HY 25周年を迎えて“今が一番いい”バンドの姿を見せつけた、ツアーセミファイナル東京公演を振り返る

レポート
音楽
19:00
HY 撮影=Tetsuya Yamakawa

HY 撮影=Tetsuya Yamakawa

画像を全て表示(22件)

HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025
2025.9.7 東京・Kanadevia Hall

およそ1年間をかけて全国44ヵ所を回る、結成25周年を祝う旅もいよいよ大詰め。9月7日、東京・Kanadevia Hallで『HY 25th Anniversary BEST!! Kary TOUR 2024-2025』のセミファイナル公演が開催された。

「東京、楽しんでいきましょう!」(新里英之/Vo,Gt)

 25年の歩みを振り返る懐かしい写真と、地元・沖縄を中心に「25年間でお世話になった25組」への挨拶回りを収録したオープニング映像に続き、客席を通ってメンバーが登場するサプライズ演出に、ホール内は早くもお祭り騒ぎだ。ステージ左右にシーサー、後方にはフラッグガーランドが飾られ、バースデーケーキのロウソクに見立てた25本のライトが光る。手作りパーティー感満載の華やかな雰囲気の中、まずは「モノクロ」「てがみ」「大大大好き」と、アップテンポの連続投下でぐいぐい盛り上げる。サポートギターのとっしー、キーボードのにっしーを加えた6人の、長いツアーで培った一体感はばっちりだ。

「今日という日は1日しかありません。思い残すことなく、心を開いて受け入れてください」(新里)
「最後の最後まで楽しんでいきましょう!」(許田信介/Ba)
「みんなの心を抱きしめるように、ドラムを叩こうと思います」(名嘉 俊/Dr)
「初めての方の心もつかめるように、心を込めて歌いながら、いつも応援してくれるみんなにも愛を届けたいと思います」(新里)
「今日初めてHYのライブに来た方は? 二列目のあなた。隣の女性の方の彼氏? お友達?(ニヤリ)」(仲宗根 泉/Key,Vo)

メンバーMCでは、イーズがお客さんとのやりとりで笑いを巻き起こし、再び演奏へ。「風」は沖縄・うるま市の美しい自然をスクリーンに映しながら、「ワラッタラッタ」は全員でタオルを回しながら、「三月の陽炎」はヒデの弾く三線の音色を中心に、沖縄の香りをたっぷりと届けながら。今回のツアーは昨年リリースされた最新ベストアルバム『LOVE STORY ~HY BEST~』の楽曲をメインに、歌詞をしっかり聴かせるラブソング中心のセットリストだ。

「ここからは、感謝の気持ちを込めて、みんなの近くに行って、アコースティックで演奏します」(新里)
「私はもっと近くに行きます!」(仲宗根)

ステージ前方にアコースティックセットが用意される中、イーズが客席に降りて観客に話しかけ、大歓声を浴びる。自由で自然体、これがHYのライブスタイル。アコースティックの選曲は、ライブで歌うのは16年振りだという「I JUST DO IT FOR YOU」と、「あなたを想う風」。ラブソングでありながら、「あなたは一人じゃないよ」と励ますエールソングでもある、それがHYのソングスタイル。俊の叩くカホン、イーズの太く頼りがいある声、ヒデの伸びやかなハイトーンが重なり合い、唯一無二のハーモニーを作り出す。

中盤のお楽しみは恒例の「イーズーコーナー」で、メンバー全員参加の寸劇で盛り上げる。「もしも未来に行けたら?」というテーマのドタバタ喜劇で、俊と信介はノリノリの演技で特に楽しそう。そして、すったもんだの挙句の結論は「今が一番いいんだよ」。笑わせながらも最後にちょっぴりシリアスな後味を残して「君と未来を」に繋げる、これがHYのメッセージ。親子席が設けられて、客席にたくさんいる子供たちは、HYの思いをどんなふうに受け止めただろう?

「HYのライブ、後半になります。この曲から、心を込めてスタートします」(新里)

イントロのシンセサイザーの響きだけで大きな拍手が沸き上がる、「366日」はイーズの歌にヒデのコーラスを加えたオフィシャル・デュエット・バージョンで。オリジナルのリリースから17年、アルバムの中のただの1曲が、やがて数多くのカバーを生み、ドラマや映画にもなった「366日」の物語は、そのままHYの歩みと重なる。「歌って!」とイーズにうながされ、大合唱が会場を包み込む。歌の力は時を超える。

うちなーの歌を忘れるな。「琉球國祭り太鼓」のメンバーと共に、エイサーのリズムに乗って歌う沖縄賛歌「帰る場所」は、ダイナミックに重厚に。イーズと信介が恋人役を演じる寸劇付きの「渚の恋は虹色模様」は、明るく楽しくコミカルに。ヒデが歌詞を飛ばして苦笑いも、ご愛敬だ。ヒデが「みんなの思い出の曲を」を前置きして歌う「AM11:00」は、年を経ても色あせないピュアな恋心と共に。そして「降福丸」は、明るいリズムに乗って全員の手振りとダンスで一体感たっぷりに。ノンストップで一気に飛ばし、イズが笑顔で「着席!」と号令をかける。ライブはそろそろ終盤だ。

「映画『366日』は、ただの恋愛映画ではありません。いろんな人の人生や友情、家族のことを描いた素敵な映画になっています」(仲宗根)

映画の紹介をしながら、イーズが自身の人生の物語を赤裸々に語るMCに、まっすぐに聴き入る観客。様々な出会いと別れを繰り返し、その思いを歌詞に込めた「恋をして」は、映画の主題歌として、「366日」のアンサーソングとして、HYの歴史に加わった一番新しい名曲だ。さよなら、ありがとう。すべてを受け止めて前を向く、イーズのたくましい歌声が心を揺さぶる。

「ここから盛り上がっていきましょう!」(新里)

さぁここからは、フィナーレへ向けて全力で突っ走るだけ。「明日種~アシタネ~」のスピード感あふれるリズムに乗って、揃いの振り付けとコール&レスポンスで盛り上がる。「子供たち!」という呼びかけに全力で応える、たくさんの可愛い声にHYの未来が見える。みんな大好き「ホワイトビーチ」ではヒデがステージから駆け下りたと思ったら、なんと3階席に登場して観客の真ん中で歌ってる。そのまま2階、1階、そして再びステージへと駆け戻るヒデに送られる大声援。みんなを楽しませるためならとことんやる、これがHYのパフォーマンススタイル。

「次の曲が最後です。今日来てくれた人たちに、LOVEを届けたいと思います」(新里)

僕達は愛から生まれてきたんだ。『LOVE STORY ~HY BEST~』で初CD化された「LOVE」もまた。ライブでこそパワーを発揮する特別な1曲だ。観客の中から選ばれた二人の名前を歌いながら、全員でLOVEを届ける素敵な時間。二人目に選ばれたのは、たぶん小学生くらいの女の子。彼女は今日この日のこの瞬間を、きっと一生忘れないだろう。

鳴りやまない手拍子に呼び戻されてのアンコールは、「Song for...」「NAO」「あなた」の3曲を一つに繋げたバラードメドレー。イーズの歌の迫力と説得力、優しさと力強さがたっぷり楽しめる至福の時間だ。HYの真骨頂はバラードにあり。そして本当のラスト「フェイバリットソング」は、ライブでのみ聴ける特別な1曲で、陽気なカチャーシーのリズムと威勢のいい掛け声でぐいぐい盛り上がる。今度はイーズが客席に駆け下りて、アリーナと2階の観客の目の前で歌ってる。最後はヒデが「ファイナルの沖縄に繋がるように!」の掛け声で、観客全員参加の大ジャンプが見事に決まって10点満点のフィナーレ。アリーナもバルコニー席も、どこを見渡しても笑顔しかないハッピーエンド。揃って記念写真に収まるメンバーの顔も、充実感でいっぱいだ。

この日の東京公演が終わると、25周年ツアーはいよいよ残すところ1本のみ。その、9月21日の沖縄公演(沖縄コンベンションセンター展示棟)は、全国の映画館でライブビューイングされることが発表されている。さらに、2026年2月23日には、東京ガーデンシアターで一夜限りのスペシャルライブ『HY 25th Anniversary「BEST!! Special TIME TRIP」』の開催も決まった。楽しい時間はまだまだ続く。合言葉は「カリー(乾杯)!」だ。現場で、ライブビューイングで、25周年を迎えて“今が一番いい”HYのライブを体感してほしい。

取材・文=宮本英夫 撮影=Tetsuya Yamakawa

ライブ情報

HY 25th Anniversary「BEST!! Special TIME TRIP」
2026年2月23日 東京ガーデンシアター
開場 16:00/開演17:00予定


プレオーダー四次先行
9月19日(金)18:00~9月28日(日)23:59
イープラス https://eplus.jp/HY/
シェア / 保存先を選択