誰もが知る歴史上の人物が一堂に!歴史画の大家「安田靫彦展」
黄瀬川陣 昭和15年11月/昭和16年9月 [56-57歳] 1940/1941 東京国立近代美術館 重要文化財
聖徳太子、源頼朝、源義経、織田信長など歴史の教科書でおなじみの偉人たち。その姿を日本画の古典美と歴史への深い探究心で、人物の内面まで描き出す歴史画の大家・安田靫彦(やすだゆきひこ)の40年ぶりとなる大回顧展が開催中だ。東京・竹橋の東京国立近代美術館にて3月23日(水)~5月15日(日)にて開催中の「安田靫彦展」。そのプレス内覧会にて、靫彦の魅力を探ってきた。
卑弥呼 昭和43年9月[ 84歳 ] 1968 滋賀県立近代美術館 [4/17まで展示]
「日本画らしさ」を作った理想的な美
「歴史画」というジャンルを確立した安田靫彦の作品は、切手になった「飛鳥の春の額田王」や、源頼朝・義経の再会場面を描いた重要文化財「黄瀬川陣」など、多くの人が知る名作ばかり。その魅力は、美しい線、澄んだ色彩、無駄のない構図にあり、今日知られる日本画のイメージを作ったと言える。岡倉天心らの築いた日本美術の流れを「理想」と「気品」をもって昇華させた。
孫子勒姫兵(そんしろくきへい) 昭和13年10月[ 54歳 ] 1938 霊友会妙一コレクション蔵
歴史上のヒーローから実在の人物まで本画100点以上
40年前の同館による回顧展と異なる点は、その作品のラインナップに現れている。当時は靫彦本人の自撰作品が中心だったが、本展では構成を同館が一任された。そのため、日の目を見なかった回顧展初出展作19点を加え、どの時代も偏りなく画業を一望できる100点以上の本画が一堂に会した。歴史上の偉人や美女から、実在の人物や日常の風景まで、その作品群は幅広い魅力を放つ。まさに「大回顧展」にふさわしい内容となった。
居醒泉 昭和3年9月 [44歳] 1928
風神雷神図 昭和4年9月[45歳] 1929 公益財団法人遠山記念館蔵
歴史好きなら見習いたい!いにしえへの飽くなき探究心
歴史が好きな方にぜひ注目してほしいのは、描かれた人物だけではない。その画面上のどんな些細なものまでも、じつに綿密な考証を重ねた上で描き切っている点も興味深い。考古学などの知識へも深い関心を持っていたという靫彦の作品作りは、本展担当の東京国立近代美術館主任研究員・鶴見香織氏いわく「一作品で一論文書けそうなほど」。ぜひ、着物の柄から小物に至るまでを堪能し、描かれた時代に思いを馳せたい。
神武天皇日向御進発 昭和17年[58歳] 1942 株式会社歌舞伎座
伏見の茶亭 昭和31年9月[72歳] 1956 東京国立近代美術館
戦中、戦後の表現の変化
歴史と向き合ってきた靫彦だが、自身が生きた時代との関わり合いも興味深い。
仏画などに用いられる起伏のない「鉄線猫」と、主題が際立つそぎ落とされた構図や色を得意としたその作風は、戦時中の禁欲的な空気の中ではひときわ評価された。だが、戦後は鮮やかな色の調和を楽しむかのように、靫彦の作品世界は晩年に向かいより豊かになっていったことがうかがえる。
山本五十六元帥像 昭和18年11月[59歳] 1943 東京藝術大学
出陣の舞 昭和45年9月 [86歳] 1970 山種美術館
歴史好きも日本画好きも魅了する、安田靫彦の世界。もし、どちらにも当てはまらなくても、きっと展覧会場のどこかで馴染みのある顔が出迎えてくれるはずだ。
展覧会場の様子
会期:2016年3月23日(水)~2016年5月15日(日) ※会期中展示替えあり
開館時間:10:00-17:00 (金曜日は10:00-20:00) ※入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(3月28日、4月4日、5月2日は開館)
観覧料:
<一般> 1,400(1,000)円
<大学生> 900(600)円
<高校生> 400(200)円
※括弧内は、団体券の価格。
特設サイト:http://yukihiko2016.jp/