PIERROT×DIR EN GREY 『ANDROGYNOS』がもたらした“丘戦争”と歴史的融和

レポート
音楽
2017.7.28
ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

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ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ
ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

2017年1月1日。年明け早々に飛び込んできたニュースは、90年代後期からのヴィジュアルシーンを知る者すべてに驚天動地の衝撃を与えた。PIERROTDIR EN GREYによる禁断のビッグプロジェクト“ANDROGYNOS”始動――。受信したメールの文面を見たとき、何を隠そう筆者も手の震えが止まらなかったほどだ。

2006年4月に突然解散し、2014年に2日間限りの再結成ライブを行なったPIERROTと、現在に至るまで国内外で活躍を続けるDIR EN GREY。共に90年代後半のヴィジュアルシーンで一大勢力を築き上げ、二大巨頭と並び称された彼らの関係性で特徴的だったのは、なんと言ってもファンの対立構図である。己が選んだバンドへの忠誠心が現在よりも遙かに厚かった時代、その覇権を脅かすライバルへの敵視は凄まじいもので、東京・原宿の神宮橋では休日のたびに双方のファンがコスプレ姿で集い、それぞれのテリトリーに居座って互いを牽制し合っていた。当時学生だったファンの中には、クラスメイトと学校の中でさえ火花を散らした者も少なくないだろう。PIERROTキリトDIR EN GREYの京という共にズバ抜けたカリスマ性を誇るフロントマンの下、宗教に例えられるほど熱狂的な世界観とライブを繰り広げていた2バンドだけに、ファン同士は己の属するバンドの信者として敵愾心を剥き出しにしていた。当然バンド同士もPIERROTが98年に、DIR EN GREYが99年にメジャーデビューしてからは一度も同じステージに立つことなく、2006年のPIERROT解散まで接点のないまま。あれほどまでに相容れることのできなかったライバル関係は、音楽シーン広しと言えども、後にも先にも見たことがない。

そんな2バンドが横浜アリーナで初のジョイントライブ2daysを行なうというのだから、どれだけの大事件であるかは推して知るべし。おまけにライブタイトルを見れば、初日の7月7日が『ANDROGYNOS-a view of the Megiddo-』、2日目の7月8日は『ANDROGYNOS-a view of the Acro-』というのだから振るっている。これはPIERROTの曲に「メギドの丘」が、DIR EN GREYの曲に「アクロの丘」が存在することからのネーミングで、ヴィジュアル系界隈では何故か“丘”を舞台にした楽曲が多いことからも、“メギド”と“アクロ”は彼ら2バンドを表す一つの記号となっていた。それを堂々とタイトルに冠したこと自体がファンにとっては驚きであり、その後、このプロジェクトが“丘戦争”と呼ばれるようになった所以である。そしてタイトルから初日はPIERROTが、2日目はDIR EN GREYがフィーチャーされることは明らかであり、迎えた7月7日は横浜アリーナのスタンド席を、これが3年ぶりのライブとなるPIERROTのファン、通称“ピエラー”が埋め尽くすこととなった。解散から10年以上が経ち、加えて後期はホールライブが主だったPIERROTのファンは座席ありのスタンドに。対してライブハウスをメインに現役で活動するDIR EN GREYのファンである“虜”はアリーナスタンディングにと、その座席選択の傾向にも差異が表れていたのは“交わる事の無かった2バンド 交わる事の無かった2つの物体 ここに破壊的融合”というプロジェクトのキャッチフレーズが紛れもない真実であることの表れだったろう。

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

そうして現れた先攻・DIR EN GREYは、未だかつてない状況でこれまでになく気迫漲るステージを見せてくれた。モニターに“Until The Quiet Comes”の文字、そして凄惨な物語を描写したMVをバックに最新アルバム『ARCHE』収録の「Revelation of mankind」から始まったライブは、対バンへの媚びなど微塵もなく、頭から終わりまで己を貫いたもの。ピエラーの受けを考えるならば、真っ先に披露すべきであろう初期楽曲も皆無だ。もちろん「FILTH」や「CHILD PREY」等、PIERROT解散前に発表されたシングル曲では客席の盛り上がりがグッと増したりもしたが、ここ数年過去のアルバムそれぞれをフィーチャーした『mode of』ツアーを行なっている彼らの流れから考えると、それも特別に今日の客層を意識しての選曲というわけでもあるまい。むしろ“世の中の矛盾や人のエゴから発生するあらゆる痛みを世に伝える”というバンドコンセプトを、近年になってよりダイレクトに映し出すようになった楽曲は、より世界観を研ぎ澄ます映像効果と相まって時に痛々しさの臨界点を超え、呆然と立ち尽くすオーディエンスが数多く見られたのが正直なところだ。しかし、それこそが彼らの闘志に火をつけたのだろう。海外のフェスにも積極的に参加し、世界規模で確固たる地位を築き上げてきた彼らは、今や、どんなラインナップの対バンであろうと熱い歓迎を受けるのが常。つまり、不倶戴天のライバルであるPIERROTに鉄壁の崇拝を捧げるピエラーを前にしたライブは、そんな彼らが唯一“アウェイ”を感じられる場なのである。

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

「THE FINAL」でマイクを胸に打ちつけ、「もっと!」とオーディエンスの歌声を求める京の姿、そして血反吐を吐くかのように振り絞られるボーカルには、求めずとも自然に熱狂が湧き上がる普段のライブとは異なる切迫感と同時に、強力な敵と再び相まみえた歓びを感じ取ることができた。さらに終盤には「ピエラーの皆さん……こんにちは。DIR EN GREYです、よろしく」というMCまで! 煽り以外の言葉は滅多に発しないと言われる京が、こんな挨拶をすることがどれだけの衝撃であるかは、その夜のツイッターで検索欄に“京”と入力すると、予測候補で“喋った”と出てきたことからも明らかだろう。事実、その瞬間の場内は種族の壁を超えて大きくどよめき、「ラスト! かかってこい!」と続いた「激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇」では虜たちによる割れんばかりの大合唱が。そんな愛すべき信奉者たちに高々と左手を掲げた京は拍手を贈り、Toshiyaは名残惜しそうに最後までステージに残って、笑顔でピックを投げる。長野出身の彼は長野で結成されたPIERROTのローディーをしていた時期もあり、以前、雑誌のインタビューで「PIERROTと対バンしてみたい」と語っていたほど。当時は誰もが全くの夢物語としか思っていなかったステージが実現したことに一番喜んでいたのは、もしかしたら彼だったかもしれない。

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

後攻はもちろん、メギドの丘の主であるPIERROT。3年ぶりのライブということで場内の期待が極限まで膨れ上がるが、そこは、さすが予想のつかないアイディアを次々に繰り出してきた彼らである。髪を真っ赤に染めて軍帽を被り、杖を振りかざして登場したキリトが両手を頭の上で合わせたところで始まったのは、なんと「MASS GAME」。大きく腕を振るキリトのシルエットがスクリーンに映し出されると、ピエラーたちは“頭からコレか!?”と動揺しつつも、彼に従って何やら儀式のような摩訶不思議なモーションで両腕を動かしてゆく。PIERROTのライブといえば軍隊のように一糸乱れぬオーディエンスの動きが見どころであり、フリのついたライブ定番曲も数多く存在するが、2ndアルバム『PRIVATE ENEMY』収録の本作はピエラー以外には決して認知度の高くないマニアックなナンバーで、フリもかなり独特で難易度が高い。つまり、これは年月を経てなお即座に反応できるのか?というキリトからピエラーへの挑戦状であると同時に、虜に対してはPIERROTというバンドの奇天烈な在り方を実証する格好のオープニングナンバーとなったのである。また、Bメロでキリトの歌声に重なる潤の存在感あるコーラスに“PIERROTの帰還”を実感し、胸熱くした者も少なくあるまい。この二人のハーモニーは紛れもなく、PIERROTPIERROTたらしめる大きな要素の一つであったのだから。そして裏切りの後には、トコトン期待に応えるヒットパレードが待っていた。

まずは彼らのライブには欠かせない絶対的ライブチューン「Adolf」が始まると、正真正銘場内の全員がお馴染みの手首に拳を打ち付けるフリを一斉に繰り出し、壮観としか言いようのない光景をモニターに大映しにしてゆく。それに対し拍手を贈るキリトは、まさしく独裁者のオーラ芬々。“ピエラー”という単語を発してくれた京への返礼か、序盤から「戦いの準備はできてるか! ピエラーちゃん、狂ってますか!? そして虜ちゃん、狂ってますか!? お前ら一般社会から見れば同じキ×ガイ同士なんだから、狂っちまおうぜ!」とお馴染みのNGワードを交えたMCでもトバしてゆく。さらに「ここにいる一人残らず頭取っちまえ!」とヘドバンの嵐を巻き起こす「*自主規制」、キリトがマイクスタンドをベコベコになるまで床に打ちつける「CREATURE」と、かつて彼らのライブで目撃していた懐かしの場面が次々と現れて、ピエラーたちは狂喜乱舞。そして毎回ライブを締めくくってきた「蜘蛛の意図」では、「ブッ壊しちまえ! 頭振れ!」と号令をかけたキリトがヘドバンに入る瞬間、フッと微笑んだのが印象的だった。3年間待ち続けたピエラーの飢えを満たすように、彼らが欲しいものを欲しいままに提供した独裁者の、それは一つの優しさの表れだったようにも思えてならない。

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ

「もはやこれは戦争ではありません。君たちは一つに溶けてしまったから。メギドとかアクロとかなんですか? 意味がわからない! 最初はみんな一つだったんです。またラスト、一つになりませんか? 一つのキ×ガイに戻りませんか!?」

アンコールで発せられたキリトのMCは、いくら強い一体感を感じさせる人気曲「HUMAN GATE」に先立っての言葉とはいえ、それまで散々“丘戦争”の名の下、この場所を20年越しの雌雄を決する戦地として考えてきたオーディエンスにとっては大きな衝撃であった。しかし、後から振り返ればこのMCこそが“ANDROGYNOS”における大きなターニングポイントであり、最大の核心だったのである。翌7月8日、今度は先攻となったPIERROTのステージで、トレードマークであった十字メイクを左目に施したキリトは、ライブ終盤でこう煽り立てた。

「戦ってますか? 戦ってませんか? そう! どっちでもいい。大事なのは楽しむことです。ただ、それは世間一般の“楽しむ”とは違うから。君たちは世間一般から見たらちょっとおかしいキチ×イなんだから。キ×ガイと×チガイがいがみ合ってどうするの? 一つになっちゃえばいいじゃない、愛し合っちゃえばいいじゃない、溶けちゃえばいいじゃない!」

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

初日同様にオーディエンスの期待通りのセットリストを、特徴的なフリを盛り込んだイビツなナンバーから和の情緒豊かな歌モノ、一体感満点の定番曲とバランスよく、惜しみなく披露した2日目で驚いたのは、前日に比べてバンドとしてのパフォーマンスであったり、演奏のアンサンブルが飛躍的に向上していたこと。3年ぶりに共に立つステージということで、初日は互いにどこか探り探りだったメンバー間のコンタクトも、たった1日で十余年の時を巻き戻して自然なものに。いわば“PIERROT勘”とでも呼ぶべきものを取り戻し、まるで空白の時間など存在しなかったかのような息の合ったステージングを見せてくれたのだ。特に「PSYCHEDELIC LOVER」ではフロント陣がステージを走り回って、代わる代わるに絡んでは、KOHTAと潤が心底楽しそうに笑い合い、キリトがアイジと肩を組む姿に感涙を誘われる。必然的にヒートアップの度合いを増し、“あの丘”での再会を誓う「クリア・スカイ」で一斉に大きく手を振る客席をジッと見つめるキリトの瞳には、温かな光が灯っていた。

PIERROTとしては昨日、今日と最高でした。今日この後、またスッゲーのあるから、あとは勝手に暴れてください。それではPIERROTでした! ありがとう!」

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

ラストはやはり「蜘蛛の意図」で壮絶なヘッドバンギングの海を創り出し、そうライバルへのリスペクトを示しつつ、解散前と全く変わらぬ挨拶でサラリと締めくくってくれたのも、ピエラーにとっては何よりの喜びであった。この後のPIERROTとしての活動は何一つアナウンスされておらず、現実的に考えれば今日がPIERROT最後のステージになる可能性も否めない。しかし、キリトのまるで普段と変わらない口ぶりは、“また、いつか逢える”ことを確かに実感させてくれた。その日まで彼らも我々も、2年前の再結成ライブでキリトが告げた言葉を借りるならば、“今を生きる”しかないのである。

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

そして2日目間に及ぶ一大プロジェクトの大トリを飾ったDIR EN GREYも、予想を裏切り期待に応えるステージで、こちらは“現在進行形”の強みを見せつけてくれた。荒野を逃れる男女が遂に銃弾に倒れるという絶望に塗れた=彼ららしいオープニング映像に続いて、本日も「Un deux」という最新アルバム『ARCHE』収録曲で幕を開けるが、最初から熱い合唱が湧き上がったのが初日とは違うところ。アクロの名を冠したライブタイトルに、土曜日という好条件も重なって、どうやら今宵は虜族の支配力が勝っているようだ。それでも客席に「もっと!」と京がさらなる歌声を求める「Behind a vacant image」等、初日とは微妙に曲を入れ替えながらも、やはり主眼は今の痛みに満ちたDIR EN GREYで魅せること。「朔-saku-」から「Revelation of mankind」では、一繋がりの残酷なドラマを描いているMVを続けざまに映し出して、前日にピエラーに与えていた謎を解き明かすのもニクい。だからこそ中盤でDieのアコギが「アクロの丘」のイントロを鳴らした瞬間、予想外のサプライズにどよめきと歓声と拍手が湧いたのだ。1999年のメジャーデビュー三部作の一つであり、本日の公演名の由来であり、昨今のライブでは聴く機会の少なくなってしまった叙情味あふれる歌モノは、陣営を問わず人々の懐かしさを大きくかき立てる。だが、純真な瞳で歌い上げる京の伸びやかなボーカルといい、深みとまろやかさを増したサウンドといい、記憶している音像からの飛躍的な進歩に驚いた人々も多かったに違いない。

デビューから20年弱、たゆまぬ歩みを続けてきた彼らの深化は予想よりもずっと大きく、ゆえに、その事実を刻み込んだ直後に雪崩れ込んだ「VINUSHKA」の圧倒的虚無感ときたら! どこかオリエンタルなムードを漂わせつつ、テンポも曲調も声音も地底のヘヴィネスから至極のアグレッション、至高の幻想まで目まぐるしく変化する9分超の大作で京が「此処が真実だ!」と叫べば、怒涛のような歓声が会場を震わせる。そしてファルセットで身をくねらせる彼の背後に大きく映し出されるのは、広島の街へと落下するリトルボーイ――。第二次世界大戦中のあまりに惨い情景をふんだんに取り入れた映像をバックに、歌うのではなく腸の奥底から怒りと悲しみと絶望を吐き出して、最後は祈りにも似た声を捧げる京は、まるで死の大天使のように美しかった。目を背けたくなるような映像を、耳を塞ぎたくなるような音を一切の容赦なくブチまける姿に、おそらく拒否反応を示したオーディエンスも少なくはなかっただろう。だが、これこそがDIR EN GREYであるのだと、己の真髄を最も濃縮した形で、愛すべき敵陣営に彼らは贈ってくれたのである。

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

DIR EN GREY / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ

「ピエラーさん、元気ですか? DIR EN GREYです。ピエラーさんたち……と、くそったれ共……愛すべきくそったれ共。一つ言いたいんやけど……丘戦争って何? ちょっと僕にはわかんないんですけど、そんなんじゃねぇよな。お前ら一つになれんだろ? かかってこい! 俺らと一つになれるか!? ラスト!」

初日以上に長尺の、そして虜への愛の籠もった京のMCに続いたのは、なんと「残」。初期の彼らには欠かせなかった煽り曲だが、驚くべきはイントロから銀吹雪が舞ったことである。初日PIERROTの「HUMAN GATE」で飛んだ銀テープとバランスを取ったのかもしれないが、あちらが銀テープ定番曲なのに対してDIR EN GREY自体にそのような晴れやかな特効が似合う曲は皆無。まして終始デスボイスが轟く「残」でステージ上空から振り続ける煌めきに、こんなに極悪な銀吹雪は見たことがないと呆気にとられたのは筆者だけではないだろう。

さらにもう一つ、振り返ってみると画期的だったのが、二つのバンドが奇しくも同じ内容のMCをしたことである。戦いなど存在しない、ただ一つになればいい――言葉は違えど、要約すればこういうことだろう。事実、二人のカリスマの訴えに応え、暴れ切って一つに融け合った客席に対して京は笑顔で拍手を贈り、一体となった熱を分かち合うように胸を叩くと、大きく水を噴き上げた。20年以上の長きにわたり、ずっと敵だと思っていたもの――それは双子のように元は同じ遺伝子を分かち合った同胞で、実は誰よりも分かり合える存在だったのである。“両性具有”を意味する“ANDROGYNOS”の名を持った2日間が導き出した答えは、ベルリンの壁が崩壊したかのような衝撃であり、シーンにとっては重大な歴史的融和であった。

先導者であるキリトが見渡す限りの人々を支配下に置き、身も心も一つの生き物にせしめるPIERROT。シャーマンたる京が発する音と言葉と動きが神託のように人々に降り注ぎ、その身と心を解放するDIR EN GREY。一つの核から分化した二つの性ならぬ“生”が共存する“ANDROGYNOS”の再来を、この2日間を目撃した人間すべてが心待ちにしているはずだ。


取材・文=清水素子

 

セットリスト
ANDROGYNOS - a view of the Megiddo - 2017.7.7(FRI) 横浜アリーナ
■DIR EN GREY
M-1 Revelation of mankind
M-2 audience KILLER LOOP
M-3 FILTH
M-4 空谷の跫音
M-5 OBSCURE
M-6 Chain repulsion
M-7 輪郭
M-8 INCONVENIENT IDEAL
M-9 Sustain the untruth
M-10 THE FINAL
M-11 AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS
M-12 CHILD PREY
M-13 Un deux
M-14 詩踏み
M-15 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇
 

■PIERROT
M-1 MASS GAME
M-2 Adolf
M-3 ENEMY
M-4 AGITATOR
M-5 脳内モルヒネ
M-6 ドラキュラ
M-7 THE LAST CRY IN HADES(NOT GUILTY)
M-8 HELLO
M-9 新月
M-10 REBIRTH DAY
M-11 *自主規制
M-12 CREATURE
M-13 MAD SKY-鋼鉄の救世主-
M-14 蜘蛛の意図
<ENCORE>
M-15  HUMAN GATE

PIERROT / ANDROGYNOS - a view of the Acro - 2017.7.8(SAT) 横浜アリーナ
■PIERROT
M-1 MAD SKY-鋼鉄の救世主-
M-2 Adolf
M-3 ENEMY
M-4 *自主規制
M-5 脳内モルヒネ
M-6 MAGNET HOLIC
M-7 パウダースノウ
M-8 鬼と桜
M-9 PIECES
M-10 PSYCHEDELIC LOVER
M-11 CREATURE
M-12 クリア・スカイ
M-13 HUMAN GATE
M-14 蜘蛛の意図
 

DIR EN GREY
M-1 Un deux
M-2 OBSCURE
M-3 詩踏み
M-4 濤声
M-5 audience KILLER LOOP
M-6 Behind a vacant image
M-7 アクロの丘
M-8 VINUSHKA
M-9 GRIEF
M-10 朔-saku-
M-11 Revelation of mankind
M-12 Sustain the untruth
M-13 激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇

M-14  THE FINAL
M-15  残

 

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