『パワーレンジャー』ディーン・イズラライト監督インタビュー ジョン・ヒューズから『ロサンゼルス決戦』まで!映画を構築した要素とは

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2017.7.11
『パワーレンジャー』ディーン・イズラライト監督

『パワーレンジャー』ディーン・イズラライト監督

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7月15日公開の『パワーレンジャー』は、日本の特撮番組‟スーパー戦隊シリーズ”のアメリカ版ローカライズ作品を、製作費120億円という破格のスケールで映画化したものだ。日本の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』にあたる1作目『マイティ・モーフィン パワーレンジャー』をベースとし、デイカー・モンゴメリーら若手のほか、ブライアン・クランストン(ドラマ『ブレイキング・バッド』)やエリザベス・バンクス(『ピッチ・パーフェクト』シリーズ)がキャストとして参加している。

メガホンをとったディーン・イズラライト氏は32歳、南アフリカ共和国出身の気鋭の監督。初長編監督作『プロジェクト・アルマナック』の成功を評価され、2作目にして超大作を担当することとなった。『パワーレンジャー』シリーズをTVで観て育ち、青春映画の名匠として知られるジョン・ヒューズ監督(『ブレックファスト・クラブ』)の影響を大きく受けたというイズラライト監督は、新たな『パワーレンジャー』にどんな思いを込めたのか。映画ならではのこだわりから、『世界侵略:ロサンゼルス決戦』との意外な関わりまで、インタビューで語ってくれた。

 

現代版『ブレックファスト・クラブ』をスーパーヒーロー映画として作る

イエローレンジャー/トリニーを演じたベッキー・G 歌手としても活躍中 (c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R.

イエローレンジャー/トリニーを演じたベッキー・G 歌手としても活躍中 (c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 

――高校のスクールカーストに属する主人公たちから、ジョン・ヒューズ監督の『ブレックファスト・クラブ』を連想しました。同作を意識して製作されたんでしょうか?

そうです。『ブレックファスト・クラブ』を2017年版として作るなら、それも、スーパーヒーロー映画のレンズを通して作ったらどうなるか、ということを考えて製作しました。そうすると、すごくユニークなスーパーヒーローものが出来るんじゃないか、と思ったので。ぼくは、ジョン・ヒューズ監督の映画が大好きなんです。彼はティーンエイジャーの経験をテーマにした作品をたくさん作っていますが、どれも非常に娯楽的でありつつ、ダークでエッジが立っていて、バランスが凄くいいと思うんです。

――主人公たちのキャラクターは『ブレックファスト・クラブ』より現代的で、複雑ですね。特に、イエローレンジャー/トリニーが自身のセクシャリティに悩む姿が、非常に自然に描かれていたのが印象的です。スーパーヒーロー映画では初めてだと思いますが、なぜこのような設定に?

脚本のジョン・ゲイティンズ(『リアル・スティール』など)と話したのは、2017年の観客に訴えかけられる問題を描いて、『ブレックファスト・クラブ』の現代版にするにはどうしたらいいか、ということです。そうすると、今の若者の“悩み”を提示しないといけない。『ブレックファスト・クラブ』の主人公たちがアイデンティティに悩んでいたように、今日的なアイデンティティの問題のひとつとして、セクシャリティを取り上げたわけです。

(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R.

(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 


――監督の前作『プロジェクト・アルマナック』はタイムトラベル技術を手にした高校生が主人公でした。“超常的な能力を手に入れた若者がどう成長していくか”というテーマがお好きなんでしょうか?

確かに、好きなんだと思います。今回の『パワーレンジャー』で主人公たちが手に入れるのは、文字通りの超常的な力ですね。ただ、ぼくが一番興味があるのは、“コミュニティから外れた人間が独りになって、力を得る”ということ。そこから生まれる、感情的な部分の変化です。外的な要因で色んな問題が起こって、それを解決するために自分も(問題の)中に入っていかなくてはならない。自分は一体何ものなのか? 現実を受け入れなければいけない……そういう心の動きが、一番興味のあることなんです。


――ただ、感情を描きすぎると、アクション映画としては退屈になってしまう場合もあります。そこを批判されたアメコミヒーロー映画もありますし。そうならないために、何か気を付けたことは?

そういう視点では考えなかったですね。ただ、ぼくが考えていたのは、キャラクターが中心の映画ではあっても、メロドラマにはしたくなかった、ということです。楽しくて、軽い感じもある作品にしたかったので。キャラクターはシリアスでありつつ、映画自体はあまり深刻にとらえられないようにしたかったんです。トーンとしてはあくまで楽しくて、アクションやアドベンチャー映画である、という部分は大事にしました。

 

ほかのスーパーヒーロー映画とは違う世界観を作りたい

(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R.

(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 

――原作からアレンジしている部分についても聞かせてください。例えば、パワーレンジャーのスーツや宇宙船の見た目はとても有機的ですよね。なぜこういったデザインにされたんでしょうか?

プロダクションデザイナーとは、「ほかのスーパーヒーロー映画とは違う世界観を作りたい」という話をしました。『スター・トレック』や『トランスフォーマー』とも違うものにしたい、と。ヒーロー映画やアクションものには、小さいパーツに至るまで、非常に鋭角的なデザインのものが多いと思うんです。ぼくらの映画は、もう少しユニークなものにしたかった。『パワーレンジャー』のデザインは、“違う星から来た”ということを表現したかったので、有機的なものにしました。コイン(編注:パワーレンジャーたちのパワーの源)にしろ、スーツにしろ、宇宙船にしろ、ゾードンにしろ、アルファ5にしろ、生物機械的なものにしたいと思ったんです。なので、非常に有機的でありつつ、丸い、自然なものをビジュアル言語として取り入れています。

――なるほど。デザイン以外にも、登場するキャラクターがより人間的になっているのが気になりました。ゾードンや敵役のリタが元パワーレンジャーであったり。

ゾードンもリタも、彼らの背景をキッチリ描くことで、より魅力的なキャラクターになるのではないか、と思いました。ゾードンも、『オズの魔法使い』のようなイメージではなく、彼にも彼の視点があるということを、みんなが理解できるような存在にしたかったんです。リタについても同じですね。そうすることで、最終的に怖い感じを出すことができると思いました。『パワーレンジャー』の神話みたいなものがあるんですが、それを振り返ってみても、ゾードンやリタがパワーレンジャーだった、ということは、十分正統性があることなんじゃないかと思います。

エリザベス・バンクスが演じたリタ・レパルサ (c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R.

エリザベス・バンクスが演じたリタ・レパルサ (c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 


――リタは敵役でダークな存在ですが、一方でぶっとんでいて面白い一面も持っています。黄金を集めて食べてしまうところなんかは最高でした。なぜこういうキャラクターになったのでしょう?

リタはオリジナルのテレビ版でも、クレイジーなキャラクターではあるんです。ただ、映画に出す場合、彼女のもの凄く極端な精神性を、映画にとって自然な形にする必要があると思いました。エリザベス・バンクスと話したのは、リタのキャラクターには馬鹿げていて、笑ってしまうようなところもありつつ、それが映画のトーンとも一致していなければならない、ということです。つまり、怖いんだけど、馬鹿げていて笑ってしまう……両方の性質が共存しているキャラクターを作ろう、という話をしたんです。そういうキャラクターは、80年代の映画だったり、ティム・バートン監督の作品に悪役として登場していたんですが、最近はあまり見かけないですよね。二面性があることでキャラクターがより豊かになると思いますし、それがないと、パワーレンジャーの“映画”にならないと思ったんです。

――長編2作目で『パワーレンジャー』という大作を、上手く監督されたので驚いています。いとこであるジョナサン・リーベスマン監督(『世界侵略: ロサンゼルス決戦』『ミュータント・タートルズ』)からの影響もあるのでしょうか? お二人の作風は違いますが。

もちろん、影響はかなり受けています。実は、ぼくは彼のアシスタントをしていたことがあるんですよ。大学を卒業した後、彼が『世界侵略: ロサンゼルス決戦』を製作しているときに、2年間アシスタントとして働いていました。その間に、あれだけの大きな作品を作るときに必要な、“政治”のようなものを勉強させてもらったと思います。二人とも今もロサンゼルスに住んでいるので、よく彼に会いに行きますし、色んなアドバイスをもらいます。主に、映画を作る際の政治についてアドバイスをもらうことが多いですね。それと、8歳年上で、一緒に育ってきた彼が映画監督になったことで、「ぼくも映画監督になれるかもしれない。なれるんだ」と思えたことが、一番大きな影響だと思います。


映画『パワーレンジャー』は7月15日(土) 全国公開。

インタビュー・文・撮影=藤本洋輔

作品情報
映画『パワーレンジャー』
 
(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R.

(c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 


監督:ディーン・イズラライト
脚本:ジョン・ゲイティンズ(『フライト』『キングコング: 髑髏島の巨神』『リアル・スティール』)、アシュリー・ミラー
製作総指揮:アリソン・シェアマー(『ローグ・ワン/スター・ウォーズ』『ハンガーゲーム』『シンデレラ』)、ブレント・オコナー(『グッド・ウィル・ハンティング』、『ジュマンジ』)
キャスト:デイカー・モンゴメリー/RJ・サイラー/ナオミ・スコット/ベッキー・G/ルディ・リン/ビル・ヘイダー(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)/ブライアン・クランストン(『GODZILLA』『トータル・リコール』)、エリザベス・バンクス(『スパイダーマン』、『ピッチ・パーフェクト』シリーズ)

【ストーリー】遡ること時は紀元前。古代の地球で世界の運命を決する、大きな闘いが終焉を迎えていた。ある5人の戦士たちによって守られた地球。そこにはやがて新しい命が芽生え、物語は現代に還ってくる。 小さな町、エンジェル・グローブに、普通に暮らす5人の若者がいた。ありふれた日々を過ごす彼ら。しかし、運命に導かれるように出会い、やがて訪れる脅威に立ち向かう”新たな力”を手にする。その力は、なぜ彼らに与えられたのか?いま、物語は再び動き出す。 

公式サイト:http://www.POWER-RANGERS.jp

 (c)2017 Lionsgate TM&(c) Toei & SCG P.R. 
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