《連載》もっと文楽!~文楽技芸員インタビュー~ Vol. 12 竹本千歳太夫(文楽太夫)
2025.4.16
インタビュー
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切語りとして理想を追求
2022年4月、太夫の最高位である切語りに昇格した千歳太夫さん。
「やっぱり責任は感じます。できっこないことはわかっているんですけど、こういうことをやりたいという姿勢だけは見せたいと思うんですよ。後輩にはそれだけを汲んでほしい。『本当はこれやりたかったけど、中途半端になってしまったから、あと、頼むね』と。つまりリレーです。理想の形があって、同じ理想を持って続いてほしいんです」
その理想を受け継ぐべき一人が、既に話に出ている弟子の碩太夫。小学校4年生から文楽研修生になる直前まで、地元・北海道の「さっぽろ人形浄瑠璃芝居あしり座」で太夫をしていた碩太夫は、文楽での初舞台から今年で8年。今、伸び盛りだ。
「彼の良いところは、浄瑠璃が好きそうなところ。彼だけではないけれど、後輩たちには“浄瑠璃に追いかけられる人”になってほしいです」
浄瑠璃に追いかけられる人、とはどういうことなのか?
「例えばドストエフスキーはずっと借金に追われていて、返済のために書いていたらしいです。それは天の思し召しで書かせたということなのでしょう。そのように、最初は浄瑠璃を追いかけて、やがては追いかけられる人になってくれたら。そうなろうと思ってなれるものではないし、なったところで本人にとっては地獄でしょうけれども、後に続く人々に何かを与えられるではあろうと思います。僕もそうなりたかったけれど、もうこの歳になったら追いかけるのが精一杯。出藍の誉れというふうになってもらいたいですね」
2025年2月、国立劇場文楽公演『妹背山婦女庭訓』芝六忠義の段より。 提供:国立劇場
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