《連載》もっと文楽!~文楽技芸員インタビュー~ Vol. 16 豊竹靖太夫(文楽太夫)

2026.8.13
インタビュー
舞台


「技芸員への3つの質問」

【その1】入門したての頃の忘れられないエピソード

色々ありますが、例えば師匠の着替えを手伝う時、それまで人に上着を着せたことなんてなかったので着せ方がまずくて師匠に怒られ、「何でも相手の気持ちになってせなあかんで」と言われたのを思い出します。僕らは登場人物の気持ちを考えなければならない。『仮名手本忠臣蔵』の身売りの段だったら、おかるのお母さんの気持ちは文章としてはあまり出てきませんが、そこもきちんと考えて語らなければならない。そういうことに繋がっている話だと思うのです。

【その2】初代国立劇場の思い出と、二代目の劇場に期待・妄想すること

師匠の白湯汲み(※)を初めてやらせてもらったのが2008年、国立劇場の舞台でした。しかも僕は、入門前の学生の頃から観て大好きだった師匠の『本朝廿四孝』十種香の段だったので、思い出の一つです。国立劇場は文楽劇場よりも白湯汲みの場所が床に近いんです。すごい迫力で、ドキドキしたのを覚えています。
今、国立劇場の代わりに上演している東京の劇場では、舞台装置のせり上がりができないところも多く、『祇園祭礼信仰記』のような大掛かりな舞台が上演できないんです。それ以外の理由でも、近年は全然出ていない演目があります。開場した時にはそういうものをぜひやってほしいです。

※白湯汲み  太夫と三味線がいる”床(ゆか)”の脇に弟子が控えて白湯を運ぶ、その役割のこと。切語り(きりがたり) と呼ばれる最高峰の太夫にのみ許される。

【その3】オフの過ごし方

芸術団体と地方公共団体の関わり方、さらには地方公共団体がどんな文化政策をするのかに興味を持って、そういう本をよく読みます。僕自身、自主公演などで助成金をもらうことがありますし、2021年に大阪文化祭奨励賞をいただいた時は、コロナ禍で文化芸術は社会に対して何ができるのかということをよく言われていたこともあって「僕もそういうことを考えたいと思います」と受賞式で言ったんです。新潟のりゅーとぴあ専属舞踊団Noism Company Niigataについて書かれた記事や『孤独な祝祭 佐々木忠次 バレエとオペラで世界と闘った日本人』(追分日出子著)など、面白かったですね。娘が習っているので、バレエの舞台も観に行きます。バレエは言葉を使わない芸術ですが、太夫も身体を使うので、バレエを観ながら、表現自体はもちろんですが、どういう姿勢が一番いいのか、今この人はどこに重心があるのだろう、などと考えるのも楽しいです。

公演情報

『令和8年9月文楽鑑賞教室』
 
日程 2026年9月10日(木)~2026年9月20日(日)
会場 江東区文化センター ホール
休演日 14日(月)
 
開演時間
午前11時開演(午後1時45分終演予定)【Aプロ】
午後2時30分開演(午後5時15分終演予定)【Bプロ】
※開場時間は、開演30分前の予定です。

演目・主な出演者
二人三番叟(ににんさんばそう)
 
解説 文楽の魅力
 
仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)

山崎街道出合いの段・二つ玉の段・身売りの段・早野勘平腹切の段
主催=独立行政法人日本芸術文化振興会
共催=江東区/公益財団法人江東区文化コミュニティ財団