オーストラ・マコンドー『影のない女』の見どころとは 寺中友将(KEYTALK)、清水みさと、山井祥子、朱里のオフィシャルインタビューが公開
オーストラ・マコンドー『影のない女』(左から)朱里、寺中友将、清水みさと、山井祥子
2025年3月24日(月)吉祥寺シアターにて開幕した、舞台『影のない女』のオフィシャルインタビュー記事が公開されたので紹介する。
■オフィシャルインタビュー
3月24日から31日まで10公演が行われる、舞台『影のない女』演出家の倉本朋幸さんを中心とした演劇「オーストラ・マコンドー」による舞台で、今回はKEYTALKの寺中友将さん、最近はサウナ関連で活躍している清水みさとさん、お笑いコンビ「エレガント人生」の山井祥子さん、スターダム所属の女子プロレスラー・朱里さんと、異色の4人がメインキャストを務めます。この4人に舞台の見どころなど、いろいろと伺いました!
「あらすじ」は一見難解ですけど、みんなで噛み砕いて分かりやすく表現しています!
ーーまずはお名前、役名、そしてどんな役なのかを教えていただけますか?
朱里:朱里です。役名は「妻」です。結婚をして2年になる夫がいるんですけど、その夫とはすれ違っていて……という感じなんですけど、現代の結婚している方、お付き合いをされている方の悩みとかとちょっと通ずるものがあるというか、共感できる部分がある役柄だと思います。
寺中友将:KEYTALKというバンドでギター/ボーカルをやってます寺中友将です。「帝」役をやらせていただきます。「帝」は、人間界で一番えらい皇帝で、愛する「妃」の影を手に入れたくて奮闘していくんですが、その中でいろいろな……今までのことやこれからのこと、人生のこととか、現代的に分かりやすく言うと子供が欲しいとか、そういう自分の願望があるんですけど、それは1人では叶わないものなので、そういうところも含めていろいろ悩みながら、旅の途中で感じながら、いろいろ困難を乗り越えていくという役柄ですね。
寺中友将
清水みさと:清水みさとです。私は「妃」の役をやっています。妃は人間界ではなく霊界の人物なんですけど、帝のことがすごく大好きで、性格は本当にすごく子供っぽいというか、とにかく自由なんです。思ったことは言うし、喜怒哀楽もよく出るので、今回の舞台の中でもその自由さは妃らしい部分じゃないかなって思います。あと、妃は影を持っていなくて、影がないと子供ができないんですよ。でも帝の子供がほしいので、影を探しに行くという。ディズニー作品みたいなファンタジーで、帝とラブラブなところはこの作品の中でも明るいシーンになっていると思います。
山井祥子:「エレガント人生」というコンビの山井祥子と申します。役名は「乳母」で、妃の乳母の役になります。劇中で2組夫婦がいて、私は乳母という立場で、ちょっとみんなと離れた存在なんですけど、その2組の夫婦の仲を引っかき回して物語を動かしていくような役になっています。いいヤツか悪いヤツかで言ったらたぶんいいヤツじゃなくて、みんなが見た時に「イヤなヤツだな」と思うかもしれないけど、ちょっと愛嬌があるような役でもあるので、何かそういう部分を皆さんに見ていただけたらいいなって思います。
清水:妻は人間界にいて「バラク」という夫がいて、帝と妃は霊界にいるんですよ。その2組の夫婦が出てくるんですけど、夫婦っていろいろあるよなっていう感じで。
朱里:私の夫婦はうまくいってないんです。
清水:逆に帝と妃はラブラブなんですけど、問題があって。みんなが問題を抱えていて、それを解決するためにそれぞれの旅に出ていって、それで何かを見つけていく話なのかなっていう解釈はしてるんですけど、何せストーリーが難しくて(笑)。
ーー確かに公開されている「あらすじ」を読むと、ちょっと難解ですよね。皆さんはそれを解釈して稽古を進めている感じですか?
清水:はい、読み合わせで「分からない」をなくすぐらい、しらみつぶしに話し合ったりしてますね。「ここはどうしてこう言ってるんだろう?」「ここでこの人はこういう気持ちなのか」とかっていうのを考えながら、細かく読んでますよね。
朱里:すごく細かくやらせていただいてます。
清水:とにかく「ここってどう思う?」とかみんなで話し合いながら進めています。倉本朋幸さんの演出が面白いなと思うところは、台本だけで意味を考えずに「これって何か別のことで考えたらどうだろう」という話をされるんですよ。設定が昔なので、よく分からないところもあるんですけど、それを現代の話に置き換えると、夫婦仲が悪いとか、「子供ができないってことか」ってけっこう簡単に思えて。そういう風にみんなで考えて、分かりやすい解釈を見つけながらやっていくのがすごく面白いんですよ。
朱里:ホワイトボードにみんなでいろいろ書きながら整理していってますね。
ーーちなみに、この中で舞台やお芝居が初めてという方は……。
寺中:僕はまるっきり初めてですね。
山井:私は吉本興行でやってる芝居の舞台は何度かあるんですけど、それ以外ではこれが初めてですね。
山井祥子
ーーでは、この中では寺中さんだけが本当に初めてという感じですね。最初がこれというのは……。
寺中:大変です(笑)。逆に初めてなので他と比べられないというのはあるんですけど、おそらく大変な方ではあるんだろうなと、何となく感じてはいますね。ただ、今は完全に「つらい」よりも「楽しい」が勝っていて、知らないことを知っていくのが本当に楽しいというスイッチが一番入っていて。それこそ、僕も最初は、なかなか話の内容が体に入ってこなかったんですけど、もう何回か読み合わせをしていって、話が細かく分かれてるので、「今日はここをやろう」という前に、先ほど2人が言った感じでみんなで話し合いをして、その場面をどういう場所にするかとかから細かく決めていくんですよ。
ーー場所というと?
清水:今回は大道具の背景とかがなくて、舞台に透明のアクリル板があるだけなんですね。でも物語の場面は分かれているので、それを想像してもらいながら話を進めるという感じなんです。
寺中:その場面の場所がどういう景色なのかとかを、写真とかを調べて、いろいろ具体的な絵をみんなで共有するという感じで。その上で、1人1人のキャラクターが「こういう時ってどう思ってると思う?」だとか、帝がこの時にどう思っているかということとかをみんなで共有しながらという感じで細かく細かく進めていっているので、どういう話なのかというのも今はすごく体に入ってきているんです。その入っていく感触も含めて面白いですね。
ーーなるほど。この取材は初日まで20日をちょっと切ったところですが、この時点での稽古の現状というのはどういう感じなんですか?
清水:今は動き回ってます。
朱里:動きをつけながら進めているという感じですね。
清水:先ほども言ったように、お客さんはすっごくシンプルな舞台上でこの壮大な物語を見ることになるので、動きをつけたりする中で、どこに何があるとか、そこがどんな感じかというのをみんなで分かるようにしているという段階です。
山井:家の中の間取りだったり、周りに何があるのかというのを、同じイメージにする感じですね。
ーー難しそう(笑)。
清水:難しいです!(笑)
山井:でも、皆さんそれぞえがどんどん役を理解していくと、メチャクチャ分かりやすくなってきて、光景も見えてくるんですよ。皆さんがどんどんその役柄の人になっていくから、それで私も「あ、乳母はこういう人なんだな」って思えてきて。だから私的には、本当にどんどん分かってきてるっていう段階なのかなという感じですね。
清水:分かります!
ーー難しいけど、今はすごくやりがいがありそうですね。
朱里:メチャクチャやり甲斐があるし、本当に楽しいです。
清水:楽しいです!
朱里:あと、動きが、自分の思ってるものとは違ったので、「あ、すごい動きするな」って思いました。
朱里
「妖怪歌詞飛ばし」が舞台に現れませんように!(笑)
ーー稽古はいつから始まったんですか?
清水:2月末ですね。ちょうど1ヵ月ぐらい期間がある計算になっています。
寺中:今話している時点では、そろそろ前半終了という感じですね。
ーーではここまで、前半としては手応えを感じていると。
朱里:すごく感じてます。
清水:面白いですよね。「こんな表現方法があるんだ!」っていうのと、「演劇ってこんなこともやっていいんだ!」って思えるような、可能性を感じる表現になってると思います。
山井:だからたぶん、見る人もそんなに難しいは感じないんじゃないかなと思います。文字であらすじとかを読むと、すごく難解な話だなって思うかもしれないんですけど、さっき朱里さんがおっしゃったようにみんなに何か共感できる部分とかは絶対見つかるようなお芝居なので、見ていて「分かんない!」みたいにはならないと思います。
清水:不思議なんですけど、そうなっているというか。
朱里:むしろ分かりやすいかもしれないですよね。
ーー稽古の中で、今、課題だと感じているところはありますか?
朱里:自分は舞台とかをずっとやってきている人間じゃなくて、本当に初心者みたいなものなので、動きとかそういう部分からいろいろ教えていただいてやっています。台本を読んだ時には「どういうことなんだろう?」って思ったりもしたんですけど、教えていただきながら自分の役にしていってるところですね。まだ、自分の中で「妻という役はこうだ」というものにし切れてはいないんですけど、稽古を重ねていくうちに、それをスッと入れられるようにしていけたらいいなと思っていますね。あと、細かいこともすごく言っていただいているので、その部分をしっかりやれるようにしていきたいなと思っています。
寺中:普段やっているバンドでの表現方法っていうのは、僕の中では基本的にギターを持って歌うということだったので、何も物を持たずに舞台上に立つっていうことが、かなりの違和感ではありまして。右手と左手の指でギターを弾くっていう動きはもちろんあったんですけど、腕を使ってお客さんにイメージを膨らませてもらうことだったり、姿勢を低くしたり自分の目線の動きだったりで物を探している感じを表現したりとかも含めて、道具を使わずにやるのが一番初めての感覚だなと思うんですよね。短い期間ですけど、この間にその感覚をできる限りしっかり身につけていきたいなと思っています。あと、歌詞を覚えるのとセリフを覚えるのってかなり近いと思うんですけど、僕は歌詞を覚えるのがメチャクチャ苦手なんですよ。
清水&山井:ええ~?
寺中:そうなんですよ! 「妖怪歌詞飛ばしが今日も現れた!」とかって言われてて。そのスイッチがこっちにも出なきゃいいなと思ってて。僕が歌詞を飛ばしても、曲は進んでいくじゃないですか。でも舞台では、セリフが飛ぶと全部が止まるじゃないですか。それが怖いっすね。誰かその場面で一緒に出ている人に何かうまいパスを出してもらうとか……それは半分冗談ですけど、課題というとそこなので、しっかりやっていきたいですね。
ーー「妖怪セリフ飛ばし」は出てもらっちゃ困りますからね(笑)。
寺中:はい(笑)。でも本番はライブと同じだと思うので、そういうところも含めてちゃんと伝えたいことが言葉に出てくるぐらい、自分の中に入ればいいなと思っています。
清水:私と帝はほぼ一緒にいるんですけど、課題は……私はまだまだ全然、探さなきゃなみたいなことがすごくあって。ただ私の場合はちょっとアクロバティックな動きのシーンとかもけっこう多くて、それは全然普段からやってるわけでも何でもないので、その動きを百発百中でちゃんとできるようになりたいっていうのは、まず基本的にありますね。でも、それを見せるためにやっているわけじゃないので、何とか自分のセリフとその時の感情とか表現したいことが、ちゃんと自分の動きに通じるように、セリフや感情をちゃんと理解して動きとくっつけられるようになりたいなって思います。今はまだ「ここ、どうだっけ?」とか「できない!」という感じで動きにとらわれていたり、セリフもまだ全然覚えられていないので、そこをまずしっかりやってから繋げれらるようにしたいと思います。それから、私も舞台はずっとやってましたけど、今回は5年ぶりなんですね。1月に別の舞台があったんですけど、本当に久しぶりにこの劇団の舞台に立たせてもらうので、そこはしっかり楽しめるように何かもっといろいろ考えていきたいです。自分の役だけじゃなくて、どういう物語なのかというのも、もっと把握していきたいなと思っています。
清水みさと
山井:私はふだんお笑い芸人をやっていて、劇場で2人でコントをやることはあるんですけど、たくさん人がいる中で、どういう動きをしていいかとかがよく分からなかったんです。コントだと相手は1人しかないんですけど、演劇では舞台上にたくさんいる人たちの視線を感じながら、その舞台の人間として動くというのがけっこう難しくて。お笑いは「笑いを取る」が一番大事なことなんですけど、舞台で物語を伝えるのって、自分だけでは作れないじゃないですか。極端な話、コントで私がボケだったら私だけが目立てばいいんですけど、チームプレーみたいなことには本当に慣れてなかったので、「私が私が」見たいにならないように頑張りたいですね。
ーー今回のキャストはプロレスラー、バンドマン、タレント&俳優、お笑い芸人と、立場の違う方々が揃っているところがすごいですよね。今、寺中さんと山井さんからは“本業”と比べてというお話がありましたが、朱里さんと清水さんはいかがですか?
朱里:私はプロレスラー17年目になるので、プロレスの動きは体に染みついているのですが、舞台は本当に全然違うことだし、初めてではないんですけどそんなにやっていた訳ではないので、分からないことだらけなんですが、全てが勉強で、吸収していくことばかりだなって思ってます。でもやっぱり楽しいなとも思います。もともと、10代の頃から「プロレスラーになる」じゃなくて「俳優になりたい」と思っていたので、こういうお話をいただいてすごくうれしくて、頑張りたいと思っています。プロレスと舞台の通じるものは、見ている方に届けること、何かを感じていただくというところはすごく似てる部分だなと、感じたりはしてます。
清水:私は今、自分でもちょっと肩書きが分からなくて(笑)。私は本当にただサウナが大好きで、最近はサウナのブームが来てサウナに関わるいろんなことをやっている感じなんですけど、少なくとも自分で「俳優です」とは名乗りたくないなと思って5年間過ごしてたんですよ。最近の私はサウナのことを書いたり、テレビでサウナの番組に出たり、サウナのモデルをやったり、サウナの服に関わったり、舞台とは何の関わりもないんですけど(笑)。イベントとかで人に見られる機会はあるんですけど、演じる必要がないことをずっとやっているんですよね。私は基本的に、自分以外にはなれないと思っていて、例えばテレビに出たりとか、モデルをやったりする時もこのままでやっているというのもあって。スイッチを押して変われる方もいると思うんですけど、私はそれができないんです。このままでやっている場所がふだんの仕事だとしたら、舞台は逆にスイッチを押す必要がある場所だと思っていて、演じる、舞台に立つという感覚は本当に久しぶりだったんです。1月に久しぶりに舞台に出た時に、「見られている」という感覚がすごく楽しかったのと、表現することって他のこととは全く違って、緊張感もあるけどすごく楽しいなというのもあったので、1月の時は「あ、舞台好きだな」って思えました。
ーー久しぶりでそう思えてよかったですよね。
清水:今回の妃役もけっこう自分に近いというか、私に当てて書いてくださってるなというのは思っていて、でも何かもう一つ、もっといろんなものを足して表に出るっていう感覚というか。それはふだんの仕事では絶対にやってないことなので。
ーーサウナでは自分じゃないものって必要ないですよね。
清水:はい、ただ汗かいてるだけなので(笑)。でもトークイベントとかやる時も、声を張ったりしないし、このままやってるタイプなので、たぶん切り替えられない人なんですよ。でも舞台っていう場所はそうじゃないものも必要になってくるというか、ちょっと非現実的な場所なので、それは刺激的ですし、いつもと全然違うみなさんと舞台に立てるのはすごく面白いと思っているし、これまでやってきた舞台では味わったことのない感覚があるので、楽しみです。
ーー逆に寺中さんと山井さんは、この舞台をやることで“本業”に生かせそうだなという部分はありますか?
寺中:それこそ今のところ、「逆に生かせないものは何だろう?」って思えるぐらいですね。この舞台を一体どういうものにしていくかって考えることもそうですし。台本を読むだけではなかなか出てこない映像とかイメージとかをを頭の中で作りながら、その中でセリフを発することによってどんどん伝わり方が変わっていくというのをすごく実感しているところなので、それは完全に歌にも通じるものがあるんだろうなというのがすごくピンときますし。それぐらい、今のところは全てが生かせる感じですね。一緒に演じる方との距離感だとか、そこの間に感じるものとかも、今のテーマとしてやっているところで、そういうものも演技の舞台だけじゃなくて音楽のステージの上でも、どういうものがあるのかというのを、試しに探してみたいなという気持ちもあるので、全てがつながっていくんじゃないかなと思っています。
山井:私の場合は、相方と2人でネタを作って、練習も作家さんとか入れずに2人だけでやっているので、誰かに台本を書いていただいたり、演出をつけていただくことはないので、本当に学びになることがすごく多くて。自分の世界だけでやってきたから自己流になってしまっていた部分があったんですけど、「こういうやり方があったんだ」とか「こういう時は体をこう向ければいいのか」とか、すぐに直結できるような部分がすごく多いので、来月あたりからコンビのネタがメチャクチャ面白くなってると思います(笑)。
ーーちなみに、ネタはお2人で書いてるんですか?
山井:そうです。でも私たちって本当に特殊な芸人で、舞台も呼ばれたら立つんですけど、基本的には毎日YouTubeでコントを配信しているんですね。あとTikTokとかインスタとかも全部やってるんですけど、それは全部2人で書いています。個人でやるものに関しては全部1人で、それぞれが考えてという感じです。
ーーでは、コンビでやるものにも1人でやるものにも、大きく影響しそうだと。
山井:そうですね。急にすごくリアリティが出るかもしれないです(笑)。
≫生きるためのヒントも得られるはず。複数回見てほしい!