平田広明・山路和弘・水夏希・竹下景子による朗読劇『VOICARION~ヴォイサリオン~』の稽古場に潜入!
8月27日(土)から9月5日(月)まで、日比谷・シアタークリエにて『クリエ プレミア音楽朗読劇 VOICARION~ヴォイサリオン~』が上演される。様々な朗読劇を手掛けてきた藤沢文翁が原作・脚本・演出を務めるこの舞台、9月2日(金)まで上演される「女王がいた客室」では、日替わりで人気声優たちが出演するとあって、上演前から熱い注目を集めている。
7月下旬、都内稽古場に平田広明、山路和弘、水夏希、竹下景子(9月1、2日出演キャスト)が初めて全員揃うということで、その本読み稽古の模様を見学してきた。また稽古後には平田広明・山路和弘、そして本作の作曲と音楽監督を務める小杉紗代にインタビューを敢行した。
まずは稽古の模様をお伝えしよう。
稽古場にはロの字に組んだ長テーブルの各辺に平田・山路/竹下/水/藤沢と音楽監督の小杉紗代らが座り、その周囲を本番当日、演奏を聴かせるミュージシャンたち、大道具や照明、音響、衣裳などのスタッフが取り囲む。
まず初めに藤沢から「今日出てきた疑問・質問を全て反映させた脚本を製本してお渡しします」と挨拶&説明。
早速1幕から読み合わせスタート。
しかし、なんという贅沢なキャストだろう。ジョニー・デップとヒュー・ジャックマンと宝塚トップスターと『男はつらいよ』のマドンナが目の前に揃っているんだから。キャストが雑談している声を聴いているだけでも眼福ならぬ耳福状態だ。
舞台はパリのどこかにある、決して一流ではないホテル。コンシェルジュのアレックス(アレクサンドル/平田)と客室係エレオノーラ(水)、そこに馬車を止めた客人の従者マイカ(山路)、そしてこのホテルの客人となる「マダム」と呼ばれる謎の女性(竹下)。実はホテルの従業員は全員ロシア人であり、ロシア革命のときに命からがら亡命してきた没落貴族たちなのだ。そしてこのホテルには「宿泊すると願いが叶う」という噂があるらしい。
平田、山路は初めての読み合わせとは思えないくらい、すでに演じる人物の人格が浮かび上がるようなセリフ回しだ。「お客様第一」「NOを言わないコンシェルジュ」アレックスは、常に姿勢よく礼儀正しく冷静沈着な様でフロントにいる姿、マイカは今日に至るまで、何か悪いことも艶っぽいこともたくさん経験してきた…と思わせる、元貴族にしてはちょっとスレた姿が目に浮かぶ。プロ中のプロが演じるとこの段階でもこんなに完成度が高いのか、とただただ感心。
平田広明
そして、「こんな役は、これまでやったことがない」と以前のインタビューでも語っていた水の新人類ぶりに思わず笑ってしまう。「うそぉぉぉ!」「あ~~れ~~っくすぅ~!」などと何につけても語尾を伸ばし、言葉はすかさず略しそうなイマドキ女子を演じている。本人の心中は謎だが、おそらく水の長年のファンなら「え!?」と言いそうなくらい今までにないキャラを楽しそうに演じていた。
何よりの驚きは竹下の圧倒的存在感だ。
失礼ながら竹下がどう出てくるか全く予想が立たなかったのだが、最初の一言を口にした瞬間、稽古場にロシアの肌寒く重苦しい宮殿が見え、唯一無二の高貴な人物がそこにいた。この公演中、竹下だけが通しで「マダム」の役を演じることになるが、相手役に誰が来ようともゆるぎない「マダム」を演じてくれることを確信した。
本読みはどんどん進んでいく。ここで4人、いや平田・山路の前に立ちはだかったのは、ロシア(語)の壁!カタカナで書かれているロシア語ならではの「ヴ」や「フョ」といった日本人になじみのない発音に翻弄される二人。カタカナを目にした瞬間、両肩にググッと力が入るようなスタイルで挑戦したが、噛み、沈没する平田。一方、手を動かしリズムを作りながら挑戦したものの、やはり噛み、沈没する山路。ベテランが苦戦する姿に気の毒さを感じつつも思わず笑い声に包まれる。
※お二人の気持ちを体感したい方は、試しに次の名前を声に出して発音してみてください。「マリア・フョードロヴナ・フレデリケ・ダウマー」。セカンドネームが鬼門です。
藤沢は苦戦する二人に「ロシア人なので『立て板に水』な感じでよどみなくスラスラっと言い切ってくださいね」と笑顔を送る。ぐぬぬぬとうめくベテラン二人(笑)
山路和弘
1幕が終わったところで休憩。小杉がミュージシャンチームに近寄りご挨拶。これまでにご縁があった人もおり、久しぶりの再会を喜んでいるようだ。「今どこに住んでるの?」「私はNY」「向こうに住んでるんだけど先日帰国して」小杉含め世界を股にかけて活動している人々がこの稽古場に多数集結しているのもまたすごい話だ。
読み合わせ再開。2幕。
もう皆の脳内にはホテルの一室が絵図面に描けるくらいリアルに広がっていることだろう。後半では明かされる「マダム」の本当の姿と心に秘めた想い、そしてアレックス・マイカが抱える心の傷、エレオノーラの人間性、エンディングに近づくにつれ、4者4様の想いに胸が締め付けられる。最後はこの物語に没入しすぎて思わず涙がこぼれるかと思うくらいだった。
最後の1pが終わると、稽古場にため息のような声があふれかえっていた。
その後は休憩をはさみ、演じていての疑問点、演じていたのを見てのスタッフからの疑問、それぞれが思う事を全体で共有する。
藤沢の「もう明日から立ち稽古ができるくらいの完成度ですね…カタカナのところを除いては(笑)」の言葉に皆で大きく笑って全体での稽古はお開きとなった。
同じ作品でありながら、それぞれの組ならではの色が出る楽しみもある。今この段階でここまでにクオリティの高いものを、このあとさらに各組でどう高めていくのか、本番が楽しみだ。
※平田広明・山路和弘インタビュー、音楽監督小杉紗代インタビューもお楽しみに!
■日時:2016年8月27日(土)~9月5日(月)
■会場:日比谷・シアタークリエ
■原作・脚本・演出:藤沢文翁
■作曲・音楽監督:小杉紗代
■出演
☆8月27日(土)~9月2日(金) 『女王がいた客室』
鈴村健一、浪川大輔、沢城みゆき、中村悠一、山口勝平、石田彰、保志総一朗、三森すずこ、甲斐田ゆき、入野自由、平田広明、山路和弘、水夏希/竹下景子
☆9月3日(土)~9月5日(月)『Mr.Prisoner』
上川隆也、林原めぐみ、山寺宏一
■公式サイト:http://www.tohostage.com/voicarion/