ベーシスト・drmにインタビュー 謎の怪しいお面、ベースを弾き始めた意外な理由、初のワンマン……気になることを全部訊いた

インタビュー
音楽
2016.11.4
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ニコニコ動画の“演奏してみた”カテゴリを中心に活躍するベーシスト・drm。また、まらしぃ、タブクリアとのバンド・logical emotionとしても活動している彼に疑問を全てぶつけてみた。drmのことを初めて見た人がまず気になるのは謎の怪しいお面……そのお面に行きついた経緯から、ベースを弾き始めた意外な理由、ユニークな動きが目を引く弾いてみた動画、そして1月14日に開催されるワンマンについてを訊いた。

──動画サイトに投稿し始めたキッカケってどういうところだったんですか?

ちょっと長くなっちゃうんですけど……元々は軽音楽部に入っていてスリーピースバンドでギターボーカルをやっていたんですよ。そのときに、僕が組んでいたバンドのベースとドラムと、軽音部の先輩が組んでいたバンドのベースとドラムが同じ奴らだったんですけど。でも、その2人が突然先輩のバンドを辞めちゃって。でも、2人になんでやめたの?って聞くのもおかしな話だなと思ったから、先輩に「僕、サポートでよかったらベースやりますよ?」って言ったのが、そもそもベースをはじめたキッカケで。

──じゃあ、ベースを始めたキッカケは人助けから?

そうですね。半分、責任取るみたいな感じで(笑)。結局自分がやっていたバンドもなくなってしまって、自分としてはまだまだギターやる気あるんだけどな……っていう感覚で始めたんですけど。それでベースの弾き方とかをネットで調べてたら、自分で楽器を弾いた映像を動画サイトにアップするっていう文化があることを初めて知ったんですよ。なんか、みんな自由にやってて楽しそうだし、ちょっとやってみようって思ったのが投稿を始めたキッカケです。

──2009年3月に初投稿をされてますけど、ベースを手に取ってからアップするまでの期間って?

半年ぐらいですね。でも、いろんな動画を観ていて、アクションが少ないなって思ったんですよ。みんな首から下で、イスに座って手元を映しているのがほとんどで。元々自分がやっていたバンドは、座って上手に弾くような感じのバンドじゃなかったから、もっと動きがあれば、ベースでも目立てるんじゃないかなと思って。

──元々ギターボーカルだったのもあって、目立ちたいっていう気持ちは強いですか?

その気持ちは本当に抜けないですね(笑)。あとは、俺、そんなにうまく弾けねえし!っていう。そういうのはうまい人に任せておいて、自分は違う分野で攻めていこうっていう感じでした。

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──いつも動画ではお面をつけていますけど、あれはどういうところから?

元ネタとしては、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュがバンドを一回抜けた後に、バケットヘッドっていうギタリストが入っていた時期があって。ケンタッキーフライドチキンのバケットセットってあるじゃないですか。あの入れ物を頭にかぶって、白いお面をつけて、ロボットダンスしながらギターを弾く人だったんですけど、おもしろかったからギターをやってたときにちょっとマネしたりしていて。

──そうだったんですね。

それこそまだ動画サイトなんてものがなかったときに、FLASH(動画)ってあったじゃないですか。あれに、すげえフェイスペイントをしている人が、動画のオチでドーン!って出てくるやつがあったんですけど、それを小学生だったころに見て以来、全然忘れられなかったんで、これや!って(笑)。とにかくパっと見、「うわっ!」ってなるものがいいなと思っていたので、お面にあの柄を描いてしまいました。

──動画を観ていると、楽しそうに弾いているのが伝わってきますし、それを観ているこっちも楽しくなるものになってますね。

でも、基本はただ赴くままに動いているだけというか。観る人が楽しいものをとか、そういうマジメなことはあんまり考えてなかったし、逆にこういう風に観られるんだろうなっていうのを考えるとつまんなくなっちゃうんですよね。笑いを取りにいこうとしちゃうとスベるっていうのに近いっていうか。天然なものの面白さってあると思うので、動きをこうしようとかっていうのはあんまり考えないようにしてます。撮った後にチェックして、さすがにつまんなかったら消しますけど(苦笑)。

──動きは赴くままにやっていて、演奏に関しては?

そっちはわりと、まぁいいやっていう感覚ですね。世の中的には、音と映像を別で録ることが多いから、さすがに誰かと一緒にやるときはそうしてますけど、自分ひとりでやるときは背伸びをせずにやろうって。

──多少ミスってもしるか!っていう。

ずっとその感覚でやってますね。上手に弾けたらいいのにって思いながら、「俺なんか所詮こんなもんや……」っていう自分への戒めも含めてやっているというか。

──うまくなりたいっていうのは根本にあるんですね。

すごくありますね。どっちもできれば最強だろって思ってるので。やっぱり動けば動くほど、どんどん下手になるから、そこのジレンマと戦ってます。

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──なんか、動画だけどライブみたい感じですよね。

そうですね。でもまぁ、ライブの映像が残るっていうのが一番タチ悪いし、それが量産されていくって考えるとゾッとしますけど(笑)。

──そういうライブ的な動画もありつつ、「【ドラム以外】Megazineを弾いてみた【ベース】」みたいな、作品的な動画もありますよね。スクエアプッシャーの曲を全部ベースで、しかもひとりでやってしまうというものでしたけど。

あれは、それこそ違う分野で攻めたというか。テクニックがうまい人は世の中にいっぱいいるんだから、それはその人にまかせて、僕はテクノロジーに頼ってしまおうっていう感じですね(笑)。あと、今度ソロライブをするんですけど、どうせベースなんて誰かがいないと成立しない楽器だっていうのは感覚としてあるんですよ。動画は別ですけど。でも、せっかくお話をいただいたし、なんかおもろいことやらなあかんなっていうのを考えたときに、ペンタトニックスっているじゃないですか。彼らを見て、これをベースでやればええやんけ!って。でも、リズム感がなかったので結局ドラムは諦めましたけど(苦笑)。

──そこは、それこそテクノロジーを使って。

そうです! スクエアプッシャーって、あの曲はバンド編成でやってますけど、本来はベースとシーケンサーでどうのこうのっていう人じゃないですか。だから、先人がいたからできたところもあるんですけど、でも、ベースひとりでなんとかできるもんなんだなって思いました。でも、ちょっと玄人向けの音楽だとは思うから、僕としてはもうちょっとポップにやりたいなっていう気持ちもあって。

──玄人向けのものをわかりやすく見せたい気持ちもあるんですか?

知らない人からしたら、やっぱりべースっていまいちよくわかんないと思うんですよ。なんとなく存在は知ってるけど、何をしてるのかはよくわからないだろうし、なんか地味だしっていう。その感覚は正しいとは思うんです。ただ、それにすごくムカついたりもするんですよね。だから、ベースをよく知らない人、わからない人も含めて楽しめることをやりたいなって思ったりもするんですけど、逆に、わかんねえんだったらもっとわかんなくしてやんよ!っていう気持ちもあって。

──なかなか複雑な感情ですね(笑)。

以前アップした「【歌詞が】メランコリックを歌って弾いた【鬼門】」は、ボコーダーを使っていて、ベースを弾いているんですけど、出ている音は声みたいな感じなんですよね。あれは、それこそ楽器を知らない人からしたら、何をしてるのかよくわかんないと思うんですけど。でも、そこはもうちょっと見せ方を考えなきゃいけなかったなとは思ったけど、じゃあもっとわかんなくしてやるっていう気持ちもあって。だから、あの動画を観たベースを知らない人に、「ベースって声が出る楽器でしょ?」って言わせたら、僕の勝ちって思ったりもします。

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──(笑)。動画をあげていくことでいろんな人に注目され、交友関係も広がっていき、今はまらしぃさん、タブクリアさんの3人でlogical emotionというインストバンドでも活動されていますね。

ロジエモって、僕がベースを始めてから1、2年ぐらいのときにできたバンドなんですよ。だから、期間的には結構長いことやっていて、その間に同人CDを作ったり、地味に活動してはいたんですけど、ありがたいことに最近CDをメジャー流通させてもらったりするようになって。でもなんか、ロジエモはある意味自分のベースの礎になっているところもあるんですけど。

──というと?

ベースを始めたばっかりだったのもあって、いざ3人でやるとなったときに、どうすればいいのかわかんなかったんですよね。バンドやってたくせに、自分が目立つことばっかり考えて、それに精一杯だったので。だから、2人に全部教えてもらったんですよ。

──そうだったんですね。

感覚的な表現がすごく多いんですよ。たとえば「こういう音って出せませんか?」って言われるんだけど、それってエフェクターを使うとかじゃなくて、シンセでやることなんじゃない?っていうときもあって(笑)。でも、頑張ってやってみると、すごくいい顔で笑ってくれるんですよ。「それです!」って。それが嬉しかったりもして、気がついたら変な音を出すためのエフェクターボードができちゃったんです(笑)。だから、今の自分を構成するのに、すごく助けてもらったバンドなんですよね。

──いいバンドが組めましたね。動画を投稿し始めたころと、CDをメジャー流通で出すようになった今とで、気持ちの変化はありますか?

責任を感じるようになってきました。そこは元々持っとけよって話なんですけど(笑)。昔はいかに自分が楽しくなるかっていうためだけに音楽をしてたし、今でもその気はあるんですけど、ライブに足を運んでくださる方々って、いろんな方がいるわけじゃないですか。特にロジエモは年齢層が幅広くて、自分のお父さんに近いような人から、まだ小学生にもなっていないような子までいるんですよ。

──本当に幅広いですね。

中高生だって、一生懸命お金を貯めてきてくれるわけだし、その子達にとっての代はものすごく大きいものだっていうのは、自分もそういう経験をしてきたからわかっていて。そういう人達のためにも良いものを見せたいっていう気持ちがすごく強くなってきたし、それに伴って、僕がずっと逃げていた「そういうのはうまい人に任せておけばいい」っていう部分も、最近になって必要だなって思い始めました。なんか、テクニックは半分マナーというか。

──なるほど。

元々、直球勝負ができないタイプの人間だから、いかにして変化球を投げるかっていうのをずっと考えてたんですよ。でも、まっすぐに物を投げれないと、曲げられないんだなって。だから、いつかストレートで勝負しなきゃいけなくなったときには、ドヤ?って。実はできんねんで?ってサラっとやれるようになりたいです。今のところは、テクノロジーでなんとかしたろ!って感じですけど。

──最近はテクノロジー推しなんですね。

最近パソコンを新しく買ったから、どうしてもそれを使いたいっていうのもあると思うんですけど(笑)。俺もリンゴのマークのやつ使うんや!って。10年ぐらいずっとWindows使ってたのに。

──思い切りましたね(笑)。先ほどお話もありましたが、来年1月14日には、池袋LIVE INN ROSAでのワンマンライブ『ベースだけどワンマンです。』が決定しています。ご自身の名義でのワンマンライブは初ですか?

初めてです。披露宴パーティをやるような場所とかで、ループステーションを使って何かするっていうのは、ちょこちょこやったりしてたんですけど。でも、それもギターでやってたんで、ベースではどうしようかなって。

──どんなライブになりそうですか?

いろいろ考えた挙げ句、打ち込みとかをいろいろ駆使してやろうかなと思ってます。やりたいことをやれるだけやろうと思ってるんですけど……なんか、MCをどうしようかなと思ってて。喋んないでおこうかなとか。

──え、マジですか?

僕、喋り出すと着地点がよくわかんなくなるんですよ。「あれ? 今って何の話でこれを喋ってたんだっけ?」ってなっちゃうぐらい、短期記憶が弱いんで。それに、あのお面をつけて喋ったらおもしろくないと思うし。

──あぁ。生配信で喋ったりはしているけど、あのお面をつけてとなるとまた話は別というか。

そうなんですよね。なんか冷めるっていうか。そこは、それこそテクノロジーを使って何とかしようかなと思ってますけど。でも、僕としては喋らなくてもわかることがしたいんですよ。洋楽を聴いて、何のことを歌ってるのかわからないんだけど、でもいいと思っちゃう感じというか、言葉を取り去ることで広がりが持てるところもあるだろうし……今、なんかかっこいい言葉を並べてますけど、正直何も考えてないです(一同笑)。

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──ゲストを呼んだりとかは?

こういう性格なのか友達も少なくてですね……。人見知りなうえに口下手だから、全然友達が増えなくて。何も考えないで喋れるのってロジエモのメンバーぐらいなんですよ。あと、ゲストを呼ぶとその人が目立っちゃうじゃないですか。

──大問題ですね(笑)。

そうですよ。その人のことも考えなきゃいけないってなると、そこまで頭まわんないなって。ワンマンなんで、いかに自分が目立つかっていうのを念頭においてやりますし、来てよかった!って思ってもらえるものにしたいなと思いつつ、日々精進しております。

──そんなワンマンを経て、これからどういう活動をしていきたいですか?

なんか、ワンマンをやったからといって、次も同じ形でやるのか?っていったら、そうです!って言える自信は正直ないんですよ(笑)。ただ、ベース一本でもこうすれば音楽として成立させられる、ヘタクソでも頭を使えば何とかなるんだ!っていうのを見せていきたいですね。

──あの……この記事を読んでいる方が勘違いされるかもしれないのでお伝えしておきますけど、さっきから「俺なんか所詮こんなもん」とか「ヘタクソ」とか言ってますけど、dさんはただ自己評価が低いだけで、本当はめちゃくちゃベースが上手いですからね。

あはははは!(笑) それです! 僕、今日はそういうの聞きたかったんですよ……褒められたいんです! みんなちっとも褒めてくれないから!!

──遅くなってすみませんでした(笑)。

でも、本当に上手い人だったら、やっぱりベース一本でなんとかしちゃうんですよ。ただ、アイデアがあれば何とかなるんだっていうのは見せていきたくて。僕、最近DJに興味を持っていろいろ見てるんですけど、あの人達ってツマミをイジって何してるのか全然わかんないじゃないですか。音がショワショワショワ!ってなってるときは、あぁ、なんかやってんなってわかるけど。だから、なるべくそういうことのないように、ベースで何をしているのかわかるようにしたいし、それがわかったことで「僕もやってみたい!」って思ってもらえたらいいなって。

──いろんな人にベースに興味を持ってもらいたいと。

でも、実際にやってみたら、何やってんのか全然わかんねぇ……っていう形にして、実はあの人すごかったんだ!って思わせるのが僕の理想なんですよ。

──あはははは(笑)。

こんなもん誰でもできるやん! コイツなんかクソだわ!って思った高校生が試しにやってみたら、「全然できねー!」みたいな。だから、一番大事なところは教えないっていうイタズラを仕掛けたりもしたいですね。

──いろんな野心があるんですね。

ありますね。でも、普段は何も考えていないタイプの人間なので、とにかく今の自分が出来ることとか、興味があることをどんどんやっていきたいなって思ってます。


取材・文=山口哲生

 
ライブ情報
『ベースだけどワンマンです。』

1月14日(aaa)
OPEN16:00 / START17:00
池袋LIVE INN ROSA

前売¥3,500 / 当日¥4,000 
■受付日程:11/5(土)13:00~11/15(水)23:59
■受付URL:http://eplus.jp/drm


 
主催:Subcul-rise Record
企画/制作:Subcul-rise Record/World apart ltd.

drm LINE公式
@drmbass

 

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