ニュウニュウ「20年のキャリアの中で最も特別な時間になる」 人生の感情と旅路を表現する『Lifetime』への思い
Rossini William Tell
――ニュウニュウさんも編曲を手掛けていますが、シューベルトのこの作品を編曲したリストは、数多くの作品を編曲しました。
リストは、私がめざす音楽家です。彼は200年前、多くの聴衆の喝采を浴びるスター・ピアニストになりました。私はステージの上で演奏するとき、リストのようなカリスマ性のある魅力的な演奏ができたらといつも思っています。
――このコンサートでは、ニュウニュウさんがアレンジした曲が多く演奏されます。アレンジの作業のとき、心がけていることがあったら教えてください。
編曲の際には、原曲の雰囲気をキープしながら、ピアノの豊かな音色を活かして新しい感覚を生み出すことが大切だと思います。だからこそ、私がオペラや歌曲をアレンジしたり、他の方がアレンジしたものを演奏する際には、もとのストーリーを調べたり、もとの歌詞を研究したりしています。そうすることで、ピアノ一台で演奏しても、オリジナル曲の持つ雰囲気をより表現できるように思うのです。
ピアノと他の楽器のデュオのために編曲するのもとても楽しいです。編曲したことない楽器のためにアレンジしているときは、まずその楽器の個性、音色、音域を研究するようにしていますし、各楽器独特の美しさのバランスが保てるように努めています。ピアノは、強いハーモニーの基盤を作ることができる数少ない楽器の1つなので、ピアノはハーモニーのサポートとして考えています。
――曲目の中には、オペラや歌曲など、ピアノ関係以外の音楽も含まれていますが、普段からよく聴いたり観たりされるのでしょうか。
『Lifetime』のコンセプトはとても大きくて広いので、選曲をピアノ曲だけにとどめたくないと思っていました。オペラや歌曲は、歌詞やタイトルがあるのでよりはっきりとしたストーリーや感情を伝えることができると思います。
実は、私の父は元テノール歌手なので、子どもの頃からオペラのDVDをたくさん買ってくれて、幼少からアニメを見るかのようにオペラを見始めていました。ピアノを演奏するときにも、「もっと歌うように演奏しなさい」と父に言われて育ってきたのです。
――オペラや歌曲にはテキストがありますが、ピアノなど器楽の演奏には言葉はありません。ニュウニュウさんにとって、ピアノはそこに言葉を発見していく営みのような存在ですね。
『Lifetime』の選曲の方法は、主観と客観の組み合わせです。
オペラや歌にはテキストがありますので、具体的で客観的です。例えば、グルックのオペラには、基本的に別れが描かれています。だから、そこから誰もが「別れ」を感じることができると思います。
それに対して、歌詞を持たない曲は、アーティストの主観が重要になります。今回のプログラムでは、【DEATH】(死)とつけた《ソング・フロム・ア・シークレット・ガーデン》は、よい例だと思います。人生の終わりは新たな始まりであるかもしれません。綺麗な音楽が流れる「シークレット・ガーデン」(秘密の花園)で再会できると、私は信じているのです。
Niu Niu, Cocomi - Løvland: Song from a Secret Garden (Arr. Niu Niu for Flute and Piano)
>(NEXT)各日、Cocomi(フルート/13日)、上野耕平(サックス/14日)がゲストで登場。共演への期待とは?