《連載》もっと文楽!~文楽技芸員インタビュー~ Vol. 12 竹本千歳太夫(文楽太夫)
2025.4.16
インタビュー
舞台
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兄弟子・嶋太夫の弟子になって
2002年に越路太夫は逝去。2005年に千歳太夫さんは八世豊竹嶋太夫の門下となる。越路太夫の弟子だった嶋太夫は27歳上の兄弟子にあたる。
「越路師匠の弟子だった頃、『下稽古を嶋太夫にやってもらえ』と言われてよく見てもらっていたんです。嶋師匠は、越路師匠がどう教えたかがわかり、それをできるように別のアプローチで教えてくれることもあれば、敷衍して更に教えてくれることもあって。頭の良い方でした。他の人への指導を見ていても、まずは少し難しいことを言ってそこまで来られるかどうか試してみて、できなかったら次は言い方を変え、別のところを直す。僕らは役がついたら、完璧にはできなくても舞台をやらなければならないわけですが、それができるような“拵え”をとても細かく教えていただきました」
嶋太夫の口癖は、その指導を象徴するものだった。
「一升枡に三升入れても米がこぼれるだけ。今の枡の中にすりきり一杯入るものを教えて、この枡が大きくなるのを待つ、と。稽古する方は、その技術のご縁ができるのを待つわけです。これは根気の要ることで、僕が自分は70を過ぎたら弟子が取れないと言ったのもここなんです」
ミュンヘン公演にて、嶋太夫師匠(前列左)と。後列中央が千歳太夫。 提供:竹本千歳太夫
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