『デスノートTHE MUSICAL』に台湾の観客が興奮、台中国家歌劇院での公演をレポート

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2017.8.2
『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

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2015年に日本・韓国で上演され、熱狂的なファンを生んだ『デスノート THE MUSICAL』の台湾公演が7月21日〜23日まで台中国家歌劇院で行われた。

映画・ドラマ・アニメ化され、世界中にファンを持つ日本のコミックを原作に、ブロードウェイで活躍するフランク・ワイルドホーンが音楽を、日本の演劇界を牽引する栗山民也が演出を手掛けた本作。その初演は衝撃的だった。スタイリッシュかつ人間の本質をあぶり出す演出、パワフルでキャッチーな楽曲、エネルギー全開の俳優陣の力によって、やがて物語が日本の“今”と物語が重なって見えてくるヒリヒリ感……それはまさしく新たな演劇でありミュージカルの誕生だった。その公演を観た台湾スタッフの熱望により実現した招聘公演は、あらゆる意味で“アツ”かった!

“デスミュ”に染まった台中国家歌劇院

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

台北から新幹線で約1時間弱の距離にある台中は、“台湾の人が住みたい町No.1”と言われる台湾第三の都市だ。近年は文化施設の建設が進み、台中国家歌劇院はその代表格。2016年9月にオープンした同劇場にとって『デスノート』は初の世界的ミュージカルであり、ユニークな劇場の建物の外にも中にも横断幕やポスターが飾られ、巨大スクリーンにキャストのインタビューが映し出されているなど“デスミュ”一色。

キャストの等身大の看板の前で記念撮影する人々は後を絶たず、開場前から劇場入り口には長蛇の列ができあがっていた。日本から駆けつけたファンもいるが、大半は台湾の若い世代であることにまず驚かされた。開場するやいなやダッシュで劇場に入る人たち。目的はグッズで、パンフレットやTシャツなどが飛ぶように売れていく。

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

いよいよ開演。オープニングナンバー「正義はどこに」から、誰もが漫画から抜け出した世界観に静かに興奮しているよう。夜神月の前に死神リュークが初めて姿を現し、その異形にライトがのけぞるシーンなど意外なほどよく笑い、シリアスな場面では息を呑んでいるのがわかる。字幕上演でこれはすごいこと。セリフ・演出・音楽に、笑いも含めて観る者のさまざま感情をかき立てるポイントが詰まっているのだと、作品のクオリティーの高さをあらためて実感した。

中でも笑いを巻き起こしていたのは、再演から参加の石井一孝のリュークだ。何といってもビジュアルが完璧で、怖いのにどこか愛らしいキャラクターは観客のわし掴みにした模様。初演からの続投組はいずれも深化を見せてくれた。浦井健治のライトは普通の優等生が堕ちていくように、殺人鬼へと変貌していく様が切ない。Wキャストのライト、柿澤勇人は人並みはずれた頭脳を持つ若者の内なる狂気が、デスノートを拾ったことで露になっていく過程を見せて鮮烈。小池徹平は姿勢から指先ひとつからしてLそのものでありながら、人間味があって観客の共感を誘う。濱田めぐみのレムの深い母性、唯月ふうかの弥海砂が放つ底知れない悲しみに胸打たれ、初参加組の別所哲也の夜神総一郎と高橋果鈴の粧裕、さらにアンサンブルたちがガチンコバトルさながらに熱い演技と歌を展開。初演に比べて全体的にスピード感が増し、物語がより分かりやすくなった印象だ。

登場人物たちの運命が絡み合い、ドライブしていく感覚。そして迎えた衝撃のラストでは「ものすごいものを目撃した」――客席にいる誰もがそう感じているのは、暗転した後の静まり返った場内、堰を切ったようなカーテンコールの熱狂ぶりから伝わってきた。「ヒュー!」「ブラボー!」と歓声の嵐、嵐……まるでロックのライブのようだ。

ちなみにこれほどの反応は台湾では非常に珍しいとのこと。終演後にもグッズ売り場に長い列が出来ていたことからも、観客の満足度の高さがうかがえた。

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

『デスノート THE MUSICAL』台湾公演

まさに『デスノート』は日本が誇るポップカルチャー、コンテンツであり、一流のスタッフ・キャストが原作を愛し作り上げたミュージカルは、ブロードウェイとも違う、オリジナリティに溢れているのだと。それは海外の観客もここまで虜にするのだと証明した台湾公演。事実、4公演ともに約1600席が満員という盛況ぶりだった。8月の大阪、9月の東京の公演と『デスノート THE MUSICAL』のさらなる進化から目が離せない。
 

文=宇田夏笛

公演情報
『デスノート THE MUSICAL』
 
■原作:「DEATH NOTE」(集英社 ジャンプ・コミックス)
■音楽:フランク・ワイルドホーン
■歌詞:ジャック・マーフィー
■脚本:アイヴァン・メンチェル
■翻訳:徐 賀世子
■訳詞:高橋亜子
■演出:栗山民也
■出演:浦井健治・柿澤勇人(Wキャスト)、小池徹平、唯月ふうか、髙橋果鈴、濱田めぐみ、石井一孝、別所哲也 ほか 
 
■日程・会場
【大阪公演】2017年8月19日(土)~8月21日(月) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2017年9月2日(土)~9月24日(日) 新国立劇場 中劇場

 

 

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