世界一エレガントな時間旅行「ボルドー展 ―美と陶酔の都へ― 」
ボルドー展 ―美と陶酔の都へ―
ワインしか思い浮かばないあなたこそ楽しめる
「ボルドーといえば?」と聞かれたら、まず「ワイン」と答える人は多いだろう。そんな人こそ意外な発見が楽しめる、ユニークな展覧会をご紹介しよう。国立西洋美術館(上野)にて来月9月23日まで開催中の「ボルドー展 ー美と陶酔の都へー」。ボルドーという街が「月の港」「世界一エレガントな街」として、独自の優雅な文化を育んできたことを伝える展覧会だ。
紀元前から現代までの悠久の旅
さて、この展覧会の見どころはどこか。それは、悠久の時の流れをめぐる贅沢さにあるだろう。旧石器時代から現代にいたるまで、豊富な作品・資料の数々は200点を超える。彫刻、工芸品、絵画、写真といった、多種多様なジャンルの美術作品たち。それが一堂に集い、その歴史を雄弁に語りかけてくる。
角を持つヴィーナス(ローセルのヴィーナス)
ワインを足がかりに想像する
冒頭の問いに「ワイン」と即答したあなたも、そこを足がかりとして作品をたどれるので安心してほしい。
たとえば、1世紀半ばに作られた「ボルドー・ワイン用のアンフォラ」。左右に持ち手のついた優美な造形から、ボルドー・ワインへの誇りが感じられる。また、繁栄を極めた18世紀の「銘々用のワイングラス・クーラー(「カルトジオ会修道院」セット)」。この工芸品からは、ワイングラスをひとつひとつ冷やして飲むという、余裕と気品にあふれた生活がありありと想像される。
銘々用のワイングラス・クーラーとワイン・クーラー(「カルトジオ会修道院」セット)
その他にも、海洋貿易とワイン商をモチーフとした「ボルドー市の鍵(対)」、栄華を誇った街の風景画、ワイン商で富を得た人々の肖像画の数々など。「月の港」の呼び名のとおり、港町として古くから発展してきたボルドーの歴史をたっぷりと感じられる。
ドラクロワの大作を中心とした、ボルドーゆかりの絵画世界
今回の展示では立体作品の他に、数多くの絵画作品が集められている。
その目玉となるのが、ドラクロワの「ライオン狩り」だ。とにかくまずその大きさに圧倒される作品だが、火災に遭ったことで上部が焼失している。元の姿は隣に展示されたルドンの模写から想像できる。見比べると、焼失によってむしろライオンの迫力が強調されているようにも感じられておもしろい。
その他にもボルドーゆかりの画家として、ゴヤ、ロートレック、マルケなど意外な名が連なり見ごたえじゅうぶんだ。
ライオン狩り / ウジェーヌ・ドラクロワ
古代の彫刻や、中世の美しい身のまわりのもの、迫力ある絵画に、きっとこどもでも飽きることのない冒険となるだろう。夏休みの締めくくりは、エレガントな時間旅行というのも良いかもしれない。