積み重ねた歳月の集大成『UKFC on the Road 2025』、豪華アーティストがイベント15周年を彩る【Day1】
『UKFC on the Road 2025』
『UKFC on the Road 2025』2025.08.09(sat)Zepp Haneda
下北沢の老舗インディーズレーベル・UK.PROJECTとプロダクション『UKPM』が全力でプロデュースする、真夏のライブイベント『UKFC on the Road』、15周年を迎えた本年は2DaysでZepp Hanedaにて開催。15年を支えてきた新旧アーティストが大集結して開催された2Daysを完全レポート。
Age Factory(FRONTIER STAGE)
Age Factory
Age Factory
開演時刻を迎え、鳴り響いた陽気なジングルと湧き上がる手拍子。そんなお祭り感をあっという間に塗り替えるシリアスでストイックなライブだった。一曲目は、透明感のあるギターによる落ち着いた立ち上がりからサビでは清水英介(Vo/Gt)がシャウト混じりにスポークンワード的歌唱を見せる「rest/息」。メランコリックな空気を纏ったまま爆音へと切り替わるバンドサウンドの破壊力たるや凄まじい。つぶやくような歌唱がやがて渾身のシャウトへと至る「Peace」に、雷撃のようなドラムからキレキレの演奏を繰り広げた「向日葵」。フロアからは無数の拳が突き上がる。
「唯一、日本のインディでレーベルカラーがあって、好きなアーティストが居続けるUK. PROJECT、すげえなって思ってます」(清水)
Age Factory
Age Factory
Age Factory
そんな思いを口にした後の「OVER」は比較的シンプルなガレージ調ではあるが、こういう曲でも圧倒的に重く分厚く、塊としてぶつかってくるのがAge Factoryのサウンド。「未来の誰かまで繋がればいいと思う、音楽が。俺がそうだったように」との言葉を添えて届けた「Blood in blue」、ここへきてのスクエアなバスドラとフラットなメロディによるダンサブルなアプローチがだいぶ効く。フロアを明るく照らし、清水が両手を広げて歌い出したラストの「海に星が燃える」まで、終始クールなまま灼熱の歌と演奏はまるで青い炎のようであった。
1.rest/息
2.Yellow
3.Peace
4.向日葵
5.OVER
6.Feel like shit today
7.Blood in blue
8.Everynight
9.海に星が燃える
ペルシカリア(FUTURE STAGE)
ペルシカリア
フロア上手に設置されたFUTURE STAGEは名前通り、こっからの未来を担う新進気鋭のバンドを中心としたラインナップが集結。FRONTIER STAGEのトップバッターであるAge Factoryの余韻冷めやらぬ中、特攻隊長としてFUTURE STAGEに登場したのはペルシカリア。『UKFC on the Road』には、3年連続の出演となる彼ら。「UK.PROJECTの若手にとって、年イチで胃が痛むイベントですが……」と矢口結生(Vo&Gt)が冗談っぽプレッシャーを明かすと、「最年少、Z世代の底力、見せてやりますよ!」と気合いを見せて。1曲目「離愁」で激しくエモーショナルにライブが始まる。
ペルシカリア
ペルシカリア
「ハウオールドアーユー」の間奏ではたいぴょん(フルギヤ)(Gt)と中垣(Ba)が息の合ったかけ合いで魅せて、「優しい人」では矢口のリードで観客が歌声を合わせて。中村達也(Dr)の痛快なビートで「風道」を駆け抜けてと、見どころ満載だったペルシカリアのステージ。
「UK.PROJECTに歌います」と始まった「ラブソング」では、彼らの人柄が滲み出た優しい愛の歌で聴く者の心を温めて。昨年はステージを降りた足で便所に行って、3時間号泣したほど自分たちに自信がないというMCから「カッコいい先輩みたいになれるか分からないけど、俺らなりに歌って帰ります」と「情けない」で自身の弱いところもさらけ出して。ラストは「歓声の先」で、現在のバンドの強い意思を表明。短い時間ながら歌や演奏の良さと同時に、彼らの人間的魅力がしっかり伝わるステージだった。
1.離愁
2.ハウオールドアーユー
3.優しい人
4.風道
5.ラブソング
6.情けない
7.歓声の先
the dadadadys(FRONTIER STAGE)
the dadadadys
the dadadadys
FRONTIER STAGEの2番手はthe dadadadys。SEが鳴り止み、嘘みたいにデッカい音でジャーンと一発入れたところで飛び出してきた小池貞利(Vo)。勢いそのままに放り込んだ「GO jiGOku!!」のストレートなポップパンクに変則的展開とノイジーなギターを掛け合わせた展開はラジカルだが、尖ってとっつきづらいタイプのそれではなく求心力たっぷりだ。ロックンロールリフから始まった「ROSSOMAN」では「最低で最高の1日にしよう!」と叫んだ小池がマイクスタンドを斜めに傾けて歌い、間奏ではツインギターとベースが全員ステージ最前まで躍り出てプレイ。ただ演奏してるだけなのに、なんて視覚的情報量の多いライブなんだろうか。
the dadadadys
the dadadadys
the dadadadys
猛烈なスピード感の2ビートが中間部ではジャズテイストに染まり、終いには軍歌みたいなノリまで顔を出すカオスが楽しい「モォニンググロォリィ」から「拝啓」と、後半に向けてはいっそうアグレッシヴに攻めておいて、ラストはこの日唯一のスローナンバー「らぶりありてぃ -la dolce vita-」で締め。「いろんな人とエネルギーを繋ぐ架け橋みたいな存在」でありたいとの小池の言葉通り、破格のエネルギーとエモーションを極上のエンタメへと昇華するライブであった。
1.GO jiGoku!!
2.ROSSOMAN
3.暖かい都会から
4.rock'n'roll ぎゃる
5.モォニンググロォリィ
6.拝啓
7.らぶりありてぃ -la dolce vita-
からあげ弁当(FUTURE STAGE)
からあげ弁当
からあげ弁当
SEで「トイ・ストーリー」テーマ曲が流れる中、焼きそば(Vo&Gt)が「名前のわりに真面目なバンド、からあげ弁当です!」と挨拶し4人全員がアカペラで歌い出したOPナンバーは代表曲「チキン野郎」。元気と勢いのある演奏、親しみやすいメロディと歌声。どんなバンドか一発で分かるこの曲から、「ベルロード」へと続くと「UK.PROJECT愛してま~す!」と叫び、疾走感ある真っ直ぐなラブソング「君のことが大好きだ」を披露。4人の仲良しぶりが伝わる息の合った演奏で、全速力でぶっ飛ばす彼らのライブは「清々しい!」のひと言。
ダークでスリリングな「OH MY GOD」で空気を変えると、MCでは今年も『UKFC』に出演出来た喜びを語り、昨年の『UKFC』当日朝におじいちゃんが死んだことを明かした焼きそば。「(『UKFC』は)おじいちゃんにどんだけカッコいいバンドしてるかとか、どんだけオモロい人生を送ってるかを知らせる日やとも思ってます」と話すと、「まだ足元にも及ばへんかも知れんバンドに、足元からでも食いつこうとしてる若手がおるってことをみんなに知らしめに来た」と『UKFC』への覚悟を語り、「乾杯をしよう」で<さぁ今世界を変えよう>と声高に宣言した。
からあげ弁当
からあげ弁当
からあげ弁当
本日2度目の「チキン野郎」で始まった後半戦。「全員手を挙げてくれ! 最後までそのまま盛り上がってくれ!!」と叫ぶと、3度目の「チキン野郎」を畳みかける。なかば力技でフロアの盛り上がりを生み、これで大団円かと思いきや。「賛否あると思うし、面識もないので失礼かなとも思ってますが。大好きな曲なのでやらせて下さい」と真摯に伝え、始まった最後の曲はsyrup16g「Reborn」のカバー。大好きな想いとリスペクトがしっかり伝わる丁寧な歌と演奏に、彼らの気持ちを受け止めた観客から大きな拍手と歓声が上がった。
1.チキン野郎
2.ベルロード
3.君のことが大好きだ
4.OH MY GOD
5.乾杯をしよう
6.チキン野郎
7.チキン野郎
8.Reborn (syrup16gカバー)
ART-SCHOOL(FRONTIER STAGE)
ART-SCHOOL
ART-SCHOOL
人口密度がまたグッと上がり満員状態のフロアに鳴らされた、シューゲイズ的歪みとガレージロックの疾走感、UKオルタナ的な清冽さを湛えた無二の音。ART-SCHOOLのライブは「Bug」から始まった。5人全員が中央に寄ったフォーメーションから放つ分厚いウォールオブサウンドの真ん中を、ことさら声を荒げるでもハイトーンなわけでもない木下理樹(Vo/Gt)の歌声はスッと通り抜け、たしかな体温とともに届いてくる。イントロの時点で大いに沸いたのは「スカーレット」。シンプルな8ビートとコードストロークの組み合わせで、なぜこんなにも色褪せず鮮やかな色彩を描き出せるんだろう。極めて繊細でいて揺るぎない、これがART-SCHOOL。
ART-SCHOOL
ART-SCHOOL
自分たちが結成25周年を迎えられたのはUK.PUROJECTあってのことだと感謝を述べた戸高賢史(Gt)のMCに続いては、『UKFC』が15周年であることを木下が祝福。その流れから一際明るいオーラを纏った最新曲「1985」を披露する。そして、そこからが凄かった。ほぼノンストップで「Just Kids」「ロリータ キルズ ミー」「Outsider」と時代を超えたキラーチューンを連発。トドメに真っ白な光を放つステージから鳴らされた「FADE TO BLACK」、刹那的でエモーショナルな木下の叫びはとても美しく、どこか優しかった。
1.Bug
2.We Are All Broken
3.スカーレット
4.1985
5.Jst Kids
6.ロリータキルズミー
7.Outsider
8.UNDER MY SKIN
9.FADE TO BLACK
the myeahns(FUTURE STAGE)
the myeahns
the myeahns
「この後出ます、the myeahnsでーす!」と本番さながらのテンションで始まったリハーサルから、痛快なロックンロールで観客の注目を集めて。1曲目「オレンジ」で、逸見亮太(Vo)が決して広くはないステージを動き回り、全方位に向けた歌とパフォーマンスを見せて。『UKFC』初登場ながら、会場中を味方に付けて始まったthe myeahnsのライブ。
前身バンドから合わせて結成14年という、長いキャリアを持つ彼ら。「サドルメン」、「ホームシック・チャボ」と続き、演奏力とライブスキルの高さ、渋みや哀愁も味わい深いサウンドで観客を魅了。MCでは「これが『UKFC』かぁ~!」と逸見がしみじみ語り、「アウェイって聞いてたんですけど、全然ホームみたいなんですけど?」と話すと、会場中が拍手と歓声で彼らを迎え入れる。
the myeahns
the myeahns
the myeahns
「なんていいフェスティバルなんだ!」の振りで始まったロックバラード「フェスティバル」をしっとり聴かせると、「恋はゴキゲン」の重厚でゴキゲンなサウンドで踊らせて。昨年秋、世良ジーノ(Gt)が加入して現体制となったthe myeahnsの新たなテーマソング「ワイルド・ワン」でブチアゲる。観る者の気持ちを自在に操るライブ運びの上手さも、長いキャリアがあってこそ。
「またライブハウスで逢えたら、俺は嬉しいよぉ~! 最高です、愛してまーす!!」と始まった最後の曲は「ローズマリー」。たっぷり気持ちを込めて披露した切ないラブソングが、the myeahnsの存在と魅力を観る者の心にしっかり刻み込んだ。
1.オレンジ
2.サドルメン
3.ホームシック・チャポ
4.フェスティバル
5.恋はゴキゲン
6.ワイルド・ワン
7.ローズマリー
椿屋四重奏2025(FRONTIER STAGE)
椿屋四重奏2025
椿屋四重奏2025
夕刻にさしかかり、FRONTIER STAGEに4組目として登場したのは椿屋四重奏2025だ。念のため説明しておくと、彼らは2010年に解散したバンド・椿屋四重奏のメンバー・中田裕二(Vo/Gt)と小寺良太(Dr)を中心とした5人編成バンドで、2023年に行った20周年ライブのアンコールツアーのため今年限定で活動。しかもそのツアーは既に終えているにもかかわらず、古巣からのオファーに応える形での登場である。すなわち、非常にレアで次にいつ観られるかもわからない。よってオーディエンスの熱量も凄まじく、冒頭の「群青」「手つかずの世界」からボルテージはMAX。中田の口から飛び出した、今日はUKP時代の曲だけを演るという宣言にフロアは狂喜で満たされた。
椿屋四重奏2025
椿屋四重奏2025
椿屋四重奏2025
椿屋四重奏と聞いてまず思い浮かぶ、ポストロック的な変則サウンドに昭和歌謡の香るメロディを融合させたミステリアスで艶やかな音楽性を「螺旋階段」あたりで存分に発揮するだけでなく、ピアノの調べとブルージーなギターに乗せて歌い上げたバラード「紫陽花」や、弾むようなイントロからの甘酸っぱくフォーキーな「小春日和」など、この日はさまざまな表情を見せてくれた。ラストの「幻惑」前、「またいつかお会いしましょう!」とフロアに呼びかけた中田。その約束の果たされる日が今から既に待ち遠しい。
1.群青
2.手つかずの世界
3.成れの果て
4.紫陽花
5.小春日和
6.螺旋階段
7.空中分解
8.幻惑
Helsinki Lambda Club(FUTURE STAGE)
Helsinki Lambda Club
Helsinki Lambda Club
FUTURE STAGE初日のトリは、Helsinki Lambda Club。2014年にUKFCオーディションで最優秀賞を受賞し、『UKFC』に初出演を果たしてから早11年。もはや、『UKFC』において中核を担う存在となった彼ら。「せーの!」でジャカジャーンと音を合わせ、「ミツビシ・マキアート」で幕を開けたライブの堂々たるステージングは貫禄さえ感じる。
続いて、夏にぴったりの爽快感ある「何とかしなくちゃ」から、グルーヴィーな演奏に心躍る「キリコ」と続き、軽快なガレージチューン「Good News Is Bad News」でフロアを踊らせてと、めくるめく風景を描く変幻自在ぶりで観客を魅了。ジャンルを越えた自由で幅広い音楽性こそ、彼らの大きな魅力だが。それらを具現化する巧みな演奏力や豊かな表現力と揺るぎなき音楽的根幹があってこそというのが、ライブを観るとよく分かる。
Helsinki Lambda Club
Helsinki Lambda Club
ライブ後半、「年に一度のお祭りを僕も楽しみにしてきたし、『UKFC』にしかない組み合わせを最後まで楽しんで下さい!」と橋本薫(Vo&Gt)が改めて挨拶し、キラキラしたイントロで始まった曲は「たまに君のことを思い出してしまうよな」。夕焼け感ある照明に照らされて、心象風景や心の機微を丁寧に描く感傷的な歌と演奏が、聴く者の胸をギュッと締め付ける。
ラストは幻想的なギターサウンドで彼らの音楽世界の深層へと誘った「My Alien」で、音楽性の幅広さだけでなく奥深さも知らしめた彼ら。歌と演奏の圧倒的求心力で観客の心を惹きつけ、たっぷり余韻を残してフィニッシュ。FUTURE STAGEをしっかり締めくくり、FRONTIER STAGEのトリを飾るsyrup16gへとバトンを繋いだ。
1.ミツビシ・マキアート
2.何とかしなくちゃ
3.キリコ
4.Good News Is Bad News
5.たまに君のことを思い出してしまうよな
6.My Alien
syrup16g(FRONTIER STAGE)
syrup16g
syrup16g
初日のFRONTIER STAGE、音から佇まいまで妥協なくそれぞれ信じるロックバンド像を貫く面々の後を受け、最後にステージに上がるのはこのバンドしかいない。長らくUK.PROJECTに所属し続けているものの、バンドでの『UKFC』登場はこれが初めてだったが、キタダマキ(Ba)と中畑大樹(Dr)が淡々と刻んでいく8ビートに虚ろな響きのギターを乗せた1曲目「生きたいよ」の、じっくり溜め込んだ熱が転調を機に一気に解放されサビへと雪崩れ込んでいく展開で、いきなりsyrup16gの何たるかを知らしめる。派手なパフォーマンスは一切なくとも、声色の強弱や揺らぎにありありと感情が滲む五十嵐隆(Vo/Gt)の歌声はなんてエモーショナルなんだろう。
この日は現時点での最新アルバム『Les Misé blue』から「うつして」「診断書」「In The Air, In The Error」が披露され、残りは初期作からの楽曲が並ぶセットリストだったが、両者の間に20年近い隔たりがあるとは到底思えない連続性が感じられた。タッチやアタックの強弱でノリを生み、空気を塗り替えていく圧巻のプレイスキルも凄まじく、観客たちはある時は固唾を飲んで見守り、またある時は拳を築き上げて声を上げて応える。個人的ハイライトは中盤で披露された「Sonic Disorder」。迫力満点のベースとキックの4つ打ち、浮遊するギターリフで存分に高揚を感じさせたところでシャウト一閃、怒涛の疾走が始まれば、もうメモなんて取っていられない。
syrup16g
syrup16g
syrup16g
アンコールではUK.PROJECTとファンへの感謝を口にした後、「Reborn」が披露された。ヘヴィな音塊の中にどこかおだやかであたたかなニュアンスを含んだ音を奏で、ラストは会場中が煌々と照らされる中での幕切れ。この日とはまた違った形でロックシーンの魅力を体現する面々が揃った2日目へとバトンは繋がれた。
1.生きたいよ
2.うつして
3.神のカルマ
4.診断書
5.Sonic Disorder
6.負け犬
7.In The Air, In The Error
8.落堕
EN.Reborn
取材・文=FRONTIER STAGE:風間大洋 FUTURE STAGE=フジジュン
イベント情報
会場:Zepp Haneda (TOKYO) ※2ステージ制
出演:Age Factory / ART-SCHOOL / the dadadadys / Helsinki Lambda Club / syrup16g / the myeahns / からあげ弁当 / 椿屋四重奏2025 / ペルシカリア
2025年8月10日(日)
出演:[Alexandros] / Are Square / BIGMAMA / LAYRUS LOOP / The Novembers / POLYSICS / the telephones / TOTALFAT / the shes gone / WurtS / 銀杏BOYZ(弾き語り) / ライティライト