浅利慶太インタビュー、約10年ぶりの再演『アンチゴーヌ』の魅力

インタビュー
2016.11.27
浅利慶太

浅利慶太


浅利慶太プロデュース公演として、20世紀のフランス演劇を代表する劇作家ジャン・アヌイの傑作『アンチゴーヌ』が、12月7日から東京・自由劇場で上演される。ギリシャ悲劇で有名なオイディプス王の後日談として、自らの意思をひとすじに貫くヒロイン・アンチゴーヌの姿が描かれる。

1954年6月に劇団四季第2回公演として上演してから、度々本作と向き合ってきた浅利。今回、アンチゴーヌ役に野村玲子、クレオン役に山口嘉三を迎え、2005年3月以来、実に約10年ぶりの再演となる。浅利に思いや見どころを聞くことができた。


―――− 約10年ぶりの上演となりますが、上演を決めた経緯は。

劇団四季を創設した頃の芝居ですね。加藤道夫先生や芥川比呂志先生といった仏文系の先輩に色々とご指導を受けていた時代です。この作品は素晴らしいレベルのものだから、時々はやりたいんですね。突然この作品を取り上げたわけじゃない。ずっと大事にしている作品なので。ある程度期間は置いて、定期的に上演していきたいんです。いい芝居ですよ、『アンチゴーヌ』。傑作です。

―――− 当時、どんなことで苦労しましたか。

芝居を作るのはいつでも苦労ですよ。俳優相手ですからね。当時はだいぶカッカしてやっていました。でも今はリラックスしています。長くやっている俳優たちと一緒だから、その点では楽ですね。

―――−思うようにいかないこともありますか。

思うようにいかないってことはないですね、思うようにやるのが演出家ですから。

浅利慶太

浅利慶太

―――− 今回、演出は一新するのですか。

今まで通りやります。でも、やっぱり自分のキャリアが上がってくると、作品をより深く理解できるようにはなります。前は感情で運んでいた部分も、考えてみるともうちょっと思想的に深くやったほうがいいかなというところはあります。しなやかに、ね。「やってるぞー」という感じじゃなくて。淡々と見せながらも深いという感じ。

―――− 年齢を重ねて理解が深まった、と。

昔から深く理解していますよ(笑)。80代になったから、理解できるってことはないです。ただ、更に深くドラマを感じて出来るようになったかもしれません。前は張り切ってやっていたところを、寧ろしなやかにやりたいと思うことが多いです。その方がお客様も感じやすいだろうと思う。それに、もうそんなカッカするような歳じゃないので。

―――− 稽古は順調ですか。

順調です。丁寧にやっています。

―――− 2005年上演時もキャストだったのは野村玲子と坂本里咲。一方、初めてアヌイ作品に触れる若い役者もいます。

そうですね。メインはアンチゴーヌとクレオンだけれど、若い役者は感動しながらやっていますよ。みんな一生懸命やっています。

今も昔も、芝居やる人間っていうのはあまり変わらない。ただ、今の子の方が深い感じがする。僕のところに来る子がそうなのかもしれないけど、雑多なものがなくて、シンプルですね。

浅利慶太

浅利慶太

―――− 改めて『アンチゴーヌ』の魅力とはどのようなものなのでしょう。

主題が深いことと作品のレベルが高いこと。感動を受け取ることができる作品だと思う。それに、あんまり長すぎないことも魅力。上演時間は2時間ちょっとです。

こういう作品は、作劇的に高いレベルを維持していますからね。いつやっても魅力は変わりません。超一流作品は、芝居をやる人間にとっても新鮮だし、何回も観に来てくださるお客様にもやっぱり新鮮なんです。才能ありますよ、アヌイ。今のフランス、もしかしたらヨーロッパ全体にもこんなレベルの作家はいないかもしれない。やはり貧しい時代の方がいい作家が出るのかなぁ。

―――− アヌイと実際に会われたことがあるそうで。

パリで会ったことありますよ。作家って大抵ね、作品読んで感じる印象と、会って感じる印象が全然違うんですよ。生き方っていうのかな、在り方っていうのかな、不思議な人でした。どうやって話ししていいか分からない人だった。向こうも、日本で自分の作品をやってくれる演出家なんてねぇ、驚いたでしょうね。しかも大学で仏文学を学んだって言ったらびっくりしていましたよ。「そんなことするんですか、日本で」って(笑)。日本とフランスは、今と違って遠かったですからね。

―――− これまでの浅利演出事務所の公演は、浅利さんの演劇人生の原点を見つめるようなラインアップ。気が早いようですが、次の構想などは。

私の父(浅利鶴雄)は築地小劇場の創設者の一人です。その頃からの芝居をずっと感じながらやっています。大伯父は2代目市川左團次。だから父や大伯父のことをずっと感じながらやってきた。僕もきちんとやってきたので、次の世代に繋げていきたい。伝統を引き継ぐ人に囲まれて影響を受けたことは幸せでした。浅利慶太が突然劇団四季を立ち上げたって思う人がいるかもしれないけれど、そんなことない。築地小劇場から続いている流れを受け継いでいるんです。

何をやるかっていうのはこれからです。芝居って、あまり先のことばっかり考えちゃまずいんですよ。恋愛と一緒でね、目先にいる人に夢中にならないと(笑)ただ、あんまり大人数の芝居はしんどいんでね。観に来てくださった方を裏切らない芝居をするだけです。

今回も、アンチゴーヌを感動的存在として作ってみせますよ。なんとなく上っ面で書いてある作品とは全然違いますから。ぜひ多くの方にご覧頂きたいですね。

浅利慶太

浅利慶太

(取材・文・撮影:五月女菜穂)

公演情報
浅利慶太プロデュース公演 『アンチゴーヌ』

■作:ジャン・アヌイ
訳:諏訪正
演出:浅利慶太
出演:野村玲子、山口嘉三、松本博之、坂本里咲、齊藤奈々江、佐藤あかり、古庄美和、志村史人、折井洋人、山本航輔、桑島ダンテ、近藤真行
日時:2016年12月7日(水)~12月11日(日)
会場:自由劇場
■公式サイト:http://antigone2016.com​

シェア / 保存先を選択