アコーディオニスト Rie|こんな日本アーティストがパリで活躍中 【第16回】

インタビュー
アート
2017.3.28
アコーディオニスト Rie 撮影=Michael Goldberg

アコーディオニスト Rie 撮影=Michael Goldberg

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アコーディオニスト Rie

今回はこの連載で初登場となるミュージシャンを紹介します。しかも、パリと言えば!な、音楽であるアコーディオニストの方。

そのRieさんが演奏するのは『ミュゼット』と呼ばれるもので、アコーディオン中心のアンサンブルによって演奏される大衆音楽です。ミュゼットは、一昔前のパリで仕事終わりに遊びに行く、今で言うクラブのような場所で親しまれていたものでした。年配のパリジャン、パリジェンヌたちにとって懐かしい音楽として知られているこのミュゼットが、最近では若いパリジャンたちにもブームになっているそうです。

 

――パリで活動されるようになったキッカケを教えてください。

私がアコーディオンを始めたのは30歳の時でした。当時、東京で広告の仕事をしていたのですが、たまたまテレビでアルゼンチンタンゴのバンドネオン奏者によるピアソラの演奏を聴いて、衝撃を受けたのが始まりです。自分でアコーディオンを買って、趣味として教室に通うようになりました。そして、音楽マニアの兄から、パリのアコーディオン音楽でこんなのもあるよ、と貸してもらったのが『ミュゼット』のCDだったのです。

30代半ばになった頃、「仕事は充実しているけど、このまま年をとっていいものかな……?」なんて、 今後の人生のことを考えることになりました。その結果、一年間という期間限定でパリでアコーディンを学ぶ冒険をしようと決心し、2002年にパリへやってきました。

まずは語学学校に通ってフランス語を勉強しながら、パリのアコーディオニストJean Corti(ジャン・コルティ)さんに、ぜひ指導をお願いしたいと、つたないフランス語で手紙を書いたんです。すると返事があり「私は先生ではないので良い先生を教えましょう」という紹介の元、パリでアコーディオン教室に通うようになりました。

パリの地下鉄にて

パリの地下鉄にて

 

フランスと日本のアコーディオンの違いはありますか?

日本のアコーディオンといえば「鍵盤式」が有名ですが、フランスはというと「ボタン式」が主流なんです。楽器の中身は同じなのですが、音色が少し違います。ボタン式はピアノ式に比べてキーが密集しているので、ミュゼットによく登場する早い三連符などが弾きやすいという利点があるんですよ。フレンチタッチと呼ばれるパラパラと切れのいい軽やかな指のタッチも、ボタン式アコ―ディオンならではの特徴です。

日本人女性の私がパリでアコーディオンを演奏をするということが、フランスでは珍しがられることが多いです。バルミュゼット(ミュゼットに合わせて踊るダンスパーティー)の伴奏をしたり、夏にはガンゲットと呼ばれる川沿いの野外レストランで演奏することもあります。そんな時は、さらに目立ってしまえとばかりに浴衣姿で演奏してみるんですよ。すると、色々なお客さんが興味をもって話しかけてくれますね。


 

これからの活動予定を教えてください。

ミュゼットと言えば、パリのなつかしの音楽として年配の方に親しまれていますが、最近では若者たちにも人気で、凄腕イベンターによる現代風バルミュゼット・イベントが盛り上がりを見せているんです。まだまだ日本ではミュゼットが知られていない状況なので、この楽しさをぜひ、日本の方にも体験してもらいたいと思っています。

そこで、今年の夏は東京・渋谷で、『バルミュゼット東京2017』のイベント開催に向けて準備中です。このイベントは、若い女性に人気の着物デザイナー、やまもとゆみさんとのコラボ企画で、「ゆかたでバルミュゼット」がコンセプトになっています。パリのスタイルに日本の盆踊りのテイストをおしゃれにミックスした新しい形のダンスイベントになると思います。また、今後の他の演奏活動では、「ハモアコ」というハーモニカとアコーディオンのユニットや、自身で作曲にも挑戦したいと思っています。

ハモアコ

ハモアコ

 

あとがき

パリのセーヌ川添いを散歩している時に、路上で演奏している音が耳に入ってくることがあります。Rieさんとの出会いでミュゼットを知り、興味をもった筆者も近々、彼女の定期演奏するバルミュゼットに行ってみようと思っています。東京でも今年夏にはバルミュゼットのイベントが開催予定。ぜひ足を運んでパリ本場のバルミュゼットを楽しんでみてはいかがでしょうか。

プロフィール情報
Rie

幼少の頃からピアノに親しみ、編集や広告などの仕事を経て、30歳で電撃的にアコーディオンと出会う。2002年末にパリに渡り、ボタン式アコーディオンをフランソワ・パリジ氏に師事。2003年秋、パリの地下鉄ミュージシャンの資格を取得。日本人として初めて、マルヌ川沿いの野外レストランで定期的に演奏。演奏活動のかたわら、ドイツ人音楽学校などで生徒の指導も行う。
★ 東京でのミュゼット・イベント情報 ★
https://www.facebook.com/balmusettetokyo/
・Web site
http://degorgerie.exblog.jp/
・facebook
https://www.facebook.com/rie.matsumoto.1460
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