Element Sicks、満員のZeppツアーで見せたのは頂きを見据えた確かな手札
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
Element Sicks Live Tour 2026『SAVE』2026.09.06(sun)Zepp DiverCity
9月6日、東京は大雨に見舞われた。日曜日にもかかわらず、お台場のDiverCity内は人が少なく、いつも人で賑わっているフードコートには空席が目立った。しかし、Zepp DiverCityは違う。大混雑だ。開演時間が近づいていたが、会場外は入場待ちの観客で溢れていた。皆の目的はElement Sicks(以下、EL6)。6人組の実力派歌い手グループだ。彼らは、今年春にKT Zepp Yokohamaでのワンマンを成功させ、この夏に初のZeppツアー「Element Sicks Live Tour 2026『SAVE』」を敢行。本公演は1部2部ともにソールドアウト。近年、デビューから2年足らずで、ここまでの結果を残したアーティストを自分は他に知らない。
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
EL6のSpotifyにおける月間リスナー数は3.4万人。Spotifyを主戦場としていない可能性もあるが、ライブの集客数に見合っていない。もちろん、いい意味で。彼らはただの人気者ではない。その実力とチーム力の高さは、仮に歌い手シーンを飛び出しても十分勝負できるレベルだ。
前置きが長くなった。Zepp DiverCityのフロアは6色のペンライトで埋め尽くされていた。観客の緊張と期待が一気に高まったのは、定刻18時を5分ほど過ぎた頃。2部のスタートは、リリースされたばかりのアルバム『GOSPEL』のオープニングナンバー「DOGMA」。白装束を被った6人が2階ステージに現れ、レーザーが宙を鋭く貫く中、ゆっくり階段を降り、白装束を投げ捨てる。そして、漆黒の衣装に身を包んだ6人が歌い出す。4分割されたスクリーンには教会をイメージした映像が映し出され、意匠を凝らした歌詞が流れていく。ほんの数分でこちらの意識をガッチリ掴む。上手い。
832 Photo by 堅田ひとみ
JIL Photo by 堅田ひとみ
ツバサ Photo by 堅田ひとみ
注目すべきはパフォーマンスだけではない。要所要所で音ハメをしてくる照明にすらグルーヴを感じる。耳が痛くなる一歩手前でうまくコントロールされている音響も迫力たっぷり。そんな最高の環境で鳴り響く歌が、実に素晴らしい。低音や高音ボーカル、ラップなど、様々な歌唱を得意とするメンバーが揃い、練度の高いダンスを展開。この1曲だけでも、いかにEL6というグループが秀でているかが伝わる。ああ、前回彼らのライブを初めて観たときの自分の感覚はやっぱり間違っていなかった。EL6は、カッコいい。
EL6が得意とするカラフルな歌唱の見せ場は随所に現れる。3曲目「Addict」では、春希による圧巻の低音ラップからツバサの伸びやかな歌唱へのバトンパスが非常にクール。複雑なフロウの効果もあり、ラップパートにおけるマイクリレーもかなりスリリングだ。
ていく Photo by 堅田ひとみ
ねいろ Photo by 堅田ひとみ
春希 Photo by 堅田ひとみ
個人的にいちばん好きな曲は「ENGAGE」。「結婚行進曲」をモチーフにしたトラックが非常にキャッチー。客席との一体感をグッと高めたのは、ストレートなEDMチューン「Chug!Chug!Chug!」だ。メンバーから促され、観客はハンドクラップを鳴らしたあとに足を踏み鳴らし、サビでは「Hey!」「Everybody!」と一斉に叫ぶ。この2曲に限らず、EL6の楽曲には「◯◯っぽい」というものが存在しない。トレンドに追従することはなく、軸にあるのは「EL6らしいかどうか」。音楽面で特定のジャンルに属していないことが、グループとしての発想を自由にしているのかもしれない。結果として、それがElement Sicksの志の高さへとつながっていることは間違いない。
832 / ねいろ Photo by 堅田ひとみ
EL6のオリジナリティの高さは、6人のそれぞれの表現力とも強く結びついている。それが如実にわかったのがライブ中盤のユニット曲コーナー。まず、「アンリミテッドセオリー」で登場したのは、ねいろと832。ねいろのボーカルは瑞々しくて柔らかく、ほっと一息つけるような安心感が印象的だ。それでいて、別の曲ではキレのあるラップを聴かせるんだから、アイドル性の高いビジュアルとのギャップよ。832は、なんとなく飄々とした雰囲気があるが、歌、ラップともに高い技術を誇るトリックスター。陰になり日向になり、全体のパフォーマンスを支えている。
春希 / JIL Photo by 堅田ひとみ
「FUCHINOCHI」で登場した春希とJILは、低音を利かせた春希のラップとJILの高音ボーカルによるコントラストが映えた。春希のパフォーマンスは、見るからに自信に満ちている。その雄々しいアティチュードが、彼のラップに更なる荒々しさと強さを与えていた。JILのパフォーマンスは優しい。長身ながらその動きはふわりと軽く、ねいろとは別種の安らぎを与えてくれる。ねいろがJ-POPアイドルだとしたら、JILはK-POPアイドルか。
ツバサ / ていく Photo by 堅田ひとみ
ユニット曲コーナー最後は、ツバサとていくによる「赫く紅く」。この2人は、歌唱面におけるEL6の両翼。パワフルなツバサとテクニックのていく、という印象で、この曲ではその実力がいかんなく発揮されていた。ツバサは、戦隊モノのリーダーキャラを思わせる安定感が魅力。ていくは、「XXI」などで圧巻のロングトーンを響かせる一方、「Secret Answer」では激情シャウトを放っていた。彼の表現の幅広さに舌を巻いた。
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
ユニット曲のあとは、「踊」と「劣等上等」といったカバーを披露。とはいえ、箸休め的な時間ではない。6人は原曲へのリスペクトを示しつつも、EL6流のアッパーでビート感の強いアレンジを施し、まるで自分たちの持ち歌かのようなオリジナリティ溢れるパフォーマンスで魅了した。その盛り上がりは、MCでメンバーが思わず嫉妬するほどだった。
とにかく、全メンバーが歌えるし、ラップができる。特にラップに関しては、全員リズム感に秀でているので、耳がとにかく気持ちいい。その上、彼らの歌には補助的なボーカルの被せがないので、微細な表現まで聴き取ることができる。彼らのパフォーマンスが音楽的に楽しいのは、こういった点も大きく影響している。
EL6のライブを観ていて、不思議に思うことがある。彼らはアップテンポで勢いのある楽曲が多いが、決して一辺倒にはならない。その一方で、MCではしっかりわちゃわちゃしたりもするのだけど、実はどこにも隙がなく、まったくダレない。どうやってここまでの技術を身につけたのか。デビュー最速アリーナツアーを目指している彼らのこと、きっとそこには生半可ではない努力があるはず。メンバーだけでなく、チーム全体で相当に話し合いや練習を重ねているのだろう。しかし、彼らは苦労の跡をまったく感じさせない。泥臭いストーリー性ではなく、あくまでもその技術で多くのファンを魅了する。
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
この日の体感時間は、驚くほど短かった。内容は前回のツアー以上。しかも、音響や照明のよさもあって、没入感がかなり高かった。現時点でもEL6は十分な人気がある。しかし、彼らはもっと幅広い層に知られるべき存在。もしかしたら、熱心なファンは嫌がるかもしれないが、歌い手シーンの外にクロスオーバーしていってもなんら不思議はない。それくらい質の高いことをやっているし、彼らの手札はすでに揃っている。ああ、どうやって伝えたらこの凄さをもっとわかってもらえるんだろうか。そんなもどかしさを覚えつつも、ブレイク前夜特有の熱を味わえることがうれしかったりもする。
ファイナルとなった福岡公演では来年1月のホール公演も発表、地に足をつけて着実に階段を上がっていく6人の姿をこれからも見守っていきたい。「FUGAKU」という曲の最後にこんなフレーズがある。
<我のために鐘を鳴らす/これが王者の風格>
彼らが頂に到達する日は、そう遠くはないはずだ。
取材・文=阿刀"DA"大志
Element Sicks Photo by 堅田ひとみ
ツアー情報
<全公演共通>
1部 Open 12:30 / Start 13:30 2部 Open 17:00 / Start 18:00