「イニシュマン島のビリー」製作発表レポート~古川雄輝、鈴木杏、柄本時生、山西惇、森新太郎

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2016.2.27
(左から)柄本時生、古川雄輝、鈴木杏「イニシュマン島のビリー」

(左から)柄本時生、古川雄輝、鈴木杏「イニシュマン島のビリー」

「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが2013年にロンドン・ウエストエンドで、2014年にNY・ブロードウェイで主演した舞台「イニシュマン島のビリー」が日本版舞台となり、3月25日(金)から世田谷パブリックシアターにて上演される。本作の制作発表が21日(日)午後都内で催され、主演の古川雄輝、鈴木杏、柄本時生、山西惇、江波杏子、そして演出の森新太郎(演劇集団 円)が登壇し、100人ほどの一般オーディエンスが見守る中、本作の見どころなどを語った。

本作の戯曲を書いたのは、「ビューティ・クイーン・オブ・リーナン」や「ロンサム・ウェスト」、また昨年日本でも上演された「スポケーンの左手」を手掛けたアイルランドの劇作家マーティン・マクドナー。2014年のトニー賞では6部門に、同年のドラマ・デスク・アワードでは2部門にノミネートされている。

アイルランド・アラン諸島のひとつ、イニシュマン島で暮らす、生まれつき左手と左足が不自由な17歳の青年ビリー、そして個性豊かな島民たちの物語。ビリーは大人しく理性的な青年だが、ヘレンやバートレイ姉弟をはじめ、周りの人間は彼を変人扱いし、不自由な身体のこともあって彼をバカにしていた。あるとき、隣の島でハリウッド映画の撮影が行われるという大ニュースが飛び込んできた。映画出演のチャンスを得ようとするヘレンとバートリー姉弟にビリーは自分も一緒に連れていってほしいと言い出す。ヘレンたちには断られるが、ビリーはある切り札を持っていた――。

ビリーを演じる古川は、『俺たちの明日』以来2年ぶりの舞台となる。「非常にプレッシャーを感じています。とともに、素晴らしいキャストとスタッフの皆さんと舞台ができることを同時に嬉しく思っています。制作発表も久しぶりで緊張しましたが、一般のお客様がいらしてくれてうれしかったです」とコメント。本作を踏まえた今後の展望について問われると、「英語ができますので、海外の作品にも関わっていきたいと思っています。今までも中国でたくさん仕事をさせていただきました。「家康と按針」という舞台ではロンドンでロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの皆さんと舞台をやったり…そういう機会はあったんですが、まだハリウッド進出はできてません。もし機会があれば僕もビリーのようにハリウッドでお仕事ができたらいいなと思います」と頼もしい夢を語っていた。

古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

美人だが異常に暴力的で口の悪い少女ヘレンを演じる鈴木は「ヘレンは凶暴で、プロ意識をもって卵投げをしているちょっと変わった暴力的な女の子。ビリーをいじめたり、弟のバートリーを殴ったり…今までに演じたことがないタイプ」と説明。演出の森にアドバイスをもらったところ「女性のモデルは参考にならないと思う。あえて言うならジャイアンかな?」と言われたそう。なお、このアドバイスのあと、DVDを借りに行ったらジャイアンが活躍する作品ばかり貸出中になっており「私の他にもジャイアンを求めている人がいるのか!?」とおどけつつ笑顔。

鈴木杏「イニシュマン島のビリー」

鈴木杏「イニシュマン島のビリー」

そんなヘレンに殴る蹴るされ、ついには生卵をぶつけられるという、弟バートリー役の柄本は「覚悟はできてます。うっかり卵をよけちゃったら話的におかしなことになるし」とニヤリ。ちなみにプライベートでは友人を介して鈴木と交流があるそうで「(鈴木)杏さんはお姉ちゃん的に見ていました。なんかこんな感じで一緒に仕事をするのが恥ずかしい」と照れまくっていた。そんな柄本に対して、森は「角替和枝(時生の母)、柄本佑(兄)、柄本時生と、柄本家の俳優の皆さんとお仕事をしてきた。あとはお父さん(=柄本明)だけなんですけどね。柄本家の人は素直な演技をするんです。セリフを無理にこねくり回さない。ある意味諦めがいい。お家芸のようなものなので、このまま伝統芸能になればいいんじゃないかな」とリスペクト。

柄本時生「イニシュマン島のビリー」

柄本時生「イニシュマン島のビリー」

島のゴシップ屋ジョニー・パティーンマイク役の山西は、その役どころに絡めて「最近のニュースは?」と問われると「昨日、稽古場に奥さんから電話が。三番目の娘に“お昼にマックに行くよ”、と言ったら大はしゃぎして壁に激突、額を4針縫った」という衝撃のニュースを報告。「僕も小さい頃にタクシーが止まっていることになぜか興奮して「ヘイ、タクシー!」と声あげながら傘でガーンって突いてものすごく怒られた。テンションが上がりきってしまう感じがなぜDNAとして娘に残ってしまったのか」と苦笑い。

柄本時生、山西惇「イニシュマン島のビリー」

柄本時生、山西惇「イニシュマン島のビリー」

ジョニーの母マミー役の江波は、お酒が止められないという役どころから「どうしても止められないことは?」との質問が。「山ほどありましたが、この10年前くらいに全部医者から止めさせられまして(笑) だからあと残っているのは、“生きていくこと”そして“お芝居をやっていくこと”かな」とベテランならではの回答をすると、詰めかけた観客から思わず拍手が沸き起こった。

森新太郎、江波杏子「イニシュマン島のビリー」

森新太郎、江波杏子「イニシュマン島のビリー」

演出の森は本作について「単純なハッピーエンドで終わるのではなく、観にきてくださったお客さんの心の中にほろ苦いビターなものを残すダークコメディ。マクドナー作品らしい暴力が全編に満ち溢れていますが、とんでもなくピュアな愛の物語も描かれている。それがマクドナーの不思議であり最大の魅力」と語り、「登場人物はみな、むちゃくちゃな連中で、言いたいことはいう、やりたいことはやる、感情をむき出しの人物ばかりですが、今回念願かなって素晴らしい座組みができた。とてもアニマルなキャスティングが実現した」というと、アニマルと言われたキャストたちは思わず苦笑い。

鈴木杏、古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

鈴木杏、古川雄輝「イニシュマン島のビリー」

会見の後半では、古川、鈴木、柄本により、舞台の1場面を朗読する企画が設けられた。ほんの数分の朗読だったが、ビリー、ヘレン、バートリーのキャラクターを古川、鈴木、柄本がイキイキと演じ、今まさに舞台が上演されているような錯覚すら感じさせた。ちなみに、その後の囲み会見で鈴木は「緊張してちょっとセリフを間違えちゃって、そのままやり通しました」柄本も「朗読用の台本を持つ手が震えてましたね。なんとか終わってよかったです」と本音を暴露していた。

古川雄輝、柄本時生「イニシュマン島のビリー」

古川雄輝、柄本時生「イニシュマン島のビリー」

公演情報
「イニシュマン島のビリー」

■日時・会場
2016年3月25日(金)~4月10日(日)世田谷パブリックシアター
2016年4月23日(土)、24日(日)シアター・ドラマシティ
■作:マーティン・マクドナー
■演出:森新太郎
■出演:古川雄輝、鈴木杏、柄本時生、山西惇、峯村リエ、平田敦子、小林正寛、藤木孝、江波杏子

■公式サイト:http://hpot.jp/stage/inishman2016 

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