serial number12『Yes Means Yes』が開幕 舞台写真&作・演出 詩森ろばの開幕コメントが到着
内田慈
2025年1月10日(金)下北沢ザ・スズナリにて、serial number12『Yes Means Yes』が開幕。舞台写真ならびに、作・演出 詩森ろばの開幕コメントが到着した。
2018年スウェーデンで、「性的合意」のない性行為を禁じた世界初の法律「Yes Means Yes法」が施行された。しかし日本では、レイプなど悪質な性加害においてさえ、被害者側が泣き寝入りせざるえない現状がある。Yesと言えば奔放と言われ、Noと言うための教育も受けていない。この作品は、そんな過酷な日本の女性の状況を解像度高く描きながら、ひとりの女性が、自分にとって望ましい性のあり方を模索する姿を通じ、「Yes Means Yes」の真の意味を問いかける。
この女性を舞台・映像で活躍中の内田慈が演じ、それ以外のすべての役を男性キャストが演じることで、女性の孤独を浮き彫りにすると同時に、仄かな可能性を提示する。
ものがたり
楠見佳恵は結婚5年目。DINKSで子供はいない。
佳恵は大学生の頃に性によって傷ついた体験をもっており、それがその後の人生も深く阻害している。夫ともその点であまりうまくいっていない。
ある時期からできるかぎり避けていたがある夜、業を煮やした夫によって、不本意な性交渉を持つことになり、精神的に追い詰められる。
物語は、佳恵のここまでの人生を語るモノローグを縦軸として、男たちとの記憶のドラマ、現在の夫との生活、精神科でのカウンセリング、弁護士との面談、女友達にも理解してもらえない状況など追い詰められていく佳恵の心を丁寧に追う。
イエスと言えば性に奔放と思われ、ノーと言っても拒否と思ってもらえない。日本の女性が抱える性的合意に関する現状が浮かび上がる。
内田慈
内田慈
前方中央・内田慈/後方左から段隆作、諏訪珠理、大川泰雅、松本入真
作・演出:詩森ろば コメント
『Yes Means Yes』は、今、このタイミングでなければ存在しなかった作品です。
それは内田慈さんありきの企画だったからというのももちろん大きいです。内田さんのために作品を書きたいということを前提でスケジュールをお聞きしました。それが一昨年の夏で、どんな企画にしようと逡巡し、この作品の構想が浮かび、「性的同意」をテーマにした、演じるうえで気持ち的にも分量的にも大変な作品になるけれどもどうでしょう、と企画をお伝えしたところ、やります、という言葉とともに「それはもしかしてひとり芝居ですか?」と聞いてくれました。ひとり芝居でもやってもらえるんだ、と思い、限りなくひとり芝居に近いものになると思います、と答えました。そして、わたしは考え続け、ただのモノローグドラマではなくダイヤローグもしっかりと組み込んだ構想を考えつきました。そこからも紆余曲折あり、このストーリー、このスタイルの作品に辿り着いたのです。
4人の男性キャストはオーディションで選ばれました。
まるでこの作品のために待っていてくれていたかのような4人でした。
作品を書き上げて稽古に入る前も、稽古場でも、内田さんはじめとした5人で親密に作品作りをしました。テキストは何度も修正されながら、磨かれていき、演出はどんどんシンプルになっていきました。膨大なモノローグを抱える内田さんは稽古場でもずっと戯曲に集中していましたし、わたしたちも集中して、ただただ作品作りをしていました。ある意味ビジネスライク。なのにほんとうに親密で、あの12月の稽古場は、いつも、世界にわたしたちしかいないのではないかという特別な空間でした。一生忘れないと思います。
この作品にはとても厳しい性被害のシーンが出てきます。インティマシーコーディネーターの西山ももこさんに入っていただき、繊細にシーン作りをしたつもりですが、それでも俳優たちは心も身体もたくさん削ったと思います。通し稽古を一回したらもうその日はおしまい、なにもできない。通しが終わり舞台装置となったソファに呆然と座り虚空を見つめる俳優の姿を目撃したのも一度や二度ではありません。「大丈夫?」と声を掛けると、小さな声で、「稽古が楽しい」と小さな声で言ってもらったこともやはり一度や二度ではありませんでした。近くでこれまた疲れ果てて倒れている内田さんがハッと起き上がって「楽しいよね」と言ってくれたこと。それもたぶん一生忘れないでしょう。
今、この時、このメンバーでなければ、そしてスズナリというおそらく世界でも類を見ない緊密でありながら広がりのある空間を持つ小劇場でなければ、『Yes Means Yes』は存在しなかった。深い喪失の物語であると同時に、仄かな再生の物語であるこの作品が生れ落ちる瞬間に立ち会っていただけたら幸いです。
前方左から松本入真、内田慈/後方左から諏訪珠理、段隆作、大川泰
前方・内田慈/後方・段隆作
左から諏訪珠理、松本入真、内田慈、段隆作、大川泰雅
撮影=市川唯人
公演情報
●出演
諏訪珠理
大川泰雅
段隆作
●会場:下北沢ザ・スズナリ (東京都世田谷区北沢1-45-15)
●料金 (前売・当日共)
一般指定 5,000円(初日割4,500円)
一般自由ベンチ席 4,700円(初日割4,200円)
U 25指定 3,500円
U 25自由ベンチ席 3,000円
障害 3,000円
※障害、U25は劇団のみ取り扱い(要証明証提示)。初日割はございません。
※U25は各回限定数での販売となります。
※車いすでのご来場は劇場の機構的に難しいため、事前にご相談下さい。
※未就学児及び小中学生はご観劇いただけません。