タクフェス春のコメディ祭!『わらいのまち』会見レポート 会見もタクフェス流のおもてなし
左から、柄本時生、柴田理恵、宅間孝行、鈴木杏樹、永井大
この春、俳優の宅間孝行が脚本・演出を手掛け、主宰する「タクフェス」が新シリーズ『タクフェス春のコメディ祭!』を始動させる。その記念すべき第1作目は、宅間の笑いの原点でもある『わらいのまち』。3月30日(木)からの本公演に先駆けて、制作発表会見が行われ、宅間孝行、永井大、柄本時生、柴田理恵、鈴木杏樹の5人が登壇した。
『わらいのまち』は、田舎町の温泉旅館「まつばら」を舞台にした「暗転なし」「転換なし」「ノンストップ」の2時間一幕もののシチュエーションコメディ。2011年に初演され、宅間と柴田以外のキャストを一新し、6年ぶりの再演となる。
会見もタクフェス流
記者やカメラマンらにお饅頭とお茶を配り歩くキャスト陣
舞台となる旅館にちなみ、会見会場は都内の宴会広間。5人は会場に入って来るなり、「どうぞ食べてくださーい。飲んでくださーい」と、お茶と饅頭を記者やカメラマンたちに配ってまわった。「『マスコミ御一行様慰労会』を装ったww 制作発表会見」と銘打つだけに、まずはおもてなしタイムというわけだ。ちょっと変わった趣向だが、観客との「ふれあいタイム」や上演中の「写メタイム」などサービス精神旺盛な「タクフェス」ならではの演出に会場の雰囲気が一気に和んだ。
新シリーズ『タクフェス春のコメディ祭!』について聞かれると、宅間は「1997年に劇団を始めてから今年で丸20年。こうしてやっていけるのも、お客様がいるからこそと思い、感謝の気持ちを込めての新シリーズです」と返答。これまでの切ない泣ける作品とは打って変わって春の新シリーズは笑いに特化し、第1弾の『わらいのまち』には個性派キャスト15名が揃った。「コメディなので、メインとなる5人は面白いことがやれそうな5人を選びました」と、宅間は言う。
演出家・宅間孝行について
厳しいと言われる宅間の演出について感想を求められると、宅間作品2度目となる永井は「厳しく教えてもらうことで背筋が伸びる思い。言っていることが的確で、毎日発見があってすごくいい刺激がもらえます。本人を前にして言うのもなんですが、すっごく好きです」と告白。初参加となる柄本も「具体的なことを熱く言ってくれます。個人的には『できねーんだからやれよ』っていう言葉を聞いた時に、僕はこの人を信用したいなと思いました」と信頼を寄せる。が、「時生くんはうちの芝居をDVDですら一度も見たことなくて。ポスター撮りの日に板前役をやるって初めて知ったくらい、モチベーションの低い男なんですよ(笑)」と宅間に暴露され、慌てふためく一場面も。
一方、前回に引き続き、再び『わらいのまち』に参加する柴田が「宅間さんの演出はとにかくエネルギッシュでパワフル。13時~19時の稽古で休憩は一切なし。全身全霊を込めた演出なんです。厳しいとは思うけど、これは愛情の深さなんだと思います」と答えると、すかさず宅間が「でも気づくと柴田さん、『厳しいよー』ってよく言ってますよね」と突っ込みを入れ、ふだんからのコンビネーションの良さが伺えた。
プライベートでも宅間と長い親交がある鈴木は、本作が2度目の舞台経験。「宅間さんが選ぶ言葉や伝えたい思いは自分にとってとても分かりやすい。これも今までのお付き合いで得られた信頼だと感じています」と語った。今回、関西弁を話す役どころの鈴木は、もともと関西出身だが、「途中で標準語になったらどうしようと不安でしたが、意外と大丈夫で自分でも驚いています」と順調に役作りができている様子だ。
作品づくりはストイックに
総勢15名のカンパニーを稽古以外で一つにまとめる工夫を聞くと、「男性陣を中心に稽古前のハードな筋トレで自分と向き合う時間を作って、苦しい思いを共有して連帯感を築いています」と宅間。お昼には同じ釜の飯を食べるので、ファミリー感は強くなっているのだとか。さらに宅間は、「6年前の公演では、柴田さんが若手女優にブチ切れておしぼりを投げつけたけど、今回はまだ若手女優が柴田さんにブチ切れられていません」と暴露。これに対し、柴田は「『笑いをつくる現場に笑いはない』と(佐藤)B作さんに教わりました」と切り返し、共演者たちを唸らせた。
ガッツポーズで本番への意気込みをアピールするキャストたち
最後に本番への意気込みを尋ねられた宅間は、「お芝居は映画などの他のエンターテインメントと比べてお金がかかるもの。そのお金を払っても見に来てよかったと思われるものを作るために日々一生懸命稽古しています。どうか期待して劇場に遊びに来てください」と会見を締めくくった。
タクフェス春のコメディ祭!『わらいのまち』は、3月30日(木)~4月12日(水)の東京グローブ座での東京公演を皮切りに、名古屋、兵庫で順次上演される。
取材・文・写真撮影:岩本恵美