石橋義正 × 川口ゆい『MatchAtria-extended』
©福森クニヒロ
誰かの心臓を、手にしたことがあるだろうか。ない、というのが普通だろう。しかしそれを疑似体験できるとなったら?
えーと、ダンスの話である。
毎回30名限定で、観客はヘッドフォンと3Dメガネを装着し、心臓のオブジェを渡される。これは目の前でパフォーマンスをするダンサーの心臓と同期して、超リアルな心音(⿎膜に届く音声状態で記録するバイノーラル録⾳)などが伝わってくる。視覚・聴覚・触覚を通して、ダンサーそして空間と有機的につながるのだ。
演じるのはベルリンをベースに活躍している川口ゆい。強烈なダンスとインテリジェンス溢れる存在感で、これまでにも様々なテクノロジーとの共演をしてきた。そして独特な美意識と発想で世界的に活躍する映画監督・映像作家の石橋義正とのコラボレーションである。
彼らは本作のパフォーマンス空間を“Atria”(心房/天につながる中庭)だという。つまり「体内の茶室」である心室が拡張された空間ということか。「ダンサー川⼝ゆいは、“Matcha”(抹茶)を振る舞うがごとく、観客に⼼音を振る舞う」のだそうだ。タイトルの「MatchAtria」は、二つの言葉の合成語だろう。
すでにドイツを始め6ヵ国11都市で公演。日本でも横浜・金沢・高知での公演が決まっている。
ダンサーの身体の中に分け入っていくような、生命の脈動を感じさせる舞台になりそうである。
文:乗越たかお
(ぶらあぼ + Danza inside 2016年3月号から)
石橋義正 × 川口ゆい『MatchAtria-extended』
3/4(金)〜3/6(日) 横浜赤レンガ倉庫1号館3Fホール
3/12(土)、3/13(日)各日13:00 15:00 金沢21世紀美術館 シアター21
3/19(土)、3/20(日・祝)各日13:00 15:00 高知県立美術館ホール 舞台上
問:石橋プロダクション080-4200-4551
http://www.matchatria.com