最強の一人芝居フェスティバル「『INDEPENDENT』東海版、今年は名古屋「ナビロフト」で初開催!

インタビュー
舞台
2017.7.19
 『INDEPENDENT:NGY』出演者 上段左から・a/秋葉由麻、d/竹田淳哉、f/福田恵 下段左から・e/葉山太司、b/鈴木理恵子、c/すぎうらとしはる

『INDEPENDENT:NGY』出演者 上段左から・a/秋葉由麻、d/竹田淳哉、f/福田恵 下段左から・e/葉山太司、b/鈴木理恵子、c/すぎうらとしはる


大阪発の一人芝居フェス、名古屋勢の大阪本戦出場なるか!?

大阪・日本橋の「in→dependent theatre」が2001年にスタートし、2011年以降は全国ツアーや地域開催も展開するなど、今や全国的な広がりを見せている“最強の一人芝居フェスティバル”『INDEPENDENT』の東海版が、7月22日(土)・23日(日)の2日間に渡って名古屋・天白の「ナビロフト」で開催される。

『INDEPENDENT:NGY』チラシ表

『INDEPENDENT:NGY』チラシ表

当初から一貫した作品フォーマット(アクティング間口2.5間×奥行2間・上演時間30分以内)で16年に渡り継続開催されてきた『INDEPENDENT』。毎年11月に行われる大阪本戦は、プロデュースチームにより選出された10作品と公募予選(トライアル)からの2作品の計12作品で構成。地域版はひと足先の5月~8月にかけて全国各地で行われ、優秀作は本戦に招聘されるという仕組みだ。これまでにフェス全体で上演された一人芝居はなんと354作品! 年内には400本を超える予定というからすごい。ちなみに、昨年の本戦では地域版から4組が招聘され、東海版からも1組が参戦している。

また、5年おきにシーズン全上演作品からのセレクション再演が夏季に全国ツアーとして実施され、3度目のセレクションとなった昨年は、2011年~2015年の60作品から厳選された10作品でツアーを敢行。次回は2021年に予定されている。

これまでに開催された地域版の開催エリアは、北海道、宮城、長野、愛知、三重、福岡、沖縄で、今後も日本地図を塗りつぶすべく47都道府県制覇を目指すという。東海エリアでは2012年から三重県津市と名古屋で1年ごとに開催され、名古屋開催の今年は、初めて「ナビロフト」で上演されることに。そこで、『INDEPENDENT』プロデューサーの相内唯史と、「ナビロフト」プロデューサーの小熊ヒデジに、プロジェクト創立から現在に至る経緯や今回の開催概要について話を伺った。

左から・『INDEPENDENT』プロデューサーの相内唯史、「ナビロフト」プロデューサーの小熊ヒデジ

左から・『INDEPENDENT』プロデューサーの相内唯史、「ナビロフト」プロデューサーの小熊ヒデジ

── そもそも相内さんはなぜこの企画を立ち上げようと思われたんでしょう。

相内 偶然に限りなく近いんですけど、大阪の民間劇場である「in→dependent theatre」のプロデューサーを本業としていまして、貸し館メインの劇場なんですね。基本、先着順で借りたいという劇団にスケジュールが空いていたら受付をして貸すという小屋で、劇場側の人間としては何の楽しみもないわけです。もちろん、より良いラインナップにしていくためにいろいろな方策だったりできることはあるんですけど、限りもあるし大阪ぐらいの規模だとラインナップを埋めるだけでも大変なので、選べる状況と選べない状況がある。

そういう中で、より劇場が求める劇団に来てもらったり選ばれる劇場になるためには何が必要か?と考えた時に、発信力だったり劇場自身がコンテンツを作ることによって、「この劇場なら信じられる」「この劇場にはお客さんが来てくれる」という風にやっていかないと存続していかないなと。なので元々は「劇場の主催企画としてコンテンツも作りますよ」っていうことで仕掛けた企画の第一弾だったんですね。それが継続する形になっていって全国ツアーをするようになると劇場での仕事とは違う部分が出てきたので、フェスの運営自体を独立させて、今は株式会社の形でやらせてもらっています。

── いろいろな上演形式がある中で、一人芝居に特化したというのは?

相内 それもほとんど偶然で、うちの劇場はいま80席ぐらいの1stと150席ぐらいの2ndの2館あるんですけど、1stは出演者が少なくて濃密な時間と空間が流れるような作品が上演されるだろうという想定で運営をスタートしたんですけど、大阪の人たちって派手好きなので出演者がいっぱい出るような芝居を創るんですね。こんな狭いところに10人も出す!? みたいな芝居ばっかり(笑)。それなら劇場としては、せっかくだから最初に想定していた濃密なものを観てもらったらどうかなということで、一人芝居をと。でも一人の人だけに芝居をやってもらったらお客さんを呼ぶのも大変だし、じゃあお客さんとしても博覧会だったり見本市みたいな感じでいろんなものに触れられて、創り手同士でも交流が生まれるような仕組みにしたらなんとか成立するかな、みたいなところですね。

── 劇場の事情と大阪という演劇環境から必然的に生まれたものなんですね。

相内 あとは他にやってるところがなかったからっていうことが大きいですね。堂々と“最強の一人フェスティバル”と言ってますけど、実際一人芝居に特化したフェスティバルの最初のものだと思うし、以降でも幾つかやってるところもありますけど、この規模で全国でいろいろやってる企画は他にないので言い切っちゃおうと(笑)。

継続して開催していくっていうことを決めた時点で、何の目的もなくダラダラと続けていってもいけないなということで、5年で一度総括する形にしました。5年ごとに、その5年間の中で上演された作品の中から優勝作を再演する形で、大阪だけじゃなくて全国のいろんなところに持っていけるようにしようと。1回目は大阪と東京だけだったんですけど、2回目の時に全国7都市を回って、そこで生まれたご縁で各地域の中心となっている劇場さんに、「この企画はそれぞれの地域でも育てていくと、この先もっといろんなことができるんじゃないだろうか」と言っていただいたんです。それで地域の創り手の方を中心としたバージョンをやろうと。

東海地区に関しては、最初に受け入れて興味を持っていただけたのが三重県津市の「あけぼの座」さんと「三重県文化会館」さんで、最初の全国ツアーの時には「三重県文化会館」の小ホールでやらせていただいたんです。地域でも継続的にやっていこうとなった時に、東海地区の中心である名古屋と、別の路線から盛り上がってきている津市とを上手いことこの企画を通して繋げていくことができれば、僕らもそれに貢献できるといいなぁっていうこともありまして、今までは津と名古屋で交互に開催してきました。

上演風景より

上演風景より

小熊 今回、「ナビロフト」に声を掛けていただいてとても良かったと思ってます。「あけぼの座」の油田さんと「三重県文化会館」の松浦さんが、「名古屋に「ナビロフト」っていうところがあるよ」っていうことを相内さんに話してくれて。

相内 「ナビロフト」さんのことはもちろん存じ上げていたんですけど、伺ったことはなくてまだ接点がなかったので、お声をいただいて「そうだよね」って。ちょうど前年の本線に出てもらった竹田君(今回の出演者でもある竹田淳哉)から、「最近は若い劇団は「ナビロフト」に集まってるんです」っていう話を聞いて、「なるほど」と思っていたところだったので、これはまずご挨拶に行かねばなるまい、と思って伺ったのが経緯ですね。

小熊 申し訳なく、『INDEPENDENT』は観たことはなかったんですけども、名古屋のおぐりまさこさんが全国ツアーを回ったり、とても評判が良いっていう話も聞いてたし、全国展開されてることも魅力でしたね。「ナビロフト」もそういったネットワークをこれから構築していきたいと思っているし、例えばここで良い作品が生まれれば、この地区のアーティストが他の土地へ行く可能性も大いにあるわけで。そういった企画を「ナビロフト」でできるということは、非常に魅力的で有難いことでしたね。

最近、僕が入って体制が変わって、地域に根ざすっていうことも大事なんだけど、全国との繋がりも大事にしていきたいと考えていたので、そういったところでお力にもなれるかなというのもあって、ぜひということでやらせていただくことにしました。東海勢は、公募による書類審査で選ばれた4作品。それから大阪と福岡。これは既に上演されている作品なんですけども、招聘で来ていただくことになって、とても充実したラインナップになったと思います。

── 審査はどのように進められたんでしょう。

相内 ベースの選考は小熊さんにお願いしました。書類はもちろん一緒に見ているんですけども、やっぱり地域の創り手のことを一番わかっていただいている方に選んでいただく方が、っていう部分もあって。招聘作品に関しても基本は小熊さんに資料をお渡しして、その中から名古屋へ呼ぶんだったらどれがいいかっていうことで考えていただきました。

小熊 相内さんがこれどうでしょう? って提示していただいた作品、そのまま僕もそれがいいんじゃないかと。若手からベテランまで揃っていて作品も期待できるし。

相内 この企画で大事にしていることが、〈一人芝居を通して演劇の多様性を見てもらいたい〉っていうことなんですよね。なのでチケットも、1つの上演ブロックを観ることができるブロック券もあるんですけど、1日居れば全作品が観られる1日通し券がベースという考えですね。いろいろなものを観比べた結果、「私の好みってこういうものなんだな」とか、「この役者さんが好きだと思ってたけど、他にも素敵な役者さんがいるなぁ」みたいなことだったり、お客さんにとっても価値観が広がるような機会になってほしいと思っているので、若手からベテランまでっていうこともあるし、招聘作品で東海地区以外の作品に触れられるっていうこともあるし、作品の方向性としてもコメディからしっとりした会話のもの、ちょっと実験的な要素のあるものまでいろんなものが出てくるんじゃないかなと思っているので、結構良いラインナップだと思うんです。

小熊 応募してきてくれる書類は、台本を添付してきたりいろいろ一生懸命送ってくれるんだけど、それでとてもわかりますね。意気込みとか、どんな感じのものが生まれてきそうとか。僕は初めて書類審査というのをやったんだけど、わかるんだなって思いましたね。

相内 僕自身も最初始めた時に書類だけでわかるのかな?って思ったんですけど、やっぱり否応なくその書類に何か表れてくるんですよね。加えて資料の添付が自由なので、どこまでその企画に関して動けているのかだとか、台本が既に出来上がっているとか、プロットが書き上がってるとか、ビジュアルイメージがなんとなく出来上がってるだとか。

上演風景より

上演風景より

── 地域版については、いろいろな土地で次々開拓されていってるわけですか?

相内 そうですね。今年ちょうど初めての場所としては長野の上田市でやらせていただいて、最終的には47都道府県の全てから俳優や作・演出家が参加しているような企画にしていきたいと思って、地図を塗りつぶしていくのを目標にやっています。継続開催しているエリアを中心にはどんどん塗りつぶしてはいけるんですけど、飛び地になってしまうところとか、なかなか参加しづらい距離感のあるところだったりがまだまだなので、そこには逆にこちらから飛び込んでいって、どんどん開拓していきたいなと思っています。

── 地域版の招聘作品は、だいたい2エリアぐらいから呼ばれるんでしょうか。

相内 ラインナップの組み方は地域の事情に合わせています。6本はボリューム大きいかもっていうところだと、5本とか4本にすることもあるので。その中で少なくとも1本は他の地域から来てるものがある方が。結局、交流ですよね。普段観られないものに触れてもらうことはお客さんにとっても創り手にとっても価値があることだと思うので、必ず招聘作が1本以上はあるようにっていうことは、ラインナップを組む時にお願いしています。

── 東京での開催については?

相内 全国ツアーでは回ってるんですけど、継続開催の対象地域にはしていません。これは地方者の僻みじゃないですけど(笑)、プライドとして演劇の中心地は東京だけじゃないぞ、と証明したいなと思っていて。せっかく大阪から始まった企画で、大阪から全国に飛び火するように仕掛けているので、東京でレギュラーで開催するよりも、東京の人が『INDEPENDENT』に関わりたかったら大阪に来てもらうっていう方が、結果企画のためにはいいのかなと。実際昨日、大阪の本選に出るための予選が行われてたんですけど、東京から予選を受けに何人も来ているので、敢えて東京版は当面の間はやらないっていうつもりでやってます。

── これまで16年継続されてきて、手応えとして感じられていることはどんなことですか?

相内 地域に出られるようになったことが第一段階として大きいなと思っていますね。大阪で始めて、もちろん一年目に出演したのは全員大阪の俳優で、ほとんど若手だったんですよね。一人芝居自体が関西ではタブーというか、ハードルの高い表現だというイメージがあって。ベテランでスキルもあって名前も売れている俳優しか一人芝居はやっちゃいけない、みたいな。そうはいっても、ベテラン以外で面白い一人芝居が出てくる機会はないんだろうか?と思って。通常のお芝居と違って制約がある分自由でもあるし、制約を乗り越えるために違う頭の使い方だったりテクニックが必要で、それは普段の芝居が上手いからみんなが一人芝居をできるわけでもないし、一人芝居ができるから普段の芝居にも100%それが活かせるかといったらそれもまた違う部分で。

それなら若手だって挑戦してノウハウを作っていった方がいいんじゃないかなと。結果、一年目の時に若手からベテランまで関西の思いつく限りの、この俳優さん素敵だなと思う人にいろいろ声を掛けた結果、中堅・ベテランの人ほど断られて、失うもののない若手だけが勢いで挑戦したという感じです(笑)。10本やってその中で玉砕した作品もあるけど、中には中堅やベテランの人が見ても「若手でここまでやれると思わなかった」と言われる作品も生まれたので、これを育てていくと、もしかしたらいろんな形で一人芝居の魅力が発掘できるんじゃないかなと思っているんですね。

── 当初は本当に皆さん、この企画で始めて一人芝居をやるとかチャレンジするという形だったんですね。

相内 ほとんど初めてでしたね。長く続けてる今でも、「初めて一人芝居をやってみよう」という人が多いです。劇団の本公演で一人芝居にはなかなかならないですよね、看板俳優とかじゃない限り。あとは純粋に興行として成立させることが難しいんですよね。この企画はもちろんそこを解った上で、じゃあ一人で何百人もお客さんを呼べないけど、6本で何百人のお客さんを呼べる可能性はあるなと。バンドの対バンだったり夏フェスみたいな感じで、「こんな俳優や作家がいるんだな」みたいなことに気づいてもらえるといいなと思って。

小熊 「ナビロフト」での開催が今後継続かどうかという話はまた別ですけど、来年度もきっと東海版はあると思うんですよ。俳優や劇作家も結構いるじゃないですか。「こういう場がある」っていうことをみんなに認識してほしいと思いますね。例えば今回エントリーしたけど参加できなかった人もいますけど、その時にどんな人が来るかっていうバランスもあるので機会があればまた応募してほしいと思うし、劇団でツアーは難しいけど一人芝居だったら先発隊として他の土地に行くっていうこともできますよね。次はじゃあ劇団で、って。現地でネットワークができればそういうこともできると思うので、こういう場を活用してほしいですね。一人芝居ってやっぱり俳優が担うんだけども、劇作家も一人芝居を書くって大変なことだと思うのね。戯曲のクオリティに関してもとても大きなものがいるから、劇作家にとってもすごく良い場になるんじゃないかなと。

改めて今回の東海版ラインナップを見てみると、a、bチームは俳優・劇作家共に近年注目を集める若手気鋭の顔ぶれ、cは安定感のあるベテラン組、dは昨年、優秀作として本戦出場も果たした期待コンビの新作、そして既に高評価を得ている大阪・福岡の鉄板招聘作品と、かなり見応えのある競演となりそうだ。東海勢から見事、本戦出場の切符を手にする優秀作は誕生するのか!? 両プログラムともぜひお見逃しなく!

【東海版 上演ラインナップ】 ※上演スケジュールは下記イベント情報を参照
a/『ある病い』 
  出演:秋葉由麻 脚本・演出:澄井葵(.5(てんご))
b/『モノカキ』 
  出演:鈴木理恵子 脚本・演出:後藤章大(廃墟文芸部)
c/『東京ナガレ者』 
  出演:すぎうらとしはる(桜樹舎★すぎうら事務所) 脚本・演出:佃典彦(B級遊撃隊)
d/『ドーン・オブ・ザ・ゴッド』
  出演:竹田淳哉(妄烈キネマレコード) 脚本・演出:西尾武(妄烈キネマレコード)
e/『そのころ』 ※招聘作品from福岡
  出演:葉山太司(飛ぶ劇場) 脚本・演出:大迫旭洋(不思議少年)
f/『もしもし』 ※招聘作品from大阪
  出演:福田恵(劇団レトルト内閣) 脚本・演出:中野守(中野劇団)

 
公演情報
最強の一人芝居フェスティバル 東海版『INDEPENDENT:NGY』

■日時:2017年7月22日(土)15:30/dae  18:00/bcf 23日(日)11:00/bcf 13:30/dae
■会場:ナビロフト(名古屋市天白区井口2-902)
■料金:1日通し券/前売3,000円 当日3,300円 1ブロック券/前売2,000円 当日2,300円
■アクセス:名古屋駅から地下鉄東山線「伏見」駅下車、鶴舞線に乗り換え「原」駅下車、1番出口から徒歩8分
■問い合わせ:Loft Plan  090-9929-8459
■公式サイト:
in→dependent theater http://itheatre.jp/concept.html
ナビロフト http://naviloft1994.wixsite.com/navi-loft
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