THE ORAL CIGARETTES ワンマンツアー初日、タフなロックバンドの姿にその進化をみた
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー~奈良まで続くよ道のりはツアー!~』 2016.4.5 赤坂BLITZ
1月の『FIXION』のリリース以降、THE ORAL CIGARETTESが破竹の勢いをみせている。いや、正確に言えば昨年7月のZepp DiverCityでの山中拓也(Vo/G)の喉の不調による公演中断と、その後の山中のポリープ手術を経て、そのリベンジ公演と位置付けた『FIXION』リリース前日のZepp DiverCityワンマンを速攻で完売させたところから、彼らの快進撃は始まっていたのだ。2月から3月にかけては『唇ツーマンTOUR』で全国10箇所をまわって名だたるバンドたちと堂々と渡り合い、初のホール公演を含む今ツアーも早々に全公演をSOLD OUTさせている。ただ、彼らのライヴをレポートするにあたって「7.14」からの復活劇と位置付ける、もしくはそれを振り返る切り口の文章を書くのはこれで最後にしようと思う。なぜなら彼らが、2016年4月5日に赤坂BLITZで行われた『THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンツアー~奈良まで続くよ道のりはツアー!~』・初日で、挫折と復活といったドラマ性などとうに飛び越えて、すでに次のステージへと歩みだしていることを強烈に焼き付ける、タフなロックバンドの姿を見せてくれたからである。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
まず暗転した場内に、この日は影アナで「一本打って、ジャッ、ただいまより~」というおなじみのフレーズが響き渡り、場内は一気に熱をあげる。だが、その熱を一旦内に封じ込めるかのようにスケール感のあるスロウなSEが流れ、ライヴは静かに滑り出した。勢いに任せて突っ走るのではなく、しっかりと自らの音や言葉と向き合ってもらおう、共有しよう……そんな想いと、それをやり切れるという自信の表れだろうか。実際にこの日のライヴでその狙いはしっかりと体現されており、頭のネジをすっ飛ばして前へ前へと押し寄せるような楽曲と、じっくりと聴き入るタイプの楽曲のどちらも等価値で鳴らされ、聴く者すべてに届いていった。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
ワンマンツアーということで、バリエーション豊かに新旧織り交ぜながら展開していったステージでは、バラードも、懐かしい楽曲も、カップリング曲も、おまけにセッションやベースソロまでしっかりと披露してくれた。そしてもちろん「キラーチューン祭り」と銘打ってひたすらアゲまくるブロックもちゃんと用意されており、プログレッシヴな曲展開を一糸乱れぬアンサンブルで打ち込んできた「mist...」では、ラストのサビで自然と起きたファンの大合唱に山中が「俺、やっぱお前らのこと独り占めしたいっすわ!」と喜びを表現し、大歓声の上がる一幕も。「Mr.ファントム」では、あきらかにあきら(B/Cho)と鈴木重伸(G)が視覚聴覚の両面で躍動して、大いに会場を盛り上げていた。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
最新アルバム『FIXION』からの楽曲もたっぷり演奏され、山中がハンドマイクを手にしてステージ上を闊歩しながら、フロアの隅々、2階席までアピールする巧みなステージアクションを見せ、照明なども一体となったシアトリカルな演出だったのは「マナーモード」。フロアを容赦なく煽り倒し、文字通り狂乱の坩堝に叩き込んだのは、もはや彼らのライヴに欠かすことのできないナンバーとなってきた「狂乱 Hey Kids!!」だ。とにかくハードな楽曲はよりハードに、メロウな楽曲はよりメロウに、どのレパートリーも正統進化を遂げている印象。テクニカルな部分もさることながら、きっと精神面でも成長著しいに違いない。それほどまでに彼らのサウンドは説得力を獲得している。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
そのことを強烈に伝えてくれたのはタイトル未発表の新曲だった。先月の『唇ツーマンTOUR』ファイナル公演でも披露されていた楽曲なのだが、とにかく重厚かつトリッキーで変則的な曲展開、なのになぜかキャッチー。そこにスラップベースからラップ調のフレーズ、中西雅哉(Dr)が巧みに繰り出すラテンのリズム、スクエアな4つ打ちまで入れ込んであるというカオスぶりながら、しっかりオーラルのサウンドに仕上がっていた。この曲について山中は「我々は変化を怖がらない」「次のステージに行くための音楽」と話していたが、それこそまさに4人の現在位置にほかならない。自らが誰よりもかっこいいロックバンドになるために、革新的チャレンジをするだけの自信と自覚が、彼らには備わっている。果たすべきリベンジを終えた彼らはもうその先を見据えて歩きはじめているのだ。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
確かな変化、進化を打ち出していく一方で、変わらない魅力もしっかりアピール(?)してくれたオーラル。中西による「まさやんショッピング」コーナーのなんともいえない空気は健在であったし、とびきりクールに妖艶にキメたと思いきや「ポニーテールが好き」などと何の脈絡もないMCをはじめる山中もそう。そして4人が心底楽しそうに、時折視線を交わしたり笑みを浮かべながら、2時間ずっとあたたかな一体感を作り出してくれた。そんな彼らのライヴの軸は全くブレていない。
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
このあとのツアーに参加する方は心しておいたほうがいい。側から見ても分かるほど充実しまくっていながら、なおも貪欲に進化を求めている今のTHE ORAL CIGARETTESは、気を抜いているとぶっちぎられてしまうくらい、加速し続けている。
レポート・文=風間大洋
THE ORAL CIGARETTES Photo by Viola Kam (V'z Twinkle Photography)
6月2日(木)函 館 CLUB Cocoa 18:30/19:00