ありがとう『Go!プリンセスプリキュア』! はるかとゆいがくれた、子どもの夢へのあたたかいエール

コラム
2016.4.3
『プリンセスプリキュア』がくれた、子どもの夢へのあたたかいエール

『プリンセスプリキュア』がくれた、子どもの夢へのあたたかいエール

つよく やさしく 美しく
真のプリンセスを目指す4人の物語
夢へ向かって Go!プリンセスプリキュア!

 2015年2月から毎週日曜朝に放送された、プリキュアシリーズ第12作『Go!プリンセスプリキュア』。人々の夢を絶望の檻に閉じ込めるディスダークと戦い、キャラクターそれぞれが夢へ向かっていく姿を描いた本作も、2016年1月に最終話を迎えました。この記事では敬虔なプリキュアファンの筆者が、田中裕太監督をはじめスタッフのみなさまに感謝をしつつ、主観で本作を振り返ります。

■ 子どもの夢や可能性は、大人には計り知れない

 いきなりですがプリキュアと関係ない、とある貧困国での話。日本人ボランティアが現地の幼稚園・小学校を訪問した際に、「みんなの夢はなに?」と聞いたそうです。すると子どもたちは、ただ無言でまわりをキョロキョロするだけ。「なりたい職業はある?」と質問を変えると、ようやくひとりが「学校の先生……かな」と答えたといいます。

 これとちょっと似た話に、子どもの頃のジョン・レノンの逸話があります。学校の課題で「将来の夢は?」と聞かれた5歳のジョン・レノンは、「HAPPY」と書いて提出。先生に「課題を理解していない」と言われると、「あなたは人生を理解していない」と返したそうです。

 私たちはふつう、“夢=なりたい職業”と認識していますが、それは働いている大人の世界観による、大人の論理なのかもしれません。小さい頃から夢を聞かれ続け、サッカー選手やお花屋さんと答えて大人になった私たち。夢をたずねる側になると、同じように「なりたい職業」を聞いています。子どもの夢は本来、職業という枠におさまらない、「ああしたい!」「こうしたい!」という、もっと自由なものであるはず――。『Go!プリンセスプリキュア』はそのあたり、夢というテーマを、子どもの世界観を大切にしながら描いたアニメだったと思います。

■ 何にもとらわれない、はるかの自由な夢

 小さい頃から大好きな絵本に登場する『花のプリンセス』のようになりたい――。『Go!プリンセスプリキュア』の主人公・春野はるかの夢は、職業でもなければ、どうすればなれるのかもわかりません。「恥ずかしくて言えないよ……。おとぎ話のプリンセスになりたいなんて……」と第1話でつぶやいていたように、はじめは本人にとってもモヤモヤしたものでした。

 プリキュアになって人々の夢を守り、グランプリンセスへのレッスンも積んでいくはるか。はじめて自分の夢のかたちを自覚したのは、生まれながらのプリンセスであるトワイライトと対決した第18話でした。

 「プリンセスとは私のような唯一無二の存在。いくら努力を重ねたところで届きはしない!」と言い放ち、絵本『花のプリンセス』を無情にも燃やすトワイライト。はるかはボロボロになりながらも絵本を取り戻し、「私だけが目指せるプリンセスがあるかもしれないって思ったの!」「魔女を恐れない強さ。相手を思いやるやさしさ。そして世界に花咲かせる心の美しさ。小さい頃からずっとあこがれてきた花のプリンセス――それがわたしの目指すプリンセス!」と力強く返しています。

 そしてシリーズ後半、幼い頃から夢を応援してくれていたカナタに「夢に縛られるな」と言われた絶望を自力で乗り越える第38・39話を経て、はるかの夢はより強固なものになっていきます。

 第47話で因縁の相手クローズが、「おまえの夢なんて本当はどこにもない。終わりのない夢を、おまえは追い続けてるんだ!」と迫ると、はるかはそれを認めながら、「ずっとずっといつまでも、つよく やさしく 美しくありつづける存在。それが、私がなりたいプリンセス!」と反撃したのでした。

 はじめは突拍子ないものに見えた、はるかの「プリンセスになりたい」という夢。たくさんの人の夢を守り、親友たちの夢にもふれて成長したはるかは、それをプリンセスのように「つよく やさしく 美しくあること」という夢へと自力で昇華させたのでした。

 子どもが子どもの論理で描いた「プリンセスになりたい」という夢――。『Go!プリンセスプリキュア』は、それをひたすら温かく見つめ、大人の世界観に生きる私たちでもわかるような“あり方としての夢”というかたちで、鮮やかに描き出してくれました。

■ はるかから力をもらって育った、ゆいの夢

 つよく やさしく 美しくあり続けるというはるかの強い意思は、シリーズを通じてたくさんのキャラクターに伝染していきます。中でも特にその影響を受けたのが、「絵本作家になる」という等身大の夢を持つ、七瀬ゆいでした。

 はるかのルームメイトで、はるかたちがプリキュアだと知る唯一の存在であるゆい。自分自身も幾度となく絶望の檻に閉じ込められながら、ゼツボーグが現れれば避難誘導にまわったり、ピンチに陥ったはるかを生身でかばったりと、プリキュアをいつも支えてきました。みんなの力になるために、自分もプリキュアになれたらいいのに……と言いもらす場面(第28話)すらあったほどです。

 そんなゆいの強い気持ちは、自分の夢にかたちを与えていきます。同じ第28話で、「でもね、気づいたんだ。いつか誰かにみんなのことを伝えたい。それが友達として、私がやるべきことなんだって」と語ったように、「絵本作家になりたい」という夢が、「絵本作家になって、伝えたい」へと変わっていたのです。

 絵画コンクールに出す作品で悩む第41話では、「わたしの描きたいものは……わたしにしか描けない、つよく やさしく 美しいプリキュアの姿!」「自分にしか描けない物語を描いて……夢の力と、夢を守ることの大切さを伝えたい!」と、はっきりとした決意・目標になっていました。

 "あり方としての夢"を持つに至ったはるかは、決して特別な存在ではありません。すべては夢に全力で向かい合ったからこそでした。その大きなメッセージを、いわゆる普通の「将来の夢」に還流させて、変奏したのがゆいなのかもしれません。

 お花屋さんやパティシエになりたいと話す子どもたちにとって、絵本作家になりたいゆいは等身大の存在です。ゆいの夢が、「なりたい」から、「なって、こうしたい」へ脱皮したように、きっと誰もが夢へ手を伸ばすことができるはず――。プリキュアではないゆいが、それを証明してくれました。

■ 夢を持つすべての人と、次の世代の子どもたちへ

 はるかは最終回で再びクローズと対峙し、「夢も絶望も、その両方がわたしを育ててくれた」「絶望がある限り、夢だって輝きつづける」と語りかけます。落ち込んだり、一度は絶望も乗り越えたからこそ、その説得力は確かなものでした。

 「プリンセスになる」という子どもらしい夢を、「つよく やさしく 美しくありつづける」という“あり方”へと昇華させたはるかの姿は、夢を持つ子どもたちへのエールです。そして、絶望を「夢を育てるもの」として肯定する姿は、夢を持つすべての人へのエールでした。

 一方のゆいも、第48話では絶望の檻からとうとう自力で脱出し、他の生徒たちの檻も開けてしまいます。「友達が守ってくれたわたしたちの夢。何度檻に閉じ込められたって破ってみせる! 私たちは……負けない!」――力強く叫ぶゆいの姿はもはや、夢を守るプリンセスプリキュアそのもの。平和が戻って5人が別れるシーンでも、「つよく やさしく 美しく Go!プリンセスプリキュア!」と、一緒に声を合わせていました。

 普通の女の子のゆいが抱いた「絵本作家になりたい」という夢。プリキュアたちが大人になったラストシーンでは、小さな女の子が、ゆいの描いた絵本『プリンセスと夢の鍵』を読んでいます。はるかからゆいへ、ゆいから次の世代の子どもたちへ。『Go!プリンセスプリキュア』から、テレビを観ている子どもたちへ――。

 「大丈夫。夢に向かって走り続ければ、その心の中にまたキーは生まれる。そのキーがあればきっと……きっと……」という、はるかの言葉で幕を閉じた本作。観ていた子どもたちが夢を持ち、やがて大人になり、またその子どもがきっと……なんて、夢の力をもう一度信じてみたくなるようなラストでした。1年間、素敵なアニメをありがとうございました。

[文:小林真之輔]

 
 
■ Blu-ray 発売情報

『Go!プリンセスプリキュア』Blu-ray vol.3
第25話~第36話収録 Disc2枚組 23,000円(税別)
好評発売中

≪初回特典≫
・描き下ろしイラスト三方背スリーブケース
・中谷友紀子イラスト色紙全員サービス応募券(全巻購入特典)

≪映像特典≫
・後期エンディングダンスレッスンムービー
・後期ノンテロップオープニング
・後期ノンテロップエンディング(4種)
・設定資料ライブラリー
・Blu-ray単独CM

『Go!プリンセスプリキュア』Blu-ray vol.4
第37話~第50話収録 Disc2枚組 23,000円(税別)
4月20日(水)発売

≪初回特典≫
・描き下ろしイラスト三方背スリーブケース
・中谷友紀子イラスト色紙全員サービス応募券(全巻購入特典)

≪映像特典≫
・後期ノンテロップエンディング(プレミアムドレスver.)
・変身&技シーン集
・プリンセスあこがれドレスライブラリー
・設定資料ライブラリー

発売元:マーベラス/販売元:ポニーキャニオン

TVアニメ『Go!プリンセスプリキュア』公式サイト(東映アニメーション)
TVアニメ『Go!プリンセスプリキュア』公式サイト(朝日放送)

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