いざ大舞台へ 過去と現在、そして未来をひとつなぎにしてみせたBIGMAMAの特別な日
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
THE BEGINNING 2007.02.10 2017.2.10 LIQUIDROOM
安井英人(Ba)&東出真緒(Vn)が加入し、この5人で初めてステージに立った日からぴったり10年。『THE BEGINNING 2007.02.10』と題したアニバーサリー企画として、あの日と同じステージにBIGMAMAが帰ってくることになった――そんなとっておきの報せを聞いたのは、昨年12月に行われた『BIGMAMAnniversary 2016~2017 MAMonthly Special「BIGMAMA 2016 Xmas Special Live」』の最中のこと。おそらくこのバンドの過去に焦点を当てたコンセプチュアルなものになるのでは?と思っていたが、むしろその逆。10年越しのステージで彼らが見せてくれたのは、バンドの未来に心躍らせる5人の飾らない姿だった。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
ステージを隠していた紗幕の上にこれまでのバイオグラフィ&ディスコグラフィを辿るオープニングムービーが映し出され、初期のバンドロゴが大きく表示されたところで幕落ち。5人が姿を見せるのとほぼ同時に金井政人(Vo/Gt)が歌い出したのは、デビュー作『short films』の冒頭を飾る「look at me」だった。まさに“THE BEGINNING”というべきこの選曲を前に、フロアからは悲鳴に近い歓声もたくさん湧き上がる。「忘れられない夜にしましょう!」という金井の宣言に相応しいオープニングだ。そのままリアド偉武(Dr)が刻むビートに合わせてオーディエンスが手拍子し「Weekend Magic」に突入すれば、躍動的なイントロとともに「CPX」へ。さらに「#DIV/0!」、「Swan Song」と畳み掛け、フロアがさらに盛り上がったところで金井が容赦なく「まだちょっと大人しいんじゃない? 全員でいこうぜ」と投げかけた。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
「10年前の欠片たちが至る所に散らばってるので」(金井)という言葉通り、「Neverland」、「little cloud」、「CHAIN」や「Do you remember ?」といった初期曲が続々と披露され、途中のMCではバンドの“馴れ初め”(東出が神戸から夜行バスで上京してきた話、ベースの腕があるのに他バンドでドラムを担当していた安井を見かねて柿沼広也(Gt/Vo)が彼をBIGMAMAに誘ったのだという話、10年前の現体制初ステージに気合いの坊主頭で臨んだリアドがファンから「新メンバーが3人いる」と勘違いされた話、など)も語られたこの日。とはいえ、「look at me」~「little cloud」は歴代ライブ定番曲を総動員したような流れだったし、中盤には『君想う、故に我在り』(2013年リリースのアルバム)冒頭の流れをそのまま踏襲した場面があったし、そもそもこの日演奏したうちの半分近くが現時点での最新アルバム『The Vanishing Bride』もしくは来月リリースの7thアルバム『Fabula Fibula』の収録曲だ。つまり散りばめられた欠片には10年前のものだけではなくあらゆる時期のものが混ざっていて、全体を通して見ると、この日のライブはBIGMAMAの10年間を総括していくようなものになっていた。ということで内容としてはかなり濃く、フロアも「フゥー!」なんて歓声が頻発するほどハイテンション。その熱は最後まで冷めやらなかった。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
「10年間を総括」と言葉にすると何だか簡単に聞こえてしまうが、元々BIGMAMAは“バンド×バイオリン”“ロック×クラシカル”的な編成そのものの特異性に甘んじることなく、また同時にそのアイデンティティがもたらす可能性を追求すべく進化を求めてきたバンドで、リリース時期ごとに曲の毛色がかなり違っている。そんなバンドが総括的なライブをすると、普通はセットリストもデコボコになってしまいがちだが、この日はどこをとっても驚くほど自然な流れだった。MCで「何喋ればいい?」とオーディエンスに尋ねるほどメンバーはリラックスしていたし、演奏時もいい意味でどこか落ち着いている。この5人の絶妙な関係性について金井は「こんなに飽きっぽい僕がBIGMAMAだけはなんか……たぶんこの4人が天才なんだと思う」なんて話していたが、こうして無理のない温度感でライブができているのは10年の月日を積み重ねた今だからこそ。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
バンドの両翼を担うバイオリン&ギターの旋律の裏でまるでチェロのように豊かに低音を響かせるベースラインが堪らない「Neverland」も、金井&東出&柿沼による三声のハーモニーにオーディエンスの歌声が加わっていった「ワンダーラスト」も、目の前の相手と大切な感情を共有し合うようにライブの場で度々鳴らされてきた「秘密」も、このたび初披露となったメタル風味の新曲「ファビュラ・フィビュラ」も、変に誇張せずニュートラルに、どれも等しく今のBIGMAMAの曲として奏でられていった。バラバラだった欠片に一本の糸が通されていくイメージ。そうして過去を確かめ未来への期待を膨らませていく様子は、BIGMAMAで以ってBIGMAMA自身を肯定していくかのようで。ここ最近の彼らのライブは、バンドに対する誇りと愛情が演奏から滲み出ているため、観ていてとても気持ちがいい。
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
また、「当日はささやかながらご報告もご用意しております」と事前告知され、生配信も行われていたこの日。そのお知らせの内容を楽しみにしていた人も多かったはずだが、残り1曲を控えたタイミングで金井が「最後にみなさんにひとつささやかなお知らせです。2017年10月15日、BIGMAMA IN BUDOKAN、必ず空けて待っててください!」と伝えた。直後にはものすごい音量の歓声が上がったが、そんな重大な発表事を本当にささやかに済ませてしまう不器用さや、まるで未来で待ち合わせをするかのようにアンコール無しで去ってしまう、しっかりちゃっかりした感じも含めて、何ともこの人らしい。もうここまできたら焦ることなく、来たるべきタイミングで堂々とあの舞台に立ってほしいと個人的には思っていたが、バンドの軌跡とこれからをひとつなぎにしてみせたこの日のライブを見て、まさに今がその時なのだということを確信する。
この日ラストに鳴らされたのは「until the blouse is buttoned up」。オーディエンスが色とりどりのタオルを掲げるあの光景が日の丸の下に広がる様を、想像せずにはいられなかった。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=AZUSA TAKADA
BIGMAMA 撮影=AZUSA TAKADA
1.look at me
2.Weekend Magic
3.CPX
4.#DIV/0!
5.Swan Song
6.Neverland
7.little cloud
8.Merry-Go-Round
9.ワンダーラスト
10.神様も言う通りに
11.CHAIN
12.Do you remember ?
13.春は風のように
14.A KITE
-SE.awasekagami-
15.君想う、故に我在り
16.Make Up Your Mind
17.秘密
18.SPECIALS
19.荒狂曲"シンセカイ"
20.ファビュラ・フィビュラ
21.Sweet Dreams
22.MUTOPIA
23.until the blouse is buttoned up
2017年10月15日(日)
OPEN 16:30 / START 17:30 (end:20:30予定)
前売 ¥5,000 / 限定タオル付き ¥6,500
*座席は抽選となります
プレイガイド e+ / ぴあ / ローソン
05/14(日) ZeppTokyo(母の日)
05/27(土) 福岡DRUM Be-1
06/11(日) 仙台Rensa
06/17(土) 高松MONSTER
06/18(日) 広島CLUB QUATTRO
06/24(土) 大阪なんばHatch
06/25(日) 名古屋Zepp Nagoya
07/01(日) 札幌PENNY LANE24
07/08(土) 金沢EIGHT HALL
07/09(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE
一般発売日 2017年04月09日(日)
2017年3月22日(水)リリース
レーベル:RX-RECORDS/UK.PROJECT
初回盤
価格:¥4800+税
DVD内容 : 2月10日恵比寿LIQUIDROOMのLIVE 全曲収録(副音声付き)
[通常盤] (CDのみ)
通常盤
価格:¥2800+税
収録曲(全14曲)
01 ファビュラ・フィビュラ
02 MUTOPIA *音楽ゲームアプリ『SHOW BY ROCK!!』アプリ内タイアップ曲
03 ヒーローインタビュー
04 Make Up Your Mind *「PUMAR THE MISSION - Run The Night」イベントテーマソング *関西テレビ/フジテレビ『#nakedEve』エンディングテーマ
05 BLINKSTONEの真実を
06 Merry-Go-Round
07 Weekend Magic
08 Heartbreak Holiday
09 737 3rd Ave, RT 10017
10 レインコートになれたなら
11 ALL RIGHT
12 SPOON DIVING
13 SPECIALS(FFver) *テレビ埼玉『REDS TV GGR』エンディングテーマ
14 愛はハリネズミのように