東京マハロ『紅をさす』矢島弘一・木﨑ゆりあ・福田ゆみ インタビュー
劇団東京マハロの結成10周年記念作『紅をさす』が、ゲストに木﨑ゆりあ、滝沢沙織、市川知宏らを迎えて、12月7日に東京芸術劇場シアターウエストで開幕する。(14日まで)
私鉄沿線の一軒家に暮らす夫婦と7歳の息子。外から見れば平和で幸せな家族だが、妻の母親が他界した通夜で母に死化粧をすることになる。親族が遺体に口紅を塗る中、息子が「僕も塗りたい」と騒ぎ始める──。
性同一性障害をテーマにしたこの舞台、『紅をさす』は主宰で作・演出家の矢島弘一の渾身の1作となる。この作品で初舞台を踏む木﨑ゆりあ、ヒロインを務める福田ゆみ、そして主宰の矢島弘一に公演への意欲を語ってもらった「えんぶ12月号」の記事をご紹介する。
「すごく面白い舞台なんだけど、やる?」と秋元先生が
──全員喪服のチラシビジュアルが印象的ですが、それぞれの役柄を教えてください。
矢島 福田ゆみさんは7歳の息子を持つ女性で、彼女の母親が亡くなったお通夜で、ある出来事が起きます。木﨑さんは福田さんの弟の恋人役で、弟は市川知宏さんが演じますが、どうしようもないダメ男で(笑)、その彼を支えるちょっと頭のいい女性という設定です。
木﨑 自分とは似ていなくて…すみません(笑)。
矢島 ぎりぎり大丈夫です(笑)。
──木﨑さんが、この東京マハロで初舞台を踏むことになったきっかけは?
木﨑 秋元(康)先生からなんです。「すごくおもしろい舞台あるんだけど、やる?」とサラッと聞かれて、その瞬間「やりたい!」と。舞台には出てみたかったので、とにかく右も左も分からない状態ですけれど、勉強させていただく気持ちで頑張ろうと。
矢島 この公演について秋元さんに相談をさせてもらってたとき、「木﨑さんはどう?」と名前が出て。僕は木﨑さんが出ているCMを見ていて、この人いいなと前から思っていたんです。だから「ぜひお願いします」と。
木﨑 うれしいです。仲のいいメンバーに舞台をやっている子が多かったので、いつも観に行っては刺激を受けていたんです。今はみんなを超えたいな、頑張らなきゃという気持ちです。
映像では取り上げにくい題材も舞台でならできる
──福田さんは東京マハロにはずっと出ているのですね。
福田 2年前からで今回で8本目です。
矢島 今回がほぼ初ヒロインになります。まだ未知数なところを持っていて、もっともっと爆発する可能性があると思います。「日本一のコメディアンヌ」になれる要素を持っているので、これを機会にステップアップしてほしいです。彼女は声が印象的で、あまり綺麗な女優さんが出さない音を出すんです。そんな音どっから出るの?というような(笑)特徴のある声なので、それを生かすといいんじゃないかな。
──福田さんから見た東京マハロの魅力というのは?
福田 矢島さんの書かれる作品は、なかなか映像では取り上げにくい、舞台だからできるという題材が多いんです。震災の話であったり不妊治療の話だったり。そういうものを人間関係の面白さで書いていて、綺麗なところばかりではなくドロドロしたところも出すのですが、その描き方が風刺的でとても面白いんです。
──今回は性同一性障害がテーマだそうですね?
矢島 7歳の男の子が純粋に女の子になりたい夢を持っているという話で、その夢を家族やまわりの大人たちが、どう受け止めて、その子とどう向き合っていくか、ということを描いています。
──性同一性障害は、最近やっとオープンに取り上げられるようになってきましたね。
矢島 ただ、それが自分の息子だったり、身内だったり、とくに成人ではない場合、どういう教育をしたらいいかということが起きてきます。2800人に1人というのが、一応、国が言っている数ですが、実はクラスに1人いるとも聞きます。そういう現実について、「国を変える」とかそんな大きな事は言えないのですが、きちんと知ってもらいたいし、現代社会が抱える問題を僕らなりに提示していければと思っているんです。劇団も10周年ということで、今まで同様地に足をつけながら、でも、また次の10年をやるために、ここで1回、ぎゃふんと言わせたいなと(笑)。
矢島弘一・木﨑ゆりあ・福田ゆみ
(文/中山圭 撮影/山崎伸康)
■日時:2016年12月7日(水)~12月14日(水)
■会場:東京芸術劇場 シアターウエスト
■作・演出:矢島弘一
■出演:
金替康博(劇団MONO) 福田ゆみ 市川知宏 滝沢沙織 中川慶二
お宮の松 工藤潤矢 内谷正文 篠原あさみ 福澤重文 竹田りさ
西野優希 春木生 市川大貴
木崎ゆりあ(AKB48)
■問い合わせ:Age Global Networks 03-3587-2120(平日11:00~17:00)
■公式サイト:http://www.tokyomahalo.com