climbgrow 久々に表れた肉食系の4人組、唯一無二と胸を張るロックサウンドを武器にシーンをかき回す
climbgrow 撮影=北岡一浩
イマドキじゃないところがキョーレツにかっこいい。自ら「血の気が多い」と語るフロントマンが率いるclimbgrow(クライムグロウ)が、THE BAWDIESらを擁するGetting Better Recordsが新たに始めたインディーズレーベル・Narisome Recordsから全6曲を収録した『EL-DORADO』を7月19日にリリースする。Climb(登る)とGrow(成長する)を組み合わせたバンド名は“成り上がり者”を意味するという。いわゆる草食系のバンドが多い現在のロックシーンに久々に表れた肉食系の4人組は、唯一無二と胸を張るロックサウンドを武器に、あまりにもナイーヴになりすぎたシーンをかき回してやろうと、すでに牙を剥き出しにしている。滋賀から現れた20歳の4人組、climbgrowとは何者なのか?
自分でもまだのびしろがあると思っていて、それでも最高にかっこいいっていうその状況がかっこいい。(杉野泰誠:Vo&G)
――前作『Enter Here』から1年9か月ぶりにリリースする『EL-DORADO』。とてもかっこよくて、ぜひ話を聞いてみたいと思っていたんですけど、作品のイメージからおっかなそうな人達だったらどうしようって(笑)。
全員:ハハハハ(笑)。
――来るにあたって、それだけが心配で(笑)。
近藤和嗣(G):全然そんなことないです。
――そんなおっかなそうじゃなくてほっとしました(笑)。まぁ、それは半分冗談として、そのおっかなそうだっていうイメージは、杉野さんのべらんめえ調の……べらんめえって江戸弁にいう言葉だから正確には違うんですけど、ラ行が巻き舌になってしまう杉野さんのしゃがれた歌声によるところが大きいと思うんですよ。
杉野泰誠(Vo&G):ああ~。
――コワモテかどうかはさておき、そんな杉野さんの歌声のインパクトがまず、かなり大きいんじゃないかな、と。
杉野:おっかなさという意味でですか?
――いやいや、迫力があるっていう。
杉野:ああ、迫力ですね。
――杉野さんの歌声とたたみかけるような性急な演奏が一つになった時の衝撃ってかなり大きいと思うんですけど、それが自分達の強みだという自信は、みなさん、もちろんあるわけですよね?
杉野:ありますね。
谷口宗夢(Dr):唯一無二だと思います。ロックンロールって言ってやっているんですけど、よくあるロックンロールとはちょっと違いますよね。
――どのへんが違うと?
谷口:まぁ、声がしゃがれている人達は他にもいますけど、演奏と声の混じり方ですかね。いかつい曲も演奏もあるんですけど。
――それだけじゃない、と。他のバンドと比べるわけじゃないんですけど、最近多い、良く言えばセンシティブ、悪く言えば、ぬるいというか、甘っちょろいというか、そういうバンドが多いからclimbgrowの存在ってかなり際立つと思うんですけど、『EL-DORADO』に収録されている「風夜更け」からは今の音楽シーンに対する思いが窺えますね。
谷口:ライブをやっていると、対バンにダサいバンドがいるんですよ。“よくそんなレベルでヘラヘラしていられるな”みたいなバンドがけっこう多い。同じバンドマンとして恥だと思うんで、「風夜更け」を書きました。
――そんなレベルって、演奏の?
杉野:演奏もあるし、もちろん気持ちの部分もあるし。そういうところでウロチョロしていて楽しいのか?って。
――たとえば、どんな気持ちでやっているバンドを見るとヘラヘラしていると感じるんですか?
杉野:いろいろな種類がありますけどね(笑)。たとえば、“ほんまはもっと伝えたいことがあるのに”みたいなことをMCで言うバンドがいるんですよ。そんなのアホちゃうかな。そんなもん与えられた時間でやれ、と(笑)。それができひんのに“俺らもっとかっこいいから”みたいなことを言うなよって。
谷口:アレですね。
杉野:アレとか、アレとか、ダサい(笑)。今、ぱっと浮かんだのがそれで、もっと他にもあるんですけど。
――じゃあ、バンドマンの友達があまりいないんじゃないですか?(笑)
杉野:いないです、いないです。
谷口:もう、そういうバンドだってバレてる(笑)。
杉野:でも、俺らが仲いいバンドはちゃんとリスペクトできるというか、ちゃんとしているというか、かっこいいと思えば、ちゃんと自分達のツアーに誘うんですよ。
谷口:それはジャンルに関係なく。
――そういう反骨精神というか、ロックバンドをやっているなら持っていて当たり前の感覚って、このバンドを始めた時から持っていたんですか?
杉野:どうなんですかね。ほんまに(バンドを)組み立ての頃は歌詞がなくて。ララララみたいなのをただただ歌ってたんで。
近藤:最初は楽しくやってたんだよね。
杉野:そう、最初は楽しくね。いや、今も楽しくやっていますけどね。最初はバンドしているだけで楽しいやって感じだけでやっていましたね。
climbgrow 撮影=北岡一浩
――climbgrowはどんなふうに始まったんですか?
杉野:近藤と田中と僕が中学校が一緒なんですよ。その3人で組んで、高校はバラバラになって、4人共別の高校なんですけど、谷口と高校生の時知りあって入ってきたんですよ、俺が誘って。で、今に至りますね。
田中仁太(B):短かっ(笑)。
――3人は同じようなバンドや音楽が好きだったんですか?
田中:音楽が好きだっただけじゃない? 周りがみんな部活を一生懸命やっている中で、音楽の話ができる仲やったっていうだけだと思います。
杉野:そこから(バンドを)やろうかって始まりました。
――いきなりオリジナルを作ったんですか?
杉野:作ってたよな。
近藤:コピーしたことないな。
杉野:いや、したことはあるけど。
谷口:(climbgrowに)入る前にライブを見たことがあるんですけど、やってましたね、コピー。
田中:ウソやんけ、おまえ。
近藤:えぇ、何やったけ?
谷口:でも、その時、オリジナルも歌詞なかったけど、やってましたね。
――何のコピーをやっていたんですか?
谷口:レッチリ。
杉野:やってたっけ?
谷口:レッチリ、なんか知らんけど、高校でみんな聴くんですよ。でも、レッチリぐらいかな覚えてるの。
近藤:そうやったかな。
谷口:レッチリでええやん。
杉野:ええねんけど、誰も聴かへんような渋いかっこいいやつ言っといたほうがいいんじゃない?
谷口:ええやん(笑)。
――バンドを組んだとき、どんなバンドをやりたいとか、こんな音楽をやりたいとかってあったんですか?
近藤:最初はできることをやってたと思うんですよ。
谷口:初めて出したCDにも歌詞がない曲が1曲入ってましたしね。それ、僕がライブを見た時にやっていた曲で、最近までずっとやっていました。
――普通、歌詞を書いてからライブでやりませんか?
近藤:何回か(歌詞を)つけようとはしていたんですけど……。
杉野:それやったら最初から作るわ、みたいな。鼻歌でしか歌えへんメロディーができてしまったんで、それはもう作ったまま残しておこうと思って、レコーディングでも録ったんですけど。
谷口:歌詞もやばかったよな。最初、書き始めたとき。
――やばかったっていうのは?
谷口:怖かった(笑)。
杉野:怖かったかな? ダサかった覚えはあんねんけど。
近藤:ダサかった覚えはある。路地裏の蠅が6時間動かへんとか。
谷口:“なんで動かへんねん!”って(笑)。
杉野:自分で突っ込んだ。動いたらいいのにって。
近藤:ドグラマグラ的な(笑)。
――『EL-DORADO』を聴いて、日本語の歌詞にこだわっているバンドという印象を受けましたが、最初はそうではなかったんですね。
杉野:蠅が6時間動かない歌詞を作るぐらいだから、むしろ苦手だったかもしれないです。あんま覚えてないですけど、続けてたらこんなんなってましたね。元々、血の気が多いというか。
近藤:バンドを始めて、そういういろいろな、むかつくこともあって。
杉野:むかついたことがすべて(歌詞の題材になっているわけ)ではないけど、いろいろあったんですよ。
――元々、血の気が多いんですか?(笑)
杉野:多いんですよ。“なんやねん、おらぁ!”みたいな。今は全然マシになりましたけど。
――本当におっかない人なんだ。
杉野:いや、そんなことないですよ。腹立つ奴、限定です。いるじゃないですか、“あ、こいつ腹立つな”って奴というか、そういう人。
田中:中学の時は力で、な?(笑)
近藤:中学の入学式でな(笑)。
杉野:あんまそれは話したくない。それは封印しよう。
――以前の作品を聴いてみるとわかるんですけど、しゃがれ声を前面に押し出して、性急な演奏だけをやってきたバンドではないですよね。それは今回の「極彩色の夜へ」にも表れていると思うんですけど、逆に言うと、今回の作品では、しゃがれ声のインパクトや性急な演奏を意識的に際立たせているんですか?
杉野:前のアルバムから2年経っているんで。
谷口:レコーディング期間中でさえも変わっていましたからね。
杉野:何て言うんだっけ? そういうの。
近藤:声変わり?
杉野:ちゃうちゃう。遅すぎ! レコーディングの前のあれ、ばんばん録るやつ。
近藤:プリプロ!
杉野:そう。プリプロであったやろ? こうしたほうがええんちゃうかみたいなの。
谷口:そりゃプリプロやからな。
杉野:それもあってこうなりました。
近藤:こっちのほうがかっこええなっていう。
田中:時間があったから方向性をじっくり考えられたっていうのはありますね。
谷口:3か月ぐらいあったからな。
マネージャー:ちょっと補足してもいいですか? 今回のレコーディング、6か月使ったんですよ。
谷口:6か月? めっちゃやっとるな。
マネージャー:昨年の9月から“録れるまでやってくれ”って、地元のスタジオを一軒借りて、合宿を張ってやったんです。その中でプリプロもたっぷりやる時間もあってという中で、杉野が歌って、一番歌いやすいところを模索したらひずんだという。全く無理せずに自分を表現した形が今回のアルバムになっているってことなんです。
――自分の声が歌声として力があると思うようになったのはいつ頃からだったんですか?
杉野:いつ頃からなんですかね。バンドを始めた時から他人よりはあるやろと思ってましたけどね。
谷口:人の2倍よりも肺がでかいらしいです。
――肺活量が?
杉野:肺活量っていうか、肺がでかいんですよ(笑)。
――じゃあ、バンドを組んだ時も迷わずボーカルを希望したんですね。
杉野:そうですね、歌いたかったし。
――好きなボーカリストは?
杉野:チバユウスケさんは聴いてましたね。あとはエレファントカシマシの宮本(浩次)さんですね。
――いかがですか? 今回の作品、どんな手応えがありますか。
杉野:最高じゃないですか。
田中:かっこいいです。
――それはもちろんですけど、どんなところがかっこいいですか?
杉野:自分でもまだ、のびしろがあると思っていて、それでも最高にかっこいいっていうその状況がかっこいいですね。
――それは、ちょっと名言かも。
全員:(爆笑)。
climbgrow 撮影=北岡一浩
――歌声の話ばかり聞いてしまいましたけど、バンドの演奏もいわゆるロックンロールとはちょっと違うように感じられて、そこもこのバンドのおもしろさだと思いました。特に近藤さんのギタープレイを聴いていると、ポストハードコアとかポストロックとかを聴いてきたギタリストなんじゃないかって思えるのですが。
近藤:そうですね。NUMBER GIRLをはじめ、その辺のちょっと音使いが変わっているバンドは。
――単音弾きのフレーズが多いじゃないですか。中でも「KLAXON」は、そういうポストロックっぽいフレーズがうまく生かされていますね。
近藤:あれはうまいこと混ぜられたなって思います。ロックとポストロック……とはまでは行かないんですけど、泥臭いロックじゃない。でも、歌はゴリゴリでっていう。サビなんて叫んでいるんで、新しいというか、あんまりないと思います。
田中:その「KLAXON」のベースは、ずっとルートを弾いているという単純なことをやっているんですけど、右手のピッキングの強弱にめっちゃこだわって、ドラムといいグルーヴを出しているんです。単純なんですけど、単純に聴こえないように弾けているのかなと思います。
谷口:そういう意味では、今回、ドラムもシンプルなフレーズをつけているんですよ。前のミニアルバムはちょっとトリッキーだったんですけど、今回はどっしりとしたグルーヴを出したかった。特に「mold Hi」って曲はどっしり感を意識しました。
――歌がラップ風になる「風夜更け」や途中、語りになる「極彩色の夜へ」からはメロディーに収まりきらないほど、杉野さんの中に言葉が溢れている感じが伝わってきて、そういうところもclimbgrowの魅力ではないか、と。
杉野:最初からやっていたわけないんですけど、エレファントカシマシの「ガストロンジャー」という曲を聴いて、むちゃくちゃかっこいいやん、俺もやろうって思ったんです。俺なりの「ガストロンジャー」じゃないですけど、ぶわぁって喋るみたいなのがかっこいいと思って、そういう曲を作ったんですよ。
――それがはまったから、徐々にそういう曲が増えていった、と?
杉野:そうですね。セリフは入れてみたいっていうのは前からあったんで、入れたりしていたんですよ。今ではもう自然な流れになっていますね。
――「ラスガノ」「mold Hi」という言葉は初めて聞きましたが、造語なんですか?
杉野:造語ですね。「mold Hi」は造語じゃないか?
近藤:そのつなげかたはないから。
杉野:じゃあ、造語です(笑)。「ラスガノ」はスペイン語にrasgunoって爪痕とか屈強とかって意味の言葉があるんですけど、読みにくいから、そのままローマ字読みして、「ラスガノ」って。造語っちゃ造語ですよね。
近藤:「mold Hi」はあれだよな、カビの……。
杉野:「カビ」っていう曲を作りたくて、“何かある?”って聞いたら、“ナントカハイってどう?”って宗夢が言ってきたんで、「mold Hi」にしたんですよ。汚いものと言うか……。
近藤:お酒じゃないんだ。
杉野:お酒のイメージなんやけど。
近藤:レモンハイ的な。
杉野:そうそう、カビを混ぜたお酒みたいな。この世で一番嫌いなものっていう意味です。
――『EL-DORADO』といい、「ラスガノ」の元になったrasgunoといい、スペイン語が好きなんですか?
杉野:かっこいいから。好きなんですかね。一番、自分にしっくり来てしまうっていうんはありますね。
――“風よ吹け”と掛けた「風夜更け」もそうですけど、そういう言葉遊びが真摯な歌詞に入り混じるところもおもしろい。
杉野:理由はないんですけど、性格なんですかね。
――歌詞を書きながら、そういう言葉遊びを聴き手に楽しんでもらおうという気持ちはあまりない?
杉野:ないですね。
近藤:それよりも、ひねくれている感じやな。
――すごくいいなと思ったフレーズがあって、「極彩色の夜へ」の終盤に<中指に込めた愛を歌ってるよ>ってあるじゃないですか。そこに杉野さんの人柄が滲み出ているんじゃないですか? 突っ張ってみせているけど……。
杉野:いや、恥ずかしい恥ずかしい。
――実は愛を歌っているという。
近藤:ツンデレやな。
谷口:実は僕もそこ好きなんですよ。その曲、ライブの後半にやることが多いんですけど、いつも、ええなぁって思いながら叩いています。
田中:僕は「ラスガノ」の歌詞が好きです。後半のどんどん迫ってくる感じは泰誠にしか出せない勢いがあって、めっちゃかっこいいと思います。
近藤:言葉の響きとしてかっこいいものが多いんですよ。
――『EL-DORADO』 をきっかけに、これまでよりも多くの聴いてもらえるようになると思うんですけど、最後に、これからの目標を教えてください。
杉野:バイトやめたいですね、全力で(笑)。もちろん、そこがゴールなんかじゃ全然ないし、どこで(ライブを)やりたいっていうのはあるんですけど、別に目標なんかにせんと、ずっと音楽をやって、飯食いたいです。ずっとやっときたいですね、バンド。
谷口:目標を作ったらそれまでなんで。
杉野:あくまでもclimbgrowなんで、目標を決めちゃったらバンド名の由来がおかしくなる。一生ずっと成り上がっときたいです。
近藤:今回は、いいアルバムを作るのがとりあえず目標だったんですけど、それができたんで、あとはもう“はい”って。
杉野:聴いてもらったらわかんねんけどなぁ。あとはライブでぶちかますだけです。
取材・文=山口智男 撮影=北岡一浩
climbgrow『EL-DORADO』
NRSM-1002 \1,800+税 / 流通:JMS
M1.ラスガノ
M2.mold Hi
M3.風夜更け
M4.KLAXON
M5.The Ebb and Flow
M6.極彩色の夜へ
タワーレコード初回購入者特典:オリジナルラバーバンド
2017年8月11日(金)@滋賀 B-flat
w/未定
2017年8月12日(土)@香川 DIME
w/LONE/ユビキタス/TELESTELLA/LINE wanna be Anchors/and more
2017年8月14日(月)@大分 club SPOT
w/SIX LOUNGE/Sentimental boys/突然少年/PJJ/BAN’SEN COUNTER
2017年8月15日(火)@福岡 Queblick
w/SIX LOUNGE/Sentimental boys/突然少年 PJJ/BAN’SEN COUNTER
2017年8月16日(水)@広島 CAVE-BE
w/Dwarf/SIXLOUNGE/AuRoRa
2017年8月24日(木)@大阪 MUSE
w/ソロモン-solomon-/さよならポエジー/アイビーカラー
2017年8月28日(月)@神戸 太陽と虎
w/Shout it Out/ and more
2017年9月6日(水)@名古屋 APOLLO BASE
w/スロウハイツと太陽/and more
2017年9月7日(木)@金沢 vanvan V4
w/未定
2017年9月8日(金)@長野 JUNK BOX
w/未定
2017年9月10日(日)@新潟 EARTH
w/未定
2017年9月12日(火)@仙台 enn 2nd
w/ Good-Bye Shimmer /and more
2017年9月13日(水)@静岡 UMBER
w/WOMCADOLE/ and more
2017年10月15日(日) @下北沢ReG ※東京セミファイナルツーマンライブ
w/Special guest(後日発表)
2017年10月29日(日) @心斎橋BRONZE ※大阪セミファイナルスリーマンライブ
w/Shout it out/Rocket of the Bulldogs
2017年11月23日(木・祝) @滋賀B-flat ※ツアーファイナルワンマンライブ