HYDE、MUCC、シドらが豪華共演 『JACK IN THE BOX 2016』公式レポートが到着
L’Arc~en~CielやMUCC、シドらが所属する音楽事務所主催イベント『MAVERICK DC GROUP 35th Anniversary「JACK IN THE BOX 2016」』が、12月27日(火)日本武道館にて開催された。
5年ぶりに“復活”した本イベント、7時間に及ぶ長丁場は見どころに満ち、満員の武道館の観客の熱気は終演後も冷める事はなかった。
ムド
トップバッターは、前日のタイムテーブルで発表された通り謎の新人バンド「ムド」と「シック」。ステージに現れたのは逹瑯(Vo/MUCC)、Shinji(Gt/シド)、明希(Ba/シド)、SATOち(Dr/MUCC)の4名からなる「ムド」。Shinjiのアコギ・リフで始まったのは「お別れの唄」。逹瑯が鮮やかなブルーの着物を羽織って登場し、シドの楽曲に暗黒美を吹き込んでいく。続く「御手紙」(シド)は一音目で大歓声が発生。SATOちと明希が生み出すグルーヴ感が心地よい。
「逹瑯じゃないわよ、“マオ瑯”です!」と挨拶し、ドラム・ゆうち、ギター・ミji、ベース・明っ希と全員を「混成名」で紹介して笑いを誘う逹瑯。「明希さんが『この曲やりたい』って。彼が間奏のベースのチョッパーやれるのか? カメラさん抜いてください」(逹瑯)と掛けられたプレッシャーをものともせず鳴らす太いベースリフで始まったのはMUCCの「大嫌い」。怒涛のシャウトを繰り返すサビへと雪崩れ込み、逹瑯、明希、Shinjiは左右にせり出したランウェイへと歩み出て、ダイナミックなパフォーマンスを披露した。
シック
ゆうや(Dr/シド)、YUKKE(Ba/MUCC)、ミヤ(G/MUCC)、最後にマオ(Vo/シド)の4人からなる「シック」が登場。MUCCの「最終列車」で沸かせた。センターに出てギターソロを奏でるミヤを後ろからマオが抱き、YUKKEが接近。イベントならではの光景に歓声が湧く。「次はシドさんの曲をカバーします(笑)」とマオも逹瑯に負けじと遊び心のある挨拶をし、「紫陽花」を披露。ファルセットにミヤのブルージーな枯れたギター、YUKKEの粒立ったベースの音色が合わさり、センチメンタルな気配を醸し出す。「良かったね、逹瑯さんの『御手紙』と『お別れの唄』」とマオ。「来年はこの4人で47都道府県ツアーやるんで(笑)」と笑わせつつ、ラストはMUCCの「アゲハ」を投下。ゴリゴリとしたヘヴィーなリフに乗せ、マオが軽やかなシャウトを発すると曲に新鮮な響きが生まれる。観客は拳を突き上げ熱狂した。謎の新人バンドは、MUCCとシドの混成バンド。アニバーサリーのトップを飾るにふさわしいメンツで幕を開けた。
VALS
転換中のスクリーンには歴代のイベント映像が映し出され、長い歴史に思いを馳せていると、事務所の最若手・V系ダンスバンド・VALSが登場。のっけからKEIN(ダンス&Vo)、Nao10(ダンス)がアクロバティックなブレイクダンスを盛り込んだパフォーマンスで目を奪う。激しく叩きつけるような憲人のベース、Spicaの渾身のドラム、観るたびぐんぐんと声の強さを増しているRio。「deuce」「シルエット」の2曲とあっという間の出番ではあったが、「声出して行こうぜ!」(Rio)と観客へのアピールも積極的で、EDMとロックを融合させた音楽性を強みに、会場を躍らせようという前のめりな熱さが清々しい。「本日は出演できてうれしいです!」(Rio)と初々しく挨拶、最若手らしいガッツのあるステージを見せた。
CLØWD
揃いの制服を思わせる黒衣装で登場したCLØWDは、「行くぞ、武道館!」と巨大フラッグを持ったKØU(Vo)のシャウトで会場の空気を塗り替えた。1曲目は美麗なメロディーとラウドなサウンド、終盤のテンポアップが迫力満点の「狼煙」。観客をノセてうまく巻き込みつつ、他の何も入り込めないような音の密度、緊迫感、圧力が痛快だ。「RUDENESS RESORT」はハリのある迷いのないクリアな歌声とゴツゴツとした粗いリフが気持ちよく、「飛べ! 飛べ!」(KØU)と観客を煽りながら自らもジャンプ。フロントのメンバー4人が一列に並んだステージングが実に美しく、華のあるステージングで存在感を示した。
ユナイト
続くユナイトは、「自分なりの楽しみ方で楽しんでください!」(結/Vo)と呼び掛けた。幕開けは、結成5周年の今年発売の記念シングル「ジュピタ」。激しくも眩く輝きながら突っ走っていくような、彼らの魅力を体現した曲だ。「やりたいことがあるんですけど。ドラムの莎奈がカウントするので、その前に両手を合わせてお辞儀するだけです」(結)と呼び掛けると、「イタダキマス」に始まり「ゴチソウサマデシタ」に終わる「ice」を怒涛の勢いで披露。椎名未緒(G)はダイナミックなギター回しを盛り込みながらソロを奏でた。最後は皆で楽しめる歌を、と裏打ちのリズムが弾む「small world order」を放った。「来年の3月29日に6周年になります。ROPPONGI EX THEATERに是非遊びに来てください!」(結)と告知。刹那に込める熱、キラキラとした光で会場を包み込んだ。
カメレオ
続くカメレオは「ぶち上って行こうぜ!」(HIKARU/Vo)との一声でスタート。扇子を持ちお立ち台で振り歌い踊る「運命開華ディスコ」で盛り上げた。「持っている人は扇子出してください! タオルでも上着でも、手の平でもいいので」(HIKARU)と観客に参加を呼び掛けると、メンバーが色とりどりの扇子でX(バツ)印をつくる「ダメ男」を披露。狂騒的なデジロックで沸き立つ中、ユナイトが扇子を持って合流。「せっかくだからVALSとCLØWDも呼んじゃおうよ」(HIKARU.)と「万歳\(・∀・)/Music!」は更に増員。チアのポンポンを手に登場したVALSとCLØWDのメンバーも含め、所狭しと動き回り賑やかなステージング。掛け声に合わせ会場全員で万歳をし、祝MDC35周年と書かれたフラッグも持ち込み。どの瞬間を切り取っても賑やかでカラフルなステージを展開した。
PARTY ZOO
ライオンの鳴き声が響き幕開けたのはPARTY ZOO。Kenが“園長”となり様々なバンドを呼び集め、“移動動物園”としてサーカスのように賑やかなツアーを行ったイベントのメンバーが再結集した。「なんだかね、20周年を迎えるバンドがいるらしいんだよね。あとはね、なんだか25周年を迎えるバンドもいるらしいんだけど」とKen。MUCCとL’Arc~en~Cielのアニバーサリーを祝し、まずはMUCCの「スイミン」を披露。ギターは虎(G/A9)、圭(BAROQUE)、ベースはAKi、YUKKE。kazuma(Vo/gibkiy gibkiy gibkiy)の咆哮、KENZO(Dr)の強靭なドラムに圧倒されていると、逹瑯が合流。祝われる側であるYUKKEが居ることに「なんでいるの?」(Ken)と問い笑いを誘いながら、「祝われる側に回っちゃおうかな?」(Ken)と怜(Vo/BAROQUE)、将(Vo/A9)、ヒロト(G/A9)を呼び込み、届けたのはL’Arc~en~Cielの「虹」。冒頭のアルペジオはヒロト、ソロもヒロトと圭が弾き繋ぐのに任せ、Kenは柔らかい音色をそっと付け加えるように奏でていく。続く「fate」ではKenがイントロのギターフレーズを披露したが、怜と将とで代わる代わる力強く歌い上げるヴォーカルはもちろんのこと、際立っていたのはPARTY ZOOというイベントをつくり上げたメンバーのカラー。新鮮な響きを味わわせてくれた。この転換以降、場内ビジョンにスタンバイルームからのインタビュー中継が流され、MC・Kouichi(カメレオ)の進行により、終演後のメンバーの感想が生で届けられた。
AKi
次に出番を迎えたのはシド・明希のソロプロジェクトAKi。YOUSAY(G)が自ら手拍子をし始め観客をノセると、AKiは「飛ばせ、武道館!」と勇ましく煽り、「FREEK SHOW」の骨太なベースリフを、大きく脚を開いた仁王立ちで繰り出した。グラマラスなミディアムナンバー「FAIRY DUST」を弾き終えると、高くベースを持ち上げ“魅せる”ことも忘れないのがAKiらしい。「お気付きだと思いますが、ちょっと(出番前のセッションに)出過ぎたと思ってます(笑)。皆の気持ちを俺に下さい!」と呼び掛けると、ソロツアーを牽引した最新曲「STORY」を放った。加藤貴之とYOUSAYの美しいギターハーモニーを宮上元克の緻密でパワフルなドラミングが下支え。大きな拍手が惜しみなく送られる熱いアクトだった。
MUCC
青い照明の下、厳かな空気感の中MUCCがお出まし。1曲目は新曲「脈拍」。ミヤがギターを爪弾き始めると鮮血を思わせる真っ赤なライトに切り替わり、髪を逆立てた逹瑯が登場、ダーティーさと荘厳さが同居する世界に呆気に取られる。息をつく間もない疾走感で空気を掻き混ぜるメタル調の「KILLEЯ」を放ち、続く「CLASSIC」では一転して軽妙に。新曲「勿忘草」はミドルテンポのバラードで、深い余韻を残した。「(JACK IN THE BOX)の第一回目から出させてもらってます」「ファミリー感が強まってきている」と逹瑯は振り返り、kyo先輩からの洗礼、シドが入って来た当初に感じた勢いなどを回顧。「いるだけでハッとさせられる」とイベントの意義を述べ、「6月20日、21日とMUCC20周年ワンマンをここでやりますんで、遊びに来てください」と締めくくった。明るくも切ない郷愁を呼び起こす「ハイデ」から、地獄の業火に投げ込むような「蘭鋳」への振り幅でオーディエンスの心身を激しく揺り動かすと、ラストの「TONIGHT」には、MUCCの近年のシングル及び最新アルバムのプロデュースを手掛けるKenがギターを抱えて飛び入りする場面も。濃密な7曲だった。
シド
「行くぞ、武道館!」とマオが澄んだ声を響かせ、シドが登場。1曲目の「コナゴナ」からマオはランウェイへと移動、Shinjiは軽やかにターンして、華やかなステージングで惹きつける。早くも一体感が生まれる中「Dear Tokyo」を畳み掛け、勢いよい滑り出しを見せた。「ほんと、会いたかった」と観客に語り掛けた後、「俺たちも(事務所に)入って12年。骨をうずめる覚悟」とマオ。劇場版『黒執事 Book of the Atlantic』の主題歌「硝子の瞳」を初披露(2017年1月18日(水)に発売)。そのキャッチーさとは裏腹に、「泣き出した女と虚無感」を艶やかに奏で、バンドの懐の深さを見せつけた。「眩暈」「one way」とアッパー曲を連打し、最後は「MUCCの20周年、L’Arc〜en〜Cielの25周年、MDCの35周年を祝って」(マオ)と「ANNIVERSARY」を贈った。「やっぱりバンドだからさ、来年ライヴやりたいな」(マオ)というMCに応える形で、終演後には来る5月12日(金)・13(土)に日本武道館で1年7か月ぶりの単独公演開催を発表、ファンを喜ばせた。
D'ERLANGER
イベントは終盤を迎え、ヴィジュアル・ロックの伝説的存在D'ERLANGERが登場。メンバー4人は、ステージに姿を現しただけで凄まじい威厳を放った。1曲目は「NOIR‐D’amour」、吹き荒れる嵐のように激しくも音が粒立ったTetsuのドラムは圧倒的。「Love me to DEATH」で妖しく身をくねらすkyo(Vo)は美しい大人の不良の権化である。CIPHERが艶やかなリフを奏でて曲を牽引した「柘榴」、続く「LULLABY」ではシャウト交じりの“kyo節”歌唱法を炸裂させた。
D'ERLANGER feat HYDE
高音域の美しさが際立った「Skelton Queen」を披露し終えるとkyoと交代にHYDEが登場。D'ERLANGER feat. HYDEとして、バンドの代表曲にして無敵のロック・アンセム「LA VIE EN ROSE」をセッションした。Tetsuが立ち上がってシンバルを鳴らした後、ジャンプダウンで音を止めるアクションを期待されていたHYDEだが、何を思ったかダッシュしてステージ端に待避。CIPHERに連れ戻される形でドラム台に乗って照れ臭そうにジャンプし「なかなかそんなHYDE見ないね(笑)」とkyo。「CRAZY4YOU」はkyoとHYDEで交互に歌い、時には声を合わせ最後は美しいハーモニーを聴かせた。ラストはkyoと向き合い2人でドラムセットからジャンプダウンし音を止め、豪華なコラボレーションステージは終幕。圧倒的なカリスマの競演に先輩後輩の微笑ましいやり取りも垣間見られ、湧きに沸いたステージだった。
35thMAGNUM
続いても伝説のアーティストが集う“35th MAGNUM”セッション。ヴィジュアル・ロックの礎を築いたバンド・44MAGNUMのPAUL(Vo)とJimmy(G)、D’ERLANGERとHYDEが揃い踏みし、「STREET ROCK’N ROLLER」を共演した。PAUL、kyo、HYDEはそれぞれに強い個性を持ったハードなロック・ヴォーカルを轟かせる。そこには、長い時を途絶えることなく受け継がれてきた日本のロック・シーンの血脈を目の当たりするような、言葉では言い尽くせない感動があった。「皆、元気にしてましたか? ライヴハウス武道館に戻ってきました。また皆の顔を見られて本当にうれしいです。愛してます」とPAULは挨拶。ステージ上では語られなかったが、今年6月に若年性パーキンソン病の手術を受け、無事に帰還した意義深い言葉だった。「前にHYDEと一緒に歌った曲、やってもいいかな?」(PAUL)と問い掛けると、HYDEが手を挙げたのを合図に客電が点灯。「I JUST CAN’T TAKE ANYMORE」をセッションし、HYDEはPAULを後ろから支えるようにしながら共に歌い、ハーモニーを響かせた。反対側のステージで盛り上げていたkyoもやがてHYDEに歩み寄ると、HYDEは腹の底から絞り出すようにラスト・シャウト。また一つ、歴史に刻まれる新たな場面が生まれたセッションだった。
開演から6時間半が経過して尚、大きな見せ場が残っていた。まず、今年1月から4月に掛けて開催されたMUCCとAKiのDOUBLE HEAD LINEツアー“M.A.D”の参加アーティストが勢ぞろいしたM.A.D SUPER ALL STARSのセッションでは、ツアーのテーマ曲「MARBLE」で声を揃えた。このツアーにKenがゲスト参加し、「そこからPARTY ZOOに発展した」(逹瑯)という経緯も明かされ、アーティスト間の横の繋がりが連鎖して音楽の広がりを生んでいることを実感する。
マオ、ゆうや、Shinji、A9、BAROQUE、kazuma、KENZOらも呼び込まれ、PAUL、JIMMY、kyoらも加わると、ラストはL'Arc~en~Cielの「HONEY」をセッション。マオが歌い、ミヤがギターを奏でてスタートしたが、♪かわいた~のサビからはHYDEが颯爽と現れてヴォーカルを執り、ステージにはM.A.D&MDC ALL STARSの顔ぶれがコンプリート。Kenはギターは弾かずともオリジナル通りコーラスを担い、沸かせた。
紙吹雪が舞い散る中、「Thank you so much! ありがとう!」とHYDE。35年という歴史の重みと音楽の広がり・可能性を様々な形で示した7時間の一大イベントは、温かい空気に包まれて終幕した。
撮影=今元秀明、西槇太一、緒車寿一
文=大前多恵
1 最終列車
LANGER)、