藤原竜也・山本裕典らが韓国の戯曲を舞台化、『鱈々』顔合わせの様子をレポート
初日を1ヶ月後に控えた『鱈々』の、顔合わせが9月6日に行われた。三々五々集まって来るスタッフ、キャスト、関係者たち。韓国の戯曲が、6都市ツアーを含むこれほどの規模で上演されるのは日本ではほぼ初めてとのことで、新たな挑戦を前に、カンパニー全員の顔に期待と強い意欲が表れているようだ。コの字型に並べられた机の中央に、いち早く座った演出・栗山民也が、稽古場に新たな人が加わるたび、ギョロリと強い視線を送り、挨拶を交わしている。
押さえ切れないワクワクのためか何度も席を立ち上がる山本裕典、既にピンクのマーカーでビッシリ印をつけた台本をめくる中村ゆり、早くも劇世界に身を置いているかのようなワイルドな雰囲気を発する木場勝己。そして開始10分前になったところで「おはようございます!」と活気ある声が響き、藤原竜也が登場した。役者がそろい、『鱈々』の創作、その第一歩が踏み出されたのだ。
まずはスタッフ、俳優の紹介を一巡。その後に劇作家・李康白氏から、この日のために届いたというメッセージが読み上げられる。
「戯曲は紙に書かれた文字です。その文字を、舞台の上で生き生きと動き回る生命体にするには、皆さんに体を与えてもらい、魂を吹き込んでもらわなければなりません」と始まる文章には、演出:栗山への敬意や、康白氏の令嬢が藤原ファンだということも記され、カンパニーを大いに激励する内容だった。
続いて挨拶を求められた栗山も「最近の日本は、何もかもを“わかりやすさ”で括ろうとする危険な状態にあります。だからこそ他者や種々の出来事に対し、自分の視点からきちんと問い掛けることが、混迷する現代日本を生き伸びるためには不可欠。この戯曲には、そんな、今の日本から失われたものが多々含まれている。目に見えぬ大切なものを見つけるために最適の戯曲を、皆さんと共に舞台に立ち上げたいと思っています」と、康白氏の言葉を引き継ぐように檄を飛ばした。
10分の休憩を挟んで舞台装置の説明、そして初めての本読みがスタート。
戯曲は冒頭から真面目で几帳面なジャーン=藤原と、やや投げやりで粗暴なキーム=山本、二人のやりとりが延々と続き、稽古場はあっという間に二人が暮らす薄暗い倉庫、その息苦しいような雰囲気へと塗り替えられていく。同じ仕事、意味も理由もあいまいな作業を繰り返す日々にうんざりし、イラつくキームを穏やかに誠実になだめるジャーン。初回とは思えぬほど藤原&山本のコンビネーションが良く、時に周囲に笑いも巻き起こしながら、会話はどんどんテンポアップしていく。
場が変わって中村演じるミス・ダーリンが登場。男たちとは別の角度から、自身の人生をなんとか変えようと足掻くダーリンを、中村は繊細にしなやかに表現する。
彼女の父親でトラック運転手役の木場は、その登場から倉庫にそれまであった、退屈な平穏をぶち破る衝撃。圧倒的な声量と迫力が、場の空気を震わせる。
閉塞した劇中の状況とは裏腹に、本読みはスピーディに進み、一度の休憩を挟んだものの100分程度でらすとまで駆け抜けた。
「面白いホンだよね。平凡な日常を描いているようで実は、人物や倉庫から出し入れされる大量の箱の存在など、非常に象徴的かつ寓話的で、観る者に多くを想像させる。稽古では、観客がさらなる想像を膨らませられるよう、色々なことを仕込んでいこうと思う」と、栗山。4人の俳優たちも、それぞれ思うところのある表情で席を立っていった。
秘密や謎の多い戯曲に、エネルギッシュな4人の俳優と演出家が挑む。その先にどんな舞台が生まれるかはまだわからないが、多くの観客が“未知”の演劇に触れられる。そんな予感を強くした一日だった。
◆作:李康白(イ・ガンペク)
◆演出:栗山民也
◆出演:藤原竜也、山本裕典、中村ゆり、木場勝己
◆公式サイト:http://hpot.jp/stage/dara
<東京公演>
◆日程:2016年10月7日(金)~10月30日(日)
◆会場:天王洲 銀河劇場
◆料金:全席指定9,800円/U-255,500円
◆一般発売:7月16日(土)~
※11月にツアーあり(長野、静岡、大阪、福岡、鹿児島)