熱量あふれる俳優たちの体を通じて平和への思いを馳せる タカハ劇団 第21回公演『帰還の虹』稽古場レポートが公開
(左)貞本裕弥役の田中亨、(右)藤澤元善役の古河耕史
2025年8月7日(木)~13日(水)座・高円寺、夏の劇場11 日本劇作家協会プログラムとして、タカハ劇団 第21回公演『帰還の虹』が上演される。この度、稽古場レポートが公開された。さらに、アフタートークのゲストが決定した。観劇とあわせて楽しもう。
高羽彩が脚本・演出・主宰を務めるプロデュースユニット「タカハ劇団」。その第21回公演『帰還の虹』が、戦後80年を迎える今年8月に上演される。『帰還の虹』の舞台は、太平洋戦争中の昭和19年の日本。国民の戦意を高めるための戦争画を描き、軍に重用されている画家・藤澤(古河耕史)のアトリエに集う人々が、時代に翻弄される姿を描く。今作では公募オーディションを実施し、幅広く活躍する実力派俳優たちが集結した。7月下旬、そんなカンパニーによる稽古の模様を取材した。
(左から)藤澤キヨ子役の護あさな、野間ちづ役の久下恵、田中亨、熊本泰輝役の津村知与支、内山十好役の吉田亮
タカハ劇団の稽古は、まず全員でのウォーミングアップから始まる。メンバーが固定されていないプロデュースユニットであるため、公演ごとにチームワークを培うことを重視しているからだ。この日の稽古では、会話を通じて協力するゲーム「ito」を行っていた。すんなり成功する場合もあれば、予想外の結果に終わる場合もあり、大いに盛り上がった。会話から互いの価値観が垣間見え、作品作りに必要な信頼感を高める一助となっていた。
護あさな
場が温まったところで、シーンごとの稽古に移る。この日の稽古は第7場から始まった。画家の内山(吉田亮)と熊本(津村知与支)が藤澤のアトリエを訪れるが、藤澤が不在で、やきもきする二人の問答が繰り広げられる。内山は比較的冷静だが、熊本は届いた手紙に焦り、言葉がまとまらないまま捲くし立てる姿がユーモラスだ。高羽のフィードバックでは、「(今の演技は)めっちゃ好きだったけど、ちょっとわちゃわちゃしすぎかな(笑)」と修正を促し、もう一度同じシーンを繰り返した。すると、津村が毎回細かな所作や台詞回しに変化をつけ新鮮なアプローチを見せ、吉田がそれを柔軟に受け止めたり受け流したりする様子が見られた。場数を踏んだ俳優たちの盤石な技術と引き出しの多さに脱帽した。
(左から)近藤逸治郎役の神保良介、津村知与支、吉田亮
野間孝則役の池岡亮介
休憩を挟み、第9場の稽古へ。このあたりから物語は終盤に差し掛かり、緊迫したクライマックスへと向かう。戦争下の物語ながら前半にはコミカルさや温かみが織り交ぜられていたが、後半では登場人物の切実さや必死さが一層高まり、観る者の心も張り詰める。藤澤家の女中・ちづ(久下恵)が画家たちに訴えるシーンでは、当時の市井の人々の間でこうしたやり取りが実際に行われていたのかと思うと、胸が締め付けられた。このシーンについて、高羽は「駆り立てられるように訴えるシーンなので、台詞の間を詰めても良い」「怒っているというより『助けて』という気持ちで」と久下にフィードバック。各自が指示を咀嚼し、再度シーンに挑むと、高羽が「すごく良くなりました! 泣けたぜ!」と歓声を上げた。この1日だけでも稽古を重ねるごとに完成度が着実に上がり、本番では観客の心を強く打つ舞台になるだろうと感じられた。
(左)久下恵、(右)護あさな
脚本・演出・主宰の高羽彩
そして、物語は第10場へ。このシーンは重要な要素が明らかになる場面であり、キャストの細やかな演技が鍵を握る。若くして頭角を現す貞本と、カリスマ性を持ち画壇の頂点を走る藤澤。この二人の「絵」と「命」を巡るやり取りは、今作の見どころの一つだ。このやり取りの最中、藤澤が貞本の頬に触れる場面があったが、これは台本にも高羽の指示にもない行動だった。シーン終了後、高羽が「なぜ触れたんですか?」と尋ねると、藤澤役の古河は「なんとなく触れたくなった」と答えた。曖昧な返答だが、貞本を演じる田中が藤澤をまっすぐに見つめる目力を目の当たりにすると、その衝動の理由が分かる気がした。この動作が本番で採用されるかは観てのお楽しみだが、演者が心を動かしながら創り上げる様子がひしひしと伝わる稽古場だった。
俳優の瞳の輝き、目線の微妙な動き、飛沫が飛ぶほどの激しい台詞の応酬を間近で感じられるのは、舞台ならではの魅力だ。戦後80年の節目に、熱量あふれる俳優たちの体を通じて、戦時中の画家や周囲の人々の思いを追体験し、守っていくべき平和への思いを馳せる観劇体験となるだろう。
取材・文:伊藤優花 写真:塚田史香
公演情報
タカハ劇団 第21回公演『帰還の虹』
日程:2025年8月7日(木)~8月13日(水)
会場:座・高円寺1
脚本・演出:高羽彩
出演:古河耕史 田中亨 護あさな 吉田亮 津村知与支 久下恵 池岡亮介 神保良介
※8月9日(土)13時公演、8月11日(月祝)13時公演は鑑賞サポート付き
※8月9日(土)13時公演、8月12日(火)13時公演、8月13日(水) 13時公演は託児サービスあり
平埜生成、土屋佑壱
8月9日(土)18時
古川健(劇団チョコレートケーキ 脚本家)
8月11日(月祝)18時
横井秀信(NHKプロデューサー)
舞台手話通訳:田中結夏(となりのきのこ)/バリアフリー字幕タブレット貸し出し/音声ガイド/事前舞台説明会/終演後に館内にて感想会あり/高円寺駅からの移動サポート
※6月中旬順次情報アップ・受付開始予定
UDCastサポートセンター(平日10時〜17時)
TEL:0120-291-088 FAX:03-5937-2233 Mail:info@udcast.net
https://udcast.net/workslist/takaha21/
全席指定席(税込)
一般 6,000円
25歳以下 3,500円
18歳以下 1,000円
※介助者1名まで無料。UDCastサポートセンターよりお申込みください。
主催:タカハ劇団
提携:NPO法人劇場創造ネットワーク/座・高円寺
お問合せ先 タカハ劇団 MAIL: info@takaha-gekidan.net