新国立劇場、劇作家・演出家・翻訳家であるアヤ・オガワの自伝的作品『鼻血─The Nosebleed-』を上演
海外招聘公演『鼻血─The Nosebleed-』
2025年11月20日(木)~24日(月・休)新国立劇場 小劇場にて、『鼻血─The Nosebleed─』が上演される。
2022年上演のフランス・オデオン劇場『ガラスの動物園』、2025年上演のチェコ・ブルノ国立劇場『母』に続く、海外招聘公演として、米国の劇作家、演出家、パフォーマーであるアヤ・オガワの作・演出による『鼻血 -The Nosebleed-』。
"The Nosebleed"ワシントンD.C.公演 (C)DJ Corey Photography
本作は、2017年より長いディベロップメント期間を経て21年秋にニューヨークのジャパン・ソサエティにてワールドプレミアを迎え、22年夏にはリンカーン・センター・シアター内のクレア・トウ・シアター、23年4月にはワシントンD.C.のウーリー・マンモス・シアター、そして24年1月から2月にかけて、ミネアポリス、ロサンゼルス、コロンバスの3都市を回る米国ツアーを実施。22年にはオフブロードウェイなどで上演された優れた舞台に与えられるオビー賞を受賞した。
“The Nosebleed”ロサンゼルス公演 (C)Angel Origgi
「失敗」をテーマに生まれた本作品は、アヤ・オガワの自伝的な戯曲であり、亡くなった父親との複雑な関係を描いている。波乱万丈で不条理かつユーモアに満ちた一連のエピソードを通して、オガワは自分と父親との間に横たわる、文化や世代間のギャップ、そして同時に親として子どもと直面する問題を明らかにしていく。このユーモアにあふれ、優しく、独創的な作品は、「自分がやったこと、やらなかったことで間違っていたこと、後悔していること」がどのように受け継がれ、(次の世代に)伝わっていくのか、そして赦しを得るために何が必要なのかを問いかけていく。
“The Nosebleed”ロサンゼルス公演 (C)Angel Origgi
本作の魅力はいくつかあり、まずはオープニングは非常にユニーク。キャストが登場し、次々に自身の「失敗談」のシェアをしていく。これは、アヤ・オガワいわく「作品に入るための"儀式"のようなもの」。そして、それはキャストにとどまらず、観客にも。挙手制で選ばれた観客の代表者に「失敗談」をシェアしてもらう、とのこと。米国上演時は、観客の話がなかなか終わらないという珍事件もあったそう。果たして、新国立劇場上演時はどうなるか!? シェアしてもらう「失敗談」はもちろん日本語でOK。蓋を開けてみないとわからない、ドキドキのライブ感を楽しむことができる。
"The Nosebleed"ワシントンD.C.公演 (C)DJ Corey Photography
そして、観客とコミュニケーションをとるシーンがたくさんある。劇中、写真のように「この中で〇〇な人、手を挙げて」とキャストからお客様に質問が投げかけられるシーンも度々ある。キャストと観客の相互コミュニケーションを重ね、劇場はどんどんあたたかく、アットホームな空間へ。舞台上で起こる出来事が、どんどんとまるで自分のことのように感じられていく。
“The Nosebleed”ロサンゼルス公演 (C)Angel Origgi
“The Nosebleed”ロサンゼルス公演 (C)Angel Origgi
さらに、クライマックスに出てくる、葬儀のシーン。お骨に見立てているのは、シュレッダーされた紙。挙手制で選ばれた8名の観客に、舞台上に来てもらい、「お骨上げ」をする場面も。シュレッダーされた紙も実は観客が関わる重要アイテムだそうだが、それは観てのお楽しみ、とのこと。観客の存在があってこそ、成立する美しく、あたたかなシーン。あなたも出演者のひとりになってみてはいかがだろうか。
"The Nosebleed"ワシントンD.C.公演 (C)DJ Corey Photography
作家のアヤに紹介された4人の俳優がそれぞれの「失敗談」を語る。やがて彼らはそれぞれ「アヤ」を演じながら観客に問い始める。
「『バチェラー』という恋愛リアリティ番組を見たことがありますか?」
番組で描かれる男性とその父親の難しい関係。その関係にまつわる「失敗」がアヤ自身の親として、そして子どもとしての失敗を思い出させる。面白おかしく、ほろ苦い失敗の数々。しかし、一番大きな失敗は、父親が亡くなった時にお葬式もあげなかったこと。
次々に観客へ投げかけられる問いを通して紐解かれていくのはアヤと、無口で冷たい昭和の父親との相いれなかった親子関係。亡くなってしまった父との関係はこのまま「失敗」としてアヤの中に残り続けるだけなのか…。
作・演出・出演 アヤ・オガワ メッセージ
アヤ・オガワ (C)Darren_Cox
This play is a very intimate story from me, someone who straddles different cultures and communities. I’m only able to share this story through the bodies of my most trusted collaborators. Bringing this play to Japan might be one of the scariest things I have done as an artist. How will Japanese audiences receive this story? I hope that the care this company puts into the play will deliver its essence to your heart.
この作品は、異なる文化やコミュニティの狭間に立つ私自身から生まれたとても内面的な物語です。信頼できる仲間たちの身体を通してこそ、この物語を伝えられます。この作品を日本に持ってくるのは、アーティストとして今までで一番怖い挑戦かもしれません。日本の皆さんがこの物語をどう受け止めるのか? このカンパニーが作品に込めた思いによって、この作品のエッセンスがあなたの心にも届くことを願います。
出演者メッセージ
■ドレイ・キャンベル
ドレイ・キャンベル
Every time I perform in The Nosebleed, I learn a little more about myself and, I think, about humanity, vulnerability and the power of failure. I love presenting The Nosebleed as a gift to each new audience. I’m especially excited to see how people in Tokyo will respond!
『鼻血―The Nosebleed―』を演じるたびに、自分のことや、人間らしさ、弱さ、そして「失敗」の力について新しい発見があります。私はこの作品を、毎回新しいお客様へギフトとしてお届けするのが大好きです。東京の皆さんがどんなふうに反応してくださるのか、とても楽しみにしています!
■アシル・リー
アシル・リー (C)Carlos Montano
Performing The Nosebleed always feels so special because we get the chance to connect directly with (and even move alongside) the audience through it. When I joined the ensemble, it felt like being welcomed into a family and a legacy all at once. My hope is that people coming to the show can feel that sense of welcoming as well.
『鼻血―The Nosebleed―』を上演するたびに、いつも特別な気持ちになります。観客の皆さんと直接つながることが(そして一緒に動いてみることも)できるからです。このカンパニーに入ったときに、家族にそしてその歴史に迎え入れられたような温かさを感じました。観に来てくださる皆さんにも、その温かさを受け取ってもらえたらいいなと思います。
■クリス・マンリー
クリス・マンリー
I have loved being a part of this show. I have performed it over 50 times and am still moved by each performance. Every time I watch it, I am grateful for the time I have with the loved ones in my life. I forget the trivial annoyances of life and am reminded of what is important in my life. This play makes me laugh, cry and feel full. I’d love for you to see it and fill yourself up.
この作品に関われて本当に幸せです。これまでに50回以上演じていますが、毎回心を動かされます。観るたびに、大切な人たちと過ごす時間のありがたさを感じ、日々の些細な煩わしさを忘れて自分の人生にとって何が大切かを思い出させてくれます。この『鼻血―The Nosebleed―』は、笑って、泣いて、心がいっぱいになる作品です。ぜひ皆さんにも観ていただいて、その気持ちを感じてもらえたら嬉しいです。
■塚田さおり
塚田さおり (C) Aya Ogawa
ほこりまみれの疑問やガラクタになり果てた記憶の数々を一斉在庫整理。そしたら何とも眩しい光が差してきた。というイメージでしょうか。当初からおつき合いのあるこの作品。7年経ってもまだ泣かされます。日本公演の実現に鳥肌と武者震い、深呼吸の繰り返しです。
■カイリー・Y・ターナー
カイリー・Y・ターナー
Being part of The Nosebleed company has been in my top 5 of favorite life experiences of all time! The cast has become more family than co-workers and although the story is specific and personal to Aya, I can very much relate and resonate with so many moments!
『鼻血―The Nosebleed―』のメンバーでいられることは、私の人生の中で5本の指に入る素敵な経験です!キャストはもはや同僚というより、家族のような存在になっています。この物語はアヤ個人のとても限定的な物語ですが、私自身、いくつもの場面に強く共感し共鳴しています。
公演情報
<英語上演/日本語字幕付>
2025年11月20日(木)~24日(月・休)新国立劇場 小劇場
【作・演出】アヤ・オガワ
【美術・衣裳】鄭 智安
【照明】姚 愛淑
【音響】片山 萌
【舞台監督/プロダクションマネージャー】黄 懐萱
【カンパニーマネージャー/プロデューサー】ジョン・デルガーディオ
【字幕翻訳】広田敦郎
【舞台監督】川除 学
【技術監督】友光一夫
【芸術監督】小川絵梨子
【主催】新国立劇場
【料金(税込)】
A席 7,700円/B席 3,300円/Z席(当日)1,650円
【
新国立劇場ボックスオフィス TEL:03-5352-9999 (10:00~18:00)
新国立劇場Webボックスオフィス https://nntt.pia.jp/
【新国立シアタートーク】
日時:2025年11月23日(日・祝)終演後
会場:新国立劇場 小劇場
出演:アヤ・オガワ、広田敦郎、塚田さおり
司会:中井美穂