関川航平展『figure / out』レポート 鉛筆を握って「理解する」ことを考える
関川航平 展覧会会場にて
注目の若手アートディレクター、グラフィックデザイナー、イラストレーター、写真家などを紹介してきたコンペティション『1_WALL』。その第14回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者による個展が、2017年1月27日(金)までガーディアン・ガーデンにて開催中だ。
現実には存在しないオブジェを精密なドローイングで描写した作品「figure」で見事グランプリを受賞した関川航平は、絵だけではなくこれまで様々なパフォーマンスも行っている。そんな関川が鉛筆によるドローイングに挑んだ意図とはどんなものだろうか。
「理解する」ことを捉え直す
関川はこれまで、広島市現代美術館のエントランスに設置したベットの上で22日間を過ごし、その間に「風邪をひいて、なおす」パフォーマンスや、ギャラリーに並べた椅子に人が座っている光景をガラス越しに鑑賞する「いすにすわっている」など、日常的な行為を通して意味の伝達について考察する作品を制作し続けてきた。
今回展示されている受賞作品「figure」は玩具や工芸品、生き物などどれも既視感のあるもののようだが、これらは全て実際には存在しないオブジェなのだ。本作で関川は、架空のモチーフをリアリティーのある質感で描くことで「理解する」こととは何かを捉え直そうとしたという。
目の前に描くモチーフがある場合、描き手はモチーフによって動かされていると言える。ではモチーフを取り去った状態で、目の前のモチーフを描くように描くとどうなるのか。
そのためにまず関川が試みたのは紙にランダムな線を引くことだった。そこに描かれた線の偶然の重なりの中で、木目から顔を見つけるようにヘリコプターや犬や人の姿を見つけていったという。モチーフが決まった後はリアリティーを追求し、スポーツのようにひたすら鉛筆を走らせる。それは完成に向かってただひたすら作業を積み重ねる感覚だ。
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描く行為に内在する推進力
しかし、目の前にあるわけでもないモチーフの完成とは一体どこなのだろうか?
「それまでリアリティーを追求しひたすら手を加えていた絵が、ふと人ごとになった瞬間が完成。でもそれは絵を描く人は普通にやっていることだったんだと思います」と、関川は語る。
シンプルなタイトルからも読み取れるように、行為を複雑化しないことで過不足のない情報の伝達を考察し、また、わずかな差異に着目することができるのだろう。
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また本展では、展覧会タイトルにもなっている「figure / out」という新たなシリーズも展示されている。本作は「モチーフの牽引力」を無しに手が動くのかを試みたシリーズだ。墨のようにも見えるが、これらも鉛筆によるドローイング作品。ゆらめく炎のようにぼんやりとした陰影は、モチーフがなくとも自分が引いた線によって次の線が誘発され、描く行為自体に内在した推進力によって描いていたという。
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ドローイングという行為の中でモチーフの選択や描写を、まるで他者のように認識しながら繰り返す関川の作品は、人間のコミュニケーションの微細な感覚をくすぐってくれる。
日時:2017年1月11日(水)~1月27日(金)
会場:ガーディアン・ガーデン
出展者:関川航平
http://rcc.recruit.co.jp/gg/?p=26879
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