蒼井優×石崎ひゅーい×松居大悟監督インタビュー 「子役と動物と石崎ひゅーいとは、共演しないほうがいい」
左から、石崎ひゅーい、蒼井優、松居大悟監督 撮影=岩間辰徳
女優・蒼井優が8年ぶりに単独主演を務める映画『アズミ・ハルコは行方不明』が12月3日に公開される。同作は短編集『ここは退屈迎えに来て』で話題を呼んだ作家・山内マリコ氏の同名小説を原作とし、“アラサー、20代、女子高生”の3世代の女性の生き方を複数の異なる時間軸でテンポよく交差させた青春ストーリーだ。蒼井は行方不明となった主人公・安曇春子を演じ、春子の幼なじみ曽我を石崎ひゅーい、20代の愛菜を高畑充希、愛菜の同級生を太賀、葉山奨之が演じている。
メガホンを取った松居大悟監督は、なぜキャリアを重ねた蒼井と、映画初出演となる石崎を選んだのか? 蒼井、石崎、松居監督の3人にインタビューし、キャスティングから演技に対する考え方、作品に込めた思いまで語ってもらった。
松居大悟監督いわく「蒼井優は“一緒にやってみたい人”」「石崎ひゅーいは“ずっと一緒にいられる人”」
左から、石崎ひゅーい、蒼井優、松居大悟監督 撮影=岩間辰徳
――まずは、蒼井優さんを起用した理由を教えてください。
松居:もともと地元(福岡)にいたときから「凄い人だな」という憧れがあって、一緒に仕事がしたいと思っていました。そこから、同い年のプロデューサーと「安曇春子役は誰がいいか?」と話していた時に、“存在感がある人”“拡散していく顔を見てすぐに誰かわかる人”そしてただ綺麗な人では駄目で“すごく力を持っていて一緒にやってみたいと思う人”というイメージで出した名前が「蒼井優」です。彼女しかいないという、全員が一致した意見でした。
蒼井:ちょっと顔をディスられてますけど……。
松居:まぁ、その……。
蒼井:すごい綺麗な人だったらダメだった……わかった、わかった(笑)。
蒼井優 撮影=岩間辰徳
松居:えっと……。
――監督タジタジですね(笑)。一方の石崎さんは映画初出演です。松居監督が石崎さんを最初に認識されたのはいつだったんでしょうか?
松居:ぼくがミュージックビデオを撮っているクリープハイプの尾崎(世界観)くんが共通の友人で、観に行ったクリープハイプのライブにひゅーいくんも参加していたので、そこで存在を知りました。尾崎くんからひゅーいの話は聞いていたんですが、その話とライブでのパフォーマンスの印象が噛み合わなくて、「どんな人なんだろう」と興味を持っていたんです。
松居大悟監督 撮影=岩間辰徳
――初めて会って、想像通りのかたでしたか?
松居:ひゅーいくんはぼくたち(蒼井と松居監督)の2歳上なんですが、なぜか会ったその日からタメ口でした。年齢があまり気にならなかったんです。
蒼井:(驚きながら)男子校出身なのに?
松居:そうそう。上下関係はきっちりしているつもりなんですが、なんかすごく安心できて「この人といると楽。ずっと一緒にいられる」と思ったんです。
石崎:恋人じゃないんだから(笑)。
松居:でも、きっと春子も曽我に対して、そんな気持ちがあったと思います。“この役は役作りよりも人間性だ”と思ってオファーしました。
左から、石崎ひゅーい、蒼井優、松居大悟監督 撮影=岩間辰徳
――蒼井さんは撮影後、「石崎さんの演技は予測できない」とコメントしてらっしゃいました。キャリアを積んでらっしゃる蒼井さんから見ても、そんなにすごいんですか?
蒼井:「子役と動物と石崎ひゅーいとは、共演しないほうがいい」と思いました。生の人には勝てない。
――それは、どうしてでしょうか?
蒼井:(この作品で)初めて思ったわけではありませんが……やっぱり映画には、悔しいけれど役者では出せない空気感が必要なこともあって、私もいつかは出してみたいと思っています。自分では「演じることに対して、どこか賢くなりすぎているところがあるんだろうな」と思うんです。器用にやれることで、“出来てしまって”いる。それが良い時と悪い時があるので、ひゅーい君のようなお芝居ができるようにならなければならないと思いました。
――「キャリア以上のものがある」ということですね。
石崎ひゅーい 撮影=岩間辰徳
蒼井:キャリアがあるからこそ、出来ることと出来ないことがあります。だから今回は、キャスティングをした松居大悟が凄いな、と思いました。でも、曽我役は結構悩んだんだよね?
松居:うん、そう。30代の味のある俳優さんに髭をたくわえてもらって、ボソボソしゃべってもらうというのもできなくはないんですが、それではすごく普通になると思って。芝居を見せたいわけではなく、その人たちの空気感が影響しあっている感じにしたかったんです。
蒼井:20代にはパワーがありますから。こちらは役者としてやっているだけではパワー不足になるんです。
松居:だから説得したんですよ。「わかんないけど、ひゅーいじゃないとダメな気がする」って。
石崎ひゅーいのキャスティングは「もっと大人な人がいたら駄目だった」
左から、石崎ひゅーい、蒼井優、松居大悟監督
――石崎さんのキャスティングには反対意見もあったんでしょうか?
松居:もちろん、ありました。「いい感じの俳優さんに出てもらったほうがいいに決まっている」って。でも、無理やりね。
蒼井:保守派をね。
松居:うん。保守派を説き伏せてね。でも、本当にそういうことを話せたり、みんなが理解してくれるチームだから許してくれた。もっと大人な人がいたら駄目だったと思います。
――石崎さんは映画初出演ですが、昨年劇団鹿殺しの舞台『彼女の起源』には出演されています。その経験を踏まえて、役作りはされたんでしょうか?
石崎:最初はぼくなりにいっちょ前に役作りを考えたほうがいいと思って、一番最初の読み合わせの時に演じたんですが……それが間違いでした(笑)。
蒼井:それでセリフが聞こえなかったんだ(笑)。
石崎:歌はすぐ覚えられるんですが、日常的なセリフや芝居を覚えるのが大変で。やっとの思いで作り込んで行ったら、「そのままで居てくれ」って怒られて。
――まさに、さきほどの空気感のお話のとおりですね。
石崎ひゅーい 撮影=岩間辰徳
松居:ひゅーいに役を演じてもらいたくて、オファーしたんじゃないから。
石崎:それで「そうなんだ」って思ったら、肩の荷が一段階おりたんです。
――少し楽になったんですね。蒼井さんについてはどう感じられていたんでしょう?
石崎:優ちゃんという存在は小さいころからスクリーンやテレビで見ていて……。
蒼井:ちっちゃい頃って、石崎さん年上だから(笑)。
――それくらいずっと知っていた、と(笑)。
石崎:(笑)なんとなく怖い人という像が完全に出来上がっていたんですが、蓋を開けてみたら全然そうじゃなくって。キャリアもあるので、ぼくが入りやすいようにしていただけた。松居さんも空気の作り方がうまくて、ぼくも芝居をしているという感じではやっていませんでした。いつの間にか始まる前の「迷惑をかけたくない」という思いが、(監督の)「スタート」の声で「ワァッ!」て出てきて、吸い込まれていくように撮影が終わりました。
松居:ひゅーいが存在する違和感がよかったんです。でも、ひゅーいは理屈でやっていなくて、テイクを重ねたら別のこと(演技)をするから、撮影がすこし大変でした(笑)。「次はどう変えてくるか」を考えながら撮影するんです。でも、楽しかったですね。
蒼井優 撮影=岩間辰徳
――11月30日には、みなさんと葉山奨之さん、チャットモンチーさんを加えた『『アズミ・ハルコは行方不明』 公開記念前前前夜祭』があります。どんなイベントになりそうでしょうか?
蒼井:前前前夜祭では、トークとライブをやります。私もライブ?(監督と顔を見合わせて、笑いあいながら)私たちはトークですね(笑)。 いい形でみんなで盛り上げられればと思います。
松居:ここで一緒に見て盛り上がれる仲間を見つけたらいいんじゃないでしょうか。
蒼井:それじゃ街コンでしょ!そこで自分(監督)の相手を探すのもいいんじゃない(笑)。
――チームワークが最高ですね(笑)。最後にこれから映画をご覧になる方へメッセージをお願いします。
蒼井:「女性の味方」になる映画を作りました。女の歴史や女という生き物のエネルギーが、そのまま映画になっています。男性には“女という生態系”を知ってほしいです。女性にとっては自分たちの話だと思うので、女友達とこの映画を見た後だから話せる“過去の恥ずかしい話”を語り合ってください。女というものを楽しむことができる映画ですので、ぜひ劇場に観に来てください。
映画『アズミ・ハルコは行方不明』は12月3日(土)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。
インタビュー・文=Hirayama Masako 撮影=岩間辰徳 蒼井優ヘアメイク=赤松絵利(esper.) 蒼井優スタイリスト=森上摂子(白山事務所)
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出演:蒼井優 / 石崎ひゅーい / チャットモンチー / 葉山奨之 / 松居大悟 ほか (※50音順)
日時:2016年11月30日(水) OPEN 18:30/START 19:00
場所:渋谷WWW (〒150-0042 東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル地下)
3,500円(税込・ドリンク代別)
※スタンディング
※映画前売り券付
(C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会
出演:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、菊池亜希子、山田真歩、落合モトキ、芹那、花影香音、柳憂怜、国広富之、加瀬亮
主題歌:チャットモンチー / 劇中アニメーション:ひらのりょう / 音楽:環ROY
監督:松居大悟(『ワンダフルワールドエンド』『スイートブールサイド』『私たちのハァハァ』)
原作:「アズミ・ハルコは行方不明」山内マリコ(幻冬舎文庫)
予告編
公式サイト:http://azumiharuko.com/
(C)2016「アズミ・ハルコは行方不明」製作委員会