《連載》もっと文楽!~文楽技芸員インタビュー~ Vol. 12 竹本千歳太夫(文楽太夫)
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「技芸員への3つの質問」
【その1】入門したての頃の忘れられないエピソード
師匠のお宅にあった梅酒の瓶をゴミだと思って、マンションの外の、ガスなどの配線があるところに置いちゃったんです。段ボールや何かをよくそこに入れて、収集の日に出していたんですよ。ゴミではなかったことがわかって、怒られて取り出しましたけれども。師匠に猿の腰掛けを麦茶と間違えて飲ませてしまったことも。それは師匠の奥さんのお父様である川口松太郎先生(※)のためのもので、食道がんを患われて以来、猿の腰掛けをお飲みになっていたらしいです。そうしたら師匠が『変な味がする』、師匠の奥さんが『あら、猿の腰掛けを出したんじゃないの?』。それは怒られませんでした。そういえば、師匠が心臓の薬を、ご自身もお持ちだったけれど『持っておいてくれ』と渡されたのですが、長い間使わなかったので、もういいだろうと思って捨ててしまったんです。そうしたら『あの薬は?』と言われて渡すことができず、『もういい』と怒られて。でも師匠がお持ちだったので大丈夫でした。
※川口松太郎(1899年10月1日-1985年6月9日) 小説家、劇作家。第一回直木賞受賞者。明治初期の人形浄瑠璃の世界を描いた『浪花女』や近松門左衛門の人形浄瑠璃作品『大経師昔暦』を下敷きにした『おさん茂兵衛』などの戯曲を執筆した。
【その2】初代国立劇場の思い出と、二代目の劇場に期待・妄想すること
朝日座には電気室や照明室のような、浄瑠璃を聴きながらぼうっとできる場所がありましたが、国立劇場にはなくて(笑)。でも、小劇場の音響は素晴らしかったですよ。場内がよく“締まって”。これは劇場の大きさとは関係がないんです。歌舞伎座はよく締まるとみんな言っていましたから。新しい劇場もそうであってほしいですね。
【その3】オフの過ごし方
芝居を見ますね。以前は好きなワーグナーを聴きに、聖地、バイロイト祝祭劇場に行っていました。ワーグナーに出会ったのは、文楽に入ってから。ビデオで見たのがきっかけです。オペラならイタリアだよ、という人もいますが、僕はダメ。イタリア・オペラではなくワーグナーを聴かなくては、(正攻法の)三段目を語ることはできませんぞ! なんてね(笑)。
取材・文=高橋彩子(舞台芸術ライター)
公演情報
会場:シアター1010
第一部 午前11時開演(午後2時30分終演予定)
第二部 午後3時15分開演(午後6時20分終演予定)
第三部 午後7時開演(午後8時15分終演予定)
※各部、休憩がございます。
芦屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)
加茂館の段
保名物狂の段
葛の葉子別れの段
信田森二人奴の段
第二部 (午後3時15分開演)
義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
伏見稲荷の段
渡海屋・大物浦の段
道行初音旅
第三部 (午後7時開演)
《文楽名作入門》
入門「名作『平家女護島』の魅力を探る」
平家女護島(へいけにょごのしま)
鬼界が島の段
(字幕表示がございます)
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
お店情報
03-3630-0697
東京都江東区富岡1丁目10-3