2018年の開催も決定!10-FEET、B’z、BLUE ENCOUNT、久保田利伸らの競演に7万2千人が熱狂『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017』
8月11日(土)・12日(日)の二日間にわたり、北海道小樽市の石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージにて『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZO』が開催された。
今年19回目の開催を数える同フェスには、全国各地から2日間で延べ72,000人が来場。9年ぶりに入場券が全てがソールドアウトとなる盛況をみせた。あいにくの天候で、雨にも見舞われたものの、50時間の開催期間を無事終了。さらに、閉幕とともに『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2018in EZO』の開催が発表された。
10-FEET 8.11(Fri)15:00〜SUN STAGE
10-FEET (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:古渓一道
今年もRISING SUN ROCK FESTIVAL 2017 in EZOがスタートした。メインステージとなるSUN STAGEのトップを務めるのは、2015年にクロージングアクトを担当した10-FEETだ。「2015年は朝陽が見られなかったので、太陽が出てる時間に出てもらおうと。でも今年も太陽は出ておりません(笑)」というスタッフの紹介どおり、今年は残念ながら曇天での開幕。
ステージに登場したTAKUMAは「B’z待ちのお客さんもいると思いますが、10-FEETのお客さんは激しい人が多いんで、怪我しないように気をつけてください」と挨拶をすると、いきなり「goes on」でお客さんを盛り上げていく(途中で、「俺らもB’z楽しみやねん!」と「EASY COME,EASY GO!」のイントロを演奏し、してやったり顔でTAKUMAとNAOKIがハイタッチする場面も)。
「1sec.」では拳を掲げながら叫び、「CHERRY BLOSSOM」ではみんなでタオルを投げ、どんどん広いライジングサンの会場がひとつになっていく。「普段私なんてって我慢してる人が、今日は私が私がって押しのけるくらい楽しんでもらえたら」と言って演奏された「ヒトリセカイ」と、「根暗や人見知りがたくさん楽しめますように」という言葉で締めくくった「太陽4号」は、ただ音楽に身を委ねていられるこの2日間の始まりを一緒に喜び合えた瞬間だった。
「いろいろ悩みがあるやつ。後悔しようが迷おうが行くしかないし、行ってみなわからんやろ。怖い景色があるならその景色が見えなくなるくらいスピード上げろ! 俺らが引きずり出してやる」というTAKUMAのMCに続いた「RIVER」で盛り上がりはフロアもお客さんも最高潮に。ここから13日の朝陽が昇る瞬間まで、日常を忘れたただ音楽を楽しむだけ。10-FEETの3人は、その最初のエンジンを思い切りかけて、ステージを去っていった。
清水ミチコ 8.11(Fri)15:30〜RAINBOW SHANGRI-LA
清水ミチコ (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:原田直樹
15時30分。RAINBOW SHANGRI-LAのトップバッターは清水ミチコ。既に人が入りきらず、テントを多くのファンが取り囲んでいる。ステージに現れた彼女は、いきなりリクエストを募る。その声をうんうんと受け止め、「サッちゃん替え歌」から「100年の声の歌」へ。タラちゃんから山口もえ、杉本彩、さらには黒柳徹子やきんさんぎんさんまでがステージに現れる。続く「アナと雪の女王」では井上陽水、瀬川瑛子、デビ夫人が憑依。すでに会場は爆笑の渦。しかしまだまだここから。ピアノ弾き語りで矢野顕子の「ひとつだけ」からRCサクセション「スローバラード」、美輪明宏の「ヨイトマケの歌」に森山良子の「さとうきび畑」。そして「お、アンコールですね」と勝手に応えて、松任谷由実の「春よ来い」と秋川雅史「千の風になって」と、ステージはひとり紅白歌合戦の様相。
さらに続いては作曲法シリーズ。これはいろんなアーティストの曲調のくせをつかんで、清水ミチコ流にアレンジし、いかにもそのアーティストっぽく披露するというネタなのだが、これがもう、本人の曲としか思えない完成度。手の動きから声の裏返り方からサビの歌詞の雰囲気までもう完璧。スピッツ、山下達郎、サカナクション、さらにはトラメガ片手に椎名林檎。最後はミスチル。単なるモノマネではなく、対象への愛情を強く感じる憑依芸。参りました。
客席から「みっちゃーん」の声援をもらうと「この感じはアンコールでしょうか?」と応え、UA、YUKI、クリープハイプ、ゲスの極み乙女、いきものがかりと、ラストは1人フェスメドレー。「今日は本当にこのステージに来てくれてありがとう!」と言ったのは、客席はもちろん、ステージに降りてきてくれたアーティストに対しての感謝だったかもしれない。
B'z 8.11(Fri)17:00〜SUN STAGE
B'z
始まる前から期待が高まる。ステージには「玲」と刻まれた松本の白いアンプが16台(!)。それだけで壮観だ。ステージに松本が現れると、客席を両手で煽る。そのギターが鳴ると同時に、稲葉が現れ「さまよえる蒼い弾丸」からライヴはスタート。もうフェス仕様で照れのない、誰もが知っている大ヒットチューンを連発。しかし客席に日和る感じはまったくなく、圧倒的な演奏力と、積み上げてきたバンドのグルーヴで、フェスで初めて彼らを見る客も虜にしていく。中でもベースのバリー・スパークス(元ドッケン)とドラムのシェーン・ガラースのリズム隊が凄まじい。稲葉がマラカスを振り、松本がセンターでギターを奏で、ルーズなグルーヴから披露した「有頂天」も、その懐の深さを感じさせた。
「これがライジングサンロックフェスティバルか……すげえな。皆さん、素敵ですよ」と稲葉が口にする。そして「声を響かせてください」と叫ぶと、「裸足の女神」のイントロで、3万人の声がひとつになる。その後も「イチブトゼンブ」「Still Alive」と会場を盛り上げる。「juice」のコールアンドレスポンスでは、稲葉のハイトーンボイスについていけない客席に「適当でいいよ」と笑う、稲葉のお茶目さが出る一幕も(笑)。「ギリギリchop」では客席中がタオルを回し、ラストの「ultra soul」では、サビのあの部分になると、SUN STAGEの前方から、テントサイトの後ろの方まで、ぎっしり埋まった人たち、ほぼ全員がジャンプ。地面が揺れたと思うほど。とにかく圧巻のステージだった
FRIDAY NIGHT SESSION〜SKA IS THE PARADISE〜 8.11(Fri)24:00〜RED STAR FIELD
FRIDAY NIGHT SESSION〜SKA IS THE PARADISE〜 (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:小川舞
今年のFRIDAY NIGHT SESSIONは、東京スカパラダイスオーケストラをホストに、様々なゲストを迎え、スカの歴史を紐解いていくスペシャルな企画。ピーター・バラカンがMCでその流れを説明し、スカパラの演奏が行われるスタイル。スカタライツの名曲が続いた後、チバユウスケ(The Birthday)が呼び込まれ、ウェイラーズの「SKA JERK」とスカタライツの「BONGO TANGO」を唄う。上機嫌でチバダンス。さらに中納良恵(EGO-WRAPPIN')がスカタライツの「BLACK SUNDAY」を披露すると、再びチバが現れ、ボブ・マーリーの「Get Up,Stand Up」を投下。続いて登場したYONCE(Suchmos)は、スペシャルズの「Gangsters」と自身の「STAY TUNE」をマッシュアップ。続いて峯田和伸(銀杏BOYZ)は、上半身裸にサスペンダーのスタイルで、スペシャルズの「Little Bitch」を唄う。これがまるでテリー・ホールで素晴らしかった。そしてドラムの茂木欣一が「峯田くんとこの曲をやれて嬉しい」と言って披露したのは、彼が在籍していたフィッシュマンズの「いかれたBaby」。峯田の繊細なハートがこの曲に映し出された、最高なコラボだった。続くミュート・ビートの「AFTER THE RAIN」のカバーも、どこか、昨年末に亡くなった朝本浩文のことを思い出させるものだった。
そして後半はスカパラの歴史を紐解くものに。「MONSTER ROCK」からスタートし、「カナリヤ鳴く空」ではチバが呼び込まれ、途中からはYONCEもステージに。飛び込みを知らなかったチバが一番驚いていたのが、いかにもライジングサンのセッションっぽくて良かった。そして、「黄昏を遊ぶ猫」と「くちばしにチェリー」には中納良恵が、さらに「hammer ska」では、急遽決まったTAKUMA(10-FEET)が登場。最後はゲスト全員が登場して大団円。ライジングサンの初日、深夜のセッションは熱く幕を閉じた。
BLUE ENCOUNT 8.12(Sat)14:10〜EARTH TENT
BLUE ENCOUNT (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:藤川正典
雨の影響で下手に大きな水たまりができてしまっている2日目のEARTH TENT。あいにくの天候と足場の中、初出演のBLUE ENCOUNTが登場した。この夏だけで10本以上の夏フェスに出演する彼ら。この日は「Survivor」からライヴがスタート。
バンドを組んだ高校の頃からずっと憧れていたライジングサンに出演できた喜びを語るヴォーカルの田邊駿一。雨の中集まってくれた人たちと最高の景色を見たいと、新曲の「SUMMER DIVE」が演奏される。この曲は夏フェスでお客さんと盛り上がれるようにと作られた曲で、タオルを振ったり回したり踊ったりとEARTH TENTに集まった人たちはバカ騒ぎ状態に。
それでも足りないと、「盛り上がるだけだったらどこのステージでも、どこのフェスでもいいの! (俺らはライジングサンに)来たかったから来たの! あんたたちもそうでしょ? だったらそれ相応のパワー、一緒に使ってよ!」と興奮気味にマイクを強く握りしめて叫ぶ田邊。その言葉に大きな歓声があがる。
「どんなバンドって思われてんのかわかんないけど、こんなバンドです。見ないとわかんねえんだよ。結構いいでしょ?(笑)。あんたを笑わすためにきました!」いつでもどこでも情報が手に入り、音楽が楽しめる今の時代に、日常を忘れられる空間で、顔と顔を合わせて音楽を楽しむこと。その喜びとかけがえなさが、ライジングサンにはある。ラストの「Answer」と「もっと光を」で、バンドの思いと、この場所に音楽を楽しみに集まった人の思いとが完全にひとつになり、BLUE ENCOUNTの熱いパフォーマンスが締めくくられた。
JOHN JOHN FESTIVAL 8.12(Sat)15:00〜BOHEMIAN GARDEN
JOHN JOHN FESTIVAL (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:原田直樹
小雨模様のBOHEMIAN GARDENに登場したのはJOHN JOHN FESTIVAL。アイルランドの音楽を奏でる3人組だ。ステージに登場すると、フィドル(註:バイオリン)とギター、そして鍵盤のアンサンブルが、優しい空気を運んできた。2曲目に「カナダ、ニューファンドランド島の歌です」と披露したのは、トラディショナル・ソングの「Sweet forget me not」。ヴォーカルJohnのピュアな歌声が会場を包み、ハッピーな気持ちにさせていく。客席は、思い思いに踊ったり、しゃぼん玉を飛ばしたり、あいにくの天候ではあるが、みんな楽しんでいる。JOHN JOHN FESTIVALのようなケルトミュージックを奏でるグループが出演することは、このフェスティバルの多様性の象徴とも言えるだろう。
そしてこの日、最も客席を湧かせたのは、JOHNが「唄える準備はできてますか?」と言って始めた「カントリーロード」。映画「耳をすませば」で知られた、ジョン・デンバーのカヴァー曲だ。この日本語詞の切なさと、JOHNのヴォーカル、そしてこのグループの音楽性が交わって、胸がいっぱいになった。最後の曲「Sally Gally」をやった後、帯広出身のギターannieがこのフェスに参加できた喜びを語り、さらに1曲披露して、ステージを降りた。みんなが笑顔になれる、素敵なライブだった。
久保田利伸 8.12(Sat)18:30〜SUN STAGE
久保田利伸 (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:古渓一道
小雨が降り続く中、SUN STAGEには大所帯のバンドメンバーが。数分のバンドセッションの後、ゆるりと登場したのは久保田利伸。ファンキーなグルーヴを聴かせ、丁寧に挨拶をすると、早速とばかりに「LA・LA・LA LOVE SONG」のイントロが。歓声が上がるフロアを見て、めいっぱいタメを作ってから、伸びやかな歌声を披露する。昨日から北海道に入り、北の自然を感じるべく石狩鍋を食べたという久保田は、「シャケが入ってました。シャケナベイビー」と小気味良くギャグをはさみつつ、ファンキーな「Bring me up!」を演奏。
中盤では「この大地が生んだ大名曲です」と、レゲエ調にアレンジされた松山千春の「大空と大地の中で」をカヴァー。昨年この場所で松山本人も唄ったこの曲。まったく異なるアレンジだが、久保田の歌声にも、この曲の根底にある北の大地の雄大さと優しさがしっかり滲んでいた。
続く「Missing」でも、ブルーのライトの中で響く柔らかい歌声が、この広い会場を温かく包み込んでいく。「日本から生まれた名曲を」と言って唄われたのは「SUKIYAKI」。英語詞の「上を向いて歩こう」を、琴などの日本ならではの音色を混ぜながら、しっとりと唄いあげる。コーラスとの美しいハーモニーに集まったすべての人が耳を傾けているのがわかる。
「まだ時間大丈夫かな? もう1曲唄ってもいい?」と、最後に「LOVE RAIN〜恋の雨〜」を。「止まらない雨が 恋が降らせた雨が/ふたりを 昨日へ 帰さない」というフレーズを聴きながら、いつの間にか空が真っ暗になっていたことに気づく。ライジングサンの長くて短い夜が始まった。ここから明日の朝まで、まだまだいろいろな景色が見れることだろう。
eastern youth 8.12(Sat)18:50〜def garage
eastern youth (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:西槇太一
吉野寿はステージに現れると「マツリスタジオからやってきました!」と、直前に同じステージに出ていた向井秀徳(ZAZEN BOYS)の決め台詞を吐いた。笑いが起き、ちょっと緩くなった客席の空気が、1曲目の「砂塵の彼方へ」で一転。ヒリヒリとした感情に包まれる。曲が進むごとにそれは続く。
「生憎の曇り空ですが、その上には青空が広がってる。大事なもんは見えねえもんなんだよ!」と言って始まった「青すぎる空」。「ロックでひとつになる必要なんてねえんだ。むしろロックでバラバラになって自分を取り戻す!」と言い放った「裸足で行かざるを得ない」。
そのどれもが圧倒的で、儚い人間が懸命に生きようとする力に満ちていた。そして吉野は誰かに話しかけるようにこう言った。「俺たちもう1回、雪のテレビ塔の下で逢おうぜ」。
そして披露された「テレビ塔」。これまでインタビューで聞かれても吉野は明言してはいなかったが、この日、ここで唄った「テレビ塔」は、2013年に亡くなった盟友、吉村秀樹(bloodthirsty butchers)に向けられたものだった。感情爆発。涙腺決壊。出演者それぞれの、ひとつひとつのシーンにいろんなドラマがある。そんな人間臭さが、このフェスの魅力なのだ。
くるり 8.12(Sat)27:30〜SUN STAGE
くるり (C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:釘野孝宏
半分以上のステージが全アクトの出演を終え、静まり返った3時30分。2日間に渡って開催されてきたライジングサンのクロージングアクトを務めるくるりが、SUN STAGEに登場した。
ゆるりとステージに表れた3人とサポートメンバーたちによって演奏された1曲目は「鹿児島おはら節」。北の大地のロックフェスティバルで、この曲を最初に持ってくるあたりがなんともくるりらしくて、思わずニヤけてしまう。
昨年9月に結成20周年を迎え、ベストアルバムや過去を振り返るライヴを行っていた彼ら。ここでも「虹」「WORLD’S END SUPERNOVA」「ばらの花」と立て続けに懐かしいナンバーを披露。さらに昨年再現ライヴが行われたアルバム『アンテナ』の収録曲も続いていく。サポートを含めた6人編成でのバンドアンサンブルが美しく、時に激しく絡み合い、北の空気を震わせる。
「お空が明けてまいりました」という岸田繁の言葉に空を見上げると、たしかに雲に覆われながらもずいぶんと明るくなってきたようだ。そして、「ライジングサンだからこの曲やろうと思って」と言って奏でられたのは、「太陽のブルース」。時に笑うように、時に叫ぶように、時に踊るように唄う岸田。彼が唄う「太陽は言った/今日までの日々は永遠じゃなくて そう 一瞬だったさ」というフレーズに、バンドを20年間続けてきたことの重みと、その音楽をこうして今、この瞬間に聴けていることの喜びが重なる。
間もなく5時を迎えようとする頃。すっかり空は明るくなり、白い雲一面に。1日目の夜中から降り続いた雨は止んだが、念願の朝陽を望むことは残念ながら難しいようだ。音楽のお祭りが終わり、日常が近づいてきている。「働けよって歌です」と冗談っぽく岸田が笑い、「Liberty&Gravity」で本編は締めくくられた。
鳴り止まない拍手に1曲だけと演奏されたアンコールの「ロックンロール」。そこには20年のキャリアをいい意味で感じさせない瑞々しさがあった。ここには音楽が好きな人しか集まっていない。ただそこで鳴っている音を、その瞬間を思い切り楽しむだけ。そうやってみんなが過ごしてきた2日間の終わりに、こういう音が聴けるのは、何よりも胸が熱くなる。
メンバーが去った後、来年のライジングサンの開催決定が発表された。また来年、この場所で音楽を思い切り楽しめる日が今から待ち遠しい。
(C)RISING SUN ROCK FESTIVAL 撮影:n-foto RSR team
※終了
北海道・石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ