福岡『CIRCLE'26』トリのZAZEN BOYS、うみなか10年ぶりのハンバート ハンバート、米からGinger Rootら集結、胸いっぱいの濃厚な初日を振り返る
『CIRCLE'26』2026.5.16@福岡・海の中道海浜公園 野外劇場
今年も『CIRCLE』の季節がやってきたので福岡へと向かう。2007年に海の中道海浜公園で初開催。翌年には東京で開催されたり、そこから2012年開催まで空白の時間があったりと歴史を積み重ねて、今年は20年目という節目の年だなと勝手に想いを馳せていた。個人的には、マリンメッセ福岡B館で開催された2022年度からライブレポートを担当しているので、今年は5年目。2023年度からは海の中道海浜公園で開催されており、もちろん今年も海の中道海浜公園へ。
5月16日(土)初日。もはや行き慣れてきたと言っても過言ではない博多ポートタワーが目印の博多港から市営渡船に乗って、西戸崎渡船場まで約15分の船旅から始まる。そこから海の中道海浜公園に入り、野外劇場まで徒歩約20分。電車で向かうこともできるが、会場が海の中道海浜公園と言うからには、今年も海を体感したいと思って、4年連続で迷わず市営渡船に乗る。船で海を感じながら向かうフェスというのは、改めて本当に稀有だと思うし、何よりも観客の皆様も朝から嬉しそうに乾杯したりしている。
9時40分発の船に乗ったので、10時過ぎには海の中道海浜公園内に到着していた。船でも電車でもシャトルバスを含む車でも市内から全く遠さを気にすることなく訪れられる。野外フェスだがピクニックなどのレジャー感覚で気軽気楽なのは何よりの利点。海や公園内の木々など自然を感じられるが、あくまで都市型フェスというのは唯一無二ではなかろうか。
11時からのライブを前に、福岡を拠点に活動するラジオパーソナリティの栗田善太郎がCIRCLE STAGEで前説を務める。前説ながら約15分くらい時間をかけて丁寧に話している。まるで取説(取扱説明書)。ステージ真ん前のスタンディングゾーン、その後方の座りながら観れるエリア、そのもっと後方のテントエリアと全ての人たちが笑顔で聞いている。
そして、その中には子供たちの姿も。とにかく『CIRCLE』は子供が多い。だから、『トヨタカローラ福岡 Presents コドモディスコ・キッズエリア~トヨヨとカロロの森〜』エリアもあるが、ちょうど木々に囲まれた日陰の場所で、シャボン玉マシーンや塗り絵や子供用の楽器で楽しめる。大人と子供の共存が窮屈や混雑を全然感じることなく穏やかに緩やかに実現ができているのも、『CIRCLE』の大きな特徴では無かろうか。さて、今年も私の『CIRCLE』ライブレポートは、記録というよりは記憶を辿りながら、鈴木が覗いた『CIRCLE』的紀行文として全体的に感じたことを綴っていくので、最後まで読んで頂けたら幸いです。
D.A.N.
11時・CIRCLE STAGE。トップバッターはD.A.N.。櫻木大悟(Gt.Vo.Syn)・市川仁也(Ba)・川上輝(Dr)の布陣だが、市川は座りながらベースを弾いており、そういった立ち位置からだけでも興味を惹かれる。1曲目「Daydreaming」は、まさにドリーミーな楽曲であり、その神秘的な雰囲気に飲み込まれ、ただただ凝視する。チルアウトどころか、観ているだけで脳がとろけるような気持ち良さ。
3人はストイックにストロングスタイルで音を鳴らしていく。ずっと英詩に耳を傾けていた気分であっただけに、「Ghana」でのリズミカルなビートに日本語詞が乗る展開は目新しく高揚する。ラストナンバーは最近リリースされた「Purple Sunshine」。全体的にたゆたう水の音楽のような世界であったが、櫻木の人懐っこいMCでのしゃべりが合わさるのも良きブレンドであった。
思い出野郎Aチーム
12時・KOAGARI STAGE。ステージ下手側には簾がかかった畳の座れるスペースもあり、より落ち着いた雰囲気を感じる。そこに大人数で思い出野郎Aチームが現れて、高橋一(Tp.Vo)が「音楽を聴いたり、お酒を呑んだりしながら、楽しく暮らしましょう!」と「楽しく暮らそう」へ。てか、まるで『CIRCLE』を言い当ててるような言葉からの楽曲。そりゃ盛り上がらないわけがない。
昔は東京から16時間かけて車で来てライブをしていたのが、今や飛行機で来てライブをしているというのもバンドの歴史を感じたし、『CIRCLE』も8年ぶりだという。ただただハッピーなだけではなくて、歌詞にリアリティーがあるから信用ができる。「人生は失敗だったけど、CIRCLEがあるから楽しい」なんていう楽曲タイトルを引用しての言葉もニクイ。個人的には、ダメダメだけど誠実なバンドマンの姿が描かれる「週末はソウルバンド」に痺れる。観客エリアで椅子の上に立ってサックスを吹いたり、そんな出張演奏も楽しい。ある意味、ダンスミュージックな時間。
kanekoayano
12時55分・CIRCLE STAGE、kanekoayano。サウンドチェックから重厚な音が鳴り響きまくる。近くにいた観客が思わず「リハでこれなの……」とつぶやいていたが、まさしく、その言葉に激しく同意するしかない。カネコアヤノを始め、全体的にメンバーが黒い衣装なのも凄みを増している。重厚ながらリズミカルさを感じる「腕の中でしか眠れない猫のように」など、とにかく魅入るしかない。「水の中」では、実際は暑い日差しの中、ギターがうなりをあげて、カネコの歌声もリバーブがかかり、どんどん凄みを増していく。
<君のこと好きになりすぎないようにしてる>という歌詞が耳から離れない。歪むギターも耳から離れない。「アーケード」はラストナンバーながら、観客の盛り上がり熱狂具合が凄まじく、エネルギーが大爆発していた。『CIRCLE』初登場ということもあるが、kanekoayanoを観られてたまらなく嬉しいという想いが溢れ返っていた。
Andr
13時55分。KOAGARI STAGE。『CIRCLE』初登場という意味では、国内だけでなく国外の出演者に出逢えるのもCIRCLEの良きところ。今までにもMikan Hayashi(ゲシュタルト乙女)・落日飛車・YONLAPA・White Shoes & The Couples Companyなど海外のミュージシャンやバンドに出逢えたが、今年は台湾のシンガーソングライターであるAndrが初登場。
サウンドチェックでも爽やかなポップサウンドを聴かせてくれていたし、一緒に観ていた『CIRCLE』スタッフも「良いのよ!」と嬉しそうに眺めている。特に海外ミュージシャンは中々観る機会が少ないだけに、本当に貴重。1曲目「催眠 = 愛 Hypnotize」では語りが入る感じが新鮮であったし、続く「Cat&Mouse」ではグルーヴィーなサウンドで振れ幅を楽しめた。ささやくような歌もあり、ダイナミズムを感じる歌もある。また、日本語MCも可愛らしかったし、観客とも気軽に英語でやり取りしているのもフレンドリーで良かった。
ハンバート ハンバート
14時50分・CIRCLE STAGE、ハンバート ハンバート。海の中道海浜公園での『CIRCLE』は10年ぶり。体感的には、この時間が一番暑い炎天下であったが、いつもと変わらず佐藤良成と佐野遊穂は自分たちのペースで話し始める。暑さから利尿作用の話や御当地ネタとして『クッキングパパ』のうえやまとち先生の話など、まぁ話が止まらない。これぞハンバートであり、まだ1曲も始まってないのに、充分に満足できる。ついついチビッ子が朝ドラことNHK連続テレビ小説『ばけばけ』主題歌「笑ったり転んだり」を直接リクエストするのも微笑ましかった。
ハンバート ハンバート
満を持しての1曲目「うちのお母さん」ではフィドルの美しい音色も聴けた。個人的には前後何も言わず、加川良「教訓1」を歌ったのが特に印象に残っている。今の御時世を考えたりもするし、歌詞にも触れたいが、書くとなると全て書きたくなるので、どうぞ皆様それぞれ歌詞を調べて読んでみて下さい。気が付くとベーコンのラード話になっていたりするが、「笑ったり転んだり」も聴けたし、大大満足の11曲。あの一番暑い中、ふたりだけで大きなステージに挑んだ姿は格好良くもあった。
フルカワミキ÷ユザーン×ナカコー
15時50分・KOAGARI STAGE、フルカワミキ÷ユザーン×ナカコー。初出場なのは勿論のこと、事前に公開された『CIRCLE』へのコメントでは「Fes.event出演自体、珍現象のようなこの機会に遊びに来て下さい」と記されていたが、こんな嬉しい珍現象は無いのだろう。私のような90年代に青春時代を過ごした者にとっても、90年代を伝説のように感じている若者たちにとっても、SUPERCARというバンドは特別なものである。ちなみにフルカワは、この日が今年初ライブということもあり、こんな素晴らしき珍現象は一瞬たりとも見逃せない。
1曲目「Wonder word」から大きな歓声が起きる。つい最近の気がしていたが、2004年のナンバー。1999年のナンバー「Dive」・1998年のナンバー「Sunday People」などは、90年代にタイムスリップしてしまうが、2026年という現代のアレンジに更新されて聴けるのが何よりも嬉しい。ラストナンバーはU-zhaanがSUPERCARの楽曲で一番好きという25年前のナンバー「STROBOLIGHTS」。フルカワの地元青森は八戸、U-zhaanの地元埼玉は川越のルーツ的な歌を聴けたのも良かったし、銀座&ビスケットな「ギンビス」についても書きたいが、そうなると止まらなくなるので、このあたりで。何はともあれ珍現象を目撃できて幸せでした。
toe
16時45分・CIRCLE STAGE、toe。インストゥルメンタルが中心という先入観があるだけに、1曲目「LONELINESS WILL SHINE」からエモーショナル歌声が飛び込んできたのには面を食らったし、ともあれかくあれ驚愕するのみ。この日は穏やか緩やかな雰囲気は基本にありつつも、どこか突き刺してくるようなムードが全体的にあったが、まさにtoeには初っ端から突き刺された。歌詞がある曲もあれば、じっくり演奏を聴かせる曲もあるが、山㟢廣和(Gt)の言葉も心に突き刺さった。
戦争反対と言うと怒られてしまうびっくりな時代であり、冷笑主義=シニシズムも気に入らないと明言した上で、理想希望が100%叶わなくても、それが無いと始まらないと宣言した。その声には苛立ちすら感じたが、声を上げることが大事であり、何よりも素晴らしい音楽であった。ラストナンバー「グッドバイ」はメロディアスでセンチメンタルでもあり、誠に詩的だった。叩き込まれるドラム、投げ込まれるスティック、掻き鳴らされるアコギ。最後、山嵜がアコギをそっと置き、走り去るのも味わい深かった。
Ginger Root(Solo Set)
17時45分・KOAGARI STAGE、Ginger Root(Solo Set)。日本での露出も多いが、アメリカ国籍の彼のライブを観れるのは、『CIRCLE』ならではの国際的な感じであり嬉しい。「Over the Hill」は、鍵盤から鳴らされる音にシティポップ感も味わえたし、パワーポップ感を味わえるナンバーなど、のっけから極上の活き活きしたポップスを楽しめる。ギターを弾くと、また味わいも変わっていく。
「日本語の歌詞を一生懸命書いてみました。文法のミスもあって恥ずかしいですけど、細野晴臣っぽい曲を書いてみました」と「Kaze」へ。本当に細野晴臣イズムを味わえる楽曲であるし、ルーツではあるが、しっかりオリジナル楽曲として昇華されているのも素敵であった。「僕はご覧の通りオタクです。次の曲は自分のためにやりたいと思います」と恐縮したMCから、一体何を演奏するかと思えば、アニメ『けいおん!』挿入歌「ふわふわ時間」へ。恐縮したフリからは考えられないくらいの異様な疾走感と抜け感と拓けた感が気持ち良すぎる。凄いPOP衝動……。そして、「『CIRCLE』に出られて、アメリカ人なのに光栄です」という謙虚過ぎる言葉も誠実であった。
角張 渉(KAKUBARHYTHM)
さて、今更ですが、毎年KAKU-UCHI AnnexというDJブースステージがありまして、今年もEDANI(trouville)・DJ GODBIRD(STEREO RECORDS)・常盤響・角張 渉(KAKUBARHYTHM)と名物DJが勢揃い。で、KOAGARI STAGEと両日共に時間が被っているのが残念だが、やはり今年も記しておきたい。去年も詳細に書いたが、福岡を拠点にレーベルやバンドなど多岐に渡って活動するボギーが何に扮して熱唱するかも毎度楽しみ。
ボギー
今年は初日が忌野清志郎で2日目は岡村靖幸。何を書いているのかと不思議に想う人もいるかもだが、要はかいつまんで書いちゃうと、地元カルチャー界名物おじさんによるモノマネショー! 御本人いわく福岡のコロッケ。ほんでもって、まぁ驚くことに、むちゃくちゃ盛り上がる! ちなみにボギーの長男モンド君の似顔絵テントも毎年大盛況で、2日間共に予約が埋まりまくる。今年は過去最多の67組の似顔絵を描いたとのこと。全国各地フェス乱立時代だが、その場所にしかない名物がローカルフェス一番の強み。ミュージシャンによるライブだけでなく、そこでしか体感できない景色や催し物があるから、私のような福岡以外の遠征組の観客も多いのだと思う。
ZAZEN BOYS
18時45分・CIRCLE STAGE。昨年からトリはほか出演者よりもライブ時間が長いスペシャルセットになったわけだが、福岡と言えば『CIRCLE』と言えばという向井秀徳率いるZAZEN BOYS。すでに缶ビールを持って現れて、「海中CITY!」とひとこと。観客、そして主催者の是澤氏や地元イベンターBEAへの感謝を述べつつ、「MATSURI STUDIOからやって参りました、ZAZEN BOYSです」とお決まりの口上へ。
<狂い咲くサンダーロード>や<繰り返される諸行無常>というキラーフレーズも聴こえてくる「八方美人」から始まっていく。「みんなで聴いてみましょうよ」「みんなと聴いてみましょうよ」という独特の誘い言葉から、「安眠棒」「ブルーサンダー」が鳴らされる。完璧なるキメとタメで繰り出される鉄壁の音に打ちのめされるのみだが、この日は向井が中盤から奏でるシンセサイザーの音色にも打ちのめされた。
「乱土」→「胸焼けうどんの作り方」という圧倒的な〆には、ぐうの音も出ない。アンコールでは今更シンセサイザーのサウンドチェックをして、どうなることかと思いきや、Van Halen「Jump」という贅沢すぎるサウンドチェック! 向井のシンセサイザーの音色が色鮮やかで煌めいている。遊び足りまくり状態だが、「遊び足りない!」とばかりに「Asobi」でダメ押しの〆。極上の絶品すぎて胸焼けどころか胸騒ぎが止まらないが、より2日目が楽しみになる1日目であった。
取材・文=鈴木淳史 写真=『CIRCLE』提供(撮影:ハラエリ、勝村祐紀、chiyori)
>>本編で掲載しきれなかった写真は次のページに!
『CIRCLE'26』2026.5.16@福岡・海の中道海浜公園 野外劇場
D.A.N.
思い出野郎Aチーム
kanekoayano
Andr
ハンバート ハンバート
フルカワミキ÷ユザーン×ナカコー
toe
Ginger Root(Solo Set)
ZAZEN BOYS
イベント情報
DJ:常盤響/角張渉(KAKUBARHYTHM)/EDANI(trouville)/DJ GODBIRD(STEREO RECORDS)
https://open.spotify.com/playlist/37i9dQZF1DXebjPzM8sHrq
■クレジット
主催・企画・制作: TONE / BEA
後援:FM FUKUOKA / CROSS FM / LOVE FM
お問い合わせ:BEA【http://www.bea-net.com/】info@bea-net.com
■オフィシャルサイト
https://circle.fukuoka.jp/2026/