《連載》もっと文楽!~文楽技芸員インタビュー~ Vol. 13 吉田玉佳(文楽人形遣い)

インタビュー
舞台
2025.11.13


緊張感ある人形遣いを目指して

玉佳さんは現在、兄弟子の左遣いを勤める一方、去年9月には、若手人形遣いの吉田玉延と桐竹勘昇が大役の主遣いに挑んだ若手人形遣いを観る会「東京二人会」では、30歳近く下の後輩である二人を左遣いとして支えた。

「勉強会とはいえ、あまりの大役で、やらせて良いのかという声も多くあったんです。しかし、それぞれの師匠が許可されていましたし、何とかお客様に観ていただけるために、僕は協力したいと考えました。上手くなんてできるわけがない大役ですが、やってみて、自分はまだまだできないのだと知る経験も大事だと思うんです」

後輩たちには普段から色々な相談や質問をされるそう。慕われているということなのだろう。

「僕も言うことは言うのですが、あまりキツい言い方はしないので、よく『教えてください』と来られます。門下の如何を問わず(笑)。僕らの時代は、あまり直接教えてもらうことはなく、例えば頬被りの結び方なども、師匠方がやっているのを見たり人形を潰す(解体する)時にあれこれ考えたりして覚えていきました。あの頃は一人で師匠の作業をずっと見ていることもできたんです。でも、今の足遣いはどういうわけか仕事が多くて、なかなかそういうことができないんですよね」

今年3月、還暦を迎えた玉佳さん。節目の年をまもなく終える今の心境を聞いた。

「つい最近まで若手会で大役がついたと喜んでいた感覚です。歳だけ取ってしまいました。これからどんどん大きな役をこなしていけたらと思っています。保名のような柔らかい役にも挑戦して、師匠から学んだことを実践してみたいですね。昔、太夫さんから、舞台に玉男師匠が出てくるとピンと緊張感が走ったと聞きました。僕も良い意味で緊張感ある人形遣いを目指したいです」

2023年2月文楽公演『国性爺合戦』楼門の段より。 提供:国立劇場

2023年2月文楽公演『国性爺合戦』楼門の段より。 提供:国立劇場


 

≫「技芸員への3つの質問」

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