こんな日本アーティストがパリで活躍中 【第6回】
パリで活躍中の日本アーティスト「現代アーティスト Yoko Fukushima 」
今回は現代アートという、ちょっと難しそうなアートに挑む方にインタビューをしてきました。実際にお話を伺うと、自分とは随分かけ離れたところにあるイメージだった現代アートは案外、身近なテーマを扱っていたりと、とても共感するところがたくさんあって驚きました。
――パリで活動されるようになったキッカケを教えてください
福島:日本で美術を学ぶ学生だったのですが、決められた道を歩かざるを得ないと感じる日本の生活のなかで、“こうあるべき”と言う事が他の国でも同じなのか見てみる必要性を感じていました。
中でも、フランスでは「シュルレアリズム」と呼ばれる、夢の世界を表現するようなアートや思想を受け入れている社会がどういうところなのか見てみたいと思い、日本を飛び出してフランス語の勉強をしながら実際に違う文化圏で生活をすると言う事を体験しました。
でも、実際にパリに住んでみると日常生活の中に「シュルレアリズム」を感じるというよりは、海外の大都会でサバイバルするリアルさが待ち受けてました(笑)。
パリでの生活は大変ですが、厳しい環境だからこそのびるものもあると思います。日本とは違った、基準の見えづらい自由さの中では、自己の行動や選択に大きな責任を感じます。そうでないといつまでも流され続けてしまうので。それが自分自身と向き合わざるを得ない環境をより強く作り出していると思います。
――どのような創作活動をされているのですか?
福島:私の作品は限りなく存在する「2つの対立するもの」が創作にあたっての思考の原点になっています。例えば、生と死、個人と社会、内面と外面、光と影、といったものです。
それらの対立するテーマを通して、それぞれの「仕組み」や「関係」を考えながら、頭の中に浮かんだイメージを、表現方法を問わずに形にしていきます。 創作をしながら「輪郭のぼやけた疑問」について考えながら進める中で、だんだんと答えのようなものが見えてくるようになるのです。 ただし、以前はテーマに基づいて思考を始めとした制作をしていましたが、現在はどちらかと言うと、見えた形と対話している間にいろんな答えが見えてくると言う感じです。
具体的にどんな作品を作っているかというと、『Sueño del niño』という作品は、「生と死」がテーマで、ベビーベッドの上からチェーンで 吊るされたナイフが十字架の形にぶら下がっているという作品です。
福島さんの作品『Sueño del niño』
これは、これは、どんなに様々な保証で安心の確保された私たちの日常生活の中でも、天災を含め、事故や病気など、この世に生まれた限り生と死は隣合わせであるということを表現しています。十字架の形はアーティストレジデンス先がキリスト教色の強い国だったことから繋がりました。
チェーンが切れてナイフが落ちるという可能性は、運命の図式として表現されています。普通に生活していても、そうしたことが実は身近に常に存在しているけれど、みんなはあまり見ないようにしていることかもしれません。私はあえてそれらを、自然の流れのようにただあるものとして、感情を抜いた形で表現しているつもりです。
私は自分の作品が、人々に新たな視点を与える事ができたらと思います。見てくれる方とのダイアローグ(対話)はとても貴重なものだと思っています。作品がそうしたコミュニケーションのきっかけになれたらいいなと思っているんです。
――これからの活動予定を教えてください。
福島:ずっと創作活動を続けてくるなかで、色々な人生の波がありましたが、今は子育ても少し落ち着いてきて、創作について集中して考えられる時間が多くなってきました。
今は頭の中に、たくさん創作したい作品のイメージが溢れて来ていてとてもワクワクしています。これからもっとたくさんの作品を発表できたらと思っています。
『Diving』 galerie Da-End
同上
上2枚の写真は同じ作品。福島さんが、知人宅を訪れた際、洗面台にたまたま置いてあった子供のおもちゃで、ある銃を構えた兵隊フィギュアを手に取って向きを変えたものを鏡越しに見たときになんとも言えない衝撃を受けたことが創作のヒントになっている。