「リ・インコーニティ」日本人ヴァイオリニスト川久保洋子が語る、ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』の魅力【前編】
Photo: Bernard Martinez
世界的ダンスカンパニー「ローザス」を率いるアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルと気鋭の振付家ラドワン・ムリジガ(アトラファイブ)による『和声と創意の試み』。今年(2026年)6月の日本公演では、バロック・ヴァイオリンの名手アマンディーヌ・ベイエと彼女が率いるアンサンブル「リ・インコーニティ」による名盤《四季》(録音音源)が使用される。現地ベルギー・ブリュッセルなど海外では生演奏でも上演されている本作。今年4月のブリュッセル・モネ劇場での上演にも出演した「リ・インコーニティ」のメンバーであるヴァイオリニスト、川久保洋子のインタビューを2回にわたりお届けする。
――アマンディーヌ・ベイエとリ・インコーニティが演奏する《四季》の魅力はどんなところにあると思われますか。
何と言っても、アマンディーヌと私たち「リ・インコーニティ」のメンバーが長いこと一緒に演奏してきていることですね。その都度違う表現ができる――この作品で「ローザス」との共演が始まってからもすごく変化があって、アマンディーヌがダンスに反応すると、私たちメンバーもそれに対して反応し、そのちょっと新鮮な感じにダンサーたちもまた反応してくれて……よく知っている同士だからこそ、その場で起きていることに反応し合えることが一番の魅力だと思います。アマンディーヌの音楽だけではなくて、彼女の人間性もよく理解しているので、お互いに反応し合えるんです。
Photo: Anne Van Aerschot
――ダンサーたちとのリハーサルのお話も伺えますか。
2024年ベルギー・ブルージュで初めて生演奏で上演したのですが、最初は正直ちょっと戸惑いました。ダンサーたちは録音音源で上演することが多いので、音源に合わせてリハーサルを行うのですが、いざ本番になったときに、アマンディーヌがダンサーの動きを見てパッと演奏したのが最初はちょっとずれてしまったり。毎回リハーサルディレクターからフィードバックがあって、だんだん私たちも「このステップはこのテンポだね」というのが分かってきて。でもやっぱり本番って演奏する側もダンサーたちもちょっと高揚するじゃないですか。そんななかで、音楽とダンスが少しずつピタッと合うようになってきて、10回くらい共演を重ねて、ピタッとくることがだんだん多くなってきました。そうするとダンサーたちもいつもと違うんですよ。生演奏のステージに興奮するんですよね。
Photo: Anne Van Aerschot
Photo: Anne Van Aerschot
――ヴィヴァルディ《四季》の魅力について、川久保さんならではの視点でお話いただけますか。
ヴィヴァルディは素晴らしい作曲家です。《四季》は『和声と創意の試み』Op.8という8つのヴァイオリンコンチェルトの1, 2, 3, 4番に「春」「夏」「秋」「冬」と題名がついたものです。ヴァイオリンコンチェルトの一つに変わりはないのですが、各楽章にソネットという短い詩が付いているんです。〈ローザス〉のアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルもそれを参考にしてこの作品を創っていますが、楽譜に「ここはこういう情景」という風に書いてあるんです。ヴィヴァルディが書いたものかどうかは分かっていないのですが、本当にソネットで描かれている情景が浮かんでくるように作曲されていて、そこが一番の魅力だと感じています。だからこそ、それがダンスで視覚化されるとすごいなと思うところでもあります。
音楽的なことで言うと、春、夏、秋、冬と調性が違うんです。何長調とか、何短調なども含めて、季節のカラー、楽章ごとの風景のカラーの違いがよく表れていて。またアマンディーヌが素晴らしいんです! 楽譜に書かれているものを忠実に弾いているのですが、その中でも音色や速さなどで、彼女自身がイメージする情景をあわせて表現する力が本当に素晴らしいです。
後編へつづく
公演情報
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
公演詳細:https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/106744/