観る者一人ひとりの心に青春を投影した、lovefilm初のワンマンツアー・ファイナル

レポート
2016.11.30
lovefilm 撮影=河本悠貴

lovefilm 撮影=河本悠貴

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lovefilm 「1st tour “livefilm”」  2016.11.23 代官山UNIT

今年3月に初ライブを行い、春夏フェスや石毛輝(Vo/Gt)と岡本伸明(Ba/SynCho)の古巣レーベル(lovefilmももちろん在籍しているわけだが)のイベント『UKFC on the Road』など数多くのライブを経て、逞しさを増してきたlovefilm。初めての東名阪ツアーのファイナルとなったこの日の代官山UNITには、彼らならではのバンドでしか表現できない“青春”や“ロマン”、無邪気な初期衝動が溢れていた。直前の10月にドラムの高橋昌志が脱退するという残念な事態も起こってしまったが、今回のツアーは辣腕・福田洋子(BOOM BOOM SATELITES、くるりのサポートなど)が、3人をテクニック面でも精神面でもしっかり支えていた。

lovefilm・江夏詩織 撮影=河本悠貴

lovefilm・江夏詩織 撮影=河本悠貴

フレーミング・リップス的な、新旧のUSインディサウンドが開場BGMで流れる中、すっかりノームコア寄りな普段着のファンが増えたフロア。もちろんthe telephonesからのファンも江夏詩織(Vo/Gt/Syn)のファンもいるだろうが、すでに混ざり合ってlovefilmのファン層が形成されているように見える。そこに黒髪ショートボブに赤口紅が似合う江夏を筆頭にメンバーが登場。そこからしっし(江夏)への「かわいい!」コールが起こる中、映画の中のハイスクール・バンドのようなパワーコードが炸裂する「Vomit」でスタート。凛とした中にもコケティッシュなニュアンスさえ表現し始めたしっしのボーカルが頼もしい。そのまま勢いよく「Alien」、石毛のハイトーンボイス、ノブの意味不明語にニヤニヤしてしまう「Honey Bee」と、90年代オルタナ&ローファイ感を誰よりメンバーが楽しんでいる様子にフロアも温まっていく。フェスやイベントなら、オーディエンスもハナから盛り上がること前提で臨むタイプのバンドだと思うのだが、さすがにワンマンだけあって、序盤はいい意味でlovefilmの今を見守っているファンも多いように見えた。バンドの成長や変化を味わいたい気持ち、そしてシンプルであるゆえに、自分の10代の頃の気持ちを思い出すような彼らの曲を心身両方で味わいたいからなんじゃないだろうか。

lovefilm・石毛輝 撮影=河本悠貴

lovefilm石毛輝 撮影=河本悠貴

ノブ(岡本)がギター&シンセサイザー、しっしがベース&ボーカルにスイッチしての「Don’t Cry」では、しっしの絶叫パートに未だに度肝を抜かれると同時に、ファンもリラックス&ヒートアップしていく。ノブもギターというより、ダンス担当な印象で、the telephonesと変わらず、ベズ(ハッピー・マンデーズのやはりパートがイマイチ不明な踊るおじさん!?)っぽさ全開である。こうした自由度を石毛、福田が音楽的、テクニック的にもサポートしているのも事実だが、4人全員笑顔でlovefilmの成熟しない不完全さを楽しんでいることもまた、オーディエンスに伝わっていく。

この日は早くも新曲を5曲も盛り込んだセットリストだったのだが、特に最初に披露した、ドラムパッドの無機的なビート感がミニマルな最近のバンドサウンドの潮流ともシンクロしていて、切ないメロディもマッチした「Old Days」と題された曲。石毛の新たな作曲の方向性と、ボーカリストとして自信をつけてきたしっしの表現力を実感することができた。そこからノブのポストパンク的というかニュー・オーダーもかくやなメロディアスなベース、石毛としっしのボーカルワークが美しい「Our Dawn」の流れは前半のハイライトだった。その後、石毛のソロパートへ。DJが行うライブセットの趣きでトロピカル・ハウスなビートに乗せて、自らのレパートリーをリミックスするような面白い試みだった。

lovefilm・岡本伸明 撮影=河本悠貴

lovefilm・岡本伸明 撮影=河本悠貴

おそらくバンドのレパートリーがまだアルバム1枚という少なさのせいもあるだろうけれど、鮮やかに目の前の世界を塗り替えるには、セット自体が長い方が効果的なパートなのかも?と感じたが、この初期段階のアプローチが今後、どんな変化をしていくのか? 引き続き追いかけてみたい。

再び4人が揃うと、「さらに新曲をやろうとしています」と、状況を説明するような石毛のMCに拍手が起こる。エレクトロ・ダンストラック風あり、甘酸っぱい60sのロックンロールありと、すでに次のフェーズを感じさせる曲が誕生して、しかもバンドで消化できているのが頼もしい。少なくともレパートリーがまだ少ないという消極的な理由には思えない、この先を思わせる曲ばかりだったことが頼もしかったのだ。

福田洋子 撮影=河本悠貴

福田洋子 撮影=河本悠貴

まぁ、でも本人が自覚しているように「まだ曲が少ないからMCが長い」。しかも全国ツアーとは言え、3ヵ所なのでツアーの思い出と言っても「名古屋から東京への道のりが普段より時間がかかって、恐ろしく長かった」「お尻が割れるかと思った」(ノブ)「元から割れてるけどね」(しっし)という、ここは楽屋か!というグダグダぶりである。しかし、そんな全てのありのままが楽しいし、おそらくそこは今後もドラスティックに変化させないんじゃないか?と思う。石毛も初のワンマンツアーを自分たちもファンも「お互い探ってる感じが、いいなぁ」と、笑いを誘っていた。

lovefilm 撮影=河本悠貴

lovefilm 撮影=河本悠貴

終盤はこれまたクリスマスをイメージさせるギターの単音フレーズの新曲、タイトル通り神聖なムードが石毛としっしのコーラスから生み出される「Holy Wonder」、ラストもうっすら流れる空間系のシーケンスと澄んだギターの音色、そして何よりまっすぐ言葉を大事に歌うしっしの歌声の凛々しさに胸を打たれる「Hours」で本編を締めくくった。lovefilmの1stアルバムではギターソロを封印している石毛だが、クリーントーンでどこまでも青くて広い空間を押し広げるようにフレーズを奏でる姿は、ソリッドなリフやソロを弾く彼と同じくエモーショナルだった。

アンコールには石毛の根っこにある、ソロでも聴けるおおらかな音像のイントロが印象的な「Kiss」。永遠には続かない愛に青春のかけがえのなさを重ねて描いているようなこの曲は、まさにlovefilmの核心だ。しっしはリアルタイムではないけれど、90年代終わりのスーパーカーやくるりを愛聴するリスナーで、また石毛もその時代のバンドへの愛情があること。そんな想いを無理に捻じ曲げることなく、バンドの初期衝動の発露として素直に曲や佇まいとして体現している彼らのライブ。様々な世代がおのおのの青春を投影していたと思う。トータルでも14曲と、コンパクトなセットだったが清冽な想いを抱かせてくれた。


取材・文=石角友香 撮影=河本悠貴

lovefilm 撮影=河本悠貴

lovefilm 撮影=河本悠貴

セットリスト
lovefilm 「1st tour “livefilm”」 2016.11.23 代官山UNIT
1. Vomit
2. Alien
3. Honey Bee
4. Don't Cry
5. Goodbye,Goodnight
6. Old Days 
7. Our Dawn
8. Ghost Dance 
9. Melancholy 
10. Capricorn
11. Beautiful End
12. Holy Wonder
13. Hours
[ENCORE]
14. Kiss

 

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