更新された王道感で自己最大キャパを揺らしたLACCO TOWER
LACCO TOWER
LACCO TOWERワンマンライブ「独奏演奏会」 2016.2.11 渋谷TSUTAYA O-EAST
結成13年目にして昨年、ロックレーベルの名門・TRIADからメジャーデビューしたLACCO TOWER。自身で株式会社アイロックスを'13年に設立し、地元・群馬で決して小さくはない主宰イベントを行うなど、ロックバンドとして生きる覚悟を現実的な方法論でもって証明してきたバンドでもある。そんな彼らの特徴は、ロックを軸にあらゆるジャンルを飲み込んだハイブリッド性はもちろん、そこに日本のロックバンドのかつての王道だった歌謡としての強さや、日本人のDNAに自然に共振する侘び寂びや季節感、そしてX JAPANやLUNA SEAのようないい意味での大仰さやケレン味すら内包している点だ。そうした音楽的なフォルムの魅力と同時に、非リアな日常感を持つ主に若い世代(主にと書いたのは、存外幅広い世代のリスナーがライブに足を運んでいることを今回実感したからだが)に寄り添うようなメンタリティを持っていることだろう。
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この日は、2月3日にリリースしたばかりのメジャー1stシングル「薄紅」のレコ発でもあるのだが、ライブが進むに連れ、ボーカルの松川ケイスケが昨年末のリクエストライブ『LTS82』で声が本調子ではなかったことを考慮し、リクエスト上位曲をこの日のセットリストに組み込んだことが分かった。つくづく「あったことをなかったことにしない」「一歩ずつ進む」バンドだと思う。
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クラシックの交響曲の開場SEに続いて場内が暗転すると、ライブのクライマックスの如き、レーザーや派手なライトが交錯。そこにメンバーが登場する意外性。アッパーだが、メロディの美しさが際立つ「柘榴」でライブはスタートした。裸足でパフォームする松川はもちろん、キーボードをアクロバティックに弾き倒す真一ジェットの存在感も、LACCO TOWERに“狂言回し”が複数いることのユニークさを示す。それを言ったら、一人明らかに体育会系マッチョなドラマー、重田雅俊もそうだし、社長でもある塩崎啓示(Bs)のちょっと業界人っぽい佇まい、松川に「マドモアゼル大介」と紹介されていた、美麗な細川大介(Gt)と、ものの見事にバラバラなキャラも破壊力抜群だ。ほぼ一気に3曲を披露した後は、演劇的なパフォーマンスすら見せる松川が柔らかい関西弁も交えてメンバーいじりをしたりするギャップも楽しい。
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メジャーデビューアルバム『非幸福論』から、戦隊モノのテーマソング的な勇猛果敢なメロディを持つハードロックナンバー「葡萄」、かつての自分たちや今のファンに向けたLACCO TOWER流のアンセム「傷年傷女」でフロアはさらに沸騰。特にショルキーを手にアピールする真一ジェットも交えフロント4人の佇まいは、歌の内容のシリアスさをタフに転化する装置にもなっていたように思う。
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曲名通り真紅のライティングが叶わない恋の切実さと少し狂気の色を際立たせる「茜」、ざっくりしたリフが彼らの中ではギターロック色の強い「弥生」と、音楽的なレンジの広さと、音楽的なレンジの広さと独特の儚さを実感させてくれる演奏が続く。その間、冒頭では拳を突き上げていたフロアがじっくり聴き入っている光景も印象的だった。中盤には、リクエスト1位だったという開放感と疾走感に満ちた「鉋」を披露。オーソドックスな速い8ビートナンバーを堂々と聴かせる松川のボーカルの表現力がよく分かる。そしてドラマチックなシーケンスの導入から高らかな宣誓めいた歌い出しの「非幸福論」や、ニューシングルのカップリング曲「奇々怪々」では、彼らのメタル魂(!?)とエクストリームな構成が炸裂。細川は舞うようにギターを弾き、塩崎は超絶テクでベースとは思えない細かいフレージングをキメていく。まったくもって5人全員から目が離せない。そんな怒涛の演奏を終えて、「地獄のような曲でしたね。(塩崎に向かって)何やってたん?そのベース」と、超絶プレイにツッコミを入れる松川の不思議なテンション……。「笑って帰れそうですか?」と渾身のパフォーマンスでファンを解放しようとする彼も、思わず出る素のMCも地続きなのだろう。そんな人柄が見えるライブを積み重ねてきた結果が、今のLACCO TOWERが狭義のシーンを越えて突出してきた理由かもしれない。
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終盤に松川はこの日O-Eastに集まったファンに感謝を述べながら、「みんなここに来るまでの毎日、嫌なこともあったでしょう。僕らも大丈夫って自信を持って言えるようになるまで13年かかりました。でも、大丈夫。人と違っても、不安があっても絶対、大丈夫だから」と、自ら壁を超えてきた裏付けとともにファンに寄り添う姿勢を表明。そして「とても大事に作った曲です」と、ニューシングル「薄紅」を演奏。彼らにしては明るく軽快な曲だが、ライブで体験すると、”別れ”に対する切なさと同時に相手を思う高潔な感情すらある楽曲に思えて、曲の軽快さがストンと腑に落ちた。ラストは常に人気の高い「林檎」が、叙情と激しさの振り幅をフィジカルにも訴える強度で表現。そんな中でも拳を挙げるファンもいれば、佇んで聴き入り涙を流すファンもいる、それがこのバンドの受容力であり魅力なのだと認識した。
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自然に起こったアンコール“ラッコ、ラッコ、ラコ、ラッコ!”は彼らの「ラッコ節」をアレンジしたコール。ステージに視線を集中していたファンに両サイドのビジョンが嬉しいニュース――次回ツアーとメジャー2ndアルバムのリリースが伝えられ、さらにフロアが沸く。そこに再登場したメンバーは、バンド史上最大キャパになったこの日のO-Eastについての思い出を話す。曰く、真一ジェットと塩崎は高校生時代のバンドでオーデョションに参加し、健闘。自信満々だったが、その後その自信を砕かれることも多々あり、今、LACCO TOWERとしてこの場にいることを感謝していた。そしてバラバラな個性の5人が音楽で一つになっていった黎明期のナンバー「灯源」「一夜」などでアンコールを締めくくった。
6月リリースのニューアルバム、そしてリリース前に新曲を披露するという『未来演奏会』も引き続き注目していきたい。
文=石角友香
LACCO TOWER
01. 柘榴
2016年5月14日(土)
独奏演奏会