『la vie d’amour2016 ~シャンソンに誘われて~』 安寿ミラ・児玉明子 対談

インタビュー
2016.12.2
安寿ミラ・児玉明子

安寿ミラ・児玉明子


昨年11月、長いキャリアの中でも初めてというシャンソン・コンサート『la vie d’amour』に挑戦した安寿ミラ。好評を受けて、シリーズ2作目とも言うべき『la vie d’amour2016 ~シャンソンに誘われて~』が、いよいよ12月2日に幕を開ける(4日まで。青山 草月ホール)。キャッチコピーの「錆色の魅惑の声」で、再び挑むシャンソンの世界。そのコンサートにかける想いを安寿ミラと演出を手がける児玉明子に話してもらった。

現実にお客さんが観たらという客観的な視点

──児玉さんは宝塚時代に安寿さんとの接点は?

児玉 私が歌劇団に入ったときは、もう退団されていたので、観客の立場でしか知らないんです。宝塚は子供時代に1度観ていて、それ以来初めてちゃんと観た公演が、『ヴェネチアの紋章/ジャンクション24』だったんです。そのとき、ヴェネチアで死んだ人が、幕間をはさんでショーになったらスーツ姿で出てきて(笑)。この繋がりはなんなんだろうと、ずっとわからないままでいたら、そのうちラインダンスになって、「ああ、意味はないんだ」と(笑)。

安寿 面白い(笑)。

──昨年の『la vie d’amour2016』を一緒に作られていかがでした?

児玉 とても楽しかったです。それにすごく勉強になりました。

安寿 えー?

児玉 私にない想像力や、一番感じたのは、現実にこれをお客さんが観たらどうなんだろうという客観的な視点で。

安寿 客観視はすごくしますね。自分のショー(『ダンスアクトFEMALE』)をずっと作ってきましたし、出演者のほうがお客さんの立場とかわかる部分があるんですよね。

──第1部のほうのドラマですが、昨年の三角関係のアイデアも安寿さんからだったそうですね。

安寿 去年は洋介(佐藤)くんと、今年も出てくれる(中塚)皓平くんの2人を生かそうと思ったんです。せっかくこんな素敵な男性ダンサーが2人揃うのだから、私が絡むより2人を絡ませるほうが妖しさが出るかもしれないと。それが受けまして(笑)。

児玉 受けましたね(笑)。

安寿 男と女はありがちだし、その前の『FEMALE』でも洋介とはさんざん踊っていたので、私自身も男同士が見たいなと思って。

──素敵な男性2人のデュエットとか、男役経験者ならではの発想でもありますね。

安寿 (笑)綺麗な2人でしたでしょ?それに私が嫉妬するというのは、自分でもすごく面白いなと思いました。

──それを受けて児玉さんが具体化していったのですね。

安寿 すごかったですよ。私がプロデューサーと音楽監督にそういう話をしているそばで、ここで椅子を使おうとか、ばーっとメモを書き出していって。早いんです!

児玉 出ないときは出ないんですけど、そのときはどんどんイメージが溢れてきて、次々に出てくるので、書かないと忘れてしまうと思って(笑)。

一緒にものを作っていくうえで面白い人

──具体的にどんなことを思いつくのですか?

児玉 あの話で一番大事なのは、男性2人は喋らないけれど物語を進めていかないといけない。ですから女性が不自然じゃなく喋りながら物語を進めていく。そのために女性のシチュエーションが重要だなと。お金持ちで年下の夫に不安があって浮気されるんじゃないかと思っていて、そういう人ならどういう行動に出るのか、その人の生きている環境などが具体的に浮かんでくるんです。

安寿 最後の結末も、私が考えたのとはまったく違う結末を持ってこられて、「あ、そっちのほうが絶対いいですね!」と。私の考えは女性が死ぬ形だったんです。でも「いや、相手を殺すほうがいいと思います」と。確かにそのほうがフランス的なんです。

──イメージが共有しやすかったわけですね?

安寿 一緒にものを作っていくうえで、これだけ面白い人はそうはいないなと思いました。すごく触発されて楽しかったです。ずっとメールで歌詞などもやりとりして。そういう私の発想を否定する人だとやりにくいし、全部受け入れてくれるとまた逆につまらないし。有り難いことに、受け入れてくれたうえでこれはどうですかと提示してくれるので。

──それは児玉さんの留学経験も大きいですか?

児玉 それはありますね。留学前は色々用意してしまうほうだったんです。先にイメージを作って、お願いしますとスタッフや出演者の方に頼んでいました。でもそのやり方だと、作品限界が自分の中で止まってしまうんです。せっかく沢山の方と一緒に作れて、初めましての方も沢山いるなかで作る。そっして自分だけのものではないので。カナダに行ったとき、色々な人が長い時間をかけて作っているのを見て、ものを作ることは色々な可能性を取り入れることだと学びました。沢山の人がアイデアを持ち寄るから、演出としてそれをまとめるのにすごく大変なこともありますが、でもそのほうが可能性が広がるんです。

安寿 そう思います。人それぞれ考えを持っている。そういう作り方だったから前回は作る過程もとても楽しかったんです。

好きなシチュエーションが病院とか裏切りとか(笑)

──今回はドラマの部分は、シャンソンの「100万本のバラ」をモチーフにするそうですが。

安寿 「100万本のバラ」は絵描きが女優に恋をして、100万本のバラを贈る。でも女優は次の街へ行って、絵描きは取り残されるという話ですけど、その続きで相当ブラックですし、フランス女性の良いところも悪いところも前回よりさらに入ってます(笑)。

児玉 前回よりヘビーな内容です。でもそれを唐突に感じさせないように、歌って演じる安寿さんはとても大変だと思います。

──そういう女性像はフランス好きの安寿さんの実感だそうですね。

安寿 フランス女性って、恋愛にしても生き方にしても、とにかく半端ないですし、強さは世界一だと思います(笑)。欲しいものは絶対手に入れるし。

児玉 私は留学先がフランス語圏のカナダのケベック州だったんですけど、そこではそんな強い女性というイメージがないんです。でもパリに行くと安寿さんが言うイメージはあります。今回の女性は具体的に言うならピアフかな?

安寿 ピアフより強いかも。

──そのイメージは安寿さんと重なる部分は?

安寿 (笑)私はここまではしないと思う。

児玉 違うからやりたいんでしょうね。

安寿 そうかもしれない。できないからやってみたい。

児玉 好きなシチュエーションを伺ったら、病院とか裏切りとか出てきて(笑)。

安寿 暗いことばっかり言ってましたね(笑)。それでおまかせしていたらアル中の女性になったんです(笑)。でも、ファンの方たちからは、「とうとう来ましたね」「やりましたね」というリアクションが多くて。なんなんでしょうね(笑)。

2部の最初の曲は王道でお客さまに乗ってもらう

──今回出てくる曲は前回と違うものになるそうですね。

安寿 全部新しい曲です。本当にシャンソンって素敵な曲が多いんです。選びきれないくらいあるので。

──児玉さんは、改めて今回シャンソンと向き合っている面白さは?

児玉 宝塚では出せないようなドロドロしたところを出せるのが面白いですね。それに2回目というので色々探していくと、「あ、こんな曲もある!」という発見がすごくあって。

安寿 こういう面白い曲があるというのを、おこがましいですけど、もっともっとお客さまに教えてさしあげたくなる。そのへんのセレクトが児玉さんとはうまく合うんです。

──シャンソンにとくに惹かれる部分というのは?

児玉 私はフランス語をずっと続けていて、わかってくるとシャンソンの原詞が読めるんです。そうすると余計深さとかに惹かれますね。

安寿 私もやろうかな。ちゃんと原語で歌えれば楽しいでしょうね。

児玉 今でも発音、綺麗ですよ。

安寿 「パリの空の下」を8小節くらいだけ去年歌ったんですよね。いつかそれを全部歌うのを目標にして。

児玉 「愛の讃歌」とか原詞も似合うと思いますよ。

安寿 すごく習いたくなってきた(笑)。

──こういう作品を手がけると、ショーをもっと作りたくなりませんか?

児玉 なりますね。原作ものの舞台を多く作っていますと、とらわれないで自由に作れるものをやってみたくなります。自由と言ってももちろんテーマとか物語とか、ベースに流れるものはあるというような。

安寿 ストーリーのあるショーっていいですよね。私もそういうの好きだから。

──今回の第2部のテーマ的なものは?

安寿 今年はフランスのジタンのイメージです。そのテイストで、知らない曲から始めようと思っていたんですけど、あるテレビ番組で、あるシャンソンのライブでお客さまが乗っている姿を見て、やっぱりお客さまが乗りやすいものがいいなと。ですから最初の曲は王道でいきたいと言って変えてもらったんです。格好はジタンですが王道のシャンソンからはじめたいと。

児玉 そういう意見をどんどん言ってもらうのは、私としてもウエルカムなんです。安寿さんの経験に助けられるというか、選択に迷ったとき選んでくれたり。

安寿 勘なんですけどね(笑)。お客さまありきで、お客さまの観たいもの、聞きたいものはなんだろうと考えるので。ショーの頭の曲は、絶対に聞き覚えのあるもので始めたほうがいいなと思ったんです。

可愛さと厳しさが安寿さんの魅力

──歌手としての安寿さんの魅力というのは?

安寿 歌手なんて言わないでください。シャンソン協会に怒られますよ(笑)。

児玉 女優さんだからいいんだと思うんです。シャンソンの1曲に詰まっているドラマを表現できる。私は美輪明宏さんが好きで、高校生の頃、渋谷にあったジァンジァンへも聴きに行ってたんです。その時、美輪さんの前に、まだ有名じゃないシャンソン歌手の方が歌うのですが、声が良いとか歌がうまい歌手の方もいるんですけど、美輪さんとは説得力が違うんです。

安寿 そういう説得力の違いは、シャンソンははっきり出ますよね。年齢でもないし、歌のうまさとも違う。あれは不思議だなと思います。すごいなと思った人は他に何を歌っているのか気になるし、聴きたくなる。

──その人そのものに惹かれる感じになるのでしょうね。

安寿 個人的にも興味を持つような感じになりますね。

児玉 だからピアフには惹かれるんだと思います。それにジャンヌ・モローとか、フランスの女優といえばアヌーク・エーメとか、何とも言えない魅力ですよね。女優さんが歌うのも好きなんです。

安寿 アヌーク・エーメは「男と女」ですね。すごく綺麗で素敵ですよね。歌の中に匂いを感じます。

──宝塚時代には接点のなかったお二人ですが、一緒に仕事して改めての感想は?

児玉 安寿さんは年上なのに可愛いらしい方だなと。仕事はとても厳しい方だと思うので、いい意味で緊張感もあるのですが、それだけだとしんどいので、とても可愛い部分があるのでリラックスできるというか。

安寿 「可愛い」だけ太字で書いてください(笑)。

──もの作りへの厳しさがあるから、ここまで続けてこられたのでしょうね。

安寿 『FEMALE』を13回も続けてこれたのは、それがあるからかもしれませんね。

児玉 そして、これは違うという場合に、ただの否定ではなく、だったらこうしようという、つねに前向きな提案があるんです。

──そんなお二人に最後に意気込みを。

児玉 幸せなことにまた2回目をさせていただけるのは、前回観てくださったお客さまのおかげです。その方たち喜んでいただき、いい意味で裏切れるような舞台にしたいと思っています。

安寿 すごく楽しみにしてくださっているという声が沢山聞こえてきて、ちょっとプレッシャーなのですが(笑)。でも一番楽しみにしているのが私だと思いますので、去年同様、それ以上に面白い舞台を観ていただけると思います。楽しみにしていらしてください。

安寿ミラ・児玉明子

安寿ミラ・児玉明子

あんじゅみら○長崎県出身。1980年に宝塚歌劇団で初舞台を踏み、92年花組トップスターに。95年『哀しみのコルドバ』『メガヴィジョン』で退団。女優として舞台を中心に活躍中。「ANJU」の名で自身のダンスアクト『FEMALE』の構成・演出をはじめ、宝塚歌劇団など舞台の振付を数多く手がけている。主な出演舞台は『グリークス』『マクベス』『アルジャーノンに花束を』『タイタニック』『グランドホテル』など。

こだまあきこ○東京都出身。慶應義塾大学法学部卒業。在学中から宝塚歌劇団の演出助手となり、98年に宝塚バウホール花組公演『Endless Love』で演出家デビュー。10年に文化庁の新進芸術家海外研修制度でカナダへ留学。13年5月に宝塚歌劇団を退団。以来、『女海賊ビアンカ』、『La Vie―彼女が描く、絵の世界』、ライブ・スペクタクル『NARUTO―ナルト―』、『la vie d’amour~シャンソンに誘われて~、舞台『GOKU』、ライブ・ファンタジー『FAIRY TAIL』、VOCE CONCERTO『GALAXY DREAM』など。

【取材・文/榊原和子 撮影/岩田えり】


〈公演情報〉


『la vie d’amour 2016』
~シャンソンに誘われて~

監修◇酒井澄夫
構成・演出◇児玉明子
出演◇安寿ミラ/神谷直樹 中塚皓平
●12/2~4◎草月ホール
〈料金〉8,800円(全席指定・税込) 
〈お問い合わせ〉キョードー東京 0570-550-799(平日11:00~18:00、土日祝10:00~18:00)
http://www.kyodotokyo.com/la_vie_d'_amour2016
演劇キック - 宝塚ジャーナル
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