香川『MONSTER baSH 2025』最高のシチュエーションとシンガロングーーSaucy Dog、SUPER BEAVER、あいみょんら豪華集結、四星球のDUKE 50周年祝祭など2日目レポート(写真109点掲載)

レポート
音楽
18:00

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『MONSTER baSH 2025』2025.8.24(SUN)香川・国営讃岐まんのう公園

2025年8月23日(土)・24日(日)の2日間にわたって、香川県・国営讃岐まんのう公園にて開催された中四国最大級の野外ロックフェス『MONSTER baSH 2025』。同イベントに、東京と関西からライターの兵庫慎司と鈴木淳史が参戦。本記事では初日のライブをピックアップして振り返りながら、それぞれの視点で『モンバス』の魅力をレポートする。

さて、『MONSTER baSH』の2日目。芝生エリアは、オープニング・アクト=STAGE空海のKUZIRAとSTAGE龍神のコレサワを経て、『モンバス』プロデューサーのDUKE定家氏の挨拶&注意事項→オープニング映像→カウントダウン→特効と銀テープ発射ーーーに続いてステージに上がったトップのアクトは、ハンブレッダーズである。

ハンブレッダーズ 撮影=桃子

ハンブレッダーズ 撮影=桃子

1曲目は「BGMになるなよ」。<名前も顔もない人の心ない言葉は 歪んだギターでかき消すよ ほら何も聞こえない>と、ムツムロ アキラ(Vo.Gt)が叫ぶように歌うと、それに呼応してukicaster(Gt)のギターが爆音になる。

その「BGMになるなよ」、3曲目の「再生」、4曲目の「DANCING IN THE ROOM」では、「聴くもの」としての音楽の大切さ、かけがえのなさ。2曲目の「⚡️」や、6曲目の「グー」では、「やるもの」としての音楽の大切さ、かけがえのなさ。ムツムロ アキラがそれらを言葉にしてメロディに乗せて放っていき、オーディエンスが正面から受け止める。ちょっと、いや、かなり、いい光景である、朝から。

撮影=桃子

撮影=桃子

10月19日に大阪でフェスをやる(ハンブレッダーズ初主催フェス『GALAXY PARK』@大阪城ホール)。作り手になってから、フェスがどうやってできているかわかるようになって、すごいなあと改めて思うーーーという話を、最後の2曲を歌う前に、ムツムロ アキラはした。

レキシ 撮影=河上良

レキシ 撮影=河上良

100s(中村一義を中心に集まったバンド)の頃に一度出演したことがあるが、それ以来だというレキシが本日のSTAGE空海の二番手。本日のギターは、その100sで共に『モンバス』に出た、DA小町ことまっちぃこと町田昌弘である、というのも、しみじみします、何か。

12:25〜13:00、持ち時間35分で4曲、という、他の人なら「ええっ!?」だが、レキシとしては通常運転のステージ。芝生広場後方の丘の上を指して「そこも『MONSTER baSH』のお客さんですか?」と問うたり、STAGE龍神の前でINAHO(稲穂)を振っている人に「なぜINAHOを持ってるのにこっちに来ん!」とつっこんだりして、歌に入るまでに約1分を要してから「きらきら武士」でスタート。

歌い終わると「ありがとうございました、レキシでした」と去ろうとすると、伊藤大地がドラムを叩き始める、というおなじみのやつを経てから、羽織を脱いで十二単に着替え、「SHIKIBU」へ。

撮影=河上良

撮影=河上良

「KMTR645」では、この曲で客席に投げ込むのが恒例になっているイルカを、後方の丘の上まで到達させよう、と呼びかける池ちゃん。その言葉にオーディエンスが応じ、投げ込まれた7頭のイルカのうち、2頭が丘の上まで到達した。池ちゃん、「すごい、フェスでこんな遠くまで行ったのは初めて!」と喜ぶ。ラストの<狩りから稲作へ>の締めの歌唱は、もちろん「『MONSTER baSH』が好〜き〜!」だった。

あいみょん 撮影=桃子

あいみょん 撮影=桃子

「マリーゴールド」で始まり、「ラッキーカラー」や「愛を伝えたいだとか」や「裸の心」等を経て、「君はロックを聴かない」で終わる。という8曲で、参加者をつかんで離さなかった……というか、そりゃ離れませんよね、と言いたくなるステージだった。STAGE空海・15:15からのアクト、あいみょんは。

イントロで挨拶する程度で、MCらしいMCは入れずに、どんどん曲をやったのも、いい効果を生んでいた、と思う。あと「ラッキーカラー」や「愛を伝えたいだとか」のようなギターを置いてハンドマイクで歌う曲での「ステージの端から端まで行きっぷり」も、すごかったし。

撮影=桃子

撮影=桃子

ラスト2曲は、中指をがんがん立てながら歌った「貴方解剖純愛歌〜死ね〜」と、「君はロックを聴かない」。最初にあいみょんを知った我々がびっくりした頃の、それぞれの方向に強力な2曲で終了した。タオルを投げ、振り向いてカメラに両手でピースしてから、あいみょんはステージを下りた。


ちなみに、1日目は午前中は曇り、午後にちょっと暑くなった程度で、ここ数年の『MONSTER baSH』でいちばん過ごしやすいのでは、という状態だった。が、この2日目は、朝こそ曇っていたものの、昼前から空は晴れ上がり、気温がぐんぐん上昇する、言わば「例年どおりの『モンバス』」な天候に。

大丈夫だろうか、STAGE茶堂とMONSTERcircusを忙しく移動しているはずの鈴木淳史は。

(ここまで取材・文=兵庫慎司)

丸山純奈 撮影=桃子

丸山純奈 撮影=桃子

さて2日目も兵庫さんからバトンを繋いでいただき、ここからは私、鈴木淳史が書かせていただきます。12:30・STAGE茶堂。昼真っ盛りの炎天下の中、アコギ1本で丸山純奈が立ち向かう。歌い出しから始まる1曲目「シツレンカ」。てっきり初出場かと思っていたら、2018年にPOLUというバンド名義で出たということ。特筆すべきは地元四国の徳島県出身。四国最大級フェスに出れて夢みたいと話すが、7年もめげずに歌い続けてまた夢のステージを勝ち取ったのは並大抵のことではなかったであろう。高校生の頃から上京しているとも話したが、本当にたくましい限り。故郷を離れ、上京して初めて住んだ街のことを綴った「この街」がさらに説得力を増す。新曲「ラムネ」などオケをバックにハンドマイクで歌う姿も可愛らしかった。

さかいゆう 撮影=桃子

さかいゆう 撮影=桃子

13:00過ぎからSTAGE茶堂で、さかいゆうがサウンドチェックで歌う。聴こえてくるのは「アンパンマンのマーチ」。シンプルなトラックでのアレンジなのに格好良すぎる。原作者やなせたかしとさかいは同郷の高知。地元四国出演者が続く。13:30になり両手をあげて、「イエーイ!」と手を叩きながら登場。まだまだ昼真っ盛りの炎天下ではあるが、こんなに明るく煽られると、こちらも元気になる。強いキックが特徴的なトラックにのせて、1曲目「まなざし☆デイドリーム」へ。鍵盤ひとつで歌う「薔薇とローズ」も良い……。

高知県土佐清水市と出身を名乗り、巷ではNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』が大流行と触れて、やなせたかしが高知出身であることにも勿論触れてから、「この曲をやるのは今年だけだろうというタイミング」と「アンパンマンのマーチ」へ。サウンドチェックだけのナンバーだと思い込んでいたので、もう1回聴けるだなんてラッキーでしかない。「自分っぽくないので前衛的な形でカバーさせていただきたい」と言っていたが、確かにあのアレンジは前衛的であった。ハンドクラップが聴こえてくるトラックに乗せられて歌われると格好良すぎる。

八生 撮影=河上良

八生 撮影=河上良

14:25。MONSTERcircusエリアに移動して、MONSTERcircus+にて八生。彼女も高知県出身。初日に菅原卓郎SESSIONでも観ていたが、初日のChimothy→といい、今年は地元四国の中でも高知県出身者が多いような気がした。1曲目「大感謝祭!」とバンドセットでアッパーなチューンで幕開け。続いては弾き語りで「私にとって大事な曲」と「はじまりのうた」へ。3曲目では、まだ高知に無いものの愛してやまないファミレスの歌として「私のイタリア」が歌われる。菅原と歌った「しゅらばんばん」もそうだが、ユニークなシチュエーションからの歌も彼女の魅力だろう。当然この日もラストナンバーは「しゅらばんばん」。見事に2日間歌いきった。

LONGMAN 撮影=河上良

LONGMAN 撮影=河上良

MONSTERcircus+・15:40、LONGMAN。サウンドチェックには、ひらい(Gt.Vo)・さわ(Ba.Vo)のメンバーふたり。SPICEでもライブレポートを担当したが、ドラムほりほりが6月の地元愛媛のライブで卒業したばかり。サポートドラムのちょた(COPES)を迎えての新しい3人での音がガツンとくる……、まだサウンドチェックだというのに。何にもパワーダウンしていないし、パワーアップというか、一味違う。良い意味で全く別物であり、バッキバキに決まっている。嬉しい悲鳴だ。完璧に仕上がっている。1曲目「Back Home」はあっという間に駆け抜けていく。とんでもない疾走感。

「これが日本のパンクロックだ!」

「Just A Boy」を歌う前に、ひらいがこう叫んだ。よくライブで彼が口にする言葉だが、新しく動き出した今、その言葉へ込められた強い気持ち、強い愛を感じる。で、絶対に書かないといけないのは「Excuse」のアウトロで、突然、古墳シスターズ「ベイビーベイビーベイビー」を歌ったこと。簡単に説明すると愛媛出身のLONGMANと香川出身の古墳シスターズは同世代であり、四星球の下の世代として、次の四国の音楽シーンを盛り上げていくべきバンド。だが、今回、古墳は『モンバス』には出場ができなかった。色々な理由があるだろうし、これを経験して『モンバス』に戻ってきて欲しいという想いも主催・DUKEにはあるだろうが、やっぱりショックだった、いちライターの私レベルでも。そこでのこの粋なはからい。ライブ後、実際、私にも言っていた言葉だが、ひらいいわく「アウトロが暇だったので」と。さらっとしたウエットじゃない言葉が粋すぎる。友情なんていうと陳腐な言葉だが、そこには確実に友情があった。実際、この後のMCでひらいは『モンバス』8回目の出場だが、全然当たり前じゃないと打ち明けた。

撮影=河上良

撮影=河上良

「出たいバンドは星の数ほどいるし、命を削って、ここを目指している」

DUKEからの「こんもんじゃないだろ。もっといけるぞ」という想いも背負っているとも語った。

「小っちゃいステージやけど一番熱いライブを!」

ラストナンバー「spiral」。速いパンクロックできた流れから、最後の最後にミドルテンポのナンバー。それも英語詩が多い楽曲から、今度はまっすぐストレートな日本語詞。この緩急よ……。明日へと一歩踏み出していこうという想いが込められた歌。とてつもなく沁みた。時間が余ったのでと、もう1曲だけ短い曲をやりきり去っていった。10月からは現体制での初となるツアーもある。もっと大きくなって来年戻ってきて欲しい、盟友と共に。バンドマンの意地を感じたライブ。

(ここまで取材・文=鈴木淳史)

PIANO baSH Performed by 清塚信也 撮影=桃子

PIANO baSH Performed by 清塚信也 撮影=桃子

こちらSTAGE龍神は、3年連続3回目の開催になった、企画ステージ「PIANO baSH Performed by 清塚信也」。

清塚信也、ステージに出て来るなり「暑くない、全然暑くない!」と叫び、「みんな元気ですか、見てのとおり天才です!」と挨拶。「ちょっとピアノの音色に酔いしれてみてよ」と、すさまじい勢いの独奏でオーディエンスを圧倒。弾き終えると「ありがとう、決まった! 見てのとおり、才能です!」。

みんなピアノや鍵盤楽器への感謝が足りない、だからこの時間は鍵盤楽器が主役で、出て来る歌手はみんなサポートですーーーと、この企画の趣旨を説明してから、ひとり目のシンガーを呼び込む。

撮影=桃子

撮影=桃子

本日12:30からSTAGE茶堂に出演した丸山純奈21歳、歌うはフジファブリック「若者のすべて」。原曲をさらにバラード方面に進めた見事な歌いっぷりに、みんな聴き惚れる。「四国が生んだ歌姫でございますからね」と彼女を紹介した清塚信也だが(徳島出身なんだそうです)、「ピアノに感謝が足りない、気持ちよく歌いすぎ」とダメ出し。

撮影=桃子

撮影=桃子

次のサポート・シンガーは、MONSTERcircusでの出番を終えたばかりの川崎鷹也。アコースティック・ギターを持って出て来たことを咎められ、「ギターを抱えたまま弾かずに歌う」ことを強いられる。

曲は自身の「魔法の絨毯」だが、清塚信也、「<お金もないし 力もないし 地位も名誉もないけど>って歌ってるけど、この曲でお金も力も地位も名誉も得たじゃん」。川崎鷹也の「飲み会の1時間後みたいなこと言うやん!」というナイスな返しに、思わずみんな大笑い。そして川崎鷹也、本当にギターは背中に回したまま、一切触らずに「魔法の絨毯」を歌いきった。

撮影=桃子

撮影=桃子

「次はビッグスター・サポート歌手、この人!」と、清塚信也が曲に入ると、走って出て来て「無責任ヒーロー」と歌い始めたのは、SUPER EIGHTの安田章大。徹底的にピアノを立てながら、オーディエンスにコールさせるなど、場を盛り上げていく。そして彼はもう1曲あり。Ed Sheeranの「Perfect」を、清塚信也のピアノで歌う、というサプライズである。みんな大喜び。

撮影=桃子

撮影=桃子

ラストは清塚信也が超絶ピアノ・ソロで、もう一度参加者を圧倒して終了。各サポート・シンガーとけっこうしゃべっていたし、川崎鷹也は「こんなにしゃべってたら押す!」と心配していたが、終わってみたら2分巻いていた。というところまで含めてやっぱりすごい、清塚信也。

SUPER BEAVER 撮影=桃子

SUPER BEAVER 撮影=桃子

STAGE空海、トリのひとつ前のスロットは、「さて、今年の『MONSTER baSH』は調子いいですか?」とアオリを入れてから、7月2日に出たばかりのニューシングル「主人公」でスタートしたSUPER BEAVER。

<隠すように沈めた気持ち 掬い上げたくて この今を選んでいる><知っているかい? 世界の中心は 何時だって自分だよ>というリリックが、今ここのことをそのまま歌っているかのように響く。で、この曲からもう「やれるって言ったよな? ちょっと歌ってもらっていいですか?」と、ボーカルをオーディエンスに預ける。

撮影=桃子

撮影=桃子

「俺らは35分間全力を出せばいいだけだけど、あなたはその35分間を何回やってんだよ! シンプルに尊敬します!」と、渋谷龍太(Vo)、参加者たちを称賛。「美しい日」では、その参加者たちのハンドクラップとシンガロングで始まった。

「ひたむき」「切望」でオーディエンスにさらに火を点け、MCを経てのラストは「アイラヴユー」。<愛してる>の絶唱から曲に入った渋谷龍太は、後半「あなたに歌ってほしいんです、よろしく!」と、最後にもう一度、大シンガロングを引き出した。そして去り際に、「過去最高の『MONSTER baSH』でした、ありがとうございました。また会おうぜ、愛してるよ!」と、感謝を伝えた。

撮影=桃子

撮影=桃子

(ここまで取材・文=兵庫慎司)

FRUITS ZIPPER 撮影=河上良

FRUITS ZIPPER 撮影=河上良

MONSTERcircus・16:15は、FRUITS ZIPPER。今年の『モンバス』にとっての大きな話題と言っても過言ではなく、まぁビックリ仰天するほどの人、人、人、人……パンパンの観客エリア。登場SEだけですっごい歓声、すっごい手拍子。普段、こんなことを書いたことないが、もしもボルテージは最高潮なんていう言葉を使うならば、今なんだろう。と言っても、まだメンバーがステージに登場していないのに、この状態。みんなが待ちわびている。

鎮西寿々歌・櫻井優衣・仲川瑠夏・真中まな・松本かれん・早瀬ノエルの6人が「We Are FRUITS ZIPPER!」と「ぴゅあいんざわーるど」を歌う。観客みんな大喜び! すげーハッピー! 「ピポパポ」ではメンバーひとりづつ歌うたびのメンバーコールが地鳴りのように聴こえてくる。

MCでは「『モンバス』さすがすぎる!」と大盛り上がりぶりに喜ぶ。続くは「みなさんも知ってるであろうあの曲を披露させて頂きます!」と「わたしの一番かわいいところ」を披露。最後の決めポーズでは全員が左足を宙に浮かせてカワイイ。「ふるっぱーりー!」ではクールなラップも聴かせて、また一味違う一面を魅せてくれる。<Kawaii!>というフレーズがともかく耳に飛び込みまくる! 「飛ぶぞ香川!」では観客全員もジャンプ! ステージの端から端まで走り回ったり、キュートな上にエネルギッシュで本当に圧倒された。

「アップデートしよ?」

このキラーフレーズが強烈な「NEW KAWAII」がラストナンバーであったが、よく考えてみると『モンバス』は常にアップデートしているフェスである。いわゆるアイドルであったり、楽器を持たない女の子たちであったり、バンドやシンガーソングライターだけでないラインナップを打ち出していて、常に刺激的なのだ。

撮影=河上良

撮影=河上良

そうそう、FRUITS ZIPPERを観ていて、可愛らしい表情とは打って変わって、とても真剣な表情を見せる瞬間があった。プロフェッショナルとして舞台に上がる以上は、ジャンルは関係なく、真剣にストロングスタイルで舞台に上がるのみなのだなと思えた。逆にさまざまなジャンルの音楽が舞台で鳴らされることで、刺激を受けて気も引き締まり、切磋琢磨して、それこそアップデートされているのだろう。

FRUITS ZIPPERが終わったばかりのMONSTERcircusエリアは、異様な興奮と高揚に包まれていた。草1本も生えていないくらい持っていかれた感じ。こんな大盛り上がりした後は誰もがやりにくいと思っていると16:45を過ぎた頃……。

「行けよ男達!」

さっきまでのキュートなステージは夢だったのかと思うほどの、男臭い歌声が聞こえてくる。

そうなんです、16:55・MONSTERcircus+にガガガSPが立つんです。コザック前田(Vo)は初出場した2003年の『モンバス』Tシャツを着ている。2003年はメインステージに立ち、そこから徐々に小さなステージになったが、これくらいのキャリアのバンドは大きなステージに居続けるか、いなくなるかのどっちかだとも言う。

「ウチは一番小さなところからやり直そうとしている! まだまだ、やる気ですからね!」

まだサウンドチェックだというのに、この時点で涙腺が崩壊している人は私だけではなかったはずだ。ふと観客エリアの端っこに見覚えのある顔を見つける。古墳シスターズのラース(Dr)だ。先程も書いたように古墳は今年『モンバス』に出場ができなかった。そんな中、初日が終わった22:00から高松市内のライブハウス・TOONICEで『夜更かしMONSTER baSH 2025~古墳シスターズ単独公演~ supported by MONSTER baSH』を開催していた。青春パンクの大先輩であるガガガを見つめる眼差しからは色々な想いを感じた。少しだけ話したが、「来年必ず戻って来ます」と言ってくれたので、心から待ちたい。

撮影=河上良

撮影=河上良

サウンドチェック終わり、ステージ裏で本番を待つメンバーの顔を観に行く。あれだけサウンドチェックでぶちかましたのに落ち着いている。定刻になると思い出野郎Aチーム「ダンスに間に合う」が登場SEとして鳴る。メンバーも口ずさんでいる。<今夜ダンスに間に合う 諦めなければ>という歌詞が胸にくる。時は来た。後は出て行くのみ。前田は「ガガガSP」と書かれたタオルを舞台で掲げる。前田は改めて今着ているTシャツについて説明して、22年間、今日のために大事においていたのかもと話す。そして、今年バンドに色んなことが身にふりかかって、そんな中でガガガをMONSTERcircus+ステージのトリでいこうと粋なはからいをしてくれたと感謝を述べる。「誰がFRUITS ZIPPERの後に頼んだ!」と笑った後の言葉には痺れるしかなかった。

「でもね、FRUITS ZIPPERより歴は長いです!」

バンドを好きで良かったと本気で想ったし、バンドだって凄いし、バンドだって強いんだとたまらなく嬉しかった。

「音楽に対する心の炎は消えていません」

夏の歌「線香花火」が1曲目に歌われる。田嶋悟士(Dr)の鬼気迫るドラムが耳をつんざく。そのドラムを同じリズム隊としてサポートベースのミナトマチよねだ(Ba)だが鬼気迫る演奏で支える。山本聡(Gt)のギターは火を吹いている。前田は叫んでいる。今まで何度もガガガのライブを観ているが、今のガガガは凄まじい。背負っているものが違う。同じ日に『モンバス』に出場しているMONGOL800「あなたに」のカバーも歌う。同じ時代を走り続けている同世代バンドのカバーには重みがある。

撮影=河上良

撮影=河上良

そして、前田は静かに話し出す。今年の2月にベースの桑原康伸が亡くなったことを。そんな今年の夏にトリでモンバスに誘われたと。

「香典の意味も込めたんやと思います」

この前田の表現には、彼の誠実さが滲み出ていた。

「44年間、ガガガSPのまま死にました。後の3人もガガガSPのまま死なせて下さいよ」

バンドを終わらせることもよぎった中での判断。そこから、なるようになるという意味を込められた歌「ケセラセラ」。<笑いながら笑いながら 笑い飛ばし笑い飛ばし>という歌詞を聴きながら、笑い泣きしてしまう。「人間はいつかさよならがくる」と言って歌われるのは、「卒業」。<さよなら さよなら さよなら>という言葉がリフレインされる。

「まだ売れることを諦めてませんよ! もう1回、ガガガSPで売れたるからな!」

死ぬまで生きるということを切実に訴えかけて、「死ぬまで生きてやろうじゃないか!」と最後に「晩秋」が歌われる。日本最古の青春パンクバンドであり“神戸のゴキブリ”であるガガガSPの生への執念を見せつけられた25分。やっぱりバンドが好き。そして、やっぱりバンドはしぶとい。最高でした。ありがとうございました。そして桑さんお疲れ様でした、ガガガSPは何の心配もいりませんよ。

撮影=河上良

撮影=河上良

急いでSTAGE龍神へと走る。17:40。このステージのトリの四星球。隣接するSTAGE空海のSUPER BEAVERが終わり、サウンドチェックが始まる。終わってすぐ舞台袖へと戻ってきて、4人は大急ぎで着替えてメイクを施していく。スタッフが時計とにらめっこしながら、「後2分半です!」と秒刻みで伝えていく。4人全員が同じ格好になる。北島康雄だけがステージ裏を早足で歩きながら、STAGE空海へと急ぐ。途中、楽屋エリアも通るので、ライブを終えたばかりのSUPER BEAVERのメンバーとスタッフがいる。そのスタッフが口々に「ぶーやん首冷やす?」「ぶーやんイヤモニ付ける?」と言っている。そう、康雄は渋谷龍太の格好をしているのだ。渋谷本人も笑いながら観ている。康雄は、そんな面々に「アンコールがあるんだよ!」と言い放ち、空海へと急ぐ。「もっとSUPER BEAVERが観たいからアンコールを」とナレーションが流れたら、康雄扮する渋谷が空海のステージに現れた。そのまま下に降りて、舞台下を走って、龍神へと走ってくという流れ。空海のステージに上がると、そこには渋谷の格好をしたU太・まさやん・モリスが待ち受けているという全員渋谷龍太フォーメーション! 途中、渋谷本人も登場して、ふたりが対峙すると観客は大盛り上がり。

四星球? 撮影=河上良

四星球? 撮影=河上良

撮影=桃子

撮影=桃子

こんなトリッキーなオープニングから始まるライブを舞台袖でずっと見つめる人が。それはDUKE・宮垣会長。どんな方かはSPICEの宮垣会長インタビューを読んでもらうとして。かいつまんで話すと、17年前に四星球が初めて『モンバス』に出た時に、宮垣会長は大勢のスタッフの前で「日本一のライブバンドに育てたいと思っているので、どうぞよろしくお願いします」と頭を下げたという。今年DUKEは50周年を迎えた。当然の如く、四星球のライブテーマは、その50年を讃えて祝うこと。舞台上には段ボールで作られた「DUKE祝50年」の祝い花が運ばれる。橋本絵莉子・福岡晃子・高橋久美子といった名前やDragon Ash・POLYSICS・the telephones、そして真心ブラザーズといったDUKEと『モンバス』にゆかりある名前が記されている。

康雄はDUKE50周年について、宮垣会長が大学生の時に「コーヒーショップDUKE」としてスタートさせて、『モンバス』も25年も続いているという歴史を話していく。四星球も大学生から始まったバンドであると言った上で、こう高らかに宣言する。

「日本一のライブバンドになります!」

『モンバス』史上一番多く歌われている「クラーク博士と僕」が歌われる。曲中、まさやんがバク転を決めると舞台袖で嬉しそうに喜ぶ会長。

撮影=桃子

撮影=桃子

曲終わり、康雄がDUKE50年の歴史を再度語っていく。会長が高知大学の学生時代にフォークシンガーの加川良が好きで高知に呼ぼうとしたことから始まったと話す。「それが今はこんなコミックバンドをやってくれてます」と言い、加川良が1971年に発表した「教訓1」の<命はひとつ 人生は1回>という歌い出しの歌詞を読み上げ、「薬草」へ。<死にたくなったらこの歌を思い出してほしいんだ>と歌われる。加川良「教訓1」と四星球「薬草」……昭和から令和の50年でDUKEから愛された2組の命の歌が繋がった。

ラストナンバー「出世作」。<出世作ができました>と歌われる2016年のナンバー。DUKEに対して、ここまで出世しましたであり、これからもっと出世しますというメッセージだと思う。曲終わり、DUKEと50年の付き合いがある大切な歌い手である小田和正「たしかなこと」が流れる中、DUKE・玉乃井社長を舞台上で胴上げするという流れに。

まずは四星球から急遽舞台袖に呼び出された社長。困惑した表情をしていたが、それも無理はない。だって、事前の台本には書かれていなかった構成だから。胴上げするのは今の社長だけど、会長にも社長を胴上げしてほしいと、康雄は「宮垣! 宮垣!」と観客にコールを求める。この全く台本にない流れを、会長はどうするのか……。私は舞台袖で真剣にステージを観ながらも、全く動じない会長のことも気に掛ける。誰も会長に声をかけることはできない。完全におこがましすぎるけど、これはインタビューも担当させていただいた私しかいない、と恐る恐る会長に近づき、お声がけをするとゆっくりと舞台に向かって下さった。

「このおじいちゃんが50年前にDUKEを始めて、今があります!」

撮影=河上良

撮影=河上良

歓喜の表情で康雄が叫ぶ。会長が社長を胴上げする不思議な光景は何故だか究極に美しかった。60周年に向けて6回胴上げされた後、「僕が会長をおんぶしていきます!」と康雄は会長をおんぶして舞台袖へとはける。舞台袖でふたりは強く抱き合う。力士の取組後インタビューの如く、すぐテレビ局の四星球へのインタビューが始まる。会長は呼ばれているわけでもないのに、側へと向かい、突如、「バンザーイ!」と叫んだ。呆気に取られたし、何だかわからないけど涙が出る……。

舞台裏を歩いて本部へと戻られる会長の横を歩きながら感想を貰う。「びっくりしました。話が違うじゃないかって」と会長は言いながら、どれだけ長い付き合いの関係性があるミュージシャンから舞台へと上がるように言われても、絶対に上がらないことを教えてくれた。そして、「お金を払ってくれているお客さんには、DUKE50年のことも俺のことも関係ないから言うなと。スタッフウケや楽屋ウケを客前でやるのは趣味じゃないと釘を刺したのに!」と苦笑しながら、事前に康雄に話をしたと明かす。でも、会長はこう続けた。「若い康雄君が若いお客さんの前で加川良の歌を話してくれたのは嬉しかった。同い年だったんですよ」と。残念ながら、加川良は亡くなっている。

撮影=河上良

撮影=河上良

会長が言うようにDUKEや会長のことを観客の前で話すのは身内楽屋ウケかも知れないが、DUKEが始まるキッカケであり、偉大なる歌い手・加川良のことを若い観客のみなさまに知ってもらうことは大切なことだ。歴史を知らなくても『モンバス』を楽しむことはできる。だけど、歴史を知ると、より『モンバス』を深く味わえる。そのためにはDUKEと会長の50年は身内・楽屋ウケとかではなくて、しっかりと伝える必要があったので、今回ばかりは四星球のある意味騙し討ちを許してあげて下さい、会長。文化の歴史は継承されるべきだ、文化に興味を持ってくれた全ての人に。50年の歴史があるDUKEの祭は、今年も意味ある物語へとなっていく。しっかりと四国のバンドマンがバトンに重みと深みなど全ての感情を乗せて、大トリのSaucy Dogへと繋ぐ。私も最後のバトンを兵庫さんにお返し致します。

(ここまで取材・文=鈴木淳史)

撮影=桃子

撮影=桃子

いよいよ大詰め、2025年の『モンバス』の2日目のトリは、綾小路翔と共に、暴風雨&雷による途中終了で、昨年ステージに上がれなかったSaucy Dogである。

「この長い旅の中で」でスタートし、次の「シンデレラボーイ」を歌い終えたところで石原慎也、絶叫。「お待たせしました。いや、お待たせしすぎちゃったかもしれないです、Saucy Dogです! 2年分、全部出しきるんでみんなも楽しんで!」。ものすごい実感がこもっている。そりゃあそうだろうなあ。で、次の「雀ノ欠伸」の<明日はオレンジの風が吹く>というリリックを聴いて、いや、「明日」じゃなくて今吹いてる、と思った人は多いのではないか。夕日が芝生広場を染めている時間だったので。ずっぱまり。

撮影=桃子

撮影=桃子

せとゆいかのMCをはさみ、「結」で参加者をどっぷり浸らせてから、秋澤和貴のベースソロ。そして、「突然の雷にご注意ください!雷に打たれて!」と石原慎也が叫び、「雷に打たれて」へ。うまい。去年の中止の時、雷がすごかったんです。後半では石原慎也が「歌える?」と呼びかけ、みんなでシンガロング。

「夢みるスーパーマン」の頃には、いつの間にかだいぶ日が傾いたらしく、照明が美しく効き始める。空はいっそう茜色に染まっている。風が涼しい。1年前とは正反対の、天がSaucy Dogの側についた、最高のシチュエーションである。

撮影=桃子

撮影=桃子

「すごい年数やってる『MONSTER baSH』、そりゃ一回ぐらい雷で中止になったりするよな、と思ったりするんですけど。そういう苦い思い出があったり、『あいつうぜえ』とか思ったり、あるじゃん、生きてたら。でもそういう気持ちを乗り越えて、(参加者)みんなここに立ってるんだな、あなたの足で選んでここに来てるんだな、って……。俺が偉そうなこと言える立場じゃないんだけど、みんなと最後まで楽しめたらいいなあと思ってます。よろしくおねがいします」

と、後半にかけて、用意してきたセリフじゃなく今感じている本音をそのまましゃべっているんだろうな、ということが伝わってくる感じが、何か、とても良かった。

撮影=桃子

撮影=桃子

撮影=桃子

撮影=桃子

そんなMCを経て、8月1日にリリースしたての最新曲「スパイス」を聴かせる。ラストの「優しさに溢れた世界で」では、「みんな、元気残ってる? まだ声出せる?」と、もう一度、めいっぱいのシンガロングを、オーディエンスから引き出した。

「今日アンコールはないんだけど、来年の1月4日、初めて京セラドームでワンマンをします。みんなであけましておめでとうしようね」と、この時間まで残ったオーディエンスに伝え、Saucy Dogの1年越しのリベンジと、『MONSTER baSH』の1年越しのリベンジは、成功に終わったのだった。

撮影=桃子

撮影=桃子

(取材・文=兵庫慎司)

撮影=河上良、桃子

■初日のレポートはこちら
>香川『MONSTER baSH 2025』昨年の雪辱を晴らし、歌って踊る大団円に
ーー氣志團、aiko、SHISHAMO、RIP SLYMEら豪華集結の初日をレポート

■次のページは……『MONSTER baSH 2025』フォトギャラリー
レポートで掲載しきれなかったライブ写真やソロカットをたっぷりと公開!

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