香川『MONSTER baSH 2025』昨年の雪辱を晴らし、歌って踊る大団円にーー氣志團、aiko、SHISHAMO、RIP SLYMEら豪華集結の初日をレポート(写真104点掲載)
『MONSTER baSH 2025』
『MONSTER baSH 2025』8.23(SAT)香川・国営讃岐まんのう公園
2025年8月23日(土)・24日(日)の2日間にわたって、香川県・国営讃岐まんのう公園にて開催された中四国最大級の野外ロックフェス『MONSTER baSH 2025』。同イベントに、東京と関西からライターの兵庫慎司と鈴木淳史が参戦。本記事では初日のライブをピックアップして振り返りながら、それぞれの視点で『モンバス』の魅力をレポートする。
昨年は2日目の夕方、台風レベルの暴風雨に見舞われ、落雷の危険も高まったため、芝生広場は大トリのSaucy Dogを残して終了。MONSTERcircusエリアは、トリのアクト=SMA50周年&『モンバス』25周年企画のセッションの、最後のシンガー=綾小路 翔の、出演がかなわなかった。
その1年後。初開催から26年、主催/企画/制作のDUKEの創立から50年にあたる、2025年の『MONSTER baSH』は、初日のトリが氣志團で、2日目のトリはSaucy Dogである。出演アーティスト発表の時、「第0弾発表」として、まずこの2組が最初にアナウンスされた。「共に去年の雪辱を果たしましょう!」という、DUKE側からの呼びかけで出演が決まった、ということだ。
いい話です。自分はまだ歌っていないのに、ここで終了であることを、参加者たちに伝える役目を担った、團長(綾小路 翔)の姿を、去年目の当たりにしているもんで。
なお、Saucy Dogは昨年、出演の代わりに急遽楽屋でアコースティック・ライブを行い、生配信した。それも観たもんで、さらに、余計に、そう思う。というのもあります。
そんな2025年の『モンバス』・芝生広場の1日目=8月23日(土)は、STAGE空海のシャイトープと、STAGE龍神のmuqueの2組のオープニングアクト→『モンバス』プロデューサーDUKE定家氏の挨拶&注意事項→各ステージの名前や出演者の名前があしらわれたオープニング映像→10からカウントダウンが始まり、0と同時に特効がドカンと鳴り、カラフルなテープが飛ぶーーーという、恒例の光景でスタートする。
Hump Back 撮影=河上良
STAGE空海のトップは、Hump Back。初めて『MONSTER baSH』に出させてもらったのは2017年、自分たちを知っている参加者はほんの数人だったと思う、そんな時にライブハウスでうちらを見つけて、拾い上げてくれたーーと、林萌々子(Vo.Gt)。
「でっかい声で言うわ。うちらが大阪、Hump Back、『MONSTER baSH』、まかせろー!」と叫んで「拝啓、少年よ」を歌い始める。「恋をしよう」では「好きな人おる? みんな『せーの』で、ばりでかい声で好きな人の名前を叫ぼう」と呼びかけた。
撮影=河上良
「DUKE、50周年おめでとうございます、これからも一緒に旅を続けていきましょう」と、「僕らは今日も車の中」をDUKEに捧げる。その次に「母ちゃんになって『モンバス』帰って来たぜー!」という言葉をはさんで演奏されたのは、その「母ちゃんになったこと」を歌った「オーマイラブ」。<最後の最後は分からない 最愛産みたいってことくらい>というラインがある「僕らは今日も車の中」の次が、この曲。なるほど。アツい。
「みんなの顔見てたらやりたくなったんで、やってもいいですか?」と急きょ追加した「番狂わせ」を経てのラストは「月まで」だった。「8年前、MONSTERcircus+、15分のステージ。あの時にやった曲で終わります」と、林萌々子はこの曲を紹介した。もう一回言う。アツい。
マキシマム ザ ホルモン 撮影=浜野カズシ
出演自体が毎年恒例、そして香川県高松市出身ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)のお母さん=光枝さんがなんらかの形で登場するのも毎年恒例の、マキシマム ザ ホルモン。光枝さん、今年は4曲目の「ロック番狂わせ」の後、「香川のaiko」と名乗って画面に映し出される。DUKEの50周年を祝う言葉や、昨年は悪天候で最後まで開催できなかったことなどを口にしながら、なぜか感極まって涙ぐむ光枝さん。ダイスケはん、慌てる。
「シミ」で重く速く激しく始まり、説明なし一発勝負の「恋のおまじない」からの、トーキョータナカ(MAN WITH A MISSION)や早乙女光(氣志團)が乱入した「恋のスペルマ」で終わる全6曲。ナヲ(ドラムと女声と姉)も「DUKE50周年おめでとうございます。私も今年50周年なんで。同期同期、タメタメ!」と、お祝いの言葉を贈った。
PEDRO 撮影=河上良
最初のMCは「四国が誇る音楽祭り、私自身、今日が来るのをすごく楽しみにしていました」。最後のMCは「私が音楽を始めて最初に立ったフェスが『MONSTER baSH』でした。またここに帰って来て歌うことができて、うれしいです」。
と、必要最少限のことしか言わないさまに、却って本音であることがうかがえたアユニ・D率いるPEDROは、6曲を演奏。9月10日リリースのEP「ちっぽけな夜明け」のリード曲である新曲「1999」も、3曲目に披露する。
撮影=河上良
左からドラムのゆーまお(ヒトリエ)、ボーカル&ベースのアユニ・D、ギターの田渕ひさ子の3人が並んだフォーメーションから放たれる音も、飾りも虚飾もなく言いたいことだけをメロディに載せたリリックにも、同様の「必要最少限、だから本質的」なものを感じた。
しかし、それにしても、田渕ひさ子のギターってすごいよね。と嘆息しつつ、このあたりで、主にMONSTERcircusとMONSTERcircus+のレポート担当・鈴木淳史に、いったんバトンを渡します。
(ここまで 取材・文=兵庫慎司)
さて今年も兵庫さんからバトンを繋いでいただきまして、ここからは初日のMONSTERcircusエリアを書いていきます。まずは朝10:25。MONSTERcircus+。地元四国は高知のヤングバンドであるChimothy→。今や『モンバス』の顔である四星球はもちろんのこと、毎年しっかりと地元四国のバンドが活躍するチャンスに辿り着けるのは、地方フェスならでは。今年のChimothy→は初出場なだけあって、その喜びはひとしお。朝10:00前からのサウンドチェックが終わった後は、ステージ裏で本番ギリギリまで嬉しそうに写真や映像の撮影を行なっている。本当に初々しい。本番1分前、ステージ裏から気合い入れの声が聞こえてきて、いざ本番。ルーキーならではの元気いっぱいな登場からステージ前方にメンバー3人が横並びになり挨拶を。1曲目「エストレヤ」から「猫ニモマケズ」を元気いっぱいに鳴らしていく。
Chimothy→ 撮影=桃子
「遂にやってきました。やっと掴むことができました。ここに辿り着くまで数年かかったけど、みんなと掴んだ夢のステージ。このステージはゴールでありスタート。今日のために作った曲をやります!」と、松尾あかり(Gt.Vo)。気合いがほとばしるMCから「SUMMER DAYS」へ。今日のために曲を作ってくるなんて、本気の気概を感じる。そんな本気の気概を爽やかポップナンバーに詰め込み、「from四国高知、Chimothy→でした!」と去っていく。松尾が言う通り、このステージはあくまでスタートに過ぎないし、当然だが来年もステージが用意されているわけではない。我々が勝手に地元四国枠的なニュアンスで書くだけであって、そんなものは、どこにも存在しない。実力勝負あるのみの実力社会。ここからの1年もがむしゃらに頑張って、来年も出場権を勝ちとって欲しい。
離婚伝説 撮影=桃子
Chimothy→終わり、11:00になる前、すぐ横のMONSTERcircusでは離婚伝説のサウンドチェックが始まる。隣接する同じ野外とは違い、こちらは白いアーチ状のドーム型屋根で覆われている。11:10過ぎ、主催DUKEスタッフから挨拶があり、スクリーンに映像が流れ、観客は手拍子をしながら待つ。11:15。松田歩(Vo)が「まるで天使さ」を歌い、じっくりと聴かせていく。いくら屋根があるとはいえ、野外に変わりはなく、とても暑いのだが、その歌声に聴き惚れる。2曲目「本日のおすすめ」も松田の歌い出しから始まるが、こちらはポップでアップテンポナンバー。
撮影=桃子
続く「愛が一層メロウ」はイントロが鳴った瞬間から、曲名がわかってしまうキャッチーな強さがある。<愛が一層メロウ>と何度も繰り返して歌われて、観客も口ずさんでいる。1回聴いただけで忘れられないキラーチューンというのは、そう簡単に生まれるものではないが、この曲はヘビーローテーションしたくなる強い中毒性がある。気分が高まったところで、バラード「萌」。フェスでバラード勝負をするミュージシャンが大好きなのだが、楽しく騒いで踊りたいフェスキッズもいる中で、そう勝負するのは簡単なことではない。でも真っ向勝負の「萌」は、観客みんなが聴き入っていた。離婚伝説にとって初のドラマ主題歌となった最新曲「紫陽花」から「眩しい、眩しすぎる」を経て、ラストナンバーは「メルヘンを捨てないで」。別府純(Gt)のギターソロがゴリゴリに強く押し出されていて、終盤、松田が舞台袖にはけてからも、前方に出てきて弾きまくる。泣きのギターなんてよく言うが、泣きどころじゃない泣きまくってるギター……。別府が去ってからも、その残響は響き渡っていた。
超能力戦士ドリアン 撮影=桃子
11:55。再びMONSTERcircus+にて超能力戦士ドリアン。やっさん(Gt.Vo)・おーちくん(Vo)・けつぷり(Gt)が横一列揃い踏みで、サウンドチェックからXでのポストを促していく。トレンドやバズというSNSでの広がりを凄く意識するバンドであるが、それはキッカケにしか過ぎないということがよくわかったライブ。あっ、ここでまさかの小雨。でも、そんなの関係ないとばかりに大勢の観客が集まる。そして、やっさんは言う。
「いいライブをして四国で売れたい! 香川で売れたい!」
今やライブハウスでの人気コール&レスポンスになっている「いいですか?」→「興味ある!」も観客にばっちりハマっているが、この一連の行動現場を観ても、ドリアンは現場主義なことがよくわかる。なのにSNSも上手に操ろうとしているのだから、欲張りさんといや欲張りさんなのだが、良い欲張りさんであり、賢い欲張りさんである。その名もずばり『MONSTER baSH 2025』という曲まで作ってきて、盛り上げる準備万端。披露前は観客に人文字レクチャーもして、観客と一緒に盛り上げていく。で、こっから彼らの現場主義の本領発揮。『モンバス』に初出場ができたことについて、自分たちのSNSの盛り上がりについてもあえて触れてから、こう言い放った。
「何かが変わって出たではなく、何かを変えるために出ています」
決してSNS現象に頼ったりではなく、現場で何かを変えるために出ているという力強い決意。つまり、それは何かというと11月6日(木)高松DIMEでのワンマンライブ。その宣伝告知が記された段ボールパネル3枚を観客フロアに渡して、ステージから観て右手の物販エリア、そして左手のMONSTERcircusへと運ぶように指示する。
撮影=桃子
「これをソールドアウトするために出ています!」
DIME・オリーブホール・festhalleと高松のライブハウスをキャパ順に挙げて、そういったところで「当たり前にライブができるようになりたい」とも宣言する。あくまでフェスはキッカケにしか過ぎず、ワンマンライブに来てもらってなんぼというライブバンドの矜持を感じた。段ボール宣伝パネルは、すでに次のライブのため、MONSTERcircusにスタンバイしていた打首獄門同好会の大澤会長の手に渡る。後輩ライブバンドからのバトンを先輩ライブバンドが受け取ったようにも見えて、その光景は素敵であった。
「(モンバスは)マジで強いバンドしか出ていないんです。狭き門。そこのひと枠を任せてもらった責任もあるんです」
「いきものがかりと同じ編成」「カフェかと思ったら美容院だった」などなど愉快な曲タイトルが多いドリアンだが、やっていることは誠に武骨である。最後にはカメラマンを急遽ステージに呼び込み、大勢の観客をバックに撮影して、それを朝イチから盛り上がったとSNSにアップしたいと言う。段ボールアナログからSNSデジタルまで使いこなすドリアンは強い。
「何回挑戦してもソールドしなかったライブをソールドさせたい!」
最後まで高松DIMEワンマンライブの宣伝も忘れなかった。SPICEでもインタビューをしたことがある高松DIMEのバンドーエイジ店長が舞台袖でずっとライブを見守っていたのもグッときた。
バトンを受け取ったMONSTERcircusの打首獄門同好会は、ライブ中も何度も「いいですか?」→「興味ある!」というドリアンのコール&レスポンスを叫んでいた。ブツ切りではなく繋がっているフェスのライブというのは、観ていても物語性があって、とても見応えがある。
茶堂ステージへと向かう。お遍路さんが道中の疲れを癒すために憩いの場として設けられた茶堂をコンセプトにした場所であり、11年前に『モンバス』のためにわざわざ設営されたのだが、大昔から公園に存在していたような立派で雰囲気のある建物である。今年モンバス5回目となる私も個人的に大好きな場所であり、ゆっくり落ち着けるコンパクトでナイスなステージ。毎回、出演者登場の前にお遍路さんの格好をしたスタッフが出演者の名前が書かれた巻き物を広げて観客に見せてから、舞台後方に巻き物を飾るという演出もニクい。
小山田壮平 撮影=桃子
時刻は15:30。小山田壮平。andymori以来、15年ぶりの『モンバス』。1曲目からandymori時代の「ベンガルトラとウィスキー」だが、気になって調べてみたら15年前にも歌われていた。アコギで立ちながら歌うのだが、弾き語りというよりはバンドの時の勢いそのままのロックンロールライブ。前のめり感もあり、シャウトもいちいちたまらない。現在、福岡に住んでいることを話して、今朝は新幹線で向かったのだが、家を出る直前まで3歳の息子のオバケごっこに計10回以上付き合ったと明かす。そのパワーをもらったとも話して、息子が電車好きで「アンパンマントロッコ」も大好きという話から「電車に乗ってゆこう」も歌う。15年も経てば、人は色々変わるが、才能魅力そのままな上に幅を広げて戻ってきてくれるのは嬉しい限り。
「革命」から「すごい速さ」と、これまたandymori時代の曲を衝動そのままぶっ放す。「すごい速さ」も気になったので調べてみたら、やはり15年前に歌われていた。「まだまだ宴は明日にも続いていくと思うので」とラストナンバー「Sunrise&Sunset」へ。まだ日は暮れていないものの、確かに終盤には差し掛かっている。
菅原卓郎SESSION2025 撮影=桃子
16:30。茶堂といえば、この人と言いたくなる菅原卓郎(9mm Parabellum Bullet)の「菅原卓郎SESSION2025」。まずはひとりで登場して、「ここに来たってことはのんびりしにきたってことですよね。まずは準備運動がてら」と言いながらも、7月に配信リリースされたばかりの9mmの新曲「踊る星屑」へ。ひとり弾き語りとはいえ、9mm新曲を聴いて準備運動で終わるわけがない、聴いている方としては!
撮影=桃子
しっかり盛り上がり、ここからより盛り上がるためにもと呼び込まれたのは、熊本県出身の巨匠こと寺中友将(KEYTALK)。朝から吞んでいて、もちろんこの時も呑んでいたという巨匠。6月に菅原が一緒に弾き語りライブを行った際に誘ったという。明らかに予定が入っていそうなのに「空けます!」といって予定をガーンとずらしてくれたとか。一発目から9mmの「Black Market Blues」をぶちかます。流石にふたりで歌うと迫力がある。で、何故か巨匠からカラオケ提案があり、「MONSTER DANCE」を本当にカラオケでふたり熱唱。巨匠は観客エリアまで降りていき、木の長椅子に座る観客を立たせて、シャツまで脱いで上裸で大熱唱! その筋肉美にも驚いてしまう。
撮影=桃子
続いて、四国は高知県出身の八生。高知の美味しい日本酒「桂月」の話を菅原がしながら朗らかに喋り合うふたり。八生はセッション経験があまりないと不安そうだが、いざ9mmの「名もなきヒーロー」を歌い出すと、そのパワフルな声は迫力満点。明日MONSTERcircus+出演のお知らせもして、菅原いわく「痛快な曲」の八生「しゅらばんばん」へ。浮気された女性の歌だが、菅原が歌うと、また違う魅力がある。
撮影=桃子
そして、14:35からのSTAGE龍神でのPEDROとしてのライブを終えたばかりのアユニ・Dが現れる。9mmの「幻の光」を一緒に歌うが、アユニの個性ある声が印象的であった。最後のセッション相手は田邊駿一(BLUE ENCOUNT)。巨匠に引き続き熊本県出身。「19歳の時から好きな先輩が地元の後輩とカラオケを歌ってる!」と衝撃ぶりを興奮して話す。
撮影=桃子
撮影=桃子
今日楽屋で合わせたばかりでぶっつけ本番というセッションを、9mmの「カモメ」から歌い出す。毎年、関係性深い人から初めましての人まで幅広い人選で、ここでしか聴けないセッションが観られるのは、最早『モンバス』の見どころになってきている。翌日の茶堂ステージ「Taku Muramatsu four color sessions」での例えば山田将司(THE BACK HORN)もそうだが、他のステージには出演しておらず、この茶堂セッションステージでしか観られない出演者が登場するのも貴重である。
SHISHAMO 撮影=河上良
17:25。STAGE龍神。トリはSHISHAMO。宮崎朝子(Gt.Vo)、松岡彩(Ba)、サポートドラマー のyucco(the dadadadys)がステージで目を合わせてライブが始まる。yuccoのロックンロールなドラムが鳴り、松岡のベースがうなり、そこに宮崎がギターを弾き歌っていく。勢いよく駆動していくという意味でのドライブ感でノリまくっている。「夏恋注意報」→「君と夏フェス」と夏ナンバー2連発。楽しくないわけがない。少し涼しくなったと思ったらステージ上は凄い西陽だったらしいが、そんなのものともしない。
宮崎は『モンバス』に初出場したのが2014年のギリ10代の時であり、STAGE龍神のオープニングアクトだったと明かす。今年も帰って来れたこと、そしておいしいうどんを食べてaikoのライブを観て、むちゃくちゃ楽しんでいるとも話す。そんなある意味ホームとも言える場所でも、「初めて観る方もいるので精一杯演奏します!」という精神が素晴らしい。「夏の曲を演奏します」と「ハッピーエンド」。最初はスローで始まっていく壮大なミドルバラッド。“馬鹿みたいな暑さ”の中で楽しいだけではない憂いのある夏の歌が本当に沁みる。
撮影=河上良
後半戦。「元気に行けますか?」と宮崎が言った後に、追い立てるようなメロディとビートが炸裂する「最高速度」。その速度感はエグい……。最高速度と言っているからエグい速度で当たり前だが、それにしても、この馬力はエグい。ステージ前方のステップに乗ってギターソロを弾く宮崎だが、その音は重厚である。そのまま明るく拓けた「明日も」へ。鉄壁鉄板という言葉しか出て来ないが、ちゃんと痛みをわかってくれた上での明るい拓きなので、しっかりと聴く側に寄り添ってくれていると思える。
「明日も」と歌いながら、ラストナンバーは「明日はない」。気持ち良すぎる繋ぎである。兎にも角にも3人の演奏姿が格好良いし、宮崎の声は可愛らしいのに凄みも備え合わさっていて言うことなし。天晴れ見事な龍神トリ。いよいよSTAGE空海、大トリ氣志團へとバトンが繋がれた。こちらも兵庫さんにバトンを繋げさせていただきます!
(ここまで 取材・文=鈴木淳史)
aiko 撮影=河上良
少しさかのぼって。STAGE空海の15:15からは、さあこの時間が来ました、デビュー27年にして『モンバス』初出演、aiko。
すごかった。1曲目の「雲は白リンゴは赤」で、ステージ横のLED画面の端っこまでダッシュし、「milk」のイントロで「みなさんはじめましてaikoです!『MONSTER baSH』に出れてめっちゃうれしいです! よろしくおねがいします!」と、悲鳴レベルの絶叫。誰でも知っている曲だらけの超ベテランで、フェスに出ること自体がニュースになるような超大物であるにもかかわらず、そんな、デビューしたばかりの新人みたいな全力のパフォーマンスなのだ。最後までそれでやりきった、どころか、曲が進むごとにヒートアップしていく。
撮影=河上良
こんなの引き込まれるに決まってる、参加者たち。「花火」では、大きく振られる腕の波で芝生エリアが埋まり、逆に「相思相愛」では全員固まる(=じいいーっと集中して聴く)。「シアワセ」ではまた腕の波、そして「ボーイフレンド」では大きなシンガロング。
ラストの「ストロー」でも、ステージ中央から端まで、端から中央まで、歌いながら何度もダッシュするaiko。このライブにおける移動距離、渋谷から下北沢くらいになっているのではないか。終わってステージを下りた瞬間に倒れていても驚かない、それくらいのテンションだった。
でも、その後、会場のあちこちに移動して、RIP SLYMEやSHISHAMOなど、他のアクトのライブを楽しんでおられる姿を、何度かお見かけしました。タフ。
RIP SLYME 撮影=砂流恵介
1年間限定で5人が再集結、春〜夏〜秋にかけて各地のフェスに出まくり、秋にはツアーも控えているRIP SLYMEは、「STEPPER’S DELIGHT (2025 VER.)」で始まり「Super Shooter」「熱帯夜」、MCをはさんで最新曲「Wacha Wacha」、そして「JUMP」へと続いていく、この夏の鉄板のセットリスト。
「Super Shooter」ではSUさんがかぶっていたヘルメットを放り投げ、「JUMP」ではDJのFUMIYAもマイクを握って5MC状態になる。次の1曲が始まる度に、ステージから放たれるエネルギーも、それを受けるオーディエンスの歓喜も、どんどん高まっていく。
5人再集結後の最初の曲「どON」は、RYO-Zの「くどいようですが言っときます。RIP SLYME IS BACK!」という宣言から始まった。「楽園ベイベー」では、イントロが始まった瞬間にオーディエンスからドオオッと歓声が上がる。ラストの「JOINT」では、MONSTERcircusエリア一面が、高速回転するタオルで埋まった。
撮影=砂流恵介
森山直太朗 撮影=桃子
そのMONSTERcircusのトリ、森山直太朗は、サウンドチェックからセッションに入った(ように見える演奏だった)バンドの音に乗って、軽やかなステップで登場。その曲がインストのまま終わると、ピアノ以外のバンドメンバーは、楽器を手放して腰を下ろす。そして森山直太朗が、アカペラで、ひとりで歌い始めたのは「さくら」ーーーという、素敵極まりない始まり方で、オーディエンスをがっちりロックする。
1曲目が「さくら」で2曲目がこれか! な「生きとし生ける物へ」。まるでミュージカルのように踊りながら歌った「すぐそこにNEW DAYS((歌い終わって「今しがた、ちょけすぎて、モモ裏をやりました」と報告)。「初めて『MONSTER baSH』に馳せ参じました、最高です! この気分に浸りながら、新しい曲を」と歌った新曲「あの世でね」。この季節に歌われるとたまらない「夏の終わり」ーーーと、惜しみなく名曲を連打していく森山直太朗。
「あの海に架かる虹を君は見たか」と「バイバイ」で本編を終え、アンコールがかかる。そこで参加者にプレゼントされたのは、「どこもかしも駐車場」と「生きてることが辛いなら」。強烈な歌ばかりの森山直太朗の中でも、特に強烈な2曲だった。
撮影=桃子
その森山直太朗とほぼ同じ時刻に、お互いをMCでイジり合っていたのは、綾小路 翔。というわけで、芝生エリアの1日目のトリは、(團長が)去年の雪辱を果たすべく、この時間をまかされた氣志團である。
バイクのエキゾースト・ノイズと叶 亜樹良のドラムソロが重なる中、赤い族車にまたがって團長が登場。アクセルを吹かしてリズムを刻み始めると、そこにドラムが加わってセッション状態になる。そして、メンバー+微熱DANJIが揃ったところで、セッションからノンストップで「喧嘩上等」へーーーという、シビれるとしか言いようのない始まり方である。
氣志團 撮影=河上良
團長のボイス・サンプルが鳴り響く「房総魂」。ギターソロを弾くトミー(西園寺 瞳)とランマ(星グランマニエ)を台車に乗せて移動させる「スウィンギン・ニッポン」。振付を教えてみんなで踊る「萌え萌えROCK’N’ROLL」ーーーと、いつものことながら、質・量共に有り余るほどのパフォーマンスで、オーディエンスを、言わば「当事者でいるしかない」状態に陥れていく。氣志團がどういうバンドなのか知らなさそうな人たちが、特に楽しんでいるように見える。
撮影=河上良
「『MONSTER baSH』、久しぶりに帰ってきました!うれしい!」「しかも、どういうわけかSTAGE空海の大トリ! 荷が重い!」「2002年に初めて『MONSTER baSH』に出してもらいました」「『MONSTER baSH』は我々にとって青春で夢だった」「四国の音楽好きなお友達の青春だと思います」「俺はみんなの好きでできているこの『モンバス』が大好きです」「俺たちはスピリチュアル系じゃない、スピリット系です。魂を燃やしていくぜ!」などなどの、これもまた情報も感情も過多なMCを経て、空が夕焼けに染まる下で「落陽」を歌う。二度目のシビれるシーン。狙ってこの時間にこの曲を置いたんだろうけど、それが最高にハマった瞬間だった。
撮影=河上良
「ここにいるみんなひとり残らず連れて行く。どこへ? 決まってんだろ、ピリオドの向こうへ!」からの「One Night Carnival」で参加者みんなをピークまでひっぱり上げてから、「最後はみんなで歌って踊ってお別れしようぜ!」と、「ジャンボリカーニバル」(全員楽器を置いて、メンバーの着ぐるみたちも加わって踊る)。
以上で、華やかに、かつ楽しく終わるのかと思ったら、「俺たちのソウルソング、歌おうぜ!」と追加されたのは、四国のスーパーマーケット・マルナカのテーマ曲「ナカマカナ」のカバーだった。なんて氣志團なんだ。参加者に「♪ナカマカナ」と歌わせた團長、「俺たち、ナカマだよな、サンキュー!」と、族車に乗って去る。
さらに、アンコールあり。「マイ・ウェイ」のカバーと、「もう一回行こうか!」とダメ押しで再度「ナカマカナ」、の2曲だった。
最後にオーディエンスに「『モンバス』、最高!」と叫ばせて、團長のリベンジは大成功に終わり、氣志團が去ったステージの上空を、何発もの花火が彩った。
(取材・文=兵庫慎司)
撮影=河上良、桃子
撮影=桃子
■2日目のレポートはこちら
>香川『MONSTER baSH 2025』最高のシチュエーションとシンガロング
ーーSaucy Dog、SUPER BEAVER、あいみょんら豪華集結、四星球のDUKE 50周年祝祭など2日目レポート
■次のページは……『MONSTER baSH 2025』フォトギャラリー
レポートで掲載しきれなかったライブ写真やソロカットをたっぷりと公開!