2024.8.21

初日を前に行われたゲネプロを観た。

まず、改めて『RENT』について振り返っておきたい。1830年ごろのパリの下町を題材にしたオペラ『ラ・ボエーム』をベースに20世紀末のニューヨーク、イーストヴィレッジに舞台を置き換え、当時の若者の生き方や世相を描いた作品。貧困やエイズ、ドラッグ、同性愛といった生々しい問題に直面しつつ、愛や友情を信じて、夢に向かって輝き続けようとする若者たちの姿が、バラエティ豊かな楽曲によって魅力的に描かれている。

作詞・作曲・脚本を担当したジョナサン・ラーソンは、1996年1月プレビュー公演の前日に35歳の若さで亡くなってしまうのだが、彼が生み出した『RENT』はオフ・ブロードウェイのニューヨーク・シアター・ワークショップで初演され、たった3ヶ月でブロードウェイのネダーランダー劇場に進出。そして、ピューリッツァー賞ドラマ部門をはじめ、トニー賞ミュージカル部門作品賞、脚本賞、作曲賞、助演男優賞の4部門を獲得する。ジョナサンはブロードウェイでの成功を夢見て、ニューヨークで暮らし、日々アルバイトをして食いつないでいた。友人をエイズで亡くすなど、自身の経験を通して7年という時間と魂をかけて作り上げたミュージカル。彼自身はその成功を目の当たりにはできなかったが、彼の遺志を継ぎ、今も世界中で上演されている作品である。

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

今回はオリジナル演出版で、全編英語上演(上手と下手に日本語字幕あり)。初の日米合作ということで、来日キャストに加えて、山本耕史クリスタル・ケイがカンパニーに参加しているという点が1番の特徴と言える。

日本版初演・再演でマークを演じている山本だが、それからおよそ26年の時が経過していること、何より全編英語ということで、彼にとっては全くの新しい挑戦であったと思う。しかし、山本は期待通りにやってくれた。やや上から目線で恐縮だが、ゲネプロ中にセリフを言い澱むことはなかったし、「ネイティブスピーカー」とは言い難いのかもしれないが言葉の壁を感じさせず、確かにマークとして舞台上にいてくれた。その歌唱力と芝居はカンパニーの中でも光っていて、俳優としての力量を感じずにはいられない。最近は映像作品でも印象的な役を演じている山本だが、こんなにチャレンジングな舞台であっても、ふと“遊び”や“小ネタ”を挟んでくる姿を見ると、彼はやはり「演劇人」だなと思ってしまう。

そして、モーリーン役のクリスタル・ケイも素晴らしかった。ネイティブスピーカーということで言語に関してのストレスはないし、歌唱力も抜群だし、破天荒だけれど実はとても人間的なモーリーン役がぴったり!「Over the Moon」というあの奇抜なパフォーマンスも、不思議と聞き入ってしまったし、その立ち居振る舞いからもモーリーンがモテる理由が分かった気がしたし、とてもハマり役だった。

このように、個人的には山本とクリスタルが海外キャストに“馴染む”以上に、カンパニーを牽引しているように思えて、日米合作の面白みが感じられた。

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

日米合作ブロードウェイミュージカル『RENT』のゲネプロの様子

上演時間は1幕85分、休憩20分、2幕55分の計2時間40分(予定)。

舞台上には、金属パイプで組んだイントレが上手と下手に1台ずつあるほか、中央にはニューヨークの街並みを思わせる階段がある。イントレの下手側には音楽を奏でるバンド、上手側には“がらくた”で出来たクリスマスツリーのようなオブジェがそびえ立つ。上演中大きな転換はない比較的シンプルな構造で、照明効果などを駆使してパッチワーク的にシーンが切り替わる。また、誰か主人公がいるというものでもなく、「群像劇」のようなストーリー展開ゆえ、初見の人は理解が追いつかない部分もあるかもしれないので、人物関係や大まかなストーリーラインを頭に入れて観た方が楽しめるとは思う。そして、SPICEでは海外キャストのインタビューを展開しているので、そちらにも目を通していただけると、よりそれぞれの人物の造形が深まると思う。ぜひ多くの人に日米合作の『RENT』を観てほしい。

取材・文・撮影=五月女菜穂

公演情報

日米合作 ブロードウェイミュージカル『RENT』
 
【脚本・作曲・作詞】ジョナサン・ラーソン  
【演出】トレイ・エレット 初演版演出:マイケル・グライフ   
【振付】ミリ・パーク 初演版振付:マーリス・ヤービィ
【音楽監督】キャサリン・A・ウォーカー
【出演】山本耕史、Alex Boniello、Crystal Kay、Chabely Ponce、Jordan Dobson、Aaron A. Harrington ほか
*全編英語上演(日本語字幕あり)
 
【開催日/会場】
<東京公演>
日程:2024年8月21日(水)〜9月8日(日)合計23公演
会場:東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11F)
 
<大阪公演>
日程:2024年9月11日(水)〜9月15日(日)合計7公演
会場:SkyシアターMBS(JPタワー大阪6F)
 
【料金(税込・全席指定)】
S席16,500円、A席12,500円、B席9,500円、エンジェルシート8,000円
※エンジェルシートの販売方法につきましては公式HPにて後日お知らせいたします。
※大阪公演はB席の販売はなし
※未就学児入場不可 ※はお一人様1枚必要
※車イス席をご利用ご希望のお客様はS席をご購入いただき、東京公演はキョードー東京(0570-550-799)まで、大阪公演は梅田芸術劇場(06-6377-3800)までお電話にてご連絡ください。
※出演者の変更による払い戻しは致しません。

 
【主催】キョードー東京(東京・大阪)、梅田芸術劇場(大阪)
【後援】J-WAVE(東京)【企画制作・招聘】キョードー東京
 
【お問い合わせ】
<東京公演>キョードー東京 0570-550-799(平日11:00-18:00/土日祝10:00-18:00)
<大阪公演>梅田芸術劇場 06-6377-3800(10:00~18:00)
 
シェア / 保存先を選択