中村勘九郎・中村七之助らの「歌舞伎」と蓬莱竜太の「演劇」が融合!『赤坂大歌舞伎』6日より開幕
『赤坂大歌舞伎』出演者たち&蓬莱竜太
2008年9月に、十八代目中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を!」という一言から始まった「赤坂大歌舞伎」が4月6日(木)に5回目の公演を迎えることとなった。今回の上演作品は劇団「モダンスイマーズ」の座付き作家であり、第20回鶴屋南北戯曲賞を受賞、劇団の作品に留まらず外部舞台の脚本・演出など幅広く活躍する蓬莱竜太が手掛けた『夢幻恋双紙 赤目の転生』(ゆめまぼろしかこいぞうし あかめのてんせい)。
初日を目前にした5日(水)、本作に出演する中村勘九郎と中村七之助、市川猿弥、中村鶴松、中村いてう、中村亀鶴、片岡亀蔵が赤坂ACTシアターにて芝居の一部を披露、そして蓬莱と共に囲み会見に臨んだ。
気の弱い男・太郎(勘九郎)は、寝たきりの父(亀蔵)と博打に溺れる荒くれ者の兄・源乃助(亀鶴)に苦労している女・歌(七之助)を幸せにしたいと子どもの頃から願い続け、ついには夫婦になる。が、仕事がうまくいかず引きこもり状態に。そんな太郎にハッパをかける歌だったが、逆に反発して家を飛び出してしまう太郎。そこに源乃助が現れ、太郎は殺されてしまう。目が覚めると、太郎は子どもの頃に時間が戻ってしまっていることに気が付いた。しかも以前とは異なり屈強な男になっている。今度こそ歌を幸せにしたいと誓う太郎だったが――何度も転生を重ねていった先の結末はいかに!?
作・演出を務める蓬莱と勘九郎は以前から付き合いがあり、勘九郎が「いつかは歌舞伎を書いて欲しい」と頼んでいた仲。「僕は普段演劇の者なんですが、新鮮に歌舞伎というものをやらせていただいた。歌舞伎だと思って作っているし、演劇の人が本作を観ても十分楽しい作品になっていると思う。また歌舞伎の人が観ると演劇の面白さが伝わると思う。両方が融合しているのが見どころじゃないかな」と胸を張る。
勘九郎もこの言葉を受けて「蓬莱さんに入っていただき、松井るみさんに美術に入っていただき、この世界にすごくあった世界を作っていただいた。演劇としても完成度の高い作品になっていると思う」と自信をみなぎらせる。
七之助は「すべてにおいて素敵。自分がお客様として観に行ったとしても、とっても好きな舞台になるであろうと、客観的に見てもそう思います」と静かに言葉を続けた。
歌舞伎の舞台ではこれまでまず出てくることはなかったピアノの音色、また切り絵のような舞台美術も見どころの一つ。「これまでいろいろな新作をやらせていただきましたが、ピアノはやってなかったな、と。最初に稽古場でピアノの音を入れて芝居をしたが、ものすごくピアノに引っ張られて感情移入しすぎてしまった。こんなにもピアノと歌舞伎って合うんだな」と予想以上の効果を感じたと語る勘九郎。
七之助が演じる歌は、すべての男性から好意を寄せられるような女。役作りについてモデルがいるのか?という質問に「全世界の女性がモデルです!」と答えて笑わせる七之助。「ただ僕も男ですし、蓬莱さんも男としてこの本を書いているので、世の女性に『そんなことないよー正しくないよ!』と言われちゃうかもしれないので、全力で挑みたいと思います」と身を引き締めた。
勘九郎と七之助から見て「鶴松さんにプライベートと仕事で直してほしいと思うところは?」という質問が飛ぶ。実はこれ、昨年くらいから始まった勘九郎・七之助による「鶴松いじり」の前フリ。勘九郎は「この会見、大体朝とか昼に放送されるんですよね…なので直してほしいところは言えません!(笑)」と意味深に返し、七之助は「チャラチャラしないで一つ一つの恋愛をしっかりとしてほしいですね。それが舞台にも反映されると思うので。相席屋(出会い系居酒屋)ばっかり行かないように…あっ、言っちゃった!」とワザと真実っぽく言うので、鶴松はもちろん先輩役者たちも大ウケ。最後には「相席屋には月に何回行くの?」「2回くらいしか行ったことがない…」「行ったんかい!」などというノリツッコミも発生し、最後まで笑いが止まらない会見となった。
会見の後は舞台稽古が披露された。以前、勘九郎が本作について、たっぷりと語ったことがあるが、その時に受けたイメージを遥かに凌駕するような美しく、不思議な世界がそこに広がっていた。
ステージ上には美しい切り絵のような大樹。太郎が何度転生しても彼と彼の周りの人々を静かに見守るような存在のよう。そして歌が舞台上に居ながらにして、子どもから大人の女に成長していく演出は、美しく、そして歌の切なさを伝えてくる。
客席通路も何度となく活用される。歌舞伎の花道の代わりでもあり、演劇としての通路を活用した演出ともいえる。
言葉遣いはかぎりなく今の日本語に近しいものとなっているので、歌舞伎初心者でもすんなり理解ができることだろう。
稽古は幕間までの公開となったが、取材後に「この続きが気になる! 観たい! あの二人は最後にどうなるんだ?」という声がいつも以上にあちこちから聞こえてきた。続きはぜひ本番で。
■日程:2017/4/6(木)~2017/4/25(火)
■作・演出:蓬莱竜太
■出演:中村勘九郎、中村七之助、市川猿弥、中村鶴松、中村いてう、中村亀鶴、片岡亀蔵 ほか
■主催:TBS/松竹/TBSラジオ/BS-TBS
■企画協力:ファーンウッド/ファーンウッド21
■製作:松竹
■問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(10:00-18:00)
■公式サイト:http://www.tbs.co.jp/act/event/ookabuki/