【インタビュー】Survive Said The ProphetのフロントマンYoshが放つ説得力に感じた世界照準のホンモノ感を紐解く。

インタビュー
音楽
2017.8.11
Survive Said The Prophet / Yosh

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3rdアルバム『WABI SABI』を2017年8月2日にリリースし、サマソニのMOUNTAIN STAGEへの出演も決まるなど、かなりの注目を集めているバンドSurvive Said The ProphetのフロントマンであるYoshに話を聞くことが出来た。圧倒的な覚悟と、確固たる世界観、そして自らが生み出す音への漲る自信は、確実に大きくなる予兆を感じることができた。嘘偽りのないホンモノの言葉。そんな意志あるインタビューをお届けする。

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──3rdアルバム『WABI SABI』は、日本独自の美的センスをテーマにされたということですが、なぜそういった作品を作ってみようと思ったんですか?

そもそも、音楽を作る前にテーマを決めることが増えてきたんですよ。前作の『FIXED』は、壊れた自分を世の中に曝け出して、“それでも大丈夫なんだよ”っていうその囁きがBGMになっているものだったんですけど。そこから今回どうするかを考えたときに、僕らは英詞であったり、インターナショナルというワードを使ったり、日本の外に出ていくというイメージを、自分たちの夢として、曲やスタイルに出しているところがあって。ただ、間違いなくやっていきたい場所、土台にしたい場所は日本なんですよ。

──そうなんですね。

そのなかで、2020年って、たとえば『AKIRA』には「NEO TOKYO」というものが出てきたりしますけど。あれがどれぐらい実現されるのかはわからないけど、今って“NEO TOKYO”というものに向かっているのは間違いないと思うんですよ。それで、日本に来た人たちに──僕たちが外に出ていく側になったときも含めて、日本の文化をシェアするとなると、それをただそのまま教えても伝わらない。だから、それを今の時代にあっているものとして、音楽を通して、僕らのカルチャーとして改めて見せられたらいいなと思って。

──古くから伝わる日本らしい考え方を現代の感覚で表現しようと。

そこから今の時代の侘び寂びってどういうものなんだろうっていうディスカッションをし始めて。でも、ベースのYudaiも言ってたんですけど、言ってしまえばなんでも侘び寂びになるんですよね。良い意味でも、悪い意味でも。

──そうですよね。人によって解釈が違う言葉でもあるから、イメージは広げやすいものの、それをどう表現すればいいのか難しかったんじゃないかなと思いました。

だからもうとにかく勉強しましたよ(笑)。おもしろかったのは、日本人が思う侘び寂びではなく、外国人が日本人から教えられた侘び寂びについて書いていたものを見たら、日本とはちょっと違う風に説明されていたりして。だから、どういう風にまとめるのか難しかったんですけど、最終的には三法印の「無常」と「空」と「苦」の3つをテーマにして作りました。

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──あと、“侘び寂び”は感情や状態を表しているものでもあるので、それを説明するのも難しいというか。

なんか、昔はこうすればお客さんが来てくれるっていうふんわりしたものがあったけど、今はいろんなツールを使って、こうすればこれぐらいの数字が出るっていうのがわかるようになったと思うんですよ。でも、そういうアルゴリズムとかパターン化できないものってあるじゃないですか。たとえば、人間の感情もそうだし、なぜ今も「神様」というワードがあるのかというと、やっぱりアバウトにしておきたいものって人間の中にはあると思うんです。日本語でいう「なるほどね」っていうワードもそう。プラスにも捉えられるし、マイナスにも捉えられるし。

──含みを持たすことができるっていう。

それに、僕は音楽も“侘び寂び”でいいと思うんですよ。“ロックはこうあるべきだ”と言うと楽しみがなくなってしまう部分もあるし、逆に“ロックはこうあるべきだ”と言って進化していく部分もある。今回のアルバムを通して聴くとわかるんですけど、ジャンルが統一されていないんですよ。「Survive Said The Prophet」というワードで統一されているので、そういう意味では、ロックはこうじゃなきゃいけない、ヒップホップはこうじゃなきゃいけないっていう概念も、侘び寂びに突っ込めばふんわりしてしまうというか。そうやって、“好きなの? 嫌いなの? どうなの?”っていう質問を、優しく聞いている感じなのかもしれないですね。

──それこそパターン化できない人間の感情に訴えかけるものが音楽でもあるわけですし。

そうですね。あと、僕らはあくまでも音を優先にしているので、これがみんなのBGMになってほしいと思っていて。もちろん、あくまでも自分を持っていてほしいけど、その情を動かすものが音楽だと思っているから、そのためにウチらのアルバムに使ってもらえればいいかなって。

Survive Said The Prophet / Yosh

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──『WABI SABI』は、前作同様プロデューサーにクリス・クラメット氏を迎えてアメリカで制作されていますが、そこは前作に手応えがあったから今作も引き続きという感じだったんのでしょうか。

僕らとしては“前作に手応えがあったから”というよりは、“自分達の成長に気づきたかったから”という部分が大きかったです。同じことを2回繰り返すということで、そこで何を間違えて、何を学んだのかが一番ハッキリするんじゃないかなって。まあ、堂々と言ってますけど、それはとある先輩から教えてもらったんですけど(笑)。でも、そうやって2回試してみて学ぶというのは、日本人らしい部分でもあると思うんで。

──実際に成長に気づけた部分というと?

前回は作業をしていくなかで曲が変わったことも多かったけど、今回は持って行った曲がそのままOKになることが多かったんですよ。それは、前作でプロデューサーが求めているもの──彼が手がけた作品は、ビルボードチャートのトップ10に何回も入っているので、こういうことが求められている、こういうものはマストなんだという土台を教えてもらって。それを日本に持ち帰って、曲を自分達でかなりしっかり作り込んだんです。Red Bull Studios Tokyoをお借りして、結構豪華なプリプロをさせてもらって、それを向こうに持って行って、“これ、プリプロだけど、どうする?”みたいな(笑)。

──プレッシャーをかけたと(笑)。

まあ、そこはプレッシャーというよりは、あくまでもエンジニアはアーティストなんで、これに挑んでほしいっていうニュアンスでしたね。お互いで上に押し上げていく感じっていうか。あとは、僕とかギターのIvanはないとしても、他のメンバーは言葉の壁があるんですよね。でも、言葉で説明したりされたりというよりも、言われる前に気づけるようになったと思います。“あ、これが欲しいんだろうな”っていう。そういうコミュニケーション能力があがったと思いますね。

──アルバムの流れに関しても、日本である程度できていたんですか?

僕らはできていると思っていたんですけど、後半でドラムのShowから“今ある曲を2つにわけて、アルバムの最初と最後に入れないか?”っていう案が出たんですよ。そこは『WABI SABI』だから、「WABI」と「SABI」でちょうどいいかなと思っていたら、「無常」と「空」と「苦」をテーマにすることになって、結局、インタールードが必要になってきたんですよ。だから、最初はEPとかミニアルバムぐらいのつもりだったのに、なぜかアルバムになっていたっていう(笑)。

──盛り上がりすぎて、インタールードの「[  ]」を作ったと(笑)。

「[  ]」って普通なら読めないけど、これは空っぽの「空」という意味で。実際に“

”っていう文字のぶんだけスペースを空けてるんです。

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──かなり細かいところまでこだわってますね。ちなみに、曲っていつもどういう流れで作るんですか?

いろんなパターンで作りますけど、結果的にしっくりくるのは、僕が土台を作って、みんなに持っていくやり方ですかね。いつもメロディーを優先してもらっているので、それを残したままギターだけ完全に変えたり、バラードだったら速くしてみたり。これがどういう曲なのかを説明したうえで、そのテーマとメロディーにあわせて全員で一緒にアレンジしていくことが多いです。

──土台って結構作り込みます?

結構作り込んじゃいます(笑)。それがいいときもあるし、悪いときもあるんですけど。僕、Ivanと仲が良すぎてケンカするのが好きなんですよ(笑)。彼は香港の人で、僕はインターナショナル・スクール育ちだから、フィルターを通して意見を言わない育ち方をしてるんですよね。だから、相性が良すぎて、言葉がだんだん強くなっていくんですよ。最初は“おお、いいね”“それもいいね”ってやってたのが、“そうじゃねえよ! こうだよ!”って(笑)。

──あははははは(笑)。

それを根に持つような感じではないんですけど、“ギターを作り込みすぎると、それが頭から抜けないんだけど”って言われたから、試しにシンセだけで作ったやつを持って行ったら、“これよくない?”って。今回は主にオケ関係をシンセで作って、いいものだけを残して変えていくことが多かったですね。「When I」は全部シンセで作っていたし。

──今作には、ゲストボーカルを迎えた楽曲を2曲収録されていますけども、「LOST IN TIME」にはCrossfaithの(Kenta)Koieさんが参加されていて。

この曲は2年前から触り始めていたんですけど、最初からKoieの声が聴こえていたんですよ。この曲、元々はイントロがあって、結構壮大な感じにしていたんですけど、それはKoieがライブで旗を振っている姿が印象に残っていたからでもあって。で、メンバーにも“Koieの声が聴こえる”っていうのは最初に伝えてたんです。それで試しに聞いてみたら、Koieも“全然やるで”って言ってくれて。僕ら同い年で、前から何かやろうっていう話もしてたから、いいタイミングでしたね。

──「Listening」にはTielleさんが参加されていますが、この曲も最初から女性ボーカルの声が聴こえていたんですか?

そうです。ただ、正直な話、女性の声は聴こえていたけど、Tielleではなかったんですよ。澤野弘之さんというコンポーザーの方がいて、アルバムに参加させていただいたり、ライブでもたまに歌わせてもらっているんですけど。澤野さんは幅広いボーカリストをお選びになるんですけど、Tielleはそのなかで一番の新入りだったんです。そのときにAimerさんの曲を歌っていて、素晴らしいなと思って。僕、元々Aimerさんが好きで、前からコラボしたいなと思っていたんですけど、今回はタイミングがあわなくて。ただ、Tielleが本当に素晴らしい結果を出してくれました。感情の入れ方も声の使い方もばっちりだし。

──Yoshさんの低音もめちゃくちゃ気持ちよかったですよ。

ありがとうございます。ただ、ツアーのリハを最近してるんですけど、Tielleがいるとき以外は「Listneing」をやらないつもりだったから、“なにとぼけたこと言ってんの? お前がそこも歌うんだよ!”って言われて、なるほどね!って。

──それこそ“なるほどね”ですね(笑)。

あはははは(笑)。そうそう、まさに“なるほどね”ですよ。で、やべえなと思って、喉の筋トレをこそこそやり始めてます(笑)。

Survive Said The Prophet / Yosh

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──生で聴けることを楽しみにしてます! ライブに関してですが、今夏は様々なフェスへ出演されますけども、8月20日(日)には『SUMMER SONIC 2017』のMOUNTAIN STAGEに出演されることになっていて。例年の流れでいいますと、登竜門的なポジションでの登場になるわけですが。

すごく光栄ですし、めちゃくちゃワクワクしてますね。朝の10時とはいえ、そのステージで音楽が広がる瞬間ってめったに経験できないじゃないですか。それをこのタイミングで感じてみたかったし、少なからずあのステージで一度音を出したことがある知識を、この先持っていけることがすごい楽しみです。

──そして、9月15日からは『WABI SABI TOUR 2017』がスタートしますね。各公演にゲストを招かれていますが、特にこの人達とやりたかったという方々はいました?

今回出ていただく全アーティストがそうなんですけど、僕、海外で勉強していて日本に帰って来たときに、egg brainとラスベガス(Fear, and Loathing in Las Vegas)が、coldrainのツアーファイナルに出ていたのを観に行ったことがあって。日本でバンドをやろうって決めてから、まだ数ヶ月の状態だったんですけど、日本にこんな化け物がいるんだと思って。で、右も左もわからないまま、こういうバーに行ってるのかって、ロカホリ(ROCKAHOLIC)に行ってみたんですよ。そしたら、masatoがいて、この人は絶対に英語がしゃべれる!と思って(笑)。で、話しかけたら、すごくよくしてくれたんですけど、そのときにベースのRxYxOさんもいたんです。で、当時のメンバーとRxYxOさんが仲良くなったのもあって、飲みの席で一緒になったことがあったんですけど、そのときに“とりあえずお前らツアーに行け”って言われて。“くじけるまでツアーに行ってこい。もうダメになってもいいから、とにかく経験してこい”って言われたことを、今でもおぼえてるんですけど。

──そういう過去があったんですね。

そこからSurvive Said The Prophetになって、EPを出したときに、“かっこいいバンドになったじゃん”って言ってくれて、北海道でライブするときに初めて呼んでいただいたんですよ。それで、僕らのツアーにも出てほしいって話をしたけど、“まだ早えよ”って言われたりもしてて。それで、今回お願いしたら、僕らが初めて呼んでもらった北海道で、coldrainが出てくれることになったんです。それで、masatoにありがとうって連絡したら“タイミングもよかったし、準備ができたってことじゃない?”って。けど、笑いながら“ボコボコにするけどな”って(笑)。

──あははははは(笑)。

そうやって先輩の立場をキープしてくれる距離感とか、盛り上げ方をしてくれるんですよね。今の世代って、昔ほど上下関係は厳しくないけど、それをうるさくやるんじゃなくて、そのいいところだけを持って、俺らに見せつけてくれるっていうか。“まだまだだな、お前らは”って。だから、俺らにとって、いいお兄ちゃんみたいな感じ……っていうのを、こっちが勝手に思ってるだけかもしれないけど(笑)。

──いやいやいや、めちゃくちゃ美しい関係だと思いますよ。全公演に出演されるNoisyCellに関してはいかがですか?

僕らが単純にNoisyCellが好きだというのと、エモっていうシーンが日本でそこまで広がらなかったところもあるから、仲間がいると大切にしたくなるところもあって。彼らはようやく全メンバーが揃って、今から殺しにかかるぞって感じなんで、じゃあ一緒に殺しにいこうぜ!って。だから、“supporting act”という形にはなっているけど、ガチンコバトルですよね。取れるもんなら取ってみろよっていう。で、向こうも取ってやるよっていう。そこはすごくいい関係だと思います。フェアにやってるし、終わった後はいつもハッピーに飲んでるんで。

Survive Said The Prophet / Yosh

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──かなり濃いツアーになりそうですが、今後のアクションで考えていることはありますか?

最近、いろんなことをブワー!って考え始めているんですけど、たぶん実現されないこともあるので、できるだけ言わないようにしてるんですけど。

──ただ、野望はめちゃくちゃあると。

ありますね。でも、ひとつ明確なのは、映像をもっと取り入れたいと思っていて。今って、コンビニで働いているアルバイトでも、ある程度機材を揃えられて、自分が想像しているものをパソコンと繋げれば実現化できるようになったわけじゃないですか。そういう時代にいろんなことができるんじゃないかなと思っているんですけど、たとえば、MY CHEMICAL ROMANCEの『The Black Parade』って、自分達のバンド名を消してでも、何かひとつの作品を作ろうとしていたじゃないですか。あれって、音楽とアートを融合させたひとつの形だと思うんですよ。それの映像を、もっと次のレベルに持っていけるんじゃないかなって。あとは、Nine Inch Nailsのトレント・レズナーじゃないですけど、映像を通して音楽を作ってみることもおもしろそうだなと思うし、そういう願望がめちゃくちゃ強くなってます。

──とにかく今はやりたいことがものすごくいろいろあるんですね。

ありすぎてやばいですね(笑)。とりあえず一個一個やっていくことで精一杯になりそう。

──でも、その一個一個がこの先に繋がっていくわけですし。

そうですね。それに、そのためにもメンバーがすごく重要なんだなって思いました。俺のことを「どうどう」って抑えてくれたり、「いいよ、なんでも考えてごらん」って言ってくれたり。それに、ウチのメンバーの誰かがどこかで音楽を作ったとしても、結局このメンバーじゃないとサバプロにはならないんだなっていう意識が、今、全員固まってきたと思いますね。

Survive Said The Prophet / Yosh

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取材・文=山口哲生 撮影=菊池貴裕

 

リリース情報

■WABI SABI 初回盤
2017.08.02 in stores / \2,315 (+tax) / ZTTH-028
DVD収録内容:
①メイキング・オブ「WABI SABI」ドキュメンタリー
②「FIXED TOUR FINAL ONE-MAN」ダイジェスト

■WABI SABI 通常盤 (CD)
2017.08.02 in stores / \1,852 (+tax) / ZTTH-029

Track List
01. WABI 
02. Lost in Time 
03. When I 
04. Network System 
05. Again 
06. Conscious 
07. [  ] 
08. Listening 
09. SABI

 

イベント情報

【WABI SABI TOUR 2017】Supported by Dr.Denim
(全日程Supporting Act: NoisyCell)
※プレイガイド絶賛発売中

09/15(金)新潟CLUB RIVERST w/UNCHAIN
09/21(木)広島CAVE-BE w/RED in BLUE
09/22(金)福岡Queblick w/彼女 in the display
09/24(日)京都MUSE w/SHADOWS
10/04(水)札幌cube garden w/coldrain
10/05(木)盛岡CLUB CHANGE WAVE w/HER NAME IN BLOOD
10/06(金)仙台MACANA w/Hello Sleepwalkers
10/13(金)名古屋APOLLO BASE w/MEANING
10/14(土)大阪Pangea w/Another Story
10/19(木)東京LIQUIDROOM


 
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